2012/07/31 by Fancy

雲南視察ツアー2012について:専門家の感想と提言II

中国の自然保護区は主に三つの任務があります。それは、
資源の管理、地域との協働、そして環境教育です。

白馬雪山自然保護区は、自然学校のように、地域と協働で環境教育と地域づくりを目的とするエコツアーやスタディツアーを行いたいと考えています。それに対して、エコツーリズムセンターの広瀬敏通さんがいろんな提言をくださいました。ここで、ご紹介します。


広瀬さんが研修を行う様子

一、情報提供機能について

白馬雪山自然保護区は、インフラはすでにしっかりしていて、自然学校の施設として不足はないが、ただあそこには、ビジターセンター機能、つまり情報機能がない。東竹林寺にある「宣伝教育センター」は、情報センターとして全然機能していない。自然学校のような機能を果たすために、体験機能だけではなく、情報提供機能も必要。

東竹林寺は入り口施設として、一般の観光客を対象に、白馬雪山と地域との関係について、つまり白馬雪山が地域の人にとってどれほど素晴らしい存在なのかや、白馬雪山がもたらす生態系機能が、あそこの人たちの暮らしを支えていることをちゃんと紹介する必要がある。例えば、水や緑や食べ物をもたらしているし、白馬雪山を起源とする水が村の人たちを生かしているわけだから。


東竹林寺の宣伝教育センターにて

一方、キャンプ場は、主に以下の情報を提供する。

1、保護区管理局の仕組み:保護区管理局がどのような取り組みをやってきたのかなど、取り組みを紹介。

2、地元住民の情報:四つの村の位置づけについて紹介すること。例えば、なぜこんな辺鄙なところに村があるのか、現在どのような環境に対するかかわりをもっているのか、環境を維持して守る側にも貢献しているのか。もしかすると、「こんなところで牛を飼っているなんて、ひどいじゃないか」と思う人がいるかもしれないから。

3、プログラムについての情報紹介:ガイドツアー、チーズやバターを一緒につくるプログラムなど。伝統的な生活をプログラム化するなど、いくつかのプログラムを作り出す必要がある。

4、自然情報の紹介:ここはどんな生き物がいて、どういう植物、鳥、虫が見られて、ここ一週間の天気はどうなるかなど、基本的にビジターセンターに求められる自然情報は絶対に必要。定期に更新する必要もある。

以上の情報は、部屋を一つ割り当てて、提供するといい。


キャンプ場

同時に、サインシステム(道しるべ・案内板・説明書きなど)も必要

キャンプまでの山道は徒歩1時間ほど。初めて訪れた人は、空気が薄いから、ぜいぜい言いながら、みんなそれぞれのペースで歩く。そうすると、集団では歩けないから、ばらばらになるわけ。そういうときに、サインがあるといい。例えば、山火事で焼けてしまった樹木がいっぱい立っていたを見ました。標高が低ければ、腐って倒れるけど、標高が高いから、倒れないで残ってしまう。これは「白骨林」ともいわれていて、標高の高いところの特徴でもある。ああいうようなものも、サインがあれば、ガイドさんやスタッフが付いてなくてもわかる。

サインシステムは、自然に配慮した色と形と材質で作られるべきで、けばけばしい色とか、プラスチックのボードとかはだめ、というものがあるといい。道案内にもなる。また、ルート上で落石が起きたら大変なところ何箇所があったが、日本では、絶対に一言注意が書かれている。それがないと、万が一のときに、保護区の責任になる。


山火事の焼け跡

最後に、事前に説明してほしいことがある。

車を下りて歩き始めて初めてヤクや牛の糞だらけなのがわかるのだが、それが、ある意味ネガティブな印象も含めた、みんなの第一印象になる。それについての情報を事前に出していくのが大事。「ヤクや牛の放牧が何年間かここで継続的に行われてきたことで、いまご覧になっている景観、下草がきれいに刈り込まれているような景観が維持されています」とか。そういう情報を提供していくと、あ、そうなのかと、納得するだろうなと思う。キャンプ場に入って初めてわかるというよりも、歩き始めたときに最初にみんなが感じることなので、入り口などにそのような説明を書いた看板を置くといい。そうすれば、あの一時間を不快な気持ちで歩くのか、一つ理解が深まったという思いを持って歩くのか、かなり違ってくる。

二、人材育成について

1、どんな人がガイドに?

人材育成は、都市にいる人を現地に連れてきて、ガイドをさせるためのものではなく、そこで暮らしている人たちを育成するためのもの。現地の強いチベットなまりとか、チベット人の暮らしぶりとか、そのようなことを背景にしてガイドができる人、というのを想定してやるということが、まず一つ。

2、研修の内容

● 伝える技術:

地元住民は、都会で暮らしている人たちみたいに、コミュニケーションが上手じゃないし、臨機応変で軽妙なやり取りに長けているわけではない。だから、伝える技術はとても大事。このような人材育成は、エコセンもやっているが、伝える技術は、座学より、ほとんど実習、現場学習、というような形で行っている。

● 理念とミッション

ガイド研修を受ける人は、みんなそれぞれの思いを持っている。ここが大好きとか、白馬雪山に向かって、朝夕お祈りするとか。信仰上あるいはそこが好きで、人々は暮らしているわけですが、中には仕事だから仕方なく村から派遣されてきているんだよと思っている人もいるかもしれない。本当は町のほうが大好きと思っている人がいるかもしれない。いろんな思いを持っている人がいるので、いまの伝える技術のようにスキル優先の研修だけでは、ほころびが出てくる。何のためにガイドをやる必要があるのか、お金のためなのか?思いがなければ、お金が入らない最初の一定期間は「なんだ全然食べていけないじゃん」とやめちゃうかもしれない。志の部分をしっかり統一して高めていくことが必要で、そのための研修も必要。

● 安全配慮

理念・ミッションについての研修、それからスキルの研修、それから安全配慮についてもやっていかなければならない。自然やチベット族の歴史、地域文化などに対する配慮もやっていかなければならない。

● 自然環境についての研修

自然環境、例えば、樹木、昆虫、哺乳類などの生き物についての研修は、僕らがやるよりは、むしろ白馬について詳しい先生や研究者がやったほうがいい。

都市部のNGOとか市民団体とつながることによって、すごくメリットが生まれてくる。都市部から人が来るような状況が生まれる。都市のNGOが持っているノウハウとか、いろんなリソースが使える。都市部のNGOとつながったほうがいい。チベット自治区内、昆明などの雲南省という枠内でもいいし、成都などの他省のNGOでもいいので、そのようなNGOと合同シンポジウムをやるとネットワークができる。

三、保護区、NGO、地域、政府など各ステークホルダーの役割について

《保護区の役割》

1、白馬雪山自然学校の本拠地であり、施設とフィールドとプログラムを提供し、解説者またはインタープリターを配置する
2、年間を通した同地区の自然情報、地域人文情報を来訪者に効果的に提供出来るよう、ハンズオン展示や体験型の解説手法を開発する
3、フィールドを活かした各種の体験型プログラムを継続的に実施する。

《NGOの役割》

1、保護区の自然学校化に向けて専門的な助言、研修を提供する
2、都市部住民と保護区をつなぐネットワーク的な取り組みも行う

《地域の役割》

保護区を軸とする4つの村は、伝統的なチベット族の生業や習俗を貴重な資源と認識して、その保存と公開について協力をする。

1、伝統的な文化・習俗をエコツアーや環境教育プログラムに出来る様、協力する2、住民自身がプログラムの担い手として参加する
※政府、保護区からも上記の要請を行い、その実現に努める

《政府の役割》

政府は保護区が将来に亘って良好な自然環境と文化資源を維持できるように、
そのための具体的な普及啓発と産業化の取り組みである自然学校活動に対して、以下の点について全面的に協力する。

1、小中高校生の課外学習として保護区自然学校を活用する
2、地域住民が保護区自然学校の運営に参画できるようにする
3、都市住民の自然環境保護の意識啓発に効果がある措置を行う
4、保護区自然学校の諸活動を支える予算を組む
5、上記、可能な範囲で条例、法律などを制定して、措置の根拠とする

以上、広瀬さんの保護区への提言でした。どうもありがとうございました!

 

口述・文(一部):広瀬敏通
編集:屋久子

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