2012/07/30 by Tanada

【田中優】中国の週刊誌『湖湘地理』掲載のLEAD&Beyond訪日研修報告シリーズ(4)

編者注:当記事に関し、少し過度な表現があるのではないかという意見が提起されました。事務局で協議した結果、やはり講演者本人の言葉を尊重するのが妥当であると判断し、原文のニュアンスを変えずに翻訳しております。また、本編の内容がすべて日中市民社会ネットワークの見解を反映しているわけではありません。ご了承およびご理解の程、よろしくお願い申し上げます。

E03「脱原発」(つづき)

アイスランドの地熱発電は、17台の装置のうち14台が日本製だが、日本の地熱発電の利用率はわずか0.6%

東京電力が以前行った調査によれば、日本で風力発電設備を設置すれば、日本のその他のほぼ全ての発電設備を代替できる

現在までのところ、私たちはまだ自然エネルギーによる発電を取り上げていない。オフィスなどの場所で蛍光灯や窓を改造したり、省エネ冷蔵庫を使ったり、エアコンを30分毎に5分停止したり、ピーク時の電力料金を引き上げたりするなどの方法で、多くの電力を節約してきた。2009年の時点では、欧米が自然エネルギーの発展が最も速いエリアであった。とくにヨーロッパでは、新しく建設された発電所のうち60%が自然エネルギーによる発電所だった。それにも関わらず、日本のメディアは、自然エネルギーによる発電はいまだ玩具と一緒で取り上げるに値しないとまだ思っている。

アイスランドは100%自然エネルギー発電を利用している。そのうち85%が地熱発電で、発電と同時に各家庭に温水を供給することができる。私がアイスランドに参観に訪れた際に気付いたのは、彼らが利用している17台の発電設備のうち14台が日本製だということだ。アイスランドの人は不思議に思うだろう。つまり、日本はこのような設備を製造でき、またあれほど多くの火山があるならば、地熱発電の利用で日本の電力需要の問題を解決できるはずではないか?と。しかし、現状は、日本が利用している地熱は、わずか0.6%にとどまっている。環境にこれほど恵まれ、技術もこれほど高いのに、私たちは有効に利用できていないのだ。現在、神戸のある工場が温泉発電機を製造しているが、その原理は温泉の温度が下がるときに発生する蒸気を利用して発電するというものだ。

現在、中国はすでに風力発電を導入している。これ(風力発電)も、発展が非常に展望できる分野だ。東京電力が以前に実施したことのある調査によれば、日本では、風力発電設備の設置後、国内のその他のほぼ全ての発電設備を代替できるという。ただ、日本には広く静かな海域があるため、風力発電の発展が阻害されている。先日、九州大学の教授が海上に浮かぶ風力発電設備を発明した。この水上風力発電設備の風車は、効率が以前のものと比べ2~3倍よく、かつ騒音も比較的少ない。現在は博多の海域で実験が行われている。日本の海洋面積は陸地の11倍で、水上風力発電の発展には適した環境となっている。

 日本は政治家が管理しているのではない。日本は電力会社の帝国だ。

日本国民の82%が原子力発電に反対をしているが、東京電力の株主は89%が原子力発電を支持している。その株主には、保険会社や銀行などの金融機関が含まれている。

日本は、自然エネルギーの発展において著しい進展は見せていない。大半の先進国では、電力供給は門戸が開かれており、誰でも参入することができる。欧州では、新たに建造された発電所の60%が自然エネルギー発電の発電所で、大半は市民が自ら建設したものだ。このようにして、就業の機会が創出されるとともに、電力供給も保障される。ドイツでは、自然エネルギーの発展により、就業率は従来の12倍に拡大し、オーストラリアでは15倍にまで拡大した。

日本は、電力供給の権利を市民の手に返す必要がある。

現在、電力会社は日本の広告業界では大口のスポンサーで、テレビ局にとって最大の顧客である。そのため、テレビ局は絶対に電力会社の悪口を言うことができない。実は、日本の国民の82%が原子力発電に反対をしているが、東京電力の株主の89%はこれに賛成している。そのなかには、保険会社や銀行などの金融機関が含まれている。

日本の電力会社の銀行借入の信用度は非常に高いが、とても高い利子で借入をしてくれるため、金融機関は往々にして電力会社に貸付をし、利潤を最大化させたいと考えている。電力会社への貸付が増えるほど、それに応じて(金融機関の)利潤も大きくなるので、電力会社が金融機関を支配しているといえよう。同時に、このほかに電力会社の指図を受けているのは、建設会社や政治家である。建設会社は電力会社のリクエストにそって発電施設を建設し、政治家は選挙票を獲得するために、電力会社が原子力発電を発展させるのを認め、電力会社の株主や労働組合から何度も繰り返して選挙票を獲得できている。「日本は政治家が管理しているのではない。日本は電力会社の帝国なのだ」

「未来銀行」;お金を銀行に預けるのではなく、地方の比較的小規模な金融機関に預け、自然エネルギーに投資する

私たち全ての家庭が苦労して奮闘する必要はない。ただ、最も省エネな電気製品を買うだけでよいのだ。

現在の状況をどのように変えれば良いのだろうか?一般の国民ができることは、お金を銀行に預けるのをやめ、地方の比較的小規模な金融機関に預けることだ。同時に、将来のためにお金を預けるよりも、「こうなってほしいと思う未来にお金を投ずる」方がよい、ということに気付く必要がある。もし私たちが現在自然エネルギーに投資をし、将来より低い価格で電力を使うことができれば、さらにメリットがあるだろう。

「未来銀行」が提唱する自然エネルギーの発展は、日本の人々により苦しい生活を強いるものでは決してない。私たち全ての家庭が苦労して奮闘する必要はなく、ただ、最も省エネな電気製品を買えばそれで良いのだ。その後、各家庭が必要とする電力は、畳8枚分の大きさの約2,000ワットの太陽光発電装置を設置するだけで済むのだ。しかも、優れた蓄電装置があれば家庭内すべての電力需要を満たすことができる。中国の上海で、空港から市内までの大型バスが使用しているsuper capacity電池は、蓄電能力の90%は十分に利用でき、零下20度の状況でも正常に機能する。また、寿命は15年にも達する。私たちはこのような電池を家の床下や電気自動車に搭載することで、太陽エネルギーなどの自然エネルギーを自分たちのために活用できる。反原発デモ

 写真:日本で行われた、市民による脱原発デモ放射能の影響範囲

図:福島原発からの放射能拡散範囲

 

中国は、エネルギー発展の後発者として、日本の轍を踏む必要はない。

もし原子力発電を利用するために命の危険を冒す必要があるとすれば、それは非常に愚かだと思う。

環境問題が経済を促進できるか、その鍵は知恵にある。もし原子力発電の利用のために命の危険を冒す必要があるとすれば、それは非常に愚かだと思う。日本は省エネ製品や電池、電気自動車、自然エネルギーおよびIT技術などの分野で優れている。しかし、研究開発の実施には精力を注いでおらず、逆に原子力発電所を次々と建造してきた。その結果が現在の局面を生み出している。

日本のエネルギー自給率は非常に低く、エネルギーのわずか6%しか自国で生産できず、石油や天然ガスを含む94%のエネルギーは全て海外からの輸入によるものだ。このエネルギーのために、日本は23.1兆円を費やしている。これは、財政予算の2分の1強の額である。2011年、日本は31年来で初めて貿易収支で赤字を出し、世界銀行は日本経済が衰退の途にあると考えた。結局のところ、日本の目の前にあるのは、原子力発電を発展させ続けるか、または原子力発電を自然エネルギーに転換するか、の2本の道だ。後者を選んだ場合、私たちはグローバルな温暖化問題を緩和することもでき、他国と石油を争奪することも避けられ、世界はより平和になるだろう。

原子力発電所の建設から運用までに、25~30年の時間をかける必要がある。中国は現在多くの原子力発電所を建造しているが、切迫する電力需要に気付くべきだ。自然エネルギーであれば、建設サイクルは最も短い。中国はエネルギー発展の後発者として、日本の轍を踏む必要はない。

原子力発電は、コストが高く、危険で、しかも多くの物資を浪費する。このような愚かな設備の発展よりも、次の世代に飛躍する(自然エネルギーという新しい発電資源に取り組む)方がよい。

皆にひとつの可能性を覚えてもらいたい。節電により原子力発電は稼働を止めることができるのだ。そして、電力不足を解決するために、私たちは自然エネルギーを発展させ、多くの就業機会を創出し、より調和のとれた生活を創り出すことができるのだ、ということを。

 

【観察:原子力エネルギー問題】

朱恵雯:日中市民社会ネットワーク事務局長

彼の論点はいつも市民の観点から出てきており、より多くの市民に、皆で参加できる方法を示している田中優氏は、長年、反原発運動を繰り広げ、執筆活動や講演、そして様々な提唱活動を通じて社会のイノベーションを推し進めてきた、環境分野のオピニオンリーダーだ。彼は常に日本の各地を奔走し、ほぼ毎日講演を行っている。彼の解説はとても簡単で分かりやすいため、一般の市民を感化することができる。また、彼はデータを十分に把握しているため、議員が彼を演説に招くこともある。

田中優氏は、草の根運動から著名な団体まで、様々な社会勢力と共同で活動を展開している。日本の草の根団体は、大手のメディアを押さえてはいないものの、細かく、そして強大なネットワークを有している。このネットワークは、日本の全国各地に張り巡らされており、田中優氏が自身の考えを全市民に伝えるのに役立っている。同時に、彼は音楽家の坂本龍一氏や桜井和寿氏のような著名人と共同で、音楽家による環境保護のサポート活動「ap bank」を立ち上げ、多くの人に対して環境意識の啓発を行っている。田中優氏の反原発の立場については、ステークホルダー(利害関係者)のコントロールを受けるマスメディアが彼の宣伝を行うことはとても少ない。そのため、彼は積極的にインターネットを活用し、ブログやFacebook、Ustreamなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って、人々に対して自分の考えを伝えている。3.11の福島原発事故の後、田中優氏はすぐに長年蓄積してきた資料を持ち出し、全力で現地に赴き日本の電力の現状を分析することで、覆い隠されてきた事実を明るみに出した。彼の論点はいつも一市民の観点から端を発しており、より多くの市民に対し、誰もがみな参加できる方法を指し示している。

中国のNGO、またはオピニオンリーダーも、もしかすると田中優氏から3つのことを参考にできるかもしれない。1つめは、シンプルで分かりやすい方法で市民に重要な情報を伝えること。2つめは、情報やデータの収集に多くの力を注ぐことで、高い専門性をもって人々に信じてもらうこと。3つめは、人々を驚かせるほどの豊富な経験や知識、そして高い信頼を積み重ねるまで「持ちこたえる」ことだ。田中優氏の先見の明は、絶えず証明されてきた。例えば最近では、日本政府が電力政策を修正し、家庭向け電気供給の自由化によって現在の電力会社の独占体制を改めることにしたが、これは田中優氏が何年も前から既に提起していたことだ。

 

出典:《湖湘地理》特集<知日派白書ハンドブック>(PDF)のE03

http://csnet.asia/wp-content/uploads/1fe7d4e592e0aa2c7f8248dd8459e7781.pdf

 

翻訳:三浦祐介

校正・編集:棚田由紀子

翻訳者および校正・編集者の所属:日中市民社会ネットワーク

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