2012/07/30 by Tanada

【田中優】中国の週刊誌『湖湘地理』掲載のLEAD&Beyond訪日研修報告シリーズ(3)

E02「脱原発」

未来バンク事業組合田中優氏の顔写真

未来バンクとは、民法667条によって設立された民間の機関で、主に公益事業のNPO(非営利組織)向けの借款事業を行っており、NPO銀行とも呼ばれる。

「未来バンク事業組合」(未来バンク)を設立した田中優理事長(写真)は、日本のNGOの環境活動家で、核危機の解決や、再生可能エネルギーの普及、市民団体への支援などに取り組んでいる。

「一つの可能性を覚えておいていただきたいのです。節電によって、脱原発が可能になるのです。また、電力不足の解決のために、私たちは自然エネルギーを発展させ、就業機会を作り出し、調和の取れた生活を作り出すことができるのです。」

2012年3月15日、東京の駒澤大学246大学会館にて、NPO未来バンクの創設者で、環境活動家の田中優氏が、エネルギーについて、また国民による介入の可能性について語った。

話の内容は日本についてだったが、彼はここで、「中国はエネルギー発展の後発者となりえるでしょう。日本と同じ轍を踏む必要はありません。」と語った。

写真:福島第一原発2号機。東京電力は2012年4月19日に正式に四機を廃止した。東京電力の統計によると、今回の原発事故では2号機からの放射性物質漏れが最も多かった。

 

田中優氏の脱原発論「希望のある未来へ投資しよう」

講師:田中優、通訳:朱惠文、記録整理:劉海波

<背景>26年前に日本では既に、原発反対が行われていた。フクシマの子どもたちの遺伝子は既に異変が起こっている

田中優氏は1986年の時点で反原発運動に身を投じていたが、その頃ちょうどチェルノブイリ原発事故が発生した。反原発運動の初期、田中らは原発への危機感を大げさすぎるやり方で、また専門的過ぎる用語を使って表現してしまったことで、一般市民にとって分かりづらいものとなり、彼らの電力資金の運用に対する理解不足や原発の問題点がどこにあるのかの把握不足を招いてしまった。26年が経過した今日、日本国民の82%は原発に反対しているが、本当に脱原発に向けて努力している人は非常に少ない。「皆、どうしようもないと思っており、明確な未来を描ける者が誰もいない」からだ。

2011年3月12日、福島の原発事故が起こった後、チェルノブイリは福島の対応との対比事例として引き合いに出されることになった。チェルノブイリ周辺地区は、1986年の事故後、胎児の出生率が大幅に下降した。死亡率にはほとんど変化が見られなかったため、事故後の総人口が大幅に下降した。現地では1999年まで継続的に、食の安全基準を改変しており、人口はゆっくりと回復している。田中は、福島県でも今後胎児死亡率が上昇すると予測している。日本政府は認めないが、福島県の子どもたちの遺伝子には既に異変が起きており、彼らは屋外に10分間以上出ていられない状況だ。原発の発展のためにもたらされたこの大きな犠牲は、それほどの価値があったのだろうか?

 

 原発が最も高額、節電が最も重要

現在、日本は世界で最も電気代が高い場所となっている。

日本はなぜ原発の発展に力を入れてこなければならなかったのだろうか?それは、電力会社が「総括原価方式」を採っているからだ。例えば、電気代が1030円だったとすると、そのうちの1000円は必要な費用であるが、残りの3%分は電力会社の利益となり、この割合は固定されている。つまり、電力会社が300億円稼ぎたいと思えば、1兆円の発電所を造ればいいだけということになる。

実際、100万ワットの電力を原発でまかなうと、5000億円のコストがかかるが、仮に天然ガス発電だと900億円で済む。もし火力発電だと、60%のエネルギー効率だが、原発の場合33%でしかない。効率の点から言っても、安くて効率性の高い天然ガス発電を選ぶべきなのだが、「総括原価方式」という計算を取り入れているため、電力会社はコストが高くて効率性が低い方法を選び、最大の利益を得ている。

現在、日本は電気代が世界で最も高い場所になっている。政府は原発を宣伝するために、原発がもっとも低コストだと謳っている。しかし、最近政府の委員会に入った立命館大学教授の大島氏は、「原発はもっとも高コストの発電方法の一つである。政府は原発が低コストだとしているが、これは完全にウソである。日本の電気代が高いのは、彼らが大々的に原発推進を行ってきたからだ」と、異なる結論を出している。

もしも私たちが、今、原発に頼らなくなったら、どのようにして電力問題を解決しなければならないのだろうか?よく言われるのが、再生エネルギーの開発だ。しかし、私は完全に正解だとは考えていない。ドイツでは、自然エネルギーを利用した発電が急ピッチで発展しているが、日本と最も異なる点は、ドイツの電力消費量は、長いことほとんど変化していないということだ。一方、日本は、電力消費量がどんどん増えている中で、自然エネルギー発電の効果や利益が不明確では、焼け石に水だ。そのため、私は節電が最も重要だと考えている。

これだけ電力消費が多いのは、国民の生活スタイルに問題があるのだと考える人もいる。しかし実際は、家庭での電力消費量は日本全体のそれの22%のみであり、残りの78%は別のところで、多くは企業活動の場で消費されている。日本の電力消費量の使用ピーク図を見ると、早朝4、5時の消費量が最低で、その後だんだん上昇し、夜になるとまた下降していく。

それならば、なぜ企業が電力消費のピークの主な原因となるのだろうか?それは電気代の関係だ。日本では、家庭向けの電気代は、使えばそれだけ電気代が高くなるので、みな努力して節電する。しかし企業の電気は、使えばそれだけ安くなり、電気代が目に見えて少なくなる。企業は必死に電気を使い、電力会社はより多くの電気を供給し、発電所の規模はどんどん大きくなり、それだけ儲かる、という図式だ。

 

企業活動で使う電気は、本当にもうこれ以上節約できないのだろうか?

「もし蛍光灯の上部の板を金属にすれば、95%の光を反射できる」

どのようにして、電力消費のピークを調整できるだろうか?実際は、とても簡単なことで、企業の電力消費ルールを変え、使えばそれだけ費用を高くすることだ。言い換えれば、企業が節電することで利益を得るようにさせ、節電へのモチベーションを持たせることだ。半数の企業が節電を考えれば、少なくとも30%の電力が節約できる。多くの企業は、既に節電に取り組んでいてこれ以上は無理だ、というが本当にそうだろうか?

まずは企業のオフィスから始めよう。統計によると、オフィスの電気は、45%がエアコン、21.3%が照明に使われている。一般的なオフィスでは、蛍光灯の上部も発光するようになっており、天井に当たって下に反射してくる光は30%だけだ。もし蛍光灯の上部の板を金属にすれば、95%の光を反射させることができる。このようにすると、オフィスの照明の質は変えずに、元の半分の蛍光灯に減らすことができる。目下、日本の5%の企業のオフィスでこの方式が採用されている。残りの95%もこのようにすれば、半分の照明電力が節約できるのだ。もし、白熱灯を蛍光灯に買えれば、さらに65%の節約ができるし、LED照明器具に変えれば、もとの10%の電力消費で済む。

次はエアコンの電力消費だ。日本でよく見られるアルミ製のブラインドは、断熱性が弱く、空気はブラインドを通り抜けてしまうため、室内外の温度差が保てない。そこで、ブラインドの後ろに木製の板を備え付けると、木の熱伝導率はアルミの1800分の1であるため、断熱性が高くなる。一日中つけているエアコンを、朝に1時間だけつけることで済み、90%近くの電力消費量を節約できる。

 

これは、日本全体の発電量の21%を占める原発が、全く不要なことを意味する

「私の友人が、屋久島のカフェで実験したところ、30分毎に5分間エアコンを止めても、その変化に気づく人は誰もいなかった」

電力消費のピークには決まりがある。一般的に、夏のウィークデイの13時から15時の間、その日の気温が32.3度を超えるときに起こるといわれている。電力会社はこの時間帯の電気代を上げることが可能だ。フランスでは、夏の電力使用ピーク時の電気代を平時の11倍に設定しており、アメリカのカリフォルニア州やイギリスでは、1時間毎に電力売価を調整することができるようになっている。もし多くの人が同じ時間帯に電気を買ったり使ったりすれば、電気代が平時の20倍にもなるという状況が発生するし、電力会社によっては対応できずにこの時間は電力供給を停止するという選択もある。東京電力の2011年の統計によると、2011年の電力消費のピーク時と、2010年のピーク時を比べると、22.5%も節約できていたそうで、節電措置が企業内に全面的に広がれば、50%の節電も十分可能だと言える。

アメリカでは、面白いやり方もある。家庭用の電線を二つに分け、一つは直接エアコンにつなぐのである。電力負荷がどんどん大きくなっていくと、電力会社は自動的にエアコンを5分間停止する。このような、電力会社とのルールを、もし20の家庭が適用したなら、1時間あまり、電力供給を緩和できる。

たとえ5分間でもエアコンを止めたらとても暑くなってしまうのでは、と心配する人もいるだろう。私の友人が、日本の南部にある屋久島のカフェで実験してみたのだが、30分ごとに5分間エアコンを止めても、その変化に気づく人は誰もいなかった。このような方法を用いて輪番で電気を止めるだけで、緩やかに電力消費ピークをコントロールすることができ、25%近くの発電所を稼動停止することができる。これは、日本全体の発電量の21%を占めている原発が、全く不要だということを意味している。

電力消費の差を小さくするために、発電を比較的低く、緩やかな変化にするというのは、世界的にみても合理的な方法だろう。日本の電力消費は、高低差が非常に大きい。しかし、一般的には一番のピーク時にあわせて発電できる体制にしているため、いつもは58%しか利用されないということになる。ドイツや北欧では72%まで利用があるので、発電所を建設するよりも節電する方がずっと良いということになるのだ。

(つづく)

 

出典:《湖湘地理》特集<知日派白書ハンドブック>(PDF)のE02

http://csnet.asia/wp-content/uploads/1fe7d4e592e0aa2c7f8248dd8459e7781.pdf

 

翻訳:三津間由佳

校正:棚田由紀子

翻訳者および校正者の所属:日中市民社会ネットワーク

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