2009/06/16 by GLI Japan

【海津歩】スワンベーカリー海津社長が語る(第2回GliPub@根津開催報告)

2009年6月5日の第2回GliPub@根津では、5月にGLIの招きで上海・南京を訪問したスワンベーカリーの海津歩社長をゲストに迎え、「日本の社会的企業がアジアにできること」をテーマに、お話を伺った。企業、NPO、医療、大学などから10数名が集った。
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Kaitsusan

1.スワンベーカリーの紹介
宅急便という全く新しいサービスを一から作り上げたヤマト運輸の故・小倉昌男が、阪神大震災をきっかけに、タカキベーカリーの協力を得 て株式会社スワンを設立したのが1998年。今、全国に26店舗、280名の障がい者(7割は知的障がい者)を雇用し、健常者と同じ給与を支払っている。 障害の重い人が入ってきても、何ヶ月かやっているうちに成長する。それがスワンの強み。

仕事の手を抜かない、むらのない単純作業や間違いさがしなどが得意、面従腹背がなく、ちゃんと人を見ているなど、障がい者のいい所は沢山ある。自分 にとっては健常者も障がい者も同じ戦力。そのために、「はじめから褒める・指示を控える」事を心がけている。仕事を単純化・細分化・パターン化してできる ことを探し、一人の人のレパートリーを増やすことで細分化によるコスト増を解決する。「パン作り→キャッシュレジスター→カフェで対人応接」と職域を広げ て行き、ひとつの仕事ができるようになったら、障がい者が障がい者に教える。教えるというのは再現性を生むのでスキルアップになる上、ダブルチェックの人 件費が浮くと同時に、本人に責任感・使命感が芽生える。

「できる・楽しい」というモチベーションが最大の経営資源。さらに、できないことを人を使ってやってもらう「たくましさ」、上手に頼める「やさし さ」を仕事以外のスキルとして学んでもらっている。短所を引き上げるのは大変だが、適材適所で長所を生かし、短所は仲間が助けるという全員経営をしてい る。6人くらいいると、ポジティブ・シンキングをする人もいれば、クリティカル・シンキングする人もいて、長所の連鎖の尻尾がからんでくる。そして忙しい 時に改善と工夫とやりがいが生まれる。やりがいが生まれるようになると、自分達で回って行く。

商品と販路の開発では、企業のアニバーサリー用や観光協会とタイアップしたお菓子、ヤマトとの提携により、アレルギー対応ケーキや、過疎地への配 達、また大学のインターンシップと連携してパン販売も行っている。他にも社会貢献事業として養護学校教師の研修、福祉作業所へのパンの卸、内閣府・芸大と のコラボ、在宅障がい者のための仕事創出などをおこなっているが、健常者がやっている仕事を分けるという発想はだめ。仕事を作って持ってきて障がい者をは めこむ。今、障がい者のいる農家の自家用無農薬野菜を障がい者が販売するという仕事も始めている。

スワンは昨年、48団体1761名の見学を受入れた。これは真似してもらうことが狙い。行動しないと事態は変わらない。変えたいと考えている人の背中を、スワンの行動を見せることで押せたらと思う。

audience

2.上海訪問
(詳細は以下のGLIサイト関連記事をご覧ください)
http://www.glinet.org/standard.asp?id=8014

最終日のセミナーの場で、以下のように総括した。
起業すること、障がい者を雇うこと、それ自体はとても簡単な事だが、大事で、大変なのは、それを持続させること。持続させ、ムーブメントを起こし、コモン センスになったらゴール。起業するには、正しい理念を持つことが必要。これがしっかりしてないとちょっと儲かったらもっと儲かるほうにいったり、儲からな かったらやめたりする。きちんとマインドセットされていれば、儲からなくてもやめないし、儲かっても適度に儲ける。理念がぶれなければ、最後までそこを見 ていくことができる。

この点はGLIや、現地共催団体のNPIの関係者も同じ印象をもっていた。かっこいいからとか、MBAの資格を持っているからとかで社会企業をやり たいという人が多いと。しかし、どこにゴールがあるのかをきっちりもっていない人の事業は夭折してしまう。社会企業として持続させていく行為の中に、力仕 事や感情のぶつかり合いといった泥臭いことがあり、それを通らずには行けない、という認識で一致した。今回、障がい者が十分にスキルフルなことは、上海で もわかってもらったと思う。やり方がわからないなら、見に来てもらえば教える。そういう国際交流はこれからもする。
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今回のGliPubには、スワン訪中のスポンサーとして同行したクリストフ・ボスキヨンさんも参加し、「最も大きなインパクトを受けたのは、南京で訪問し た耳の聞こえないお年寄りたちをサポートするコミュニティ団体。私たちはなんでもできるのに、なかなかハッピーになれないが、彼ら障がい者はたとえ何も聞 こえなくても、素直にハッピーになれる、ということ。いい勉強になった」とコメントを述べた。
Christophe
その後の質疑応答では、スワンに見学に来られる海外の方の反応や、国別の特徴などが話題になった。また、採用についての質問に、海津さんは「一番ネガティ ブイフェクトしているのは実は親。受け皿の我々がプロとして迎え撃とうというのだから、せめて働きたいという意欲を持たせる所までは親がやってほしい。 23時までの勤務の募集を1年間していたが、この派遣切りの時代に、一人も応募がなかった。つまり、自分の子どもは障がい者だから昼間の2-3時間の就労 でいいと考えている親が多い。それは、我々がコモンセンスになっていないからそういう情況がある。本当にセーフティネットで国が救済しなくてはいけない例 は別問題だが、働く意欲があったり、能力がある障がい者はいる。それを障がい者だからと蓋をしている社会が家族を含めて身近にあるので、それを変えて行く 活動をしている。実際に働くということの新たな価値感、親の意識を改革してもらうことを同時進行でしている」と答えた。

広石さんからは「それは働くことに対する理解の深さの問題で、日本全体の問題だ。障がい者でも、貧困層でも、自分達は苦労しているのだからなんとかしろ、というモードをひとつひとつ取っ払っていかなくてはならない。」と指摘があった。

また、スワンに見学に来るのが圧倒的に中国・韓国からが多いのは、欧米にスワンと似た成功事例があるからなのか、という質問に対し、広石さんは次の ように答えた。「それは日本の活動が英語化されていないことが大きな課題。ダボス会議にもサフィア・ミニーさんとアイガモ農法しか行ってなかったりする。 インターネットで検索して英語でひっかかってこないので、日本にはないと思われている。欧米と比べて遜色がない団体は沢山あるが、英語になっていない。 GLIの意味もそこ。学者も英語の発信がすくない。日本は企業の情報や交流は多いが、社会制度や市民社会のことは知られていない」

さらに、中国からの留学生が中国のNPOの人材不足をどう打破すべきかについて質問し、広石さんは「日本は中間支援機関に優秀な人が集まりすぎてい るが、中国はアクションが好きだからアクションに人やお金が行っていて、支援機関に人やお金がいっていない。 日本の場合、支援組織には行政のお金がつ く。中国はまだその意識が弱い。中国は慈善文化があるし、財団は現場にお金を落としているが、キャパビルが大切という意識が全体にひろがっていない。中国 はこれからそういう人材を巧く定着させていければいい」と答えた。
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「誰かが頑張っているのではなく、みんながそれぞれの立場で頑張って、コモンセンスにしていこう」という海津さんの呼びかけは、私の心にもずっしりと響いた。日中両国のノーマリゼーションの深化に今後も注目し、行動していきたい。

文責:松江直子

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