2012/05/16 by Matsue

弱者の足“ダイヤモンドタクシー”

2011年1月に設立された香港の社会的企業“ダイヤモンドタクシー”は、車椅子でそのまま乗降車出来るバリアフリータクシーを運営し、高齢者や身障者の為のサービスを行っている。“ダイヤモンドタクシー”は既に一部の車椅子使用者の生活必需品となっており、例えばある乗客は二日おきに“ダイヤモンドタクシー”を予約して透析の為に通院しているが、料金は毎回70元(HKD、日本円で約720円)のみで、普通のタクシーに乗り降りする際のリスクと悩みを大幅に減少させた。

しかし、“ダイヤモンドタクシー”が世に受け入れられるようになると共に、これに対する圧力も出現する。“社会的企業”に対し異論を唱える者は“ダイヤモンドタクシー”の運営、料金等について疑問を投げかけている。その中でも、「“ダイヤモンドタクシー”は低所得の車椅子使用者に恩恵をもたらす事が出来ない」という批難の声が最も目立つ。特に香港と新界の路線は越境料金が片道で少なくとも170元(約1,750円)かかり、とても低所得家庭が負担できる料金ではない。

「社会的企業というものは弱者グループを助けるものではないのか?」「何故タクシー代がダイヤモンドの様に高いのか?」筆者自身、感情的なクレーム電話を受けた事があるので、車椅子使用者家族のこのドアツードアの送迎サービスに対する期待感と、思うように使用できない大きな失望感が大変良くわかる。

〈タクシーだけが実現できる〉

“ダイヤモンドタクシー”準備期間中の3年間余り、我々は十分にデータを収集した。合法的な方法で客を乗せて報酬を得る、ドアツードアの輸送業務を経営するには、三種の許可のいずれかがあればよい事が判った。

まずタクシーの営業許可証。然し、タクシーは個人の資産であり、伝統的なタクシーの車両を車椅子の乗降に使用できるよう転用するには、タクシーのオーナーの同意・協力が必要であり、その後も一定の賃貸料がかかる。

次に特別車両営業許可証、これは政府が発行する。許可証は毎年1000元(約10,250円)必要であるが、政府は現在この許可証を発行する気がない。現在香港の復康会の傘下“易達タクシー”はこの許可証で営業しており、“ダイヤモンドタクシー”と同じく車椅子使用者が直接乗降出来るタクシーだが、最低料金は120元(約1,230円)である。

第三の許可証はハイヤーの営業許可証、一般的にホテル等の固定顧客等の使用する車両にのみ許可する。

当時“ダイヤモンドタクシー”のボランティア顧問達は極めて単純な質問をした。「あなた達の理想は何ですか?」私はその時「街中の車がこの車になり、車椅子使用者が楽にタクシーに乗れるようになる事です」と答えた。顧問達もすぐさま「タクシーなら実現出来るでしょう!」と言ってくれた。実際、現在我々の顧客数は徐々に上昇し、“ダイヤモンドタクシー”へのオーナー参加に興味を持ち、打診してくる投資家もいる。希望すればすぐに資産を持てるし、必要としている人を助ける事も出来、また一般客の商売にもなり、一挙三得だと考えているからだ。商業市場から社会問題を解決し、政府は公金を投入する必要はない、これが“ダイヤモンドタクシー”のメリットだ。

〈バリアフリータクシーは高コスト〉

しかしながら、この様な社会投資も一定のコストがかかる。ハイブリッド車である“ダイヤモンドタクシー”の車体価格は天然ガスのタクシーに比べほぼ2倍で、電気代・燃料代の支出は天然ガスの2倍以上である。更に毎回車椅子の乗降には時間がかかり予約をたくさん取る事が出来ない。

最近、“易達タクシー”は基本料金を100元から120元に値上げした。これにより多くの短距離乗客が“ダイヤモンドタクシー”に乗り換えたのかもしれない。毎月の100元以下の消費は大幅に伸びて3割増しとなったのだ。毎回の出迎え料金が比較的安い割には消費する電気代・燃料代及び時間の差はさほど大きくない為、歩合制のドライバーがコストを下げるのは難しくなり、より多くの収入を得ることは尚更大変だ。状況が悪化し、基本給を維持できなかったら、如何に生計を立てたらよいのだろうか?と心配しているドライバーもいる。

“易達タクシー”の値上げは、特別車両許可証の管理費を考慮しないとしても、ドアツードアという自家用車と同じように燃料費を消耗する出迎えサービスそのものが高コストの運営である事を示している。タクシーはまた公共交通手段として最も贅沢な選択である。然し車椅子使用者にとっては、如何なる家庭の人であれ、ドアツードアの出迎えは生活必需品である。この需要と供給の差は別の財源で補填する必要があり、“ダイヤモンドタクシー”や“易達タクシー”の運営から長期的に負担するのは不可能である。

〈低所得者サポートへの挑戦〉

最近、あるファミリーファンドが障害者団体の直接資金援助を開始し、団体メンバーの外出問題を解決した。彼らは“比較的ぜいたくなものから比較的便利”なサービスまで自由に選べるようになったと聞いたが、私はこれは新しい財源発掘の例としてとらえている。考えてみると、ファミリーファンドは数万元、ひいては数十万元を使って、ひとつのキャンペーン活動を行う事が可能であるが、しかし同額で、例えば車椅子利用者に直接ドアツードアの出迎えサービスそのものを提供し、あらゆる方法で多くの低所得者に随時そのサービスを受けられる様にした方が、実質的ではないだろうか?これによって、より一層調和のとれた社会を創る事が出来るのではないだろうか?

“ダイヤモンドタクシー”と“香港ソーシャルベンチャー基金(SVhk)は、香港中でビジネス業界、ファミリーファンド、個人投資家の寄付金等を含む新しい財源を探し続けている。そして、まだ“ダイヤモンドタクシー”のサービスを受けた事の無い車椅子利用者がバリアフリータクシーのサービスを利用出来るようになることを期待している。また、納税者の財布から集める公共財源についてであるが、これは世論が進展し、機が熟するのを待ち実質的な方策が採られるのを待つ事になるだろう。正直なところ、ビジネス業界或いは個人との協力の方が効率的であり、“ダイヤモンドタクシー”の様な私営の社会的企業は、市場効果を最大限に発揮し、持続可能な発展のモデルを実現し、同時に一般市民が共に社会の風潮を変えていくことを推進するべきなのである。

社会問題が日増しに厳しくなり、財源もますますひっ迫していく状況下で、より多くの積極的で理性的な討論と行動が必要とされている。我々はより効率的にアイディアを生かし、資源を発掘し、その効果が早く現われる様、種々の社会問題を解決していかなければならないのだ。

 

文:梁淑儀 ダイアモンドタクシーCEO

 

『社会起業家』雑誌 2011年11月号より翻訳して転載:

http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1967_134233.pdf

 

翻訳:西口友紀子

校正:松江直子

This post is also available in: 簡体中国語

Facebook Twitter 微博

CATEGOLY