2012/05/05 by Matsue

2011年度、企業によるホットなCSR事件に関する寸評集

年度末にあたり、『社会起業家』雑誌の要請を受け、明善道(Corporate Citizenship inAction。以下、CCiA)が2011年度に発生した企業によるホットな事件について、企業の社会的責任(Cooperate Social Responsibility。以下、CSR)の角度から論評する。2011年は、公益がついに公衆の視野に入っていった1年といえるだろう。そのため、企業と公益団体の協力活動がより多くの注目を集め、CSRの実践の過程は多くの人々の目にさらされることとなった。しかし、CSRの実践がそのあり方を問われることは、今後より有効なものになるために必要なことだと我々は信じている。

この1年に発生した多くの「スキャンダル」と事件のうち、9つのケースを選んで、簡単な批評を加えてみた。これらはいずれも典型的なケースといえ、今の中国のCSRの実践の現実を反映している。

無錫サンテックの「寄付の騙し取り」

中華慈善総会のサポートの元、中国教育学会、中国版権協会と中華商標協会の共同主催による中国青少年クリエイティブ・コンテストは現在までに5回開催されている。第2~5回コンテストでは、無錫サンテックがスポンサーとなった。活動実施者は、無錫サンテックの関連企業で、賞品である1,500万元相当のソーラーバッテリーも届けられていないため、自分の会社への寄付、つまり寄付金の騙し取りの疑いがあるとしている。

寸評:企業の社会公益活動への参加熱の高まり自体は良いことである。しかし、どのように良いことを、良く実践していけばよいだろうか。その中では透明性が非常に重要な鍵となり、それを確保するメカニズムの構築が求められることになる。同時に、公益活動のパートナーを選んだら、彼らを信用し、その専門スキルを発揮させるようにしなければならない。公益団体を、単に免税領収書を発行できる相手とみなし、社会への参画を自身の遊びととらえてしまうなら、社会に貢献し、社会的責任を実践しようという初心からは、ますます離れてしまうだろう。

雪花ビールが「一線を越える」

2011年、「雪花ビール・地の果てを行く・可可西里(ココシリ)挑戦プロジェクト」が10月16日にココシリで開幕した。主催者の雪花ビールは、これは環境保護活動であり、ココシリ保護区へ防寒物資を寄贈するものであると伝えた。しかし、人々から「活動は合法的なものなのか?」、「かえって現地の生態環境を破壊しているんじゃないのか?」等の疑いを引き起こすこととなった。また、2名の環境保護ボランティアがココシリに飛び、活動を遮り、勧告を出したことで、双方は一時期、一触即発の状態となった。雪花側は、ココシリの定義の違いからくる誤解だと訴えているが、ボランティア側につく多くのネット世論は雪花ビールのボイコットを行った。

寸評:ブランド促進活動が危機へと変わってしまい、「一線を越え」、複雑な問題となってしまった。我々はこの中の核心的な問題は、ココシリの定義などではなく、企業の社会参画の中でのNGOやボランティアとの交流や協力の経験の不足、そして、社会問題への取り組みに対する正しい態度ややり方への理解の不足こそが問題の本質だと考えている。良き企業市民となるには、まず協力に前向きになり、開かれたマインドでいなければならない。

アップルのもう1つの顔

2011年1月20日、環境保護団体は、「アップルのもう1つの顔」と題する重金属の調査研究の第4期報告書を発表した。調査結果によれば、アップルのサプライヤーは、環境・安全面で多くの問題を抱えており、サプライチェーンの管理には大きな欠陥が存在し、人々との信頼を損ねているとわかった。2月15日、アップルは10ヶ月間頑なな態度をとっていたが、ついに、137名の労働者がメタン中毒となった蘇州連建科技有限公司がそのサプライヤーであったことを初めて認めた。これは、メディアや各界の広い注目を集めることとなった。

寸評:どんなにアップルの製品が美しくても、アップルは環境や生産労働者に与えた傷に伴う責任から逃れることはできない。同時に、説明が必要なのは、環境保護団体とアップルコンピュータとのやりとりは、相互コミュニケーションから始まっており、抗議活動からではなかった、ということだ。非友好的で非協力的な態度は、アップルのITブランドとしてのイメージにも悪影響を及ぼすこととなった。

双匯「赤身の素」事件

3月15日(訳注:消費者権益保護の日)、CCTV315特別プログラム、《「健美豚」の真相》で、河南省南孟州等の地方の養豚場で「赤身の素(訳注:豚に与えると、肉の赤身率が高まるとされる飼料添加剤。人体に害があるとして禁止されている)」を与えられた豚が工場に流入していた濟源双匯食品会社の事件について報道された。この後、企業側から、個別のスタッフによる調達過程での検査で、しっかりと職責が果たされていなかった結果、少量の「赤身の素」投与の豚が河南濟源工場に流入してしまったとの調査結果が公開された。双匯の売り上げは大幅に低下することとなった。

寸評:中国国内最大の肉類の加工基地として、双匯「赤身の素」事件は既に企業の危機というだけでなく、中国の食品安全への警鐘ともいえる。双匯の首脳陣には、「業界世界ベスト3に向けて」といった経営戦略のみを練るだけでなく、業界の持続的な発展に立脚し、中国の消費者が本当に安心して食べ、健康を得られるようにしてくれることを望む。これができなければ、社会責任など論外である。

ConocoPhillipsの原油流出事件

6月19日、中国海洋石油(CNOOC) と米国ConocoPhillipsが協力して開発している渤海湾蓬莱19-3号油田で、原油流出事件が発生した。国家海洋局調査によれば、これはオペレーション側であるConocoPhilipsが独断で開発設計案を変更したことにより起こった事故であり、海洋環境へ重大な汚染をもたらした。河北省楽亭、山東省煙台等の漁民は、養殖していた海産品が汚染により大量に死んでしまったので、ConocoPhilipsを法廷へ提訴する予定だ。

寸評:中国の海域での原油流出事故も、海外と同じように、重大視され、巨額の賠償が得られるようになることを期待した時、我々は石油メジャーとのゲームが今始まったことを意識したが、ConocoPhilipsの傲慢さ、理不尽さはすべて我々自身の能力、知恵と圧力不足と関係があることをも思い知った。市民社会がこの事件の中でさらに大きな役割を果たし、企業にもっとスピーディに社会的な責任を担うように促すことを期待する。

ダビンチ「3つの罪」

7月10日、高額で知られるダビンチ家具の「西洋ブランド」は偽だったという疑いで告発された。同社は、中国産品をイタリア輸入品と偽っていた。メディアは、ダビンチに「3つの罪」の疑いがあるとした。すなわち、虚偽広告を行ったこと、家具製品の一部が品質不合格だったことと製品表示が基準を満たしていないことである。同社のCEOは、記者会会見で「涙ながらに」苦境を訴えたが、いっそうの疑いにさらされることとなった。年末の最終週に、ダビンチ家具は上海市工商局と「ミニブログ(微博、ウェイボー)口論合戦」を繰り広げた。

寸評:この事件を通じて、CSRは涙を信じないということが全ての人の共通認識となった。また、多くの人が偽西洋ブランドの不誠実さや一部の人の盲目的な西洋信仰傾向を厳しく批判したが、一部の人においては全ての商業環境への信頼に対する危機の感情を惹起した。誠実さこそ、CSRの魂であり、勇敢にこの責任を引き受けることこそが、企業が生きていく道なのだ。さもなければ、CSRなど存在しえず、そのような企業など存続すらできないのだ。

レノボのマイクロ公益

2011年7月18日、レノボのマイクロ公益大会が正式に開始した。レノボ青年公益ベンチャー計画の延長として、今回、レノボはミニブログ(微博・ウェイボー)のプラットホームを立ち上げ、マイクロ公益の理念を普及させ、より多くの人々の参加を実現し、草の根公益の力をより大きなものにしている。4万1千もの大会参加の応募計画案から、最終的に17のプロジェクトが選ばれ、資金支援を勝ち取った。これ以外にも、活動は520万のビジターの関心を引きつけた。羽泉、董路、宋佳等、300名以上もの有名人がマイクロブログ上で熱心に転送し、マイクロ公益の理念を宣伝した

寸評:戦略的な企業の公益プロジェクトは企業の期待を受け続けているが、実際に明確な社会目的とテーマを設定し、長期的な投資を行っている企業は少ない。イノベーティブな各種のリソースを活用し、努力し続けている企業はさらに少ない。レノボのマイクロ公益の成功は彼らが堅持している理念から来ている、すなわち「毎年、毎日、我々は進歩し続けているのだ」という理念である。

IBMの「愛の溢れる公益活動」

2011年6月16日、IBMは全世界で、「環境保護、ボランティア」をテーマとした創立百周年記念活動を催した。その中で、IBMは以下のように宣言した:スタッフ全員が、この日には会社の門を出て、コミュニティに入ってボランティア活動をし、カスタマーやビジネスパートナーと一緒に彼らの時間と専門スキルを活かして、全体で250万時間のボランティアサービスを提供する。この活動では全世界120カ国以上の国や地域の5000以上のプロジェクトに対し、支援サービスを提供するのだ。

寸評:IBMの戦略目標は「グローバル市民」となることである。このため、彼らは全てのスタッフが専門スキルを用いて積極的にコミュニティ活動に参加し、市民としての責任を実践する存在となることを望んでいる。「愛の溢れる公益活動」は意義ある企画であり、基盤事業の永続化を目指す中国企業としても学ぶ価値あるものである。ボランティアは市民社会の基盤であり、企業が社会へ参画するための重要な方式の1つでもある。どのように企業ボランティアに最初の推進力を与えるのか、どのように彼らを社会に向かわせ、持続的にプロジェクトを展開させるのか、それがCSR部門の主要な任務となるだろう。

オリンパスの粉飾決算

日本のデジタルカメラ製造会社のオリンパスは、12月20日、過去20年にわたって、ほかの企業を買収し、法外なコンサルタント費用を支払うという方法で決算を行い、証券投資の損失を隠そうとしたことを認めた。この不祥事は、こうした取引における謎のベールを明かしたのみならず、過去数週間の取引に対する弁解をも完全に覆したため、オリンパスの株価はストップ安まできり下がった。

寸評:オリンパスは、多くのCSRランキングで受賞したこともある企業で、「Social IN(訳注:社会の価値を会社の中に取り入れる―Social Value In the Companyという意味の造語)」という経営理念はもてはやされたこともある。しかし、積極的な社会参画は粉飾隠しの現実を隠せるわけもない。営利能力はCSRの「3つのボトムライン(訳注:経済的・社会的・環境的側面)」の1つであるのみならず、CSRを実践する前提でもある。まさに、営利無き者に責任無し、といえるだろう。

 

文:明善道(北京)管理顧問有限公司 趙坤寧

翻訳:土居健市

校正:松江直子

This post is also available in: 簡体中国語

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