2012/04/28 by Matsue

愛と希望

2008年、金融危機でどんよりとした空気の漂う香港で、中南集団は、「香港はひとつの家」という理念に基づき、今回の経済的逆境のなか、「綿徳社会利益企業」(L plus H Community Interest Company。以下、「綿徳社利」)を設立し、社会サービス事業を積極的に推進することとなった。

綿徳社会利益企業がはじめに進めた二大プロジェクトのひとつは、「綿徳服装有限公司」(L plus H fashion Ltd.)の設立である。これは、錦徳社利が公益活動に熱心な実業家と専門家たちを集め、投資して設立したもので、社会のために就業機会を創出し、専門人材を育成して、「メイド・イン・ホンコン」のファッションを再興しようというものである。また、これと同時にはじめたもうひとつのプロジェクトが、他の慈善団体及び実力のある教育家とともに組織した「幼吾幼慈善基金」である。これは、暮らし向きが苦しい家庭の小学生に対して、学校の成績と人徳の向上を助けよういうものである。

「メイド・イン・ホンコン」の再興

綿徳社利の実業家のステークホルダーは、工業は今なお香港の重要な経済産業だと考えている。各産業は、生産活動こそ境外で行われているものの、いまだ貿易や物流、金融、情報の発展の主要な原動力である。

服飾産業は、長きにわたり衰えを見せない業種である。欧米や日本の流行ファッションの生産能力が低下するにつれて、中華圏は今や、世界中で最も中心的な紡績及び衣服の生産・販売エリアとなっている。そして、香港の衣服製造業には半世紀を越えて築かれた基礎があり、さらに、多くの有名な高級ブランドの服の購買センターでもある。このため、香港で生産された高級毛織物製品には大きな発展の余地がある。現在、綿徳の産品の販売エリアは、香港と海外市場となっているほか、「本土―香港間における経済貿易緊密化協定」(CEPA)により中国本土にも出荷されている。

綿徳社利は、プロジェクトの実施と経営にあたり、3つの指導原則を堅持している。すなわち、「取って代わらない」、「品質本位」、「社会的な目標」という3つの原則である。新プロジェクトを立ち上げる、あるいは実行する際、競争が起こることで、就業機会を生み出す一方で失業も生み出し、既存の業種に不利が生じてしまうことのないよう、当地に既に存在する業種やモデルに取って代わることは避けるようにしている。綿徳は、企業の持続可能な発展の実現は、製品やサービスに市場があるかにかかっていることをよく知っている。高いクオリティとたゆまぬ進歩があってこそ成功できるのである。しかし、社利企業は、社会的責任を目標としている以上、株主の利益よりも社会的利益に重点を置いている。企業自らが先んじて一切の模範を示そうと、綿徳は国際貿易の「憲章遵守」(労働者の権益保護、環境保護、クオリティコントロール、貿易取り決め)を履行し、社会的責任の国際的な認証組織の承認を得て経営を行っている。

品質本位

綿徳の経営は、現代的な工場として、財務や業務、工場業務の展開だけにとらわれることなく、「買い手市場」主導の受託製造(Original Equipment Manufacturing-OEM)という伝統的な経営モデルから、「売り手市場」が推し進める受託設計・製造(Original Development Manufacturing-ODM)という進取的な経営戦略へと転換しようとしており、買い手のブランドのデザインのために技術開発サービスを提供し、生産製造を行うことを重点業務としている。綿徳は、現代的な工業工程を採用しており、製品開発や織物技術、クオリティコントロールなどから成る技術工程を主とし、データ収集および分析、生産量コントロールなどから成る生産管理を要として、最高の生産業績をあげている。

毛織物衣料製造という業種は、半分資本集約的であり、半分労働集約的でもある。綿徳は、2009年に屯門で工場を設立し、建屋および設備の投資にあたって多くの同業者のサポートと賛助を得た。これにより、工場には最新の設備があるが、もっとも良い設備は加工用の工具のみで、製品化の技術とその品質については、今でも人の手による作業が欠かせない。このため、綿徳は工員を採用するときに、志があり、この業種の仕事と発展に身を投げだせ、仕事に積極的に取り組める人を選抜している。というのも、企業の生命力は、従業員の頑張りで製品とサービスが市場を獲得できるかどうかにかかっているからだ。

綿徳は、さらに発展した自社ブランド製品製造(Original Brand Manufacturing-OBM)も始めた。毎シーズン、地元の隠れた優秀なデザイナーを招き、カシミヤや超極細羊毛、シルクといった最高級の織物糸を使って流行の洋服をデザインし、自身の工場の経験豊富な革製品の技能者の腕とのコラボレーションにより、手袋やベルトなどの革製品を作る。そして、中環にあるL plus Hの専売店で販売するのだ。Love + Hopeブランドは、多くの顧客にとって、世界的ブランドにもひけをとらない緻密なファッションや革製品のブランドとして印象に残っているだけではなく、「香港はひとつの家」に関わる社会的利益のイメージを連想させるものとなっている。

経営モデル

綿徳社利の独資企業である綿徳時装有限公司の経営モデルは、イギリスの社利企業(Community Interest Company)の概念を参考にしたものだ。企業の資産は、一般的な企業のように自由に処分できるものではなく、企業内部に留保しておくか、他の社利企業、他の社会的用途に譲渡できるのみである。利益の大半についても、社会的用途のために保留しておかねばならず、株主の配当に充てられるのはごく一部である。

社利企業は、利益追求というビジネスの特徴を有している必要がある。これは、雇用したスタッフに合理的な待遇を提供し、企業が自身の力で経営と発展をしていくために必要であり、利益が多ければ多いほど、より多くの発展プロジェクトに投入できる資源が手に入る。

伝統的な考え方では、スタッフは企業の「コスト」支払いとしてみられるが、知識経済・情報技術の時代においては、人材という資本の発展は、人材自身と社会的経済的効果によって体現されなければならない。綿徳は、工場の環境が整理整頓され清潔であることを重視し、工場労働が劣った嫌なものであるという社会の観念を払拭している。スタッフには、業界のベテランから新参者まで様々な学歴の人がいるが、各人が自身の長所をいかんなく発揮し、人を喜ばせるブランドファッションを作り出せることに誇りを持っている。

企業文化を深めるには関係者のリーダーシップと実行力が必要で、ナレッジマネジメントにより企業戦略を遂行し、ビジネスを発展させることになる。同時に、スタッフが意気投合し、チーム意識を持って価値を高め続けていくことが、企業の核心的な価値である。これによって企業が永続力と競争力を備えることができるようになり、そうして初めて全ての関係者のビジョンとゴール、そして社会的責任の達成を果たすことができるのだ。

 

特約寄稿:昊秉堅 錦徳服装有限公司理事兼CTO

出典:『社会起業家』雑誌2011年11月号

http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1967_134233.pdf

翻訳:三浦祐介

校正:松江直子

 


 

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