2012/04/02 by Fancy

屋久島コラム12:年度報告書

年度末を迎えるに当たって、屋久島プロジェクトの一年間を振り返りんがら実感したのは、本当にたくさんの方々からご協力をいただいたからこそ、いろんな貴重な体験と交流ができたことです。今まで、参加者からの報告を紹介してきましたが、最後は箇条書きを用いてこの一年間の収穫をまとめてみたいと思います。詳しい内容については、ぜひ過去の記事をご参考いただければ幸いです。どうぞ宜しくお願いします。

1、 テーマ:自然共生型社会の実現に向けて――東アジアの人的・知的ネットワークの形成
2、実施期間: 2011年4月1日 から2010年3月31日
3、実施国・都市:中国(上海・雲南)、日本(屋久島)
4、事業内容

1)、イベントとツアー
交流会を2回、フォーラムを1回、ツアーを3回行った。

  • プロジェクト始動記念サロンin上海(2011年4月)

4月27日に、小規模な記念サロンを上海で開いた。環境NGO、出版関係者、日本観光局上海事務所の担当者、旅行愛好者など20数人が参加した。屋久島プロジェクトの紹介、震災・原発事故後の日本観光やエコツーリズムに関する議論、震災ボランティア活動の報告などを行った。

成果と教訓

●中国側カウンターパート(世界遺産研究者・王国慧氏、旅行雑誌編集長・李攀氏)の協力を得て、初めてのイベントを成功に実施できた。
● 参加者は積極的に議論にかかわってくれた。「自然を征服するのではなく、自然を尊重し理解することが重要で、人間はもっと謙虚にならなくてはいけない」、「エコツーリズムの導入と地域固有文化の保護が必要」など興味深い発言があった。
●この時点では担当者はまだ屋久島に行ったことがなかったので、ネットから集めた資料しか参加者に提供できなかった。

  •  屋久島プロジェクト視察ツアー(2011年6月)

10月のフォーラムに向けて、中国側のカウンターパートと5泊6日の屋久島視察を実施。屋久島在住の環境保護活動家や芸術家、もと行政関係者と会談し、島の歴史、文化、自然環境について体験学習を行った。

成果と教訓

●屋久島環境運動のキーパーソン等、自然の中で生き生きと活動している方たちから、屋久島の「人と自然」にまつわる歴史と現状を学ぶことができた。
●有名な観光スポットではなく、ここの住民しか知らない、屋久島本来の姿が見られる場所に案内してもらえた。このため、プロジェクト関係者の屋久島に対する印象は、「有名な観光地」から「人々の生活が見える自然の豊かな場所」に変わった。
●視察の直前に縄文杉「入山規制」の議案が否決された。縄文杉が象徴する「一極集中」問題がますます顕在化し、このプロジェクトにおいても観光局とのかかわりや雑誌宣伝を控えることになった。

  • 雲南三江併流地域視察ツアー(2011年8月)

屋久島プロジェクト関係者が雲南省の昆明、シャングリラ、梅里雪山及び白馬雪山自然保護区を訪れ、現地の環境専門家及び実践家と交流した。

成果と教訓

●ゴミ問題が熱く議論された(梅里雪山のゴミ問題と屋久島のゴミ処理)
●共通する原生林伐採の歴史(白馬雪山は昔牧場を開設するために原生林を焼き払い、屋久島でも明治時代から森林開発が始まった)への認識が深まった。
●文化交流:陶芸(屋久島の陶芸家山下正行さんを含む日本訪問団は雲南の黒陶の窯元を訪ね、交流を行った)
●保護区の自然資源と地域住民の関係は興味深い:養蜂、松茸の採取
●白馬雪山自然保護区のスタッフは情熱的で純粋な人が多い。知識も経験も豊富だが、ガイドのスキルは持っていない。人材育成は必要。
● 白馬雪山自然保護区の体験プログラムでチベット族の牧民と交流し、歌でコミュニティケーションをとる経験をした。
●小林尚礼著『梅里雪山-17人の友を探して』との出会い。人と自然との関係に関する思想について考えさせられるものが多い。
●反省:高度順応(高山病)に関して準備不足だった。

  •  屋久島雲南フォーラム(2011年10月)

中国から7名の参加者が屋久島を訪問、交流フォーラムで日中双方が各自の活動について発表し、議論を交わした、その後はゴミ処理場を見学、エコツアーを体験した。

成果と教訓

●参加者は屋久島原生林伐採の歴史を知り、原生林保全のためには、地域全体の環境意識を向上させるのが重要だと感じた。
●参加者はゴミの分別や処理に興味津々だった。ゴミ問題は今後の課題の一つとして捉える必要がある。
●参加者は屋久杉自然館や屋久島世界遺産センターの展示の仕方に興味を示した。
●ホスト側の心を持ったおもてなしに参加者一同は感動。今後の更なる交流にとってもっとも重要である心の絆が生まれた。ここでも歌は重要な役割を果たした。
●反省:日程の変更でフォーラムはツアー初日に開催されることになったため、初めて屋久島に訪れた参加者にとってはやや難しい内容となった。

  • 屋久島コラムとメルマガ記事

2012年3月末まで、屋久島プロジェクトの特集コラムの記事は、今回の報告書を含めて合計日本語12本、中国語11本をCSネットウェブサイトに掲載し、メルマガ記事は日本語・中国語とも10本を発信した。両国の読者の関心点に応じて、異なるテーマを提供することを心がけた。

予定されていたメルマガをツールとした日中関係者の議論は、投稿が少なかったため、ほとんど実現できなかった。来年度はもっと有効な方法を考えなければならない。

5、事業評価
(1)自己評価
●実施状況:プログラム実施の日程や一部の参加者が途中に予定を変更したことなどアクシデントがあったが、計画されたイベントはすべて実施できた。
計画書にあった学習広報パンフレットを作成しなかったのは、主に日本側からエコツーリズムに関する報道の仕方の見直しが提案され、広報よりまず関係者の間で十分に議論し合意を得ることが最優先とされたためだった。
●目標達成度:日本と中国のカウンターパートの間では深く交流ができて、強い絆が生まれたと思う。議論はまだ初歩的な相互理解にとどまっているが、課題と経験の共有によって、共感が生まれ、長期的な協力関係を結ぶ意欲を確認できた。
(2)参加者からの反響・意見:
●Winrock農業発展センター:自然共生の理念やお互いの基本的な状況について理解しあい、心をつなぐことができた。来年はそれに基づいて、より深く議論する場として、例えば2日間のワークショップを雲南省で開催してほしい。自然学校やエコツーリズムの専門家を白馬雪山に招き、エコツアープログラムの作り方と運営、ガイドやインタープリター育成について、講義を行ってほしい。さらに、このネットワークを通じて、あらゆる交流をすることも可能であり期待している。
●白馬雪山自然保護区:屋久島の人は情熱的でホスピタリティ精神を持っている。彼らの熱意に深く感動し、今までの日本人に対する見方を心から変えることができた。彼らのことをとても尊敬している。
●世界遺産研究者王さん:屋久島と白馬雪山はそれぞれ課題を抱えていて、一回二回交流したからといってすぐに問題を解決できないかもしれないが、人と人のつながりができたことによって、元々孤独に問題と戦っている人々が一緒になって、経験と知恵を共有し、問題解決に対する自信を強めることができた。
●屋久島ウミガメ館の大牟田さんや陶芸家の山下さんは、中国からのボランティアツアーへの協力など、更なる交流と連携について協力的な姿勢を見せてくれた。屋久島野外活動総合センターの大原さんは白馬雪山を訪問希望。

(3)反省事項
●スケジュールの組み方
担当者や関係者が屋久島を視察する前に、スタート記念サロンを上海で実施した。実体験をせずに、ネットや雑誌から収集した資料とデータしか提供できなかったため、屋久島に関する紹介や問題提起は内容が浅かった。プラスアルファとして行った被災地ボランティア活動報告は、実体験だからこその説得力があり、参加者から好評を受けた。今後は、発信するまえに、十分に理解・準備できているかどうかに気をつけなければならない。
●ビザ申請
中国参加者のビザ申請手続きは、予測が甘く、いろんなトラブルが発生した。中国では10月1日から一週間の国慶節連休があったため、ビザの受理期間が足りなくなった。参加者の努力と関係者の協力のおかげで、最終的には無事に実施できたが、かなりの時間とエネルギーが費やされた。実施計画も一部変更となった。
●プログラムの優先順位
10月の屋久島雲南交流フォーラムは、中国からの参加者が到着した翌日に行われたため、初めて屋久島を訪れた参加者にとって、日本側の発表はやや難しい内容となり、議論に積極的に参加できなかった。今後は、プログラムを組むときに、気をつけなければならない。
●助成金の使い方
今回のプロジェクトでは、主催者が選んだ参加者に対しては全額助成としたが、参加者のモチベーションを高め、助成金をより有効に利用するため、今後は参加費について、非営利組織に対しては一部負担を、営利組織に対しては全額負担を要請する。さらに、Windrockのような外部の支援者を積極的に巻き込み、影響を拡大する必要がある。
●メルマガ
メルマガにおける質問応答は実現できなかった。不特定多数に対する発信に応答を求めるのは難しい。深く議論するために、プロジェクト専用の情報共有システムを設置する必要がある。
●高山病への対応
8月に実施した雲南ツアーでは、リスクマネジメントをしっかりできていなかったため、参加者が高山病で途中に脱退することが起きた。ツアーの効果に影響が及んだだけではなく、参加者に大変な思いをさせてしまった。自然とかかわる事業を担当するものとして猛省し、自然の前で、謙虚にならなければならないと肝に銘じた。自然を理解し尊重したうえで、行動するべきである。

7、主要な参加者・協力団体

①    大牟田一美 NPO法人 屋久島うみがめ館代表
②    小原比呂志 有限会社 屋久島野外活動総合センター取締役企画部長
③    柴鐵生 元上屋久町議会議長
④    日高豊伸 元屋久町役場環境政策課長
⑤    山下正行 屋久島在住陶芸家
⑥    星川加代子 屋久島在住芸術家
⑦    広瀬敏通  NPO法人日本エコツーリズムセンター代表理事
⑧    星川淳 act beyond trust事務局長
⑨    王国慧 世界遺産研究者、フリーライター
⑩    李攀 元旅行雑誌『携程自由行』編集長
⑪    馬建忠 雲南省林業科学院副研究員、Winrock国際農業開発センター中国環境プロジェクト担当者
⑫    李静若 Winrock国際農業開発センター環境保護プロジェクト担当
⑬    姜 川 アメリカ大自然保護協会(TNC)中国部門国立公園エコツーリズム及び地域発展プロジェクトチームメンバー
⑭    肖 林 雲南省白馬雪山国家自然保護区管理局徳欽局局長
⑮    雲南省白馬雪山国家自然保護区管理局徳欽局局長
⑯    斯那此里 白馬雪山国家級自然保護区徳欽分局事業部部長
⑰    提 布 白馬雪山国家級自然保護区生態定位監測ステーション責任者
⑱    于暁剛 NGO緑色流域創設者
⑲    陳飆 雲南大学旅行研究所研究員

協力団体
①    屋久島環境文化村センター
②    屋久島環境文化研修センター
③    屋久杉自然館
④    種子屋久農業協同組合 堆肥センター
⑤    屋久島クリーンサポートセンター
⑥    日本観光局上海事務所
⑦    白馬雪山国家級自然保護区
⑧    雲南省林業科学院
⑨    Winrock国際農業開発センター
⑩    上海非営利組織発展センター(NPI)
⑪    上海オアシス生態保護センター
⑫    上海野鳥の会
⑬    夢田エコファーム
⑭    上海楊浦区雷励青年公益発展センター
⑮    環境雑誌『炭商』

以上の主要メンバーをはじめ、今まで屋久島プロジェクトをご支援・ご注目くださったすべての方々に感謝を申し上げます。2012年も「自然共生型地域づくり」をテーマに、皆様と一緒に考えて活動していきたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくお願いします。

文:屋久子

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