2012/03/30 by Matsue

「城中村」改造

急速に拡大する中国の都市の内側には、さまざまなひずみを抱えた「村」が点在していますが、それも次第に消えゆく運命のようです。宮崎さんがご自宅の周りの状況をレポートしてくださいました。

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私たちが北京のこの地に住みだして10年近くになろうとしています。位置的には北京の北西郊外に位置し、円明園など、昔の皇族の避暑地の近くです。当初、周囲はマンション建築ブームが始まったばかりで、道路も舗装されておらず、麦畑などが付近に残っていましたが、今やあちこちに住宅地ができ、ショッピングモールもできて、すっかり様子が変わりました。

中国の住宅は、都心部では高層マンションもありますが、郊外では広い敷地に十棟を超える規模で、6階建て程度の低層マンションがぎっしりと並んでいることが多いです。そして、その敷地がぐるりと壁で囲まれており、私のマンションでも、壁のすぐとなりには出稼ぎの人々が住んでいる薄暗い貧相な平屋が並んでいます。

このように、以前は「村の中の城」(城:中国語では町、都会の意味)であったのが、いまは「城中村」、つまり都市化された地域に一部村の様相が入り混じった光景となっています。正確に言うと、以前からの農村部の住民が農業をせず居住しつつ、その土地に簡易な家屋を建設し、出稼ぎの人々がそれらから住居を借りて暮らし、スラム的様相を呈した区域が「城中村」と呼ばれています。

写真1:自宅から見たとなりの「城中村」(向こうに見えるマンションとの間の灰色の建物)

写真2:私の住むマンション群ととなりの「城中村」

農村部の人口が全人口の半分以上を占め、農村からの出稼ぎ人口が2.4億人と言われる中国、住宅購入当時はこのような環境のほうが中国の真実の姿を感じられるとプラスに考えていたのですが、実際住んでみると、こういう「おとなりさん」がいると困ることも。多くが出稼ぎに来た人で、都市の管理システムに組み入れられておらず、ごみはそのへんに捨てっぱなし、燃料は石炭を使うため、夕方以降は煙くさくて窓が開けられない。人口の流動性が激しく、治安的にも不安定。

写真3:マンション近くの空き地に捨てられた付近の「城中村」住民などからのごみ

このような状況に困惑しているのは、私一人ではないようで、現在、中国では「城中村改造」と言われるプロジェクトが行われています。現在の「城中村」居住者をすべて立ち退かせ、家屋をすべて撤去し、新たに「都市的」な街づくりをするというものです。立ち退き対象となった人々には政府が建設したマンションの家が補償として与えられます。ただし、これは家屋を所有している人対象であり、出稼ぎで借家生活の人は別のところで住まいを探すしかありませんが。

写真4:立ち退きのために壊される家屋(我が家のマンション区のすぐ裏手)

写真5:建設中の立ち退き補償としての移住先マンション(直線距離で5kmほど離れた頤和園そばの村の移住先。頤和園の景観・環境整備のため移住。)

写真6:同上立ち退き先の工事現場前に掲げられるスローガン①「農民の主体的役割を発揮させ、美しい新たなホームタウンの建設を」

写真7:同上立ち退き先の工事現場前に掲げられるスローガン②「新たな村の建設に身を投じ、文明的市民になろう」

ちなみに、私の家のすぐ近くで行われる「城中村改造」プロジェクトでの土地の使用権は北京大学に譲渡されているとかで、立ち退き後の敷地にはその職員宿舎が建設されるようです。

立ち退きと取り壊しも始まっていますが、その奥に位置するわがマンション区のとなりの「城中村」はまだ立ち退きが進んでいないのかと思いきや、壁の外ではこれまでの貧相な平屋がさら地になり、新しく二階建ての建物でも建設するらしく、レンガが積まれていました。おそらく補償金を多くもらうための対策でしょう。これはどこの立ち退きプロジェクトでも行われている「立ち退き料対策」のようです。さすがは「上に政策あれば、下に対策あり」の国、たくましいです。

写真8:マンションとなりの「城中村」では「立ち退き料増大に向けた二階建て建設」が

このように、今私の住まいのまわりは建設ラッシュです。私自身は安心して快適に過ごせる環境を望む反面、立ち退きに遭った人たちが以前の平屋立ての家屋からマンション暮らしになって、すぐに馴染めるのかどうか、また、立ち退きにあった出稼ぎの人たちはどこへ行くのだろうと、思いをめぐらせたりしています。

文と写真 宮崎いずみ

 

 

 

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