2012/02/29 by Matsue

史上最低の点数でハーバードの入試を突破した中国人学生

過酷な受験競争が長年続いている中国、アメリカの大学への留学熱も高まる一方とか。しかし、名門中の名門、ハーバード大学が選ぶ学生は、点数が高い人というより、むしろ個性的な人のようです。以下は「NGO発展交流ネット」ウェブサイト記事からの抄訳です。
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中国の大学受験に失敗した学生がハーバードに合格し、北京市の大学共通受験で理系のトップだった学生はアメリカの11大学に受からなかった。

合格した学生を指導したのは、馬振翼さんという台湾系アメリカ人で、10年前にアメリカで高校生向けの受験支援組織を立ち上げた。また2009年には、北京や深センなどに拠点を作って、数千人の学生をアメリカの有名大学に送り込んできた。馬さんはこれまで、アメリカの大学が将来有望な人材を選抜するためのシステムを解読し続けてきたのだという。

「中国本土から来た学生の受験コンサルティングをしていて一番困るのが、彼らが自分の考えってものを持っていないことです」と馬さんは言う。「“そんな所です”、“適当に”、“まあいいんじゃないですか”、彼らが質問に答える時、口から出るのはこうした何種類かの言葉ばかりで、お話にならない。なぜアメリカの大学に行きたいのか聞いても、「あっちは教育も先進的で、技術も発達しているので、しっかり学んで祖国に報いたい」とか、「将来はウォール街で証券アナリストになりたい」とか、親に行けと言われたとか、みんな行くから、など……。

「彼らの志ってものが、見えないんですよ。心の声が聞こえない」100人面接すると、80人以上の学生が、自分が本当に必要としているものは何か、何をしたいのか、がわかっていない、と。

そんな中、寧夏回族自治区の銀川から来た男子学生が、馬さんを喜ばせた。

彼の名は楊。北京で馬さんに初めて会った時、楊君はすでに高校を卒業して1年近く経っていたが、大学生ではなかった。エンジニアをしている父は、息子がアメリカのトップ30校のどこかに入ってくれれば御の字だと思っている。

楊君は、みかけはごく普通だが、とても明るく、表現力が豊かだ。経歴からしておもしろい。農村出身で、7歳以前は砂漠に住んでおり、幼いころの記憶に残る空は、いつも黄色かったそうだ。普通の高校生のように毎日受験勉強に明け暮れるのではなく、楊君が夢中になってやっていたのは、NGO活動だ。

彼には世界を動かす力がある

楊君は仲間とともに集めた五万冊の本と15台のパソコンを、18か所の農村の小学校に寄贈した。また、辺境の小学校で英語・パソコン・音楽などを教える短期の教育ボランティアを募集するため、大学にも出向き、多い時には100名あまりのボランティアを集めたこともある。既存のいくつか公益団体のやり方が気に入らず、自分でNGOを作ってしまった。

そのNGO活動の中心は、現地の公益リソースを集めたウェブサイトだ。稼働可能なボランティアの人材情報や、パソコン・書籍・冬物衣料などの物資情報をサイトに掲載してそれらを必要としているNGOに自由に利用してもらう。つまりリソース共有の場だ。すでに200ほどのNGOが会員だという。現在、彼らは、辺境に住む学生がネットを使って優れた教育資源を利用できるよう、遠隔教育事業をおこなっている。

楊君はまた、高校卒業後に一人でチベットに行き、遊牧民と半年過ごしたそうだ。アメリカの大学で何をやりたいのかをきくと、彼はこう答えた。「中国は改革開放30年というけれど、東部沿海地区の人ばかり豊かになっている。僕は無力で何もできないと感じるけど、もしアメリカで勉強できるなら、経済学を学びたい。優れた知識と理論を学んで、将来故郷を変える」

楊君の答えを聞いて、馬さんは満足した。「中国の親は、アメリカの一流大学の入試合格基準はどうなっているんだときくけど、そんな決まったものはないんですよ。しいて言えば、“将来世界を変えることができる人、その潜在能力のある人”です」

「楊君の中に、私はそういった能力を見出しました。彼には自分の考えと情熱があり、それが彼の魅力です。これから私がやるべきことは、彼をプロデュースしてパッケージングすることではなく、宝石の原石を磨いて光らせるように、彼の中から光るものを見つけ、引き出すことなのです」

しかし、楊君の試験成績は振るわなかった。SAT(入試)の点数は2400点満点で2000点ちょっと。面接試験は北京で行われ、終了時に面接官は笑いながらこう言った。「もし君が合格したら、君はハーバード始まって以来最も入試点数の低い中国人学生だね」と。
果たして楊君はハーバードの経済学部に入学を許され、奨学金も与えられることになった。

SATで満点を取っても落とされる

メディアによれば、プリンストン大学は、SATが満点に近い受験生のうち半分以上を落としたという。ほかの有名大学も同様で、馬さんによれば、ハーバード入学生のSAT平均点数は2250点、公立で一番のカリフォルニア大バークレー校でも2050-2300点だ。SATで予測できるのは、入学後の1学期の成績だけで、将来の成功とは何の因果関係もないという。
馬さんによれば、アメリカの大学入試は3つの側面から学生を見る。ひとつはSATと高校での平均成績、ふたつめは学生が自分で書いた志望理由書、三つめは課外活動だ。成績が良いだけでは駄目で、アピール力があるとか、多芸多才、特殊な課外活動など人に強い印象を残す学生がよいとされる。独自の夢や経歴、またスポーツ、クラブ活動、サマーキャンプ、研究活動、実習、ボランティア、旅行、試合、趣味(ショッピング・ゲーム・音楽鑑賞でも可)などの経験が重視される。

「若者にとって最大の課題は、自分と向き合うことです。自分は何が好きなのか、何をしたいのか。好きなことをして、努力と継続を怠らなければ、成功は向こうからやってきます」と馬さんは言う。

大学入試で何がわかるか

馬さんが台湾で小学校に通っていたころ、教師の体罰は許されていた。勉強をさぼったり、字を間違えたりすると、藤の枝で手のひらをぴしゃりと叩かれた。馬さんは叩かれないで済んだ週はなく、ある男性教師に「おまえはいままで私が教えた学生のうちで、もっとも馬鹿だ」と言われたことで、すっかり自信をなくしてしまった。

アメリカで学校に通うようになっても、馬さんはぱっとしない学生で遊んでばかりいたが、高校2年の時、数学を教える白人の女性教師に出会った。

「彼女は非常に辛抱強く、母親のように私を案じてくれました。彼女の授業ではしょっちゅう褒められていたので、私は数学が好きになりました。テストも毎回満点で、先生は私に上の学年の数学の先生を紹介してくれ、それも終わってしまったので、家の近くのバークレー校の数学と物理を聞きに行くようになり、入試もすんなり通りました」

大学入試の願書を出す時、数学と物理以外の馬さんの成績はとても悪かったが、数学と物理の天分を認められて合格したのだ。

「あの女性教師が私に自信を与え、私を変えてくれたのです。もし彼女に会わなかったら、私はいまだにうろうろしていたでしょう。良い教師は、学生の潜在能力を引き出します。半年に一人の学生でも啓発することができたら、成功です。若い時に学んだ知識は忘れてしまうかもしれませんが、啓発や感動、夢は一生あなたに影響を与え続けます」

どんな教育が「よい教育」か

自らの勉強と、教師として教えた経験から、馬さんが得た結論はこうだ。
「教育の重点は、人を啓発すること」

ここ数年、馬さんはアメリカと中国を行き来し、数万人の学生と会ってきたが、両国の学生の最大の違いは、中国の学生には夢がないことだという。 アメリカの教育は、小さなころから自分を見つけるよう教える。自分の意見を持ち、思いきって実行するよう子供を励ます。自分で考えたり、やったりしたことに十分努力をしたならば、かならず何かを得られる、と教える文化だ。 翻って中国の教育は、夢とは何かを理解する空間を与えない。

「入試合格があなたの夢ですか? でも入試では点数以外に、あなたが何者で、何がほしくて、何をしたくて、どんな夢を持っているのか、なんてわかりませんよね。夢なくして、真に人間らしい人間になれますか? 夢なくして、中国にジョブスは生まれるのでしょうか?」

原文:http://www.ngocn.net/?action-viewnews-itemid-82395

抄訳:松江直子

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