2011/11/01 by Matsue

雲南-屋久島自然共生型社会交流会

 

作者:王国慧
開催日時:2011年8月23日午後
場所:雲南林業科学院会議室

背景:
晩夏を迎えた8月、日本の屋久島から中国の雲南西北部へと場所を移し、「人と自然の共生型」社会に関する中日交流プロジェクトの雲南視察旅行が正式に始まった。7日間の日程の中で、私たちのエコツアー体験団(4名の日本の友人と上海から来た学者およびマスコミ関係者を含む)と、雲南で環境保護や社会発展、エコツアー分野の新規事業に精力を注ぐ各界の友人は、民間レベルでの協力ネットワークを創設し、「建設と自然共生型社会」に関する業務経験を共有、検討することが可能かどうかについて、ともに話し合った。また、白馬雪山国家雲南コバナテングザル自然保護区の奥深くに分け入り、4日間のエコツアープロジェクト視察を実施した。

開幕:
今回の雲南北西部エコツアー視察の開幕イベントとして、私たちの「雲南-屋久島自然共生型社会交流会」が、昆明の北部郊外の林の中にある雲南林業科学院で開かれた。
会に参加した友人は、Act beyond trust創始者であり日本の著名な作家でもある星川淳氏と、その夫人の星川加代子氏、屋久島在住の陶芸家、山下正行氏、CSネット事務局長の朱恵雯氏、上海出身の世界遺産研究者・フリーライターの王国慧氏、古参のメディア関係者の李攀氏、雲南のWinrock農業発展センターのプロジェクト職員である馬建忠氏と李静若氏、緑色流域の于暁剛先生と揚雲楓氏、雲南大学旅行学院の陳飆博士、グローバル人文地理雑誌社の姜川氏、そして雲南林科学院の多くの情熱あふれる友人たちである。

プロジェクトの由来:
「私は今日、はじめて雲南に来ることができ、とても嬉しいです。」プロジェクトの発起人として星川さんは、そう言った。「壁にかかった中国語の書道を見て、ますます親しみを感じました。翻訳をしなくとも8割方、9割方は理解でき、東アジアの文化には共通点と、そのしっかりとした源流があることが分かります。そこで思うのは、ともに環境と平和に関する新旧の経験を交わし、ともに西欧とは異なる『人と自然の共生』の発展に関する経験について考えるということに、私たちはもっと自信を持つべきだということです。日本の著名な作家、そして翻訳家として、星川氏は、日本社会における環境保護の分野で重要な人物でもある。20年も前から、彼は創作活動を通じて、環境と平和を守ることを自信の生涯の仕事としようと志を立てた。「日本が第二次世界大戦中に犯した行為は東アジアの諸民族に深い災難と苦痛をもたらしました。私は、自分たちの世代の努力を通じて、そして誠意ある民間レベルでの交流を通じて、人々の心のきずなを繕い、修復したいと思っています」。彼は感情を込めて話した。

星川加代子氏も、屋久島プロジェクトの発端と、プロジェクトに対する期待を強調した。昨今の北朝鮮の核兵器危機、日本・福島の原子力発電所における放射能漏えいに関する危機、そして馬尾島における米軍の新しい基地の拡張に関する脅威によって、屋久島で30年間暮らしてきたこの芸術家は、原子力発電による危害と東アジアの民間レベルの協力の必要性について、特別の関心を抱くようになった。また、これと同時に、日本のエコツアーを代表する場所としての屋久島も、繁栄の背後にある困惑に今まさに直面している。例えば、観光業による特定の観光資源への集中的な宣伝行為や単一的な開発は、島に暮らす住民と自然のバランスに新しい問題と試練をもたらした。そこで彼女は、夫とともに反原発運動に身を投じるとともに、夫に対して、エコツアーという観点からも日中韓の民間レベルの連携と文化交流を通じて、人々が共通して直面しているこの類の問題について検討し、解決をしていきたいとの希望を、特に示した。
そして、今回のプロジェクトの実施担当者として、CSネットの朱恵雯氏は、皆に対し、プロジェクトの趣旨や目標、行動計画、そして現在の活動の進行状況について紹介した。朱恵雯氏は、私たちの今回の雲南交流会と実地視察の目的は、あるモデルや成功事例を広めることではなく、屋久島を一定の経験と教訓が蓄積されているひとつの事例として、皆が知恵を出し力を合わせて、ともに関連する問題の検討を進めていくように促すことであると、丁寧に説明した。

屋久島から学んだこと:
自然林の保護運動からごみの分類と無害化処理に至るまで、屋久島で30年間暮らしてきた星川夫妻は、島の住民が生態バランスの保全のために行ってきた一連の市民活動に積極的に参加し、そして体現してきた。≪屋久島で学んだこと:どのように自然と伝統文化を保護するとともに持続可能な地域経済を作り出すか≫と題する報告の中で、星川氏は、この問題に対する彼自身のいくつかの考えを明らかにしている。
星川氏によれば、第一次産業の持続可能性は地域の持続可能な発展の基礎であり、生態バランスを破壊しない排水とごみ処理は、地域の自然システム保護の要である。「今後、社会から評価されるのは、健全な自然生態システムと、その基礎である地域の健全な第一次産業、そして持続的に共生していける人類社会でしょう。最も大切なのは、現地の住民が自分たちの活動を展開することで生活の質を高めることができることです。そうすることで、もとから存在する共生の形態が損害を受けた状況であっても、人と自然の新たな共生のかたちを再び創り出すことができる可能性がまだあるのです」。また、彼はそれだけではなく、「世界はこうした努力を正確に評価できる能力をもう有している」ということも堅く信じている。観光業について彼は、「最も大切なのは、どのように観光客と現地住民に対し、ともに同じ課題-すなわち、どのようにすれば本当の持続可能性を実現できるかという課題-を重視し、考えてもらえるかだ」と考えている。

屋久島に移り生活するとともに、陶芸創作活動を行って30年以上が経つ山下氏は、自身が身を以て体験したことから、多くの観光客がなだれ込んだことにより生じた島の社会の変化や環境問題について詳しく述べた。世界自然遺産リストへの登録が実現した後、屋久島の中心産業は、それまでの農業や漁業から観光業へと変わってしまった。こうした変化はもともとの社会のバランスを壊し、島の住民がもともと持っていた丹念に耕作をするという考え方や意識を変えてしまった。収入の分配のバランスが崩れるにつれて、人情も徐々に冷たくなっていった。このほか、旅行ガイドの資質が不ぞろいであるなど、観光業が規範を欠いていることで、島に一定の社会問題が起こっている。そして、マスコミと観光業が偏った宣伝をし、観光客が盲目的に追従することで、一部の観光スポットは過度な開発が行われた。これに伴い旅行者がひしめくようになり、ごみの集中やトイレなどの問題はあるエリアの生態に大きな負荷をもたらしている。そして、一部の住民と環境保護に携わる人々が提出した「入山規制」の議案は、現地の山岳崇拝の文化伝統と生態バランスという長期的な利益にはかなっているものの、「目の前にある巨額の観光業収入を失うことになるに違いない」として反対され、いまだ地方議会で可決されていない-これは、屋久島が現在直面している最大の問題と議論の焦点でもある。

雲南西北からの探求:
「雲南のエコツアーは、まだ初級の段階にあり、発展は遅く、多くの問題があります。ただ、希望は大いにあります」。≪雲南エコツアーの現状と問題≫という報告の中で、雲南大学旅行研究所の陳飆博士は雲南のエコツアーの全体的な業況と地域の特徴について総合的な紹介を行った。また、それとともに、直面している5つの主要な問題-すなわち、①旅行業の無計画な発展が現地の生態や文化に及ぼす悪影響、②コミュニティ参画のおくれ、③コミュニティが旅行業から利益を得ることの難しさ、④環境汚染、そして⑤社会の利害の衝突-について簡潔な分析を行った。

雲南林科学院の馬建忠副教授は、梅里雪山国家公園プロジェクトの準備過程と、雲南西北・チベットエリアの自然と文化の多様性保護に関する仕事の経験をよりどころとして、このエリアが現在直面している主な問題-例えば、たきぎの利用や過度の放牧、林地資源(訳注:薬草など)の採集が自然資源に及ぼす負荷、社会経済構成の変化と伝統文化の喪失などの問題-を紹介した。陳飆博士が触れた梅里雪山雨崩村のコミュニティエコツアーの分野における成績に対し、馬建忠氏は「決して成功ではない」と考えている。村民は旅行客の受け入れに従事するなかであっという間に財をなしたが、同時に、ごみの急増や伝統文化の衰退、貧富の差、人間関係の変化などの多くの問題がおこり、未だ有効に解決もしくはコントロールできていない。「ただ、幸いなことに、私たちは教訓を得ることもできました」。馬建忠氏は、「皆、保護と発展には、コミュニティが自覚することと社会の各方面が力を合わせることがともに必要だということを既に認識しつつあります」と考えている。

緑色流域の創始者、于暁剛先生は、緑色流域が麗江拉市海の湿地の水源上流にある彝族の村落-洋芋廠で展開したコミュニティエコツアーが味わった悲喜こもごもを、皆と分かち合った。流域の総合的な管理推進に力を注ぐNGOとして、緑色流域は麗江拉市海の湿地で行ったコミュニティとの共同管理総合プロジェクト-例えば、流域管理委員会や漁業合作社、果樹生産合作社、灌漑合作社、そして洋芋廠にあるエコツアー合作社-をこれまで既に10年間運営してきた。洋芋廠でエコツアーを発展させようという考えが生まれたのは、現地の非常に美しい風景という自然資源と、観光客の受け入れを通じて貧しく苦しい現状を変えたいという切実な願いによるものである。辺ぴで寒冷な高山地区にある洋芋廠は、今まで道路も通っておらず、水土の流失はかつて森林伐採と過度の放牧により非常に深刻であった。天然林での間伐と狩猟を禁止した後、生態環境はわずかに回復したものの、収入をじゃがいもの栽培だけに頼っているために、村民の生活はさらに貧しくなった。希望を見出せなくなった青年、壮年の働き手はよその土地に出て働かざるをえず、残った老人と女性、子どもが奥山を守るだけであった。

自分たちの力だけで郷里をよくすることができるということを証明するため、村民たちは、村落全体に対して立ち退いて土地使用権を売るよう要求してきた外来資本のプレッシャーと誘惑に耐え、エコツアーを通じて積極的に自らを救いたいと考えた。洋芋廠のエコツアープロジェクトは、とても「原始的」で質素なもので、いわゆるマーケティングも、プロダクトデザインすらもない。ただ、旅行客は、この奥山の村落にやってくれば、すぐに村全体のゲストとなり、村民の家に泊まり、一緒にたらふく飲み食いする。村民たちは彼らを連れて、世間とは隔絶した美しい自然風景を見に行く。こうして、純朴で親しみある風土と人情に彼らは感動し、現地の人々とこの土地の間の情と関係を身を以て悟るのである。さらに、女性向けの夜間学校と料理学校で村民は積極的に共通語や、算数、帳簿の付け方を学び、料理の腕を上げている。よその地で働く多くの若者も故郷に戻り事業を始めたいと思うようになった。マスコミによる宣伝やマーケティングも全くないという状況で、洋芋廠は、既に多くの国際的な学生団体や各地のバックパッカーを受け入れ、ネット上で「麗江で最後の浄土」「桃源郷」などの評価を得た。

ただ、人心を鼓舞するこのような成果があるにもかかわらず、洋芋廠のコミュニティエコツアーは多くの危機に直面している。例えば、必要な受け入れ条件を改善するための資金の不足、マーケティングやマネジメントの分野における人材不足、村民の心理に芽生えた旅行業に対する過度の期待と依頼、未だ存在する村落の全立ち退きという行政側の圧力などがそれである。「これらの問題はどれも、コミュニティの権力や現地の人々の発展の権益が、往々にして地方政府や外来の投資者からは軽視されていることを私たちに気付かせてくれます。そして、エコツアーをコミュニティ発展のひとつの見込みのある手段にするとすれば、現在既に、実践の中で遭遇した多くの問題や困惑があり、さらなる専門性、さらなる実際的な討論と交流が必要なのです」と、于暁剛先生は熱く語った。

おわりに:
これらのプログラムに続く自由交流の時間に、エコツアーとコミュニティ経済の持続可能な発展のなかで皆が最も関心を抱いている問題-例えば、コミュニティの権益保障、ごみ処理と文化の保護-について、会に参加した友人たちは各々自分の意見を述べ、熱い討論を繰り広げた。最後に、4時間に及ぶ交流会は十分に語りつくせないうちに一段落を告げざるをえなかった。

私たちは、このような交流、ひいては論争が、問題に対する解答では全くなく、考察と注意を促し、さらなる進んだ交流と検討の始まりだということを十分に知っている。私たちの日本側代表と体験団は、こうした考えを抱いて白馬雪山自然保護区に分け入り、現地の保護スタッフがコミュニティ共同管理の方式で行っているエコツアー事業を、身を以て体験し、感銘を受けた。そして、10月に開催される屋久島フォーラムで、雲南の友人は屋久島と日本の関係専門家と、関心の共通したこれらの問題についてさらなる討論を行うことだろう。私たちは、この議題に関心を持つより多くの友人たちが、インターネットや他の方法で私たちの議論に参加し、私たちのプロジェクトの進展に注目するのを目にすることができれば、とても嬉しい。

文責:王国慧
翻訳:三浦祐介
校正:松江直子

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