2010/01/28 by GLI Japan

【広瀬敏通】日本の自然学校の第一人者広瀬敏通氏 北京のサロンで講師

1月15日、北京のNGO「コミュニティ・アクション」の会議室にて、GLI、コミュニティ・アクション、北京DBコンサルティング会社の共催に よる第3回GLI北京ネットワーカーサロンが開催された。さまざまなNGOから集まった環境活動家や会社員など30人あまりが参加し、定員35人の会場は すし詰め状態となった。この日、北京は厳しい寒さに見舞われたが、日本の専門家の講演に寄せる参加者の期待は非常に熱いものだった。

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17日に訪れた後海で現地の子どもと遊ぶ広瀬氏

各地から駆けつけた参加者

北京・山西・上海・台湾などから駆けつけた参加者

今回GLIがお招きしたのは、国際交流基金の招聘で北京を訪れたホールアース自然学校の創始者・広瀬敏通氏である。同校は日本で最初に創設された自然学校だ。

サロンは午後2時から5時半まで行われ、間に15分間の休憩をもうけたが、参加者が早めの再開を希望したため、10分も休憩しないうちに質疑応答を始めることとなった。

GLI顧問・駒澤大学准教授の李妍焱先生が司会と通訳を担当し、はじめに今回のサロンの目的やGLIの活動内容を簡単に紹介したあと、広瀬氏のプロフィールとホールアース自然学校の紹介をした。

講演中の広瀬氏

講演中の広瀬氏

広瀬氏は青年時代、ボランティアとしてアジア各地で開発と援助活動に参加した。カンボジアの内戦時には、難民のために井戸を掘って水を確保した り、日本政府の依頼を受けてタイ国境に難民支援の現地事務所を開いて運営した。帰国後の1982年、ホールアース自然学校を設立して代表に就任した。火山 洞窟、熱気球、辺境の探検などに豊富な経験があるほか、冒険好きな子供たちを育成することに尽力している。同校は日本各地に拠点校があり、職員は40人、 毎年8万人が活動に参加する。特にエコツ-リズムの実践家・専門家として各地で指導を行い、「沖縄エコツーリズムの父」と呼ばれている。また、広瀬氏率い る災害救援チームには豊富な経験がある。GLIは四川大地震発生前後に2回広瀬氏を訪問し、災害ボランティアに関する日本の貴重な経験をサイトを通じて中 国に伝えた。

講演で、広瀬氏はまず日本の自然学校の発展について、その歴史的背景や、過程、特徴、主な運営形態、成立の基本条件、欧米各国との比較、自然学校がもたらす社会的効果、経済効果などを参加者に紹介した。

広瀬氏によれば、自然学校は第二次世界大戦後、主にヨーロッパと北アメリカから始まった。1980年代初め、広瀬氏は日本初の自然学校としてホー ルアース自然学校を設立したが、しばらくの間、利用率は高くなく、中学生の活動への参加率は、1998年になってもたったの28%だった。その後、自然学 校は発展を遂げて普及し、2007年には小中高生の半数以上が参加経験を持つようになった。現在では、ある程度の規模を備えた自然学校は、日本全国に 3000カ所を数え、日本社会に大きな経済的・社会的利益をもたらしている。(ホールアース自然学校の年商は3億円)環境教育は、多様な社会問題や環境問 題を解決する糸口となり得る。優れたプログラムに数多く参加することで、参加者には自然や社会に対する関心と愛護意識が芽生える。自然との接触が多い子ど もは、そうでない子にくらべて、より人との交流が得意で、人と気持ちを通わせることができ、周囲の人や環境を大切にするようになる。そして、想像力や生き る力に満ちた子どもになるのだそうだ。

広瀬氏の話の中で一番印象的だったのは、次の言葉だ。「私たちが救わなくてはならないのは、地球ではなくて私たち人間自身(と生物)である。私た ちは人や生命を愛し、心の底からの感動を人と分かち合うべきだ。人と人との交流と助け合いを促進することが、環境教育のベースである」

活動後半の1時間半は、主に参加者との質疑応答にあてられた。「会社とNPOが一体となったホールアース自然学校をどのように経営しているの か」、「どんなPRをしたら、より多くの人に自分たちの活動に参加してもらえるのか」、「費用はどう徴収するのか」、「自然学校という名称にこだわる必要 はあるのか」、「日本の自然学校の経験を中国でどのように複製できるのか」、「中国の関係者に系統的な研修をしてもらえないか」等々、多くの質問が寄せら れ、広瀬氏はひとつひとつ丁寧に答えた。また、もし今後もGLIの橋渡しがあれば、適当な時期に中国で研修と指導を行ってもいいと快諾してくださり、 JICAから参加した周女史から、JICAとしても再訪にできるかぎり協力したいとの発言があった。

著名なNGO「自然の友」からの参加者からは、自分たちも似た活動を行っているが、参加者集めに苦労しているという話があった。最近の親は、高額 な費用を払って子どもにさまざまな文化・芸術面の習い事をさせる反面、自然教育面の活動にはお金を払ってまで子どもを参加させる気がないという。「そうい う親に対し、簡単な三つの言葉で自然教育の重要性を説明し、活動に興味をもってもらうとしたら、どう言いますか」

広瀬氏はちょっと考えて、ホワイトボードに「未来」、「共生」、「生きる力」と書き、これらの言葉が、自然・環境教育をもっともよく説明し、活動 へ子どもを参加させるよう中国の親を説得するキーワードになると思うと答えた。しかし、コミュニティ・アクションの宋慶華代表や中国の教育の現状をよく知 る多くの参加者は、これらの言葉で説得するのは非常に難しいと口々に語った。多くの親が熱中する「数学オリンピック」、「英語」、「ピアノ」その他の芸術 系習い事などは、子どもの文化方面の成績やいわゆる「素質」を向上させることができるとされ、子どもの進学に当たって成績に加算される場合もある。広瀬氏 の挙げたキーワードでは漠然としすぎていて、親たちには通じない、と。

広瀬氏は、「数学オリンピック」や「英語」は、子どもの点数や技能を向上させることができるかも知れないが、点数が高いからと言って能力が高いと は言えず、成績と進学で子どもの幸福は保証できないことに、人々は少しずつ気がつくようになるだろう、と語った。広瀬氏がとりわけ強調したのは「生きる 力」、つまり生存能力だ。日本でも、かつては詰め込み式の、成績第一の教育が行われていた。その後色々な混乱があったが、現在では政府も「生きる力」の育 成を掲げている。昨今の多くの問題や事件は私たちに警鐘を鳴らしている。たとえ偏差値の高い学校に行って官僚になっても、楽しく生きることができるとは限 らない。すでに日本では学歴がそれほど重要視されない時代に入っている。中国もそのように変わるのではないかと思われる。「母親が子どもに昇進や金儲けば かりを期待するなら、その子は幸せにはなれない」というのは、先進的な社会では常識だ。残念ながら私たちの未来は明るいとは言えないが、子どもはそんな不 確実な世界を生きていくしかない。未来を生きるために、語学力などさまざまな能力が必要とされるが、中でももっとも重要なのは「生きる力」だ。日本の教育 部門も今はそう考えている。

講演の中で、広瀬氏はおそらく中国から来たフレーズだと言って次の言葉を紹介した。(参加者は誰もこのフレーズを知らないようだったが)

聞いたことは忘れる
見たことは思い出す
体験したこは理解する
発見したことは身につく

「自らの体験を通して、自分で発見したことにのみ、人は「真実」という感覚を抱くことができる。そして自ら体験によって気づいたことは、永遠に忘れない」
今も私の脳裏から離れないこの言葉は、すべての人がよく吟味するに値する言葉なのではないだろうか。

文責:廖芳芳

写真提供: 北京BPコンサルティング会社

翻訳:松江直子

This post is also available in: 簡体中国語

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