2008/02/26 by GLI Japan

中国社会的企業訪日団、「大地を守る会」を訪問

2007年12月22日、中国社会的企業訪日団一行は千葉県幕張にある「大地を守る会」・㈱大地を訪問した。同会は、日本における有機農業推進運動の草分け的存在であり、その事業体である有機農産物宅配の売り上げ規模は業界トップの優良企業である。

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当日は土曜日にも関わらず、代表取締役社長の藤田和芳氏、専務取締役営業本部長・浅野井邦男氏、常務取締役商品グループ長・水谷康孝氏、大地を守る 会理事・事務局長の大山義満氏の、暖かい歓迎を受けた。交流は、藤田氏から全体的なご紹介をいただき、質疑応答の後、物流センター見学という形ですすめら れた。藤田氏は以下のように語った。

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5年ほど前に、李凡さんのコーディネートで英国の社会企業家を訪問した。それ以来GLIにも注目している。世界的にも中国はますます重要な役割を果たすようになっており、皆様と出会えたこの時間は貴重である。

我々は、’75年に無農薬農業を提唱するNGOとしてスタートした。口で言うだけでは変わらないことを実感し、自分たちで事業として経済的実力をつ けなければならないと、会社を興した。運動や理念はNGOとして推進し、理念に基づいて事業を行うことを車の両輪として考えている。NGOとしては、反遺 伝子組み換え・反原発・環境保護・農業保護の市民運動を展開し、事業としては、生産者や消費者が出資し、経済第一ではないことを株主や従業員がはっきり意 識した株式会社「大地」を経営している。

大地の事業内容は、主に以下の三つ。
①農産物宅配:会員制で、約84,000世帯が参加。月に1000人の新規加入がある。
②卸:スーパーや小売店に商品を卸し、専用棚で売る。
③レストラン:使用するすべての食材のトレーサビリティが確保されている。

活動の特徴は、生産者と消費者のつながりを重視すること。独自の流通システムを作り上げ、消費者にも虫食いや畑の都合による作物の変更を受け入れて もらうなど、時間をかけて説明する。また、産地に消費者を連れて行く交流会(じゃが芋掘りやとうもろこしの収穫など)を年100回以上実施。毎回抽選で参 加者を選ぶほど人気がある。

有機農業推進を政府に働きかけ、2006年に有機農業推進法が成立。認証制度が制定され、一般スーパーでも有機野菜が売られるようなるという社会的影響を与えた。大地の会員数は伸び続けている上、すべて自己資金で運営し、借入金はない。

進行中のプロジェクトには、フェアトレードのほか、輸送距離の少ない食品、国産の旬の食品を買おうというフードマイレージキャンペーンがある。「地 産地消」を若者に受け入れられやすい形にした。CO2削減の単位をイタリア語で「少しずつ」という意味の「poco」とし、1pocoはCO2 100グ ラムと決めた。たとえば日本国内でも生産できるアスパラは、世界との価格競争で負けて、CO2を排出しつつ海外から沢山輸入されているが、これを輸入物か ら国産に変えると、アスパラ1本あたり3.4pocoの削減になるというようにホームページで数値を確認できるようにした。

また、百万人のキャンドルナイトは、夏至と冬至の夜に2時間だけ電気を消して、スローな夜を過ごそうというプロジェクト。毎年参加者が増えていく。 2007年夏至は65,000ヵ所のライトオフと700~800万人の参加があった。数年前から世界でも呼びかけ、ドイツ・韓国・中国(GLI協力)・イ ンド・トルコ・イタリアでも行われた。2008年夏の洞爺湖サミットは全世界のマスコミが注目するチャンスなので、前日の7月6日に5分だけ (20:00~20:05)のライトオフをして環境保護を訴える計画。中国もぜひ参加してほしい。

質疑応答では、メンバーからさまざまな質問が寄せられた。大別すると以下の2点である。
①大地の契約農家の農地規模は。一般農家に比べて収入が多いか。日本の有機認証制度、有機野菜と一般野菜の価格差。
②会社としての財政基盤。運動体と事業体を車の両輪とする独自の体制について。

藤田氏の答えはこうだ。①について、農地の規模は問題ではなくて、その農家が食べられればいいということ。たとえば北海道は気候がきびしいので、広 い面積が必要。気候のいいところで果物をやるなら、狭くてもいい。植える前に値段を決めるので農家の収入は安定している。得意な作物を作れるので他より少 し良いのではないか。日本の認証制度では、3年間いかなる農薬や化学肥料も使わない場合に有機と名乗れる。6ヶ月以上3年未満の場合は「転換期間中有機農 産物」と称される。全国に50ヶ所の認証機関があり、農作業記録を政府の認証機構が審査する。当然現場も確認する。法律の基準は当然守るが、それ以上にき びしい大地独自の基準を作り、それを認定してもらう。野菜の値段の違いは、初期は2割位だったが、今は1割くらいに下がってきている。しかし加工品が問 題。市販品より50%高い。原材料を厳選しているとどうしても高くなる。

②について、利益の核は宅配事業。大勢の会員がいて、はじめて事業が成り立つ。会員が1~2万のころに安定するかも知れないとはじめて思った。この ままいけば10万になるだろうが、規模が大きくなることは望んでいない。大きくなりすぎた場合は分割する方法を考えなければならない。消費者教育として は、農産物に農家の情報を付け、農家と消費者を近づけることが大事。NGOと会社のバランスについて、運動とビジネスは一体となっている。ある商品を開発 するとき、金儲けだけを考えるのではない。運動をすればするほど会員が増え、収入が増える。NGOは、5000~6000万の会費収入で独自会計。職員や 事務スペースは会社もちなので経費はかからない。利益の配当はいつも株主総会で議論になるが、日本の農業を守るというミッションへの投資が株主の利益と考 えるので、配当はしない。

この後、一行は習志野物流センターを見学した。2005年秋にオープンした同センターの特徴は「品質管理」と「環境配慮」。センター内は扱う商品と その状態にあわせ、-40度・-25度・5度・10度・15度・20度と、エリアごとにコンピュータによる温度管理が行われている。温度帯の極端に異なる エリアの隣接を避け、各エリア内は二重ガラスや断熱扉で仕切られ、温度変化と結露によるカビ発生を防いでいる。荷受・出荷は外気にさらされることなく、車 両の荷台に直に接して作業ができる22ヶ所の搬出入口があり、室温は15度(畜産品は10度)に管理されている。商品を仕分けするピックラインでも、チル ド・冷凍品は5度、ドライ・野菜品は15度と別々のラインが設置されている。

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センターは騒音・排水などの面で地元習志野市の規制に適合していることはもちろん、シックハウス対策や夜間電力使用の蓄熱式冷却システムなど独自の環境配慮を行っている。訪問したのが土曜日だったため実際の作業は見られなかったが、各温度のエリアを体験することができた。

見学後の質疑応答では、経営陣の意思疎通方法、社員の待遇、有機農業業界の競争などについて質問があったが、浅野井さんの次の言葉が印象的だった。 「もともと農業は自然相手なので不安定。よほど意識が高くないと続けられない。藤田はいつも、大地みたいな会社がなくなるような社会、つまりどこででも大 地のような商品が手に入る社会が理想”と言っている」。

実際の所、環境や農業を考えた生活は、とても手間とお金がかかり、意識を高く持ち続けるのも大変だ。大地とほぼ同じ理念の生協でほとんどの食材を調 達している私にとっても、自らの生活理念を再確認し、力づけられる3時間であった。また、帰国したメンバーからも、大地の訪問が今後の彼らの事業展開に大 きな示唆と励ましを与えるものだったという声が寄せられたことが、なによりの収穫であった。

文責:松江直子

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