2008/03/05 by GLI Japan

訪日団、「CANVAS」を訪問

2007年12月21日午後、中国社会的企業家訪日団が、最初の訪問先、CANVASを訪れた。拠点を置く東京下町の根津の事務所で、創設者の石戸奈々子さんがCANVASの経験と心得を共有してくれた。

CANVAS 1

CANVASを立ち上げた最初のきっかけは、石戸さんがアメリカのMITメディアラボ研究員だった時に、専門家が技術開発を通じて積極的に子供の教 育にかかわっていることに感銘をうけたことだ。彼女は、日本に帰ってすぐCANVASを創立した。2002年11月にスタートしたこの事業は、その後、順 調に進み、五年が経った現在、彼女たちの活動はすでに全国に広がっている。その成功の決め手は、社会的なリソースを活動にうまく利用したことだと、引率の 広石さんが指摘した。CANVASの事業を立ち上げた当時、日本ではゆとり教育が始まったが、それまでは、詰め込みの教育を実施してきて、創造力や表現力 はあまり重視していなかった。一方で、面白い教育活動を行う先生やアーティストもいたが、広く普及させるノウハウがなかった。彼らをもっと有機的に結びつ けて、子供の創造力と表現力を高める運動として展開するために、石戸さんはCANVASをスタートした。

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現在、CANVASは調査研究、開発、普及・啓発という三つの事業を行っている。
調査研究:国内外で、子供の創造力と表現力を伸ばすためにどのような活動を行っているかを調査・研究し、社会にフィードバックする。
開発:アーティスト、学校、企業、行政など多方面の人々と協力し、ワークショップを中心とした子供向けプログラムを開発する。
普及・啓発:開発したプログラムをパッケージ化し、学校、自治体、企業などへノウハウを提供する。また、プログラムを実施できるような条件、たとえば人材の育成や情報交換の場を提供する。

NPO法人CANVASの目標は、子供の創造力と表現力を高めるために、活動の場を提供し、そして全国に広げることではあるが、それ以上に、その活 動にかかわる先生や、博物館のスタッフ、アーティスト、ミュージシャン、また行政の人たちが、セクターを越えて一緒に活動するようなプラットフォームを作 ることに尽力している。

簡単な紹介が終わって、石戸さんは、活動の映像を見せながら、今まで計画・運営してきた、代表的なプロジェクトを紹介してくれた。

東京大学サマーキャンプ
2003年の夏休みに、東京大学のキャンパスで、小中学生が紙や粘土を使ってアニメや映画を作るサマーキャンプを行った。子供たちは、粘土でキャラクターを作って、ストーリーや絵コンテづくりから撮影、編集などを体験し、アニメ制作の全工程に挑戦した。

どこもどこでもものがたり
子供の国際交流活動として行ったこのプロジェクトでは、日本とフランスの子供たちがそれぞれに携帯電話のカメラ機能を使って、写真と短い文章を組み合わ せ、テーマに基づいたオリジナルストーリーを作成する。それから、写真やものがたりなど作品の構成要素を交換し、組み合わせて、お互いに新しいストーリー を作成する。子供たちが、自分の文化に基づいた表現方法でコミュニケーションができるように、このプロジェクトを定期的に提供する。

そのほか、デジタルを活用するプロジェクトも多数実施している。クレヨンや粘土など伝統的な表現の手法と比べると、まだ未熟なデジタル技術だが、自 分の考えを人に伝えることに関しては、有効なツールだと思う。デジタル時代を生きる子供たちにも、デジタル技術を使った表現力とコミュニケーションの能力 を身につけてもらおうと、このようなプロジェクトを考えた。

「おとコトひろば」小中学生作詞作曲コンテスト
小中学生のオリジナル音楽作品を募集し、発表の場を提供するプロジェクト。ネットでの企画とリアルの世界での子供向けワークショップを組み合わせながら 行っている。「おとコトひろば」というのは、おとは音、つまり音楽、コトは言葉、広場はみんなが集まる場所。音楽を軸に、世代と地域を越えて、みんなが集 まる広場を作ることが一番の目的。具体的にいうと、ネット上に、子供たちが自分で作った曲を投稿できるようなサイトを提供する。また、発表するだけではな く、違う地域の子供同士で、作詞と作曲のコラボレーションが実現できる。リアルでは、定期的に、プロのミュージシャンに来て貰って、作詞や作曲を指導する ワークシップを行っている。このプロジェクトの目的はプロのミュージシャンを育てることではなく、すべての子供に音楽表現を自分の表現手法の一つとして提 供することだ。なので、作詞は一行でもいいし、作曲はワンフレーズでもいい。ただし、コピーはだめで、必ず自分が考えたものを投稿する。

未来の郵便局プロジェクト
子どもに未来の郵便局のサービスや建物のデザインを考えて、大人に提言してもらうワークショップ。経済学者など有識者が、子どもの意見をもとに話し合う。子どもの意見はとても本質的なものをついていることに、有識者もとても感心していた。

キッズ地域情報発信基地局

毎週の木曜日、子供たちは事務所の周辺地区を取材して発信する。子供たちはビデオカメラをもって、町を歩き回る。面白いものをレポートしたり、商店 街のおばさんおじさんたちをインタビューしてブログや新聞など様々なメディアで発信したりしている。このプロジェクトの目的は、子供たちに自分で内容を 作ってもらうことだけではなく、この活動を通じて、子供たちが改めて地域の人たちと交流し、自分の地域を見直してもらうと同時に、地域の大人たちもこれに 協力することによって、地域全体のまちづくりにつなげていくことである。

ワークショップコレクション
全国の子供向けのワークショップを一堂に集めて展示する博覧会。CANVASが年に1回実施する、こどもより大人を対象としたイベント。普及・啓発活動の 一環として、自分たちの活動を広げたいと思う人たちが交流する場を提供している。今後自分の地域でもこのような活動を行いたいと思う人たちに向けて、「ぜ ひ展開してください」というメッセージを送る。

「CANVASの基本的な考えは、未来を創っていくのはこどもである。そのための、子供たちが活動する場やツールを提供するのは大人の役割。それはCANVASの活動の目的でもある」と、石戸さんは強調した。

Ishido san and Hiroish4CANVAS 3

広石さんは、ワークショップコレクションに対して、以下のように高く評価した:このプロジェクトはまさにCANVASのユニークなところ。日本で は、教育をテーマとするNPO活動がたくさんあるが、プログラム一回あたりは10人、20人にしか提供できない。しかも、みんなは自分でやるのが好きで、 事業ばかりに関心が行って、普及したくてもできない団体が多い。そこで、CANVASは普及活動を行い、自分のプログラムだけではなく、他団体のプログラ ムもホームページで紹介している。これまで、このような普及活動はなかった。一日半のワークショップコレクションに6500人があつまるのは、まさに普及 活動の効果。

後半のディスカッションに入ると、訪日団のメンバーたちは、多くの質問を寄せていた。

Q: CANVASの活動をどのように評価しているか?
石戸:新しい教育の手法として、ワークショップの評価は確かに難しい。旧来の教育のような、ゴールを決めて、実現できるかできないかで計るものと違って、 プログラムを行うプロセスがとても重要だと思う。子供によって、効果がすぐ出る子もいるし、20年後出る子もいるかもしれない。定量的な評価は難しい。今 は子供、保護者、そして実施者を対象に、三種類のアンケートやインタビューを必ず行い、その結果をきちんとまとめている。定性的な評価になるが、保護者か らの評価は高い。例えば、子供は、ワークショップに参加してから生活態度が変わって、自信や社会性が高まったという報告がある。といっても、客観的な評価 手法は確かに必要で、今後の課題だと思う。
広石:私もほかのところで評価の仕事をしている。やはり定量的な評価が難しい。それより、例えば、感想文を書いてもらって、その中から出てきた共通キーワードをピックアップして、それによって何か新しい仕組みが作れるのではないかというような研究が始まっている。

Q:CANVASの資金源は?
石戸:日本のNPOにとって、寄付金というのは取りにくい。CANVASの95%は事業収入、全部プロジェクトごとにファンドレ-ジングをしている。受益 者からより企業からの収入が多い。その理由は、新しいことをはじめるとき、お金がある層だけではなく、すべての子供が参加できるように、できるだけ子供と 保護者への負担を減らしたいからだ。なので、基本は企業からのお金で成り立っているが、協賛や寄付ではなく、協働という形で、企業と一緒に事業を行ってい る。ただし、この1,2年間は、かなりニーズが増えてきて、いまは、受益者に負担してもらおうとシフトしている段階。こうなると、企業からのお金は、参加 したいが参加できない人たちに回したい。

Q:どのように企業と協力するか?
石戸:主に三つのパターンがある:1、CANVASがやりたいこと、それはわかりやすいので、だめならあきらめる。2、企業はCSR目的で、具体的な案を こちらに求めてくる。それはマッチしやすい、こちらが提案したものは大体通る。3、企業が持っている世界観とこちらが持っている世界観の共通する部分を引 き出して案をつくる。
広石:地域でやりたい人や、アーティストでワークショップをやりたい人をサポートして、その人たちが現場で活動する。必ずCANVASが自分でやるとは限 らない。彼らは教育プログラムをパッケージすることをずっと研究してきたが、これは日本では珍しいこと。フェローと呼ばれる200人以上の仲間たちの中 で、多くの人は技術を持っていて教育とかかわりたいが、何をしたらいいかわからない。そこで、CANVASが役にたつ。

ディスカッションのなかで、訪日団のメンバーたちは、ワークショップという活動に高い関心を示した。ワークショップコレクションを上海や北京で開く ことや、ワークショップをコミュニティの子供の活動に活用することなど、多くの提案を寄せた。それに対して、石戸さんは、ぜひ一緒にやりたいと、積極的に 応じてくれた。

文責:朱恵文

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