2009/02/16 by GLI Japan

日本の社会的企業を訪問して-富平学校・尹春涛訪日感想(後編)

最も効果的な援助は人々と共に理想のライフスタイルをつくりだすこと―K2インターナショナル㈱、㈱サンフォーレ、㈱スワン次に述べる三つの企業は、前述の二つの団体とはちょっと違っている。この三つに共通するのは、ある種類の人々のためのサービス提供を活動主旨として いることだ。一般の福祉団体とは違い、彼らが提供するサービスは救済型ではなく、慈善型でもない。サービス対象の人々と共に、彼らの個性や特徴に合わせた 理想のライフスタイルを作り出している。私が特に感心したのは、個人に対する尊重と人間本位なケアを、経営や活動のすみずみにまで浸透させていたことだ。 命に対して差別をしない愛の心、そして生活のすべてに対する細かい観察と体験がなければ、このようにインスピレーションに満ちた創意工夫は生まれないだろ う。

㈱K2インターナショナルは1989年に生まれた。不登校・引きこもり・家庭内暴力などにより、正常な人間関係を築けない子どもたちのために、共に生活し、学び、働く場所を作り出し、生活の喜びや人に必要とされる感覚を体感させ、独創的で積極的なライフスタイルを樹立させる。

k2
現在、K2は横浜に6棟(30室)の施設を持ち、共同生活の場としている。入居者の目的や情況に応じて、家庭型、自立準備型、短期住宅型と居住スタイルを 分けている。共同生活の目的は、彼らにもう一度家庭的な生活を送らせ、生活習慣を改善して仲間づくりをすることだ。不登校の子どもの雇用機会を確保するた め、K2は17年前に「お好み焼きころんぶす」という「経済的な自立を実現できる場所」を作った。スタッフとして収入を得られ、同時に彼らの就業実習の場 ともなっている。2005年、K2は日本の厚生労働省の援助により「若者自立塾」プロジェクトをはじめ、ますます多くの生きづらさを抱えた若者が訪れるよ うになり、背景・年齢・抱えている問題など、範囲は相当幅広くなった。
日本の就職支援制度は、健常者と障がい者の2タイプしかなく、彼らのための具体的な就職支援はないため、彼らをどのように支援するかは大きな問題だ。彼ら をラベリングすることは、彼らのプライドや生きるための力を奪うことになりかねない。K2は20年の実践の上に、「目に見えるカリキュラム」を作り、彼ら の抱えている目に見えない不安を取り除く手助けをしている。さまざまな層から来た若者たちに安心感を感じてもらえるよう注意をはらい、彼らの知的・精神的 欲求が満たされ、それぞれが達成感を感じる事ができるようにしている。その上で一人ひとりに必要な個別支援と集団支援を行う。K2が展開する段階的支援プ ロジェクトの内容は、アウトリーチからカウンセリング、共同生活、講座研修への参加、各種ボランティア、自営店舗での研修、外部企業での研修などがある。 支援計画は一人ひとりの情況に応じて制定し、入寮から1週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目に本人とカウンセリングを行うとともに、親やスタッフとも話 し合い、支援計画を調整していく。また、専門家や医療・福祉・専門機関・行政との連携を通じて、本人を中心とした包括的な支援を提供している。K2には、 若者のために大きな一つの仕組みを創造したいという理想がある。この中では、若者は社会に合わせ矯正させられるのではなく、彼らがそのまま持っている個性 と能力の範囲で自立し、互いに支え合って生きていける。そして彼らが人まねに流される事なく、オリジナルな人生を切り開いていくことを応援したいという。

私達は彼らが共同生活を送る宿舎や、彼らが企画した「鍋料理と映画を楽しむ会」を見学し、お好み焼きころんぶすで、彼らのオリジナル料理をいただい た。そこがある特殊な人々に援助を提供する場所である、という感覚は全くなく、却って私達は彼らの生活の息遣いに深く引き付けられたのだった。

K2の夢は、私達一人一人が心の深い所で抱く夢でもある。誰もが自由に自分の個性と潜在能力を伸ばすと同時に、お互いが支え合って暮らす世界。創始者の遠大な見識は、社会から「問題あり」とされた青少年に、社会的に価値のあるライフスタイルを創出した。

㈱サンフォーレの高齢者 施設が私達に見せてくれたのは、退職後の理想の生活だった。大規模な高齢者施設と違い、彼らの施設はコミュニティに分散して存在し、10人から多くとも 30人の高齢者が一つの施設に居住して若い職員から家族のようなケアを受けている。開放式の厨房、暖かい雰囲気の食堂、家のような雰囲気の活動室では、歌 を歌ったり、絵を描いたり、パズルをしたりといったさまざまな娯楽活動が行われている。パズルの絵柄は戸外活動の時に写した入居者たちの集合写真だった。

浴室の設計は更に思いやりが行き届いており、体を動かしにくい高齢者のために電動で昇降する椅子を特注したという。また、サンフォーレでは長期入居だけではなく、コミュニティ内の高齢者の一時預かりのために、一定の部屋数を常に確保し、急な需要に備えている。
Sunforet
入居費用は毎月4万-5万円、ケア費は介護保険でまかなう入居者が多い。この新しいタイプの高齢者サービスはコミュニティ内の多くの家庭に歓迎されてお り、彼らはサンフォーレの債券を買ったり、あるいはボランティアに参加したり、共に事業の持続的な発展を推進している。コミュニティのサポートのお陰で、 サンフォーレは銀行ローンを借りなくても、持続的な経営を維持することができるという。

1988年にはじめての高齢者施設をオープンさせてから現在までに、サンフォーレは湘南各地のコミュニティに12ヶ所の高齢者施設を開設・運営し た。230名の職員が働いており、この分野の相談サービスも提供している。創立者の堀井利修さんは、幼い時からずっと藤沢で暮らし、一度もここを離れたこ とがないそうだ。彼は、この海辺の町の人口が数万人から数十万人に拡大し、各種公共施設が日に日に整っていく様子を自らの目で見てきた。先輩たちが町の建 設につぎ込んだ血の滲むような努力をも見てきた彼は、高齢者の定年退職後の生活をより多元化させ、それぞれの人が自分の好むライフスタイルで暮らせるよう にしたいと考えた。個人を主体とするライフスタイルでは、人々の定年退職後の生活を支えることができない。大規模高齢者施設の多くは辺鄙な地方に建てられ ているため、入居者は(交流の少ない)不自然な生活を送っている。80%の高齢者が病院で亡くなり、家族に見守られて一生を終える幸せを享受できない寂し い情況だ。日本には100歳以上の高齢者が3万人ほどいるが、30-50年後は80万人になると予想されており、これは人類が経験したことのない新しい挑 戦である。新しい老後のライフスタイルを地域の人たちで創る、これが彼らの創業の目的であり、それは普通の高齢者施設を作ることではないのだ。

彼らの施設見学が終わったのち、私は突然ある緊迫感に襲われた。「もし私たちが今の高齢者のために理想的な老後の生活を創造できないとしたら、私たちが年をとって動けなくなった時、だれが私たちにそのような生活を与えてくれるのか?」

最後に㈱スワンののス トーリーを話したい。これもまた奇跡を創造する企業である。従業員の7割以上は知的障がい者で、会社は彼らに毎月約10万円の給料に支払っているが、これ は政府規定の最低賃金(5000円)をはるかに上回っているため、彼らは一般のサラリーマンと同じような生活を維持することができる。同時に、会社は市場 が本当に必要とする高品質の商品を提供することをモットーとしている。スワンカフェとベーカリーは、こざっぱりと優雅で気持ちが良い空間だ。障がい者は健 常者と共に働き、同じように健康で仕事を楽しみ、提供する食品はとても美味しい。いわゆる障がい者と健全者の違いは、多分私と貴方が異なっていることとあ まり変わらないと思う。
swan
障がい者を健常者とみなし、彼らの生理的特徴に合わせ、彼らが安全だと感じることができる職場環境を提供すれば、彼らは健常者と同様に無限の潜在能力を発 揮できる。これはスワンの創始者・小倉昌男さんの理念である。彼はかつて伝統的な授産施設を見学したが、そこの障がい者は薄暗い部屋で、人々に必要とされ ない商品を作っていたそうだ。彼は障がい者のためにもっと尊厳のある仕事を創出したいと考えた。彼の経営哲学はとてもシンプルだ。
・市場に需要がある限り、商売は成立する
・顧客のニーズは最も重要で、ニーズは創出することができる
・企業の角度から言って、金を儲けつつ雇用を安定させるのは当然なこと
もしこの三つの原則に従ってもうまく経営することができないとすれば、それは、経営者がばかなのだ。
スワンの経営には三つのキーポイントがある。マンパワー、売れる商品、市場。具体的な経営管理上において、彼らはとても行き届いた配慮をしている。スワン は障がい者の特徴ごとに作業の流れを設計し、プロセスを細かく分けた。すべてのプロセスは非常に簡単で、一人でいくつかのプロセスを担当する。こうすれ ば、覚えやすいし、コストを上げることにはならない。従業員の自信を深め、潜在能力を発揮させるため、出勤第1日目から、彼らを褒める。今のあなたで良い のだ、と。仕事の中でも彼らに指図をせず、自発的に仕事をするよう仕向け、彼らの自律的な潜在能力を引き出して、絶えず成功体験を積ませる。彼らに仕事を するように激励し、仕事は遊びではなく、仕事を通じて社会貢献をしているのだと理解させる。失敗することがあっても、あなたが障がい者だからと言って許し たりはしないと教え、使命感を育む。スワンは経営上、障がい者と健常者に違いは何もなく、適材適所すればよいと考えている。社長の海津さんは例を挙げた。 たとえば箱作りをする場合、自閉症の人は一気に250個作ることができたりするが、健常者は10個作るとたばこを吸いに行ったりする、と。

市場開拓面でも、スワンにはきわめてクリエティブなアイデアがある。
・制服を着た従業員が毎週の月曜日、店の周囲を清掃し、コミュニティの住民はそれを見て、スワンの事を知り、ブランドイメージが向上する。
・クリームと卵のアレルギーがある顧客に対し、アレルギーフリーケーキを作り、宅急便のヤマト運輸と協力して、辺鄙な山村や漁村にもケーキを届けている。これはヤマト運輸のイメージアップにも繋がっている。
・農村と提携し、観光まつりやイベントなどにロゴマークをつけた商品を提供し、地方経済の振興を促進している。
・養護学校と協力し、先生をスワンでの実習に受け入れ、企業が障がい者にどんな技能を必要としているのか理解してもらう。
・新人画家などに店の一角を提供し彼らの絵を展示している。

彼らの努力は、すでに多くの企業の障がい者雇用に対する態度を変化させた。ヤマト運輸はスワンの成功経験に鼓舞され、すでに900名の知的障がい者 を雇用している。目に見える成果を用いて他の人に影響を及ぼすことは、どんな方式より有効だ。醜いアヒルの子が白鳥に変わったような美しさは、私達訪日団 メンバーの心に深い印象を残した。あなたが彼らを心から愛し、心から彼らと共に価値と尊厳のある生活を創る事を望めば、奇跡は起こるのだ。

これ以外に、アミタ持続可能経済研究所と大地を守る会については、別に稿を起す。なぜなら持続可能な農業は私が特に関心を持っているテーマであるため、更に詳細な検討が必要だからだ。

日本の旅の回顧を終えてみると、収穫は多いがこれ以上詳しくは述べない。しかしもう一つ話題にするに値するのは、今回の見聞は私の“プロジェクトに 基づいて仕事をする”というNGO的発想を打ち破り、私は“経営の方式を用いた仕事”に対し、新しい理解を持ち始めた、ということだ。これまで私につきま とっていた“社会的企業”の概念についても突き放して考えることができた。それは、“NGO”という言葉と同様に、学者が伝統的な組織との違いを示すとい う研究の便宜のために貼るラベルにすぎない。これらの概念に縛られてしまっては、かえってイノベーションを実現しにくい。実際の所、社会問題の解決に強烈 な使命感を持つ人々は、絶えず新しい組織形態を創造して資源を統合する。もし、彼らに適切なサポートを提供するメカニズムがあれば、更に多くのソーシャ ル・イノベーションが生まれ、生活のあらゆる面における少しずつの改善を通じて社会全体の進歩が促進されるであろう。

文:尹春涛(富平学校コミュニティ発展センター)
写真::李 攀(雑誌<東方企業家>) 松江直子
翻訳:松江直子

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