2011/10/29 by Matsue

オランダ人アーティストの信念:雲南景頗族の子ども達のために

9月24日午後、北京の永アート・センターにおいて、景頗族(ジンポー族)の児童教育を支援する公益プロジェクト「プロップ・ルーツ(中国語:榕树根)」の一環として、「2011年夏の活動報告会兼芸術品公益オークション」が開催された。芸術業界、メディア、企業、公益団体等、社会各界から70名余りの参加者が一堂に会し、プロップ・ルーツのボランティアとジンポー族の子ども達の間に生まれた胸を打つエピソードに耳を傾け、子ども達の絵画作品を鑑賞した。また、8名のアーティストから子ども達の芸術教育のために寄付された油絵、彫刻等の作品が、チャリティ・オークションに出品された。

オランダ人アーティスト、言語学者のアントン・ラスティン博士(Dr. Anton Lustig)は20年もの間、雲南省徳宏州のジンポー族の村々を巡り、ジンポー族のザイワ語(載瓦語)とジンポー文化を研究している。国際的にも初の、ザイワ語の総合的で系統だった詳細な記録である『ザイワ語文法と辞典』を著した。2008年に彼と妻の李暘は、プロップ・ルーツ公益プロジェクトを立ち上げ、伝統文化をジンポーの子ども達の言語と美術教育の中に根付かせることにより、子ども達が自信をつけ、創造力を発揮するための支援をしている。

2011年の夏、6名のボランティアが、プロップ・ルーツ・プロジェクトのメンバーとして、雲南省徳宏州芒市西山郷営盤小学校を訪れ、現地のジンポー族の子ども達に、1週間の活き活きとした楽しい体験授業を行った。内容は、自然、芸術、化学、撮影と情報技術等。ボランティアメンバーは北京に戻った後、特別に今回の芸術展及び報告会を開催し、現地の子ども達とのアクティビティでの忘れがたい経験や感じたことを写真や映像を使って、プロジェクトや児童芸術教育に関心のある各界の人々へ紹介し、今後の教育活動の不断の改善のために、多くの人々からの意見を聴取した。

会の企画者である劉菁華も、今夏のボランティアの1人だ。彼は、ジンポーの子どもに素晴らしい絵画の授業をしてあげようとやってきたのだが、逆に彼の方が、子ども達の純真、素朴で、他には見られないような独特な画風に深く心を打たれた。北京に戻ってからすぐに芸術界の友人たちに絵画の寄付を募り、展覧会とチャリティオークションを企画し、好意的な反応を得た。また、中国対外経済貿易大学の学生、余海濤は、2010年にプロップ・ルーツに入った後、大学でプロップ・ルーツのボランティアチームを組織した。余は報告会の際にこういった。「自分は汶川出身のチャン族(羌族)だが、漢語(中国共通語)や英語は流暢に話すことはできるけど、自分の民族の言葉であるチャン語は一言も話せない。完全に自分の民族の文化的ルーツを失っている。自分は、プロップ・ルーツのプロジェクトを理解し、深く心を打たれ、彼らの少数民族の子ども達に対する教育理念にとても共感するようになった。自分は、この活動を通してジンポー族の子ども達から多くのことを学んだ。自分が子ども達に与えてあげること以上にずっと多くのことを子ども達からもらったと思う」

德宏傣族ジンポー族自治州は、雲南の最西端のビルマとの国境地帯に位置している。亜熱帯山林の中にあるチンポーの村落は、良好な自然環境と豊富かつ長い歴史を誇る伝統文化を有している。ラスティン博士は村での長期滞在を通じ、ここの子ども達は小さな頃から多言語で生活し、大自然に囲まれて育ったため理解も深く、豊かな芸術感覚と潜在能力に恵まれていることを見出した。しかし、受験教育の体制の下で、ジンポーの子ども達がこういった恵まれたアドバンテージを発揮する場はない。逆に、教師の不足、母語(自分の民族の言葉)教育の立ち遅れ、そして、漢語(中国共通語)が使用される統一入試によって、彼らは競争の中では劣勢に立たされることになり、多くの子ども達が学習への自信を失い、中途退学している。重い学業の負担が、芸術の天賦の才能を開花させる機会を圧迫し、伝統文化を急速に消し去り、子ども達の自信やアイデンティティを奪い去ろうとしている。さらに、徳宏はドラックが多く、エイズの拡大も深刻な地区であり、道を見失った多くの若者が不幸にも危険な深淵へと引きずり込まれてしまった。

報告会で、ラスティン博士は言う。「一方通行の物資の持ち込みだけではジンポーの子ども達の教育問題を解決できない。プロップ・ルーツが現地で展開するのは、平等な交流、創造力を発揮できるような楽しい体験活動なんだ。プロップ・ルーツのプロジェクトの目的とする教育活動は、子ども達の言語能力を引き上げて、知識面での貢献をすることだけじゃない。我々のより重要な任務は、子ども達が自分の民族の伝統とふるさとを理解し、愛し、自分のアイデンティティを見出し、身の回りにある素晴らしいものに誇りを持ち、自信を確立できるよう手助けをすること、そして、子ども達が自ら進んで考えたり、クリエイティビティを発揮し、表現できるように手助けをすることなんだ」

プロップ・ルーツ・プロジェクトは、今後も営盘小学と現地の教育部門と協力し、今までの毎年夏季・冬季の2回の活動に加え、通常教育の長期教育課程にも参入しようとしており、併せて2011年夏季に、「都市っ子と田舎っ子のジンポー山村アート・サマー・キャンプ」を企画した。この活動計画は、最近開催されたレノボの「微公益,做不凡(小さな公益、非凡な業績)」公益コンテストの中で、全国41,000以上の団体の中から頭角を現し、僅か17団体のみが選ばれる、最終賞の「小さな公益の星」受賞プロジェクトの1つとなった。

オークションで展示されたジンポーの子ども達の絵は、新鮮で、自然で、遊び心に富んでおり、多くの参加者がこれらの絵は心温まる作品だと語った。国家登録オークションセラーの潘軍は今回の公益活動のためにボランティアでオークションを主催し、彼の経験豊かな司会ぶりと情熱溢れる解説により、オークション会場は熱気に包まれた。オークション当日は、ジンポーの子どもの絵が23点、アーティスト寄付の作品が9点が競り落とされ、売り上げは計70,080元(日本円で約84万円)にものぼった。売り上げは全て公益活動に使われる(その絵を描いた子どもや営盘小学の他の貧困学生への芸術教育への資金援助、プロップ・ルーツのプロジェクトの更なる児童言語教育や芸術創作活動のための支援も対象に含まれる)。今回の活動で集められた全てのお金やその後の使用状況は、全てプロップ・ルーツやアーティスト達のウェブサイトで公開されている。
http://site.douban.com/leandong/


子ども達に地理を教えるラスティン博士 (c)プロップ・ツリー李暘

プロップ・ルーツ公益プロジェクトについて
オランダのアーティスト、言語学者アントン・ラスティン(Anton Lustig)博士夫妻が立ち上げたプロップ・ルーツ・プロジェクトは、雲南チンポー族の児童教育に尽力する公益プロジェクト。彼らの特色であるバイリンガル教育と芸術教育の中に、ジンポー族の伝統文化の精神を貫き、文化伝承と同時に、子ども達に自信を確立させ、創造力を発揮させることを目指している。
新浪ブログ(写真あり) :photo.blog.sina.com.cn/proproots
豆瓣ウェブサイト:http://site.douban.com/leandong/
ソース:中国発展簡報
http://www.chinadevelopmentbrief.org.cn/newsview.php?id=4143
編集:李君暉
翻訳:土居健市
校正:松江直子

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