2009/06/15 by GLI Japan

【海津歩】スワンベーカリー海津歩社長が上海・南京を訪問

(なお、関連記事として「愛と勇気と正義の経営 スワンベーカリー」もご覧ください)

5月18日~22日、GLIの招待で、スワンベーカリーの海津歩社長が訪中し、上海・南京の公益団体やGLIネットワーカーと交流を行った。

スワンベーカリーは日本の社会的企業の優れたモデルである。「障がい者は健常者と同じく、どんな仕事にも対応できる」という自らの理念を、その経営の成功を通じて証明した。

GLIはNPI(浦東非営利孵化器)とともに海津さんの五日間の行程をアレンジし、日増しに高まる中国の社会的企業や公益事業に対する情熱を海津さんに感じていただくと共に、上海・南京地区の社会的企業や公益団体にスワンの経験を紹介した。

5月18日午前、海津さんはまずGLIの事務局長と共に浦東新区にあるNPIを訪問した。副主任の丁立さんがNPIのインキュベーション・プロジェ クトの進展と今後の計画について紹介し、スワンベーカリーの運営モデルとそれを中国で実行する可能性について初歩的な意見交換を行った。午後、海津さんは 欣耕工房を訪れ、創立者の朱柄肇さんと交流した。欣耕工坊は貧困扶助と就学支援を旨とする社会的企業。精進料理食材を扱う企業経営者・民間芸術愛好家・記 者の三人が2007年5月に立ち上げた。背景の違う三人の共同発起人の関与により、欣耕工坊の手工芸品に中国民間文化と環境保護の特色が与えられ、貧困扶 助と就学支援の目的の達成に役立っている。GLIサイトの欣耕工房関連記事
海津さんは、欣耕工房の商品は非常に精巧だが、市場で生き残るためには、商品は中高級品としてプロモーションすべきだと指摘し、市場開拓などの問題について、いくつかのアドバイスをした。

晩、海津さんは第十一回GLIネットワーカーサロンに参加した。今回のサロンは威海路にある創意芸術センターで開催され、大学生及びNGO分野に従 事する人をはじめ、十名以上の人が参加した。一時間あまりの講演で、海津さんはスワンについて、以下の内容を含む詳しい紹介を行った。
1. 創立の由来:創立者である故小倉昌男氏の起業理念を引続き、障がい者が健常者と共に働ける職場環境を提供する。
2. 企業運営:独特なスタッフトレーニング方式と積極的な奨励がスタッフの自信のもと及び仕事の原動力になる。やさしさと厳しさの共存が企業の経営理念。
3. 周辺商品:多様な周辺商品の開発がスワンの販路を広げる。スタッフが各種の業界技能コンペに参加するように奨励することは、本人に自信を持たせることができると同時に、スワンの最高のPRになる。
4. 新しいチャレンジ:スワンは親会社であるヤマト運輸と共に、障がい者雇用を推進している。例えば、ヤマト運輸が 精神障がい者と組んでポスティングの雇用を創出したり、スワンが全身不随の障がい者に注文データ入力の仕事を発注したりしている。また、アートの分野にも 積極的で、カフェの空間を若いアーティストに発表の場として提供すると共に、スワンの知名度もアップさせている。
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海津さんの「障がい者も健常者と同じ仕事ができる」という理念は参加者たちの好奇心を掻き立て、大きな話題になった。多くの人の、スワンがどのように経営 を持続させているのかという疑問に対する海津さんの答えは皆を驚ろかせた。スワンは、日本で民間企業として登録しており、政府からの支援はない。企業経営 で肝心なのは、持続的に市場のニーズを掘り出し、夜中もパン作りをするなどの新しい運営システムを絶えず試すこと。もっと重要なのは障がい者の特徴を発揮 させることで、例えば、障がい者の優れた集中力という利点を利用し、手作業を繰り返す仕事を奨励する。海津さんは、日本においてスワンは単純なパン屋さん ではなく、もっと多様な経営システムを開拓し、パンのほか、ドリンク及び食事も提供していると述べた。海津さんのお話は、多くの参加者に社会起業家ならで はの創意工夫の経営理念を感じさせるものだった。今回、訪問のスポンサーである在日企業家Bosquillonさんもサロン等に参加した。

5月19日午前、海津さんは上海のパン屋を数軒見て回り、上海のベーカリー事情を考察した。上海のベーカリー業界はまだ飽和期に入っていないが、入るのは時間の問題で、これからは競争がどんどん激しくなっていくと指摘した。午後、海津さん一行は「愛の家」(Home Sweet Home)と いう浦東孫橋地域にある慈善団体を訪問した。「愛の家」は障がい者に就労機会を提供し、社会への適応を支援している社会的企業だ。愛の家は、上海で10年 以上暮らしているマレーシア国籍の女性によって2005年に設立され、ホームレス、特に障がい者に宿泊・職業訓練・就職といった一連のサービスを提供して いる。「愛の家」の陳明華さんは、海津さんに「愛の家」に住んでいる人々の状況を紹介し、彼らが働いている工場に案内して製品を見せた。

5月20日午前、上海市青聡泉児童知能訓練センターを 訪問した。2004年10月に設立された同センターは、自閉症及び発達障害を持つ児童とその家族に専門のリハビリ訓練と指導を提供する非営利専門団体。感 覚統合・行動療法個別訓練・構造化・グループ遊戯・美術・音楽・聴覚統合・カード交換システム・社交ストーリーなどのプログラムを提供している。また親の 交流活動も積極的に展開して、長期的な家庭トレーニング指導を行っており、社会全体で自閉症やその他の特殊な情況にある児童への関心を高めるよう提唱して いる。
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青聡泉の陳潔先生は語った。スワンが尽力している事業は青聡泉がサポートしている子どもたちの未来に関わっており、社会は継続的・系統的にこれらのスペ シャルニーズのある人々に注目していくべきだ。青聡泉の子どもたちすべてが将来社会で自分の居場所を見つけられることを希望する、と。青聡泉の施設では、 子どもたちのために自由に活動できるようデザインされた空間を設けていたが、先生方は窮屈な事務室で執務していた。陳先生によれば、中国では自閉症患者の 現状に対する理解と支援がまだ非常に不足しているが、自閉症の子どもに対する社会の注目度は高まりつつある。青聡泉も企業と積極的に協働しており、陳先生 は私たちに企業の協力で作った絵葉書を見せてくださったが、そこには自閉症の子どもたちの多彩な心の世界が描かれていた。

午後、一行は南京に移動し、愛徳基金会本部を訪れた。同基金会は、南京市の鼓楼地区で、知的障がいを持つ青少年を支援する愛徳慈佑院と愛徳ベーカリーを相次いで設立した。愛徳基金会の褚朝禹主任が一行を温かく迎え、南京でのスケジュールを説明した。

晩、愛徳基金会が本部を置く中華民国時代の古い洋館で、海津さんと、愛徳基金会・慈佑院・愛徳ベーカリーのスタッフ及び家族による建設的な座談会が 行われた。海津さんによるスワンの紹介を聞き、知的障がい者の家族やスタッフは非常に大きな啓発を受け、その後の交流タイムの雰囲気も非常に活発であっ た。参加者が最も興味を持ったのは、なぜスワンの障がい者は健常者と同じ仕事ができるのか。愛徳のスタッフはベーカリーの経営と管理について、企業の経営 コスト・戦略・人事管理など多くの具体的な質問をし、海津さんは一つ一つ答えた。海津さんは、知的障がい者のトレーニングは励ましとサポートを主とし、許 容的な態度を保ち、過度の要求をしてはならないと考えている。また、障がい者ならではの優れた点に注目し、彼らにしかできないことをしてもらうことを強調 した。これは多くの知的障がい者やその家族たちの大いに賛同する所であった。ある家族が海津さんに、自分の子どもは重度の知的障害があるがスワンで働けま すか、と質問をし、海津さんは絶対に大丈夫ですと答えた。スワンでは職員の7割が障がい者であり、その多くは知的障がい者だが、健常者と同じように働いて いる。

5月21日、愛徳基金会のアレンジにより、一行は南京のいくつかの非営利団体を訪問し、南京市の障がい者事業の現状について理解を深めた。まず午前中に愛徳児童発展センターを訪れた。南京市鼓楼地区にあり、自閉症の子どもとその家族にリハビリとトレーニングを提供している。良い環境と小人数教育が自閉症の児童のリハビリに良い影響を与えている。
次に訪れたのが、愛徳ベーカリーで、これは愛徳慈佑院が知的障がいのある子どもの訓練を行うワークショップだ。彼らが作った美味しいお菓子を皆でいただき、短いながらも交流を行った。海津さんは、愛徳ベーカリーの障がい者スタッフはとても優秀で、スワンの最も優秀なスタッフにも負けていない、と語った。
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こののち、一行は愛徳慈佑院を見学した。慈佑院は2002年に創設された、南京で初となる知的障がい者サービスを専門に行う非営利団体で、16歳から40歳までの知的障がい者と軽度の精神障がい者を対象としている。
午後、一行は南京市の二ヶ所の障がい者支援団体を訪問した。鼓楼地区の愛心助残協会聡霊老人の家で ある。住宅街の一角にある聡霊の家は、聴覚障害のある在宅の高齢者たちにさまざまな活動を提供し、彼らの生活を彩っている。聡霊の高齢者たちは、海津さん の来訪を暖かく迎え、美しい手工芸品をプレゼントして交流を深めた。聡霊の余主任は彼らの活動ビデオを見せ、聴覚障がい高齢者の知られざる一面を紹介し た。

5月22日は、海津さんの上海での最終活動日となった。午後、NPIとGLIの共催により、海津さんと地元公益団体30人余が参加した交流会が行わ れた。海津さんの紹介を伺ったのち、スワンモデルを中国でも実現できるか、ということが最も関心を集めたが、海津さんは、スワンの経営理念はどこでも実践 できるが、障がい者就労支援をする社会的企業は、ベーカリーにこだわる必要はないと語った。北京から参加したコミュニティ・アクションの宋慶華代表は、海 津さんとは三回目の対面だったが、スワンモデルの成功を以下の3点に総括した。
1.人の能力の発展に注目し、その育成を重んじる
2.企業管理と人材開発を重んじる
3.持続可能な発展を前提とする
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スワンの経営の最も素晴らしい所は、障がい者の能力を最大限に肯定し、互いの努力を通じて、障がい者と健常者を共に働かせ、彼らに自信、喜び、達成感を与 えている所だ。社会的企業において、如何に効果的な管理と人材配置を行うか。スワンは、私たちが学ぶべき良いモデルである。

文責:丁一帆

翻訳:楊怡雯・松江直子

This post is also available in: 簡体中国語

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