2011/10/18 by Matsue

【藤田和芳】大地を守る会―藤田和芳代表との交流記録

2011年9月8日、、第二回富平LEAD and Beyond来日研修の一行は、日本の有機農産物宅配の草分けである大地を守る会の六本木にある事務所を訪問し、藤田和芳代表及び経営政策チームの高橋哲氏からお話を伺った。
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冒頭、藤田代表から挨拶があった。「3月の震災に対し、中国から多くの暖かい援助をいただき、特に富平学校からは多額の義捐金をいただいたことに心から感謝する。日中の生産者間、富平学校のような民間との交流を強めて、中国との関係を今まで以上に良くしたいと望んでいる」

次に高橋氏が大地を守る会の概要を説明した。
現代は、食品を作る人と食べる人の関係が断絶しているが、そうではない、お互い顔の見える信頼関係を重視している。また、人と地球がつながる、環境に負荷をかけない、次の世代につなげる農業を目指している。1975年にNGOとして出発し、1977年に流通部門が会社を設立。本社は千葉県、年間売り上げは146億円、会員は関東一円の9万人、生産者会員は2500人ほど。2011年、持続可能な第一次産業の発展を目指す社会運動をやるNGO部門と会社を統合し、「社会的企業」として再出発した。

主な業務
● 有機農産物宅配―厳しい基準を独自に作成、担当者が生産現場に赴いて話し合い、信頼関係を構築。生産履歴のデータを公開し、トレーサビリティを確保するとともに第3者認証により信頼性を担保、入荷したものを分析検査。売り上げの80-90%は一週間に600種類のものを提供するカタログによる販売。安心安全のためにコストがかかるので、一般の農産物より1-2割高くなる
Eコマース―会員以外でも食品・加工食品・雑貨をネット購入できる
● スーパーや専門店への卸業務
 自然住宅事業―国産の自然素材を作った住宅づくり
 
ミッションのための活動
● 日本の第一次産業を守る―有機農産物・無添加食品販売事業、フードマイレージの提唱
● 人々の命と健康を守る―反原発運動の支援、反GM(遺伝子組み換え)
持続可能社会の創造―冬至・夏至のキャンドルナイト(世界で600万人が参加するエコイベント)、海外支援、フェアトレード、勉強会(優れた生産技術の共有により生産者をバックアップ)、年1回の大集会(生産者・消費者・スタッフ交流の場)、稲作・収穫体験プログラム(人気の消費者・生産者交流イベント)

その後、藤田代表から、大地を守る会の創業物語について、詳しい話を伺った。
有機農業運動が観念的にならないようにいつでも実践的に物事を考えてきた。生産・流通・消費の三つの段階が同時に新しいものに変わったときに大地を守る会の事業は動き始めた。また、組織のルールとして、人や他団体の悪口を言わないことや会議では多数決を採らず、全会一致を目指して粘り強く話し合う。組織の形を固定化せず、いつも社会の変化を良く見て柔軟に形を変えたことが、現在の成功につながった。起業する人に伝えたいことは、「立ち上がりの頃の困難を恐れるな」「3年間は、低賃金・重労働を我慢」の2点。

ひよこのエピソード
韓国の自然農業・養鶏の指導者・チョ・ハンギュ(趙漢珪)さんから聞いた話…「ひよこが孵化したら最初の一週間は絶対にやわらかいエサを与えてはならず、硬い玄米を与えなさい。初めはうまく食べられないが、そのうち食べられるようになる。そうやって、一週間から10日経つと、胃袋や顎が丈夫になり、病気をしない鶏になる」人も、最初の困難を経験すれば、のちのちの困難を乗り越える力が身につく。

つぎに大震災に対する同会の取り組みを伺った。社員が炊き出し・物資輸送などのボランティア活動に従事するほか、会員から1億円(過去最高額)の義捐金を集め、会の生産者や関係メーカーに渡したり、生産者間の支援の橋渡しをした。最大の問題は放射能汚染で、消費者(特に乳幼児の親)からの安全性を確認する問い合わせが殺到、これらのニーズに応える一方、福島の生産者を守らねばならず、「福島・北関東がんばろうセット」・「西からの応援野菜セット」・「子供たちのための安心野菜セット」という新しいセットを開発した。3800万を投じて各種の放射能測定器を導入し、検査体制を強化したため、新しい会員が増えた。他にも他地域への移住支援など、様々な支援を行った。

質疑応答
Q: 消費者の行動を正確に分析し把握したのが成功の鍵では?
A: 生産者への働きかけがよかった。全量引取りを約束するので、安心して作ってもら
える。しかし、こっそり農薬を使ったり、他に転売した農家とは即取引を停止した。
Q: 学生運動失敗の絶望をどう乗り越えたか?社会改革のためになぜ農業を選んだか?
A: 失敗の原因は、頭でっかち、過激、大衆の支持を得られなかったこと。上から社会を変えようという観念的で思い上った考えだった。私自身は東北の農村で生まれ、東京の大学に入って社会・政治を変えようと思い込んでしまった。それで敗北したのならば、私の行く道は再び農業だと思った。社会の産業の最もベーシックなものは、第一次産業。そこに立ち返って、そこから社会を変える運動をやろうと思った。人間の生命行為の根幹は「食べる」こと、そこに目を当てたら、社会の矛盾はそこに凝縮して表現されている。食べることと農業の矛盾に自分が関わったら、社会を変える力がわいてくるのではないかと思った。今振り返れば、農業と消費者を組織するところに自分の運動の立脚点を見出したことは、私にとっては結果的にとても正しかったと思う。食べることや農業という話題は、どんな政治家でも大学の先生でも、だれとでも話ができ、説得できる。
Q: 震災後、すべての食品の検査ができているのか?基準は?
A;  地域や畑も分散している為、100%検査するのは不可能。しかし、水素爆発後、最初にでてきた野菜を測定すると、後は推定できると考える。 基準はシンチレーションサーベイメーターで入荷したすべての野菜のおおよその数値を出し、次にガンマ線スペクトロメーター5台を使って疑いのあるものを精査(10ベクレル)し、更にゲルマニウム半導体検出器で(1ベクレル―検出限界値)検査し公表。
Q: 核やGMに反対するのは、生産者の利益に反するから?それとも理念から?
A: 目の前の誰かのために反対しているのではない。もっと深刻な被害を人類に実際に与えている。世界にも影響を与える可能性がある原発を日本は54基も持っている。人類の未来のために脱原発を人間の良心にかけてやる。
Q: 独自の基準は既存の有機農業基準と関連があるのか?第三者認証の費用は?
A: 日本政府の基準とは関連があるが、我々の基準は30年以上前からあり、政府は最近作った。たとえば、政府の承認農薬には4270種類あるが、我々はそのうち377種を禁止している。第三者認証の費用は我々が負担。包括契約をしている。
Q: 生産者も会員として位置づけるのがよくわからない。契約制ではないのか?
A: 会員でなければ契約しない。運動全体を了解してもらう。会費を払うとか消費者と交流をするなどの会員の義務がある。
Q: 200人の社員でどうやってこんなに多くの商品の質を確保できるのか? 放射能検査で不合格になった場合の処理は? 有機農産物のシェアは? 政府との関係は?
A: 正社員以外に非正規社員が200人いる。下請けもいるので、総合力で成り立っている。放射能汚染は国や県が検査を行っていて、500ベクレル越えは市場に出回らない。 大地を守る会でも実際には超えた例がないが、もし出たらどうすべきか悩んでいる。シェアは日本の全ての農産物のうち、有機の割合は、0.18%。転換中有機を含めても5-7%。大地を守る会のシェアはそのうち3%。政府との関係は以前に比べていい。学生運動の仲間が役職についている。
Q: 利益の分配は? 社員の給与レベルは?
A: 株主は21000人いるが、配当はしていない。給与レベルは普通だろう。
Q: 食品のほか住宅建設業など、分野をまたいで事業をやる際の強みは? 住宅業だと大きな資金も必要になるのでは?
A: 大地を守る会の消費者の興味は食べ物―家―林業とつながっている。家の勉強会をやると、会員の中から100―200人が参加する。戸建てなら今の資金で足りているが、大規模マンションをやるなら足りないから銀行から借りなければならない。数年後には株式上場の予定。一般マーケットから資金を調達できるようになる。
Q: なぜ就職先として若者に人気があるのか?また、日本・中国とも農村の若者は外にでていく傾向だが、日本では教養のある若者が農村に行くと聞く。大地を守る会ではどうか?
A: 若者の多くは農業・平和・環境に興味があるが、NGOでは給料が安いため、大地を守る会の待遇が魅力的なのだろう。また、将来農業をやりたい社員もいる。年に1-2組のカップルが退職して、就農する。長野県のある村では4組の大地を守る会カップルが入植した。かれらのほかにも優秀な大学を卒業した22組が入植。しかしなかなか農業で食べられないので、そのうち一組の奥さんは、村に法律相談サービスが欠けているとして、弁護士になった。
Q: なぜロゴがひとつではないのか?
A: 多様性を大事にしているから。全部で24種類ある。ひとつのものにこだわらない。

その後一行は、事務所一階にある御膳房にて藤田代表と夕食を供にした。最終日の総括では、ひよこのエピソードが印象的だったとの声が多く挙がった。

文責:松江直子

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