2011/10/14 by Matsue

【海津歩】スワンベーカリー―海津歩社長との交流記録

2011年9月5日、東京・赤坂の日本財団会議室において、第二回富平LEAD and Beyond来日研修の一環として、スワンベーカリー海津歩社長からお話を伺った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スワンは現在全国に27店舗、302名の障がい者が働き、そのうち七割が知的障がい者だが障がい者の店ということを表示していない。月10万円以上の給料を払い、国からの補助金7万をあわせれば、生活できる。雇った以上は長所を活かして戦力化することを引き受ける。できないことをできるようにするのが我々の使命でありノウハウ。加盟店からは障がい者を戦力にするノウハウが上がってくるので、それを共有する。企業のCSRは働く人を夢中にさせること。人は指示命令で動くが変わらない。人が本当に変わるのは、「腑に落ちたとき」のみ。人は必要とされて伸びる。シングルキャストでスペアがいないので、一人前として期待していることを伝えると人は変わる。「特別扱いはするけれど特別視しない」のがスワンのノーマライゼーション。我々が加盟店に望むのは、経営を持続させて障がい者の給料を確保し、彼らをハッピーにさせることだけだ。

*設立の経緯、労務管理、商品開発については以下を参照:
愛と勇気と正義の経営―スワンベーカリー http://csnet.asia/archives/248#more-248
海津社長@GliPub http://csnet.asia/archives/922

・箱作りの達人のエピソード
ある社員は、菓子箱を作る研修を3ヶ月受けたが、作れなかった。しかし、3ヶ月と一
日目、箱に触り始めた。二日目、箱を叩き始めた。三日目、山のように作り始め、トレーナーは泣いた。この時間は、もしかしたら彼のお母さんも待ったことがない時間だったかもしれない。職員を一旦雇ったら、「認めて、信じて、支え続ける」。障がい者は自己否定のかたまりなので、今の君でいいと支え、自信を持たせる。ローギアが一番重い。本人と会社に信頼感が生まれたとき、何かが生まれる。この社員は他のこともすぐにできるようになった。

社会企業のゴールはその事業を世の中で当たり前にすること
そのためには経営を持続させなければならないが、人から感謝される仕事=いい事業をすることと、働いている人の心を満足させることの二つが大事。自分だけが大きくなるスケールアップではなく、「スケールアウト=自分のコピーが増殖して大きくなること」を目標としている。昨年は28カ国から3205人が見学に来た。当たり前への道のりは長い。

これからはハイブリッドな連携の時代
社会のためになる仕事というのは、縦割りの行政の間に零れ落ちている仕事。その改善をするには、必然的に横断的な取り組みが必要。そのためには横断的な専門家の関与、つまりハイブリッドな連携が必要。これからはボランタリー経済とマネタリー経済が融合した経済の時代。法人格を超えた、個人や企業、行政、NPO、地域社会などがつながりあったハイブリッドな連携の時代だ。
 例1:地元との連携―銀座ミツバチプロジェクト
屋上緑化・地産地消・地域活性化・農村(耕作放棄地に菜の花を栽培)と都市の交流などの多様な意義を持  つ銀座ミツバチプロジェクトに参加。
 例2:企業との連携―ローソンへのパンの卸と芝浦海岸通店でのパンの製造販売指導

質疑応答
Q:いままで最も大きな困難は?27店舗もあるなかで丁寧に人を育てるやり方は?
A:鍵となるのは理念の共有と維持。大変だが、それによって品質を保つ。それができるところのみとチームを組む。人材育成は、開店前の管理者の指導に2―3ヶ月かける。2ヶ月に一度位店舗をぬきうちチェックしランキングを作ってフィードバックする。「お金を払っているのだから、教えろ」にならないよう、加盟店からロイヤリティをもらっていない。加盟店とスワンが互いにインスパイアする関係。それぞれの組織の特徴を生かした経営をして、障がい者を結果的にハッピーにしてくれればいい。

Q : どうやって短期間で理念に合う店をさがして加盟店にするのか?
A: 加盟店を増やすことが目的ではないので、さがさない。それでも加盟を希望する人が多いが、こんな大変な仕事は自分達だけで沢山。ほんとに根性がある人だけしか残らない。

Q: 中毒を出したことは?また、親会社からは独立しているのか?
A: 食の安心安全は一番重視しており、何か問題が起こったら即看板を下ろせと言っている。ぬきうち検査の成績が悪かったら、即指導が入る。親会社とは財務的に無関係。

Q: スワンの品質保証体系は独自のものか、国の統一基準か?
A: 衛生管理などは当然国の統一基準。パン作りに関しては独自。

Q:職員と管理者の情況は?
A :三つの直営店のスタッフは60人、そのうち30人が健常者、30人が知的障がい者を主とする障がい者。管理スタッフは、3人の店長、3人の工場長。最大の特徴は健常者と障がい者が入り乱れて仕事をしている事。健常者が障がい者を指導するのではない。

Q: 障がい者の募集は? 売り上げは?
A: 職業安定所。3つの直営店の売り上げは2億円、そのうち4割位が店以外の収入。宅急便を使った業務や野菜の売り上げなど本社の売り上げは3億5000万位、合計の売り上げは5億6000万ほど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
海津さんの退席後、メンバーは会場をお借りしてスワンの夕食をいただきながら、感想を話し合い、李代表は以下のように解説した。「海津さんは理念ではなく、すべて実践の中から常識にとらわれない解決策を生み出す。ヤマト運輸でもアイディアマンだった。福祉やパンの専門家でもなかったからこそ常識にとらわれずここまで来た。実践あるのみだが、このやり方が福祉専門家の批判を受けることもある。現場の人を信頼し、サポートし、いちばん難しい人を育成してチームにしている。障がい者を売り物にせず、本業の質とアイディアで勝負。日本の社会的企業には“儲からない・薄利で継続するしかない”という共通認識がある。儲けてしまったら、社会的企業としての根幹を壊すことになるかもしれない」

メンバーのコメント
・参考になる既存モデルがない事業で、批判を受けながらやっていくところがすごい。
・美しい事業だ。
・障がい者雇用の香港のある配送センターを見学したが、賃金は低いし、一日に一つのことしかしていないし、ずっとそれをやるしかないようだった。スワンは違う。
・スワンの難しいところは、チェーン店が拡大しても、それはモデルの複製ではなく、すべて違うところ。終わりのない挑戦だ。
・中国の慧霊は、障がいをセールスポイントにしている。

最終日の総括では、スワンから得た啓発として、チームビルディングの素晴らしさ、常に細かい所の改善を重ねること、当たり前になることがゴール、というキーワードが挙げられた。メンバーに中国や香港などのいくつかの障がい者雇用団体に関する見聞もあるなか、海津さんのお話がメンバーの心に深い印象を残したことが窺われた。

文責:松江直子

This post is also available in: 簡体中国語

投稿記事一覧:

Facebook Twitter 微博

CATEGOLY