2011/10/01 by Fancy

雲南「三江併流」視察2:体験記

雲南省の北西部に、三江併流地域と呼ばれている場所があります。この地域は、中国のチベット高原に源を発する三つの川、金沙江(長江)、瀾滄江(メコン川)、怒江(サルウィン川)が雲南省北部のデチェン・チベット族自治州及び怒江リス族自治州を平行に流れている1,698,400haに及ぶ地域で、14の保護区からなります。この三つの川は、時には3000mの深い渓谷を縫って流れ、周囲の山々の高さは6000mにもなり、特異な景観を形作っています。動植物層が非常に豊かなため、2003年にユネスコの世界自然遺産に登録されました。

白馬雪山自然保護区は、三江併流地域の一部であり、284,610haという広い面積を有しています。保護区は5年前から研究者を対象に「科学考察ツアー」を実施しており、一時は毎日40名限定で観光客も受け入れていました。しかし、専門的なガイドやエコツアー運営のノウハウ、成熟した観光ルートがまだできていないため、現在、一般観光客向けのツアーは再開していません。今回、私たちが体験したツアーは、もっとも内容が充実しているコースで、「動植物や伝統文化の宝庫であるこの地域の価値をぜひ生かしたい」と強く思う保護区局長肖林氏が、自らガイドになって案内してくれました。「保護区の面積は、きわめて広いため、地域の発展を考えずに、ひたすら保護を宣伝しても住民の支持を得られません。地域づくりを織り込んだ自然保護を実現するために、これからはエコツアーをやってみたいと思う。そのためにも、ぜひ屋久島の方々と交流したい」


肖林さんはチベット族の方

 8月25日午前中、視察団一行6人は、車が入れない林の入り口で2組に分かれました。高山病で体調を崩した2人はそのまま車でシャングリラへ戻り、残りの4人は予定通りに徒歩で目的地へ向かいました。


健闘を祈る 

林を歩きながら、肖林氏がこの地域のことを紹介。先ほど車を降りたところは現在工事現場となっています。道路建設はあちこちで行われていて、中国の建設ラッシュを何度も目にします。山間部の発展は交通にかかっているので、地方政府は力を入れているそうです。しかし、建設労働者に対する賃金未払い問題が深刻で、正月に帰省できず、仕方なく工事現場に留まる者もいます。給料の代わりとして、勝手に保護区の薬草やキノコをとって売ったりしているそうです。また、ごみのポイ捨てもひどくなり、保護区は彼らに対する環境教育に時間を費やさなければなりません。しかし、労働者は入れ替わりが激しいので、教育をいくらしてもまた新しい人が来るため、終わりがないです。そんな話をしながら、肖さんはタバコの吸殻やインスタントラーメンの袋などのゴミを拾っていました。

標高が3500m以上がある地域なので、空気が薄くて体力もすぐになくなります。途中、休憩を取る時に利用したベンチはみんな肖さんたちが廃材を利用して作ったもの。小さいながら立派な展望台まであります。(展望台も手作りです)

 

1時間後、やっとサービスセンターに到着。、日本のどこかの自然学校で見たような風景が目の前に現れました。山の麓に二棟の木造建築がぽつんと建っています。川や沼の上に、長い桟橋が通っています。もちろん、これも肖さんたちの作品。

宿泊棟は石と木を使いチベット族の伝統手法で作られた二階建て。ここは公共ライフラインが通っていないため、電気も水道も自分で解決しています。太陽光パネルと蓄電池で夜の照明を保障し、足りない分は水力発電の装置を自力で作って解決しました。風力発電の装置も見えましたが、寄付側が技術を提供しなかったため、使われていないそうです。近くに5000m以上の白馬雪山があるお陰で、ここは水には恵まれています。

晩御飯はまかない形式で、職員たちと一緒に食卓を囲みました。チベット族、リス族、ナシ族、保護区にはいろんな民族のスタッフが集まっています。何でもできると言われている提布さんはヤクの肉料理やキノコ料理を作ってくれて、どれも美味しかった。明日は一日の徒歩コースなので、皆さんは夜も早々に休みました。シャワーはないが、トイレと洗面台はちゃんと付いています。

寝る前に、外に出てみたら、「わ~!満天の星空!」。天の川がくっきり見えます。そう言えば、6月に屋久島の海辺で見た星空も同じくらいきれいでした。しばらく一人で贅沢な時間を堪能しました。

翌日の朝、空は少し曇っていました。ここの天気は一日のうちに何度も変化するため、あまり心配しなくなりました。白馬雪山に向かう5人は、草花やキノコを観賞しながら前に進みました。途中で雨が降ったりやんだり。山を自由に歩く牛やヤクと遭遇したり、保護区の職員が手作業で作った貯水池を見せてもらったり、長い道のりも全然あきません。また、岩ヤギの糞を採集して遺伝子の研究をしている大学院生がここで毎日ヤギを追っているそうで、肖さんは時々大きな望遠鏡を出して、山を観察していました。

 

昼ごろに、やっと最初の目的地に到達しました。夏の間、チベット族は牛を連れて山に登り、標高4000mの牧場で過ごします。この時期、早い人はもう下山を始めていました。

私たちが訪れた小屋には、麓から来ている村民が2人で住んでいました。牛は村の各家庭に頼まれて預かったもので、取ったミルクは飲まずにチーズをつくり、売ったお金はみんなで分けるそうです。責任重大なので、みんな真剣にやっているそうです。

チベット族の牧場体験の醍醐味と言えば、「酥油茶」(バター茶)と「ツァンパ」です。前者は、ヤクのミルクを何度もかき混ぜて、浮いてくる油にお茶を入れた、ちょっと癖がある飲み物です。高山病によく効くと言われて、メンバーたちは何杯も飲み干しました。「ツァンパ」はそば粉を「酥油茶」に入れて、自分でもみ込んで作る食べ物。陶芸家の山下さんは慣れた手さばきで上手に作って、さすがと、皆さんにほめられました。

牧場のご主人ガサンツリさんがミルクを混ぜながらチベットの歌をうたってくれました。返礼として、松本出身の山下さんも長野の歌を披露。言葉は通じなくても、心が一瞬で通じ合った光景でした。


写真:李攀

肖さんによると、保護区ではよくお客さんをここに連れてきて、牧民の生活を体験させるそうです。時に、スタッフが同行しなくても、牧民たちは慣れているから独自でおもてなしをします。キャンプ好きな人は、小屋の近くにテントを立てて、泊まったりしますし、日帰りの人なら、行きは昼食、帰りは「午後のおやつ」をいただくことができます。費用は保護区が参加費から出しています

休憩ができて、おなかも心もいっぱいになったので、私たちは引き続き雪山へと向かいました。標高4000m、富士山より高いところを一日歩きます。肖さんのスピードには、どうしても追いつかず、途中から諦めました。私たちは私たちのペースで進むと、梅里雪山で決めたことを、心に銘記しました。

王冠の形をする白馬雪山主峰、6540mの「ジャラジャニ」は、梅里雪山の守護神と言われています。典型的なカール地形が最高の額縁なり、山の美しさを最大限に表現してくれています。目の前のパノラマに吸い込まれるように、私たちは足を動かしました。氷河もだんだんきれいに見えるようになり、「ジャラジャニ」のすぐしたに馬が群れているのも見えました。そこまで行きたいと思いながら、花畑で写真をたくさん撮ったら、突然雨が降り始めました。しまった!晴れていたから、油断して雨具をベンチのところに置いてきてしまいました。雨がどんどん激しくなり、主峰も見えなくなりました。仕方なく、前へ進むのを諦め、急いで折り返すことにしました。

その後は、お昼を食べた牧場でスーパー酸っぱいヨーグルトを勧められましたが、ヤクのミルクのほうがそれより遥かに美味なため、勧められるだけ飲んで飲んで、3杯4杯も飲んでしまいました。おかげで、2人ほどおなかを壊しました。私もちっと怪しかったが、何とか・・・・・・

白馬雪山の氷河は白い帯のように山を飾り、夏はその一部が無数の渓流となり、潅木や草原、原生林を通過し、最後はサービスセンターがある曲宗貢で一つの川になります。この地域は、標高の幅が広いため、いろんな気候形態の特徴が見られますし、世界中でもっとも動植物の種類が豊かな地域と言われています。肖さんたちはこの土地を愛し、熟知していますし、地元の人たちとも長年の関係づくりの成果でいまはいろんな共同事業を行っています。10月に、彼らは始めての海外経験として、屋久島を訪問し、同じく環境のことや地域のことを考えている屋久島の方々と交流する予定です。標高0~2000mの屋久島と標高2000m~6000mの三江併流ですが、両方とも世界自然遺産登録地であり、照葉林文化圏にある地域です。交流によってどんなものが生まれるのか、いまからわくわくしています。

 文・写真: 屋久子

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