2011/09/29 by Matsue

【馬軍】アップル社のサプライヤーによる環境汚染についての再調査を環境保護団体が実施

2011年8月31日、公衆環境研究センター、ダーウィン環境研究所、自然の友、環友科学技術研究センター、および南京緑石の5つの民間環境保護団体は、アップル社のサプライヤーによる環境汚染についての調査報告書を共同発表した。 「アップルのもう一つの顔2」と題するこの報告書は、アップル社による汚染が生産の拡張とともに広がっており、現地の環境や住民の健康への大きな脅威となっている、と指摘している。1月20日に発表された報告書の第一部「アップル社のもう一つの顔」と合わせ、2回にわたって調査を行った結果、27のサプライヤーで環境関連の問題が見つかった。報告書が発表される前の晩、アップル社は、環境NGOと電話でコミュニケーションをとる意思があることを初めて表明した。これを受けて専門家は、メーカーが製品の生産過程全体に責任を持つ意向があることを示す良い兆候だとしている。

アップル社は、サプライヤーによる環境汚染について、環境保護団体への回答を再三拒否してきた。アップル社のサプライヤーの多くが違法に汚染物質を排出している。専門家は、メーカーは、生産過程全体に対して責任を負うべきだと指摘している。

公衆環境研究センター、ダーウィン環境研究所、自然の友、環友科学技術研究センター等36の民間環境保護団体は、昨年4月から実地調査を行い、国際的に名の知られたIT企業29社のサプライチェーンにおいて、基準を超過して重金属が排出されていることを明らかにし、調査報告書を公表してきた。更にこれらの企業と連絡をとり、内28社から回答を得た。その結果、多くの企業が汚染の深刻さを認識するようになり、全世界で展開される生産と購買による汚染が拡大しないよう対処するようになってきている。しかし、アップル社のみが、「サプライチェーンに関する情報を開示することはできない」と、回答を拒否してきた。

1月20日、36の環境NGOは、実地調査の結果をもとに、「IT業界における重金属汚染に関する調査研究報告書(第4期): アップル社特集」を公表した。同報告書は、アップル社のサプライチェーンで深刻な環境汚染と労災問題が発生しているとし、「リンゴから毒素を除去」することを提唱した。

2月15日、アップル社は、「サプライヤー責任2011年進捗報告書」の中で、サプライヤーの聯建科技社にて、137名が有害な溶剤であるノルマルヘキサンで携帯電話のスクリーンを拭く作業を行ったため、中毒症状を引き起こしたことを公表した。しかし同報告書は、いかにサプライヤー管理を強化するかについては触れていなかった。

公衆環境研究センターの馬軍主任は、IT製品のメーカーが購買の際に価格だけを考慮し、環境方面のパフォーマンスを考慮しないと、サプライヤーが基準を下げて注文を勝ち取ることを奨励することになり、聯建科技社でおきた違法なノルマルヘキサンの使用のような悲劇の直接的原因となる、と話す。「アップル社は、中国におけるサプライヤーの業務にかなり深く介入しています。サプライヤー管理を強化することはできるはずです」

民間環境保護団体は、多くのサプライヤーが違法な排出をしていると指摘

2月から、自然の友の武漢チーム、南京緑石、ダーウィン環境研究所等の多数の環境NGOが、武漢、広州、昆山、大原、深セン等に出向いて調査を行った。7ヶ月の実地調査を経て、アップル社の中国におけるサプライヤーのもたらす汚染は深刻であり、多数の地方で環境や市民の健康に危害をもたらしていることがわかった。

複数の情報筋によると、アップル社は、年の初めにiPad2用プリント基板の第2期サプライヤー7社を確定した。中には、イビデン、メイコー等の著名な台湾系・外資系企業が含まれていた。その内、メイコー電子は、広州工場による深刻な汚染のため、現地の「汚染企業リスト」に度々掲載されている。今回、自然の友武漢チームの責任者である曾祥斌氏は、現地のボランティアとともに、メイコーの武漢工場で3ヶ月の実地調査を行った。

曾氏によれば、メイコー武漢工場の東側には、道路とグリーンベルトを挟んで、約150メートルの長さの排水溝がある。排水溝とその先の南太子湖の水面は灰白色で、白色の泡や黒色の浮遊物が浮かんでいる。南太子湖は揚子江へと流れ行くため、汚水も最終的には揚子江へと流れていく。「気温が高いときには、風に乗ってきた鼻につく悪臭が漂い、咳き込んでしまいます」。外部のモニタリング機関による検査の結果、汚水には重金属の銅とニッケルが含まれており、排水溝の先にある湖の泥には1キロ当たり4,270ミリグラムの銅が含まれていることがわかった。これは、揚子江の中流域の他の湖と比べると、56から193倍に当たる。「今の世代は、汚水を飲んでいますが、次の世代は毒の水を飲むことになるでしょう」。南太子湖で養殖業を営み、調査に協力した万正友氏は言う。

調査によって、アップル社のサプライヤーの多くが市民からのクレームの対象となっていることが判明した。江蘇省昆山の凱達電子と鼎鑫電子は、廃ガスや騒音、廃水等の問題により、度々クレームを受けている。周辺住民によれば、これらの企業から放たれる異臭を伴う気体のため、窓を開けることができず、夜中に息が苦しくなって起きてしまうこともあるそうだ。地元の万方水岸コミュニティ幼稚園と凱達電子は壁を隔てて隣り合わせだ。園児の童海乙ちゃんは、「幼稚園にいるとき、時々変な臭いがして、ママが迎えに来てくれた時には、めまいがすることもあるんだ」と言う。お母さんは、海乙ちゃんは頻繁に頭痛やめまい、鼻血に悩まされておりとても心配だ、と語る。子供の健康のため、多くの住民は子供を別の地域に住まわせている。凱達電子の隣にある同心村の人々によれば、凱達電子が工場を建ててから10年の間に、もとは澄みきっていた小川の水は、墨のように真っ黒になってしまい、これは工場からの排水や廃ガスと大きく関連している。

8月31日、公衆環境研究センター、ダーウィン環境研究所、自然の友、 環友科学技術研究センター、南京緑石の5つの環境保護団体は、「アップル社のもう一つの顔2」調査報告書を共同で発表した。以前に発表された報告書の第一部「アップル社のもう一つの顔」と合わせ、2回の調査によって、メイコー、イビデン、フォックスコン等の有名外資系・台湾系企業を含む27に上るアップル社のサプライヤーに、環境問題があることが明らかになった。

環境保護団体は、メイコー電子(武漢)公司、凱達電子及び鼎鑫電子に対し、それぞれの企業に書簡を送り、環境問題の管理状況について説明を求めたが、8月30現在までで回答は得られていない。

アップル社

環境保護団体による2回にわたる調査の中で、27社にのぼるアップル社のサプライヤーが環境汚染問題を起こしたことがあることが明らかになった。アップル社の「サプライヤー責任2011年進捗報告書」には、36の違反事項が列挙されているが、環境汚染問題については触れていない。5ヶ月におよぶ期間中、環境団体らは数回にわたってアップル社に連名の書簡を送り、対話の制度を確率し、サプライヤーの環境問題について議論しようと試みたが、一度もアップル社から回答を得ることはできなかった。

「アップル社のもう一つの顔2」が発表された8月31日の前の晩、ついにアップル社から公衆環境研究センターにメールが届いた。アップル社のサプライヤー担当者だとするこのメールの筆者は、アップル社は、環境保護団体の報告書にもとづき、該当するサプライヤーの環境管理情況について調べ、環境保護団体と対話の場を設ける意思があり、非公式な電話会議を通じてコミュニケーションを取りたいと表明した。

これまでは、環境保護団体から指摘された環境問題やその解決方法から逃げてきたことからすると、今回のメールは良い兆候だ、と馬軍氏は述べる。次のステップは、いかに汚染問題を解決するかだ。

有名サプライヤー

36のNGOによる相次ぐ報告書では、有名IT企業29社について、サプライヤーの汚染問題が指摘された。その後、多くの企業が汚染の深刻さを認識し、監督管理についての情報開示を始めるようになり、サプライヤーに環境責任の意識を持たせ、生産・購買過程での汚染拡大の防止に努めている。

例えばシーメンスは、自社のサプライヤーのリストと公衆環境研究センターによる「汚染地図」データベース上の情報を自動的に比較できるシステムをつくった。サプライヤーの違法行為が見つかった場合、シーメンスのCEOと購買部のトップの名義でサプライヤーに電子メールが送られ、迅速に環境保護団体と連絡をとって対応措置を開示しなければ、シーメンスとの協力関係が解消されるかも知れないことが伝えられるのだ。

またノキアは、サプライヤー検索システムを設立している。環境関連の違法行為を取ったサプライヤーを厳しく追求し、対応措置をとるよう促すだけでなく、新しいサプライヤーの審査を行う際、「汚染地図」データベース上に違法行為の記録があるかどうかを確認している。また、年度毎の監査でも、このデータベースを利用してサプライヤーの環境情況をチェックし、監査の重要な部分としている。

メーカーは生産過程全体に責任を負うべきだと専門家は指摘

アップル社はその「サプライヤー行動規範」の中で、有害物質・固形廃棄物・廃水・雨水・廃ガス等による環境影響について細かい規定を設けている。しかし、アップル社のサプライヤーは、しばしば環境関連の違反問題を引き起こしていることが調査によって明らかになっている。このため、「サプライヤー行動規範」で、生産過程における環境責任を負うという誓いは、中身のないものだ、と環境団体は指摘する。馬軍氏は更に、アップルはサプライヤーの管理を厳格に行なっているとしながらも、問題が起きると責任を全てサプライヤーに押し付けて逃れようとしている、と言う。

清華大学で企業の社会的責任を研究している郭沛源博士によれば、国際企業の社会的責任の分野において、メーカーがサプライチェーンに対して責任を持つという理念はすでに確立されており、「拡大生産者責任」と呼ばれている。ここで言う生産者とは、メイコー電子等のサプライヤーではなく、アップルやノキアなどのメーカーのことで、自社ブランドを持つメーカーの責任範囲を株式を所有している業務の範囲以外にも拡大するという考え方だ。郭博士は、メーカーは製品の生産過程全てに責任を負うべきで、生産過程で有害物質が使用されないようにするべきだ、と言う。「能力の拡大に伴い、責任も重くなります。アップル社はサプライヤーに影響を与える十分な力を持っており、これらの責任を負うべきです」

筆者: 京華時報 夏萌
出典: http://www.chinadevelopmentbrief.org.cn/newsview.php?id=4071

関連資料

公衆環境研究センター・ウェブサイト:

「アップルのもう一つの顔」報告書(中国語)
http://www.ipe.org.cn//Upload/IPE报告/苹果的另一面_Draft+Final_20110118-3.pdf

「アップルのもう一つの顔2」報告書(中国語及び英語)
http://www.ipe.org.cn/about/notice_de.aspx?id=10282

翻訳:A.K
校正:松江直子

 

 

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