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2011/09/28 by Matsue

鳥愛でるラマ僧 扎西桑俄

扎西桑俄はチベット語で「吉祥」を意味している。扎西桑俄は青海省果洛州久治県の年保玉則神山の麓に生まれ、幼いころから鳥を愛で、観察し、描いていた。

赤い袈裟を身にまとった彼はもう30を過ぎている。27歳のときに格西(*注1)の学位を取得し、「仏教経典に精通する」堪布(*注2)となった。この仏教に造詣の深いラマは、鳥を愛でることから始め、徐々に地元住民を率いて鳥類及び動植物の環境保護活動に身を投じていくようになった。信仰を持つ彼は自然に対し畏敬の念を抱き、生きとしいけるものは皆平等であると強く信じている。かつて彼が一枚の葉を描き人に贈った時、故意に葉の上に虫を描いたのも、そうしてこそ、ここの多彩で豊かな生命を表現できるという彼の考え方の現れである。
現在、扎西と彼が立ち上げた年保玉則生態環境保護協会は、100名あまりの専業・兼業スタッフとボランティアを集め、すでに“クビワホオジロ (*注3)”と“シロミミキジ(*注4)”の2種の稀少鳥類のために保護区域を設け、それと平行して現地の動植物や気候、湖、氷河の変化などについての重要な資料を収集し続けている。
山水自然保護センター主任の呂植さんは「彼は生まれながらの科学者だ」と評価している。彼を突き動かしているものは自然に対する熱烈な愛情で、それを行動に移しているのだ、と。扎西桑俄は終始恥ずかしそうな様子で、自分はただ本心から行動しているだけだと語り、表彰式のときでさえ、ただ「扎西徳勒」(*注5)と一言述べるだけだった。

人と同じように鳥も愛する

扎西桑俄と鳥は、もう相当長いつきあいだ。幼いころ、友達と年保玉則神山の麓の牧場で鬼ごっこをしているとき、扎西桑俄は空にも神聖な湖の上にも鳥がいて、次から次へとオシドリ(*注6)、カワアイサ(*注7)、アカツクシガモ(*注8)などの可愛い鳥が羽ばたいているのを眼にしていた。
そのときから扎西はこれらの野生動物と植物を自分の最高の友達としていたのである。13歳の時、扎西桑俄は生まれ故郷を離れ、40キロも離れた白玉寺にやってきて、ここで鳥を系統的に観察し描くことを始めた。彼が鳥を描く熱心な姿を見て、周囲の人は次から次へと彼を支援するようになり、友達や親しい人からテープレコーダー、カメラ、望遠鏡などをもらった。少しずつではあるが扎西桑俄が描く鳥はだんだんとそれらしくなってきた。「かつて雪の上で、足でこの庭くらいある大きな鳥を描いたことがあるが、絵とはまさに心のままに描くものだとその時に知った」と扎西は言う。
扎西の心も鳥の世界によって開かれた。19歳で査理寺に来た時、海抜が500メートル低いと、そこにいる鳥も故郷のものとは全く違うということを知った。「以前、世界には白玉寺で見た鳥しかいないと思っていた。査理寺に来て初めて、鳥の種類がこんなにも多く、場所によってこんなにも違いがあるのだと知った。それが世界中の鳥を見たいと思い始めたきっかけでした」と彼は言う。
日に日に鳥好きな扎西の噂は広がり、現地の長老も「彼はスズメの生まれ変わりだ」と言い、彼のことを皆「鳥愛でるラマ」と呼ぶようになった。白玉寺の周囲約50kmの範囲で、傷ついた鳥を見たら、まず彼に診てもらい治してもらうのだ。
1年に何ヶ月もの長期にわたり野外で鳥を定点観察し、扎西と仲間はチベット高原の400種近くの鳥の観察記録をとった。その中のほとんどがチベット高原特有の鳥で、クビワホオジロ(*注3)やシロミミキジ (*注4)などの稀少鳥類も少なからずいた。環境保護団体の支援の下、最近扎西達はクビワホオジロやシロミミキジ のために稀少鳥類保護地区を作り、観察記録をとり続けている。

彼の鳥に対する愛は、見ている人の心を動かす。かつてある人は扎西が地面に這いつくばって巣の中の小さなクビワホオジロと向かい合い、親身になって心のうちを話しているのを見た。           「クビワホオジロよ、今後巣を作る時は地面に作ってはいけないよ。とげのある木の上に作るのだよ。そうしないとイタチとかブタバナアナグマが、君の卵を食べてしまう。だから君たちはこんなにも少ないんだよ。もう救ってあげる方法がないんだ。わかったかい?」

村の環境保護リーダー

ここ数年、気候変動の傾向が激しくなるにつれて、故郷の生態環境の悪化の程度がひどくなり、扎西も驚いている。自分の鳥に対する愛情を趣味に留めるだけでなく、鳥類や他の動植物の保護にも参与する責任があると、彼は思い始めた。
そこで2007年、山水などの環境保護組織の援助の下、扎西は「年保玉則生態環境保護協会」を立ち上げた。これは地元住民が組織した協会で、稀少動植物を保護する以外に、年保玉則の気候や、雪山や、湖や氷河の変化を観測し始めた。
現地の環境保護プロジェクト推進のプロセスにおいて、扎西の経験の一つが現地の本来持つ力を引き込むことだった。現在扎西の協会は15人のスタッフがいるが、彼と同じ白玉寺のラマがほとんどである。クビワホオジロの保護活動では、彼らは最も原始的な方法でその巣の付近にテントを建て、15人の交代制で46日間見守り、最後にはブタバナアナグマの侵害を避け、巣の中の鳥の卵を守ることが出来た。
職業の異なる多くの人々も、続々とこの協会の活動に参加している。現在63名の会員はラマ、牧蓄民、商人などの人々で、教師、学生、公務員もいる。協会のメンバーはそれぞれ自分の興味に基づいて仕事を分担し、年保玉則地区の動植物とその氷河や気候変動の観測を続けている。
活動が活発になるにつれて、更に多くの「扎西桑俄」が現れた。山水自然保護センターが催した「村の目」研修チームの、剛察県から参加した加悟才譲は、2005年から毎年ここへ渡ってくるオグロヅルの数を記録し続けている。チベット貢覚県の東巴村の仁青桑珠は、何年も前から村民のリーダーとして植樹をし、神山の緑化と保護に努めている。彼らの背後には信仰が支えとなっている。
「村の目」研修会で、扎西桑俄ははっきりと「チベット地区に適した保護方法は3種類あり、一つは伝統文化、たとえばチベット仏教の「生きとしいけるものは皆平等である」「神山聖湖」という概念の保護と伝承である。二つ目は信仰の尊重である。そして三つ目はやはり現代科学の方法を以って観察と研究に当たり、保護の法律や規則を作っていくことだと語った。

編集:申剣麗(『中国国家地理』、『中国緑色時報』などより抜粋)
写真は取材対象者の提供による
『社会創業家』2011年6月発行より翻訳して転載
http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1011_103812.pdf

資料:年保玉則生態環境保護協会
年保玉則山麓には湿地河川と放牧地区があり、中国でも有数の荒野がそのまま残っている場所である。現地の伝統文化の中で、年保玉則神山は世界のすべての鉱物を守る神であり、協会は年保玉則神山聖湖の分布図を作成し、徐々にこの関係ネットワークを更に広げ、すべてのチベット地域のネットワークを結びつけたいと考えている。彼らの系譜や伝説、お互いの関係を記録することは、チベットの生命世界の神聖な領域を記録することであり、それらを守ることで、若い世代の精神世界に生命尊重の理念が継承されていくことを図る。

E-mail:jutashi_zp@126.com__

(*注1)読み:gé xī 説明:1.チベット語の「格威西連」の略。正しい知識の意。チベット仏教のグルク派寺院の学位のこと。ラマは必須の経典を学び終わった後にレベルの異なる格西の学位を取得する。
(*注2)読み:kānbù チベット仏教において授戒を指揮する者の称号。仏教の方丈に値する言葉。
(*注3)藏鹀:クビワホオジロ Emberiza Koslowi
(*注4)白马鸡:シロミミキジ  Crossoptilon crossoptilon
(*注5)扎西徳勒:チベット語、意味はあなたに幸運を。万事思うがままになりますように
(*注6)黄鴨:オシドリ Aix galericulata
(*注7)普通秋砂鴨:カワアイサMergus merganser
(*注8)赤麻鴨:アカツクシガモ Tadorna ferruginea

翻訳:だらっくまふいめい
校正:松江直子

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