2006/10/25 by GLI Japan

アジアの社会的企業事情  ①香港編

2006年9月23日~27日の期間に、香港のNPOによる台湾の「社会企業」訪問が行われました。
GLIネットワーカーでもある伊藤健さんがその視察に参加し、見聞きしてきたアジアの社会的企業・社会起業家を取り巻く環境に関する情報を提供してくれました。

①はじめに&香港編、②シンガポール編、③台湾編No.1:大学&政府機関、④台湾編No.2:台中の社会企業&協同組合組織訪問、⑤まとめ:アジアの社会企業、の五編に分けて掲載致します。
①はじめに&香港編【目次】
<はじめに>
<香港>
●主催団体-香港社會服務聨會
The Hong Kong Council ofSocial Service(HKCSS)について
●香港政府の社会企業に対する取り組み
●香港の社会福祉系のNPOの成り立ちとポジション
●香港の社会企業の形
<関連リンク>

<はじめに>

9月の23日から27日まで、台湾に行ってきた。今回の台湾行きは、マニラのCAFO Conferenceで出会った香港大学の社会学の博士課程の院生、Terrence Yuanに出会ったことによる。彼は博士の院生として研究する傍ら、「香港大学公民社会与治理研究中心」(Centre for Civil Society and Governance)の研究員として、特にソーシャル.ベンチャーにフォーカスした研究をしている。

今回の訪問は、マニラでの会議中に、Terrenceが「9月末に香港のNPOが、台湾の社会企業を訪問するけど、イトーくんも興味ある?」との声 がかかり、参加させてもらったもの。僕にとって台湾は、10数年前に留学してから、第2の故郷とも言える国で、そこでの社会企業の実情を知る機会は、願っ てもないものであり、参加させていただいた。

ちなみに、香港では「社会企業」、台湾では「社会事業」と訳語は違うけれども、両方ともソーシャル・エンタープライズのこと。定義についていろんな 人にきいてみたが、出てくる言葉は「社会性と事業性のダブル・ボトムライン」、「収益性があり、事業として継続可能なモデル」などと聞きなれたキーワード が返ってきたので、概ね同様な定義であるようだ。ただし、日本と同じく、その定義には使われる主体やコンテキストによって、かなりの幅がある。

以下、今回のツアーでの見聞した、台湾・香港・シンガポールの社会起業事情を、まとめて報告する。

<香港>

今回の台湾社会企業考察団

●主催団体-香港社會服務聨會  The Hong Kong Council of Social Service(HKCSS)について

今回の主催団体のHKCSSは、香港のNPO団体の連合会にあたる。
会員団体は約300、HKCSSの専従職員は約100名で、主に香港のNPOの組織的発展へのサポート、社会福祉や社会政策の研究・政府に対する提言、中国や海外との交流事業などを行っている。

今回のツアーは、その政策研究を担当するグループが、特にSocial Enterprise についての研究や香港内での啓蒙活動を行っており、その一環としてHKCSSのメンバー団体に対して海外の政策・事例研究の為に企画したもの。

今回のツアーでは、このHKCSSに加盟しているNPOメンバーのうち、特にNPOの事業化を試みている団体の有志のメンバー7名が参加した。

●香港政府の社会企業に対する取り組み

香港政府は、特には、特に失業問題に対する取り組みとして、「社会企業」による社会的弱者に対する雇用の創出を政府の政策として打ち出し、政府機関による社会企業の研究、ビジネス界によるメンタープログラムの実施などをうたっている。詳細はこちら。
http://www.cop.gov.hk/eng/concept%20se.htm

社会的企業による雇用創出の支援のため、政府は2001年に、「Seed Money Project」として総額5,000万ドル(約8億円)の予算を社会企業のスタートアップ資金とし、自立的な事業プランであること、人件費が総予算の 60%以下であることを条件に、1プロジェクトあたり200万ドル(約3,000万円)の援助をしている。その結果、31のプロジェクトに援助が行われ、 2005年までに395(そのうち290が障
害者雇用)の雇用を生み出した。
http://www.cop.gov.hk/eng/seed%20money.htm

また、2006年4月には政府主催での政府機関・大学・NPO参加による会議も行われている。
http://www.seconference.gov.hk/index.html

●香港の社会福祉系のNPOの成り立ちとポジション

HKCSSの成り立ちにも関連するが、香港では、社会福祉に対するNPOの参与が非常に大きい。聞くところによると、特に1940年代から50年台 にかけて、日中戦争や国共内戦の混乱の中、大量の難民が中国から香港に来た際、英国植民地政府はそれを管理するキャパシティがなかったため、特に海外から 香港に来て活動していたキリスト教系のNPOに財政的に支援し、そのケアを担当させたという歴史的経緯がある。

例えば明愛(Caritas)などのカソリック教会は、いまや香港で5000人以上を病院・学校・老人ホームなどで雇用する一大NPOとなってお り、医療、老人介護、青少年教育などで大きな役割を果たしている。Caritas Lodgeという中級ホテルも経営しており、香港旅行で泊まったことがある人もいるのではないだろうか。また、香港映画などでも、低所得者が住む住宅を舞 台にしたストーリーだと、ソーシャル・ワーカーが善玉として登場することもよくある。それだけ存在感があるということだろう。

●香港の社会企業の形

香港のNPOサイドの社会企業についての関心としては、政府財源や寄付によるのではなく、自立的な収益事業を持つことにより、彼等のサービス対象である社会的弱者の雇用を確保する、ということにある。

社会保険制度が基本的に薄い香港では、社会的弱者の雇用問題の解決が大きな課題となっており、台湾と共通している(後述)。このあたりは、ソーシャ ル・イノベーション、あるいは「社会起業」(社会企業ではなく)に注目する日本のソーシャル.ベンチャーへの考え方からはかなり異なるところかもしれな い。

上記のような事情があり、香港の社会企業は、レストラン、小売業、清掃業、理髪、洗車サービスなどの、参入の比較的容易な従来型のビジネスモデルが圧倒的な割合を占める。例えば、今回も来ていた香港復康連盟では、香港で3店舗のセブン・イレブンを経営している。

しかし、これらの雇用創出型の社会企業(Employment Integration)のあり方に対しては、「NPOが社会企業と銘打って、従来型のビジネスに参入したところで、それは健常者市場から社会的弱者へ雇 用やリソースを移転しているだけなのではないか?」「NPOの事業によって、新しい価値や事業モデル、新しい資源が創出されているのか?全体のパイは変 わっていないのでは?」という議論があるようだ。

ただし、政府の再分配機能が弱い香港社会においては、市場によって淘汰されかねない社会的弱者が、自ら雇用を確保できるような創業を支援することは、ある種の「機会の平等」を支援する動きにも一定の意味があるのでは、と考えた。

今回の参加団体は以下の通り

基督教家庭服務中心 Chirstian Family Service Centre
循道衛理觀塘社會服務處  Kwun Tong Methodist SocialService
香港復康連盟 Rehabilitation Alliance Hongkong
香港神託會 Stewards
明愛樂道坊 Caritas Lok Dao Workshop
香港基督教女青年會 Hong Kong YWCA
<関連リンク>

香港社會服務聨會
The Hong Kong Council of SocialService(HKCSS)
http://www.hkcss.org.hk/

扶貧委員会
Commission on Poverty
http://www.cop.gov.hk/eng/news.htm

社会福利署 康復服務市場顧問辦事處
MarketingConsultancy Office (Rehabilitation)
http://www.info.gov.hk/mcor/cindex.html

香港理工大學  第三部門教研室
http://www.polyu.edu.hk/apss/Third/index.htm

社会企業會議
Conference on Social Enterprise
2006年4月6日に開催
http://www.seconference.gov.hk/index.html

情報提供者:伊藤健

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