2011/08/11 by Matsue

【藤田和芳】大地を守る会:日本人が安全野菜を手にするまで(小康雑誌より―後編)

前編はこちら)

 群馬県の倉渕村にある、大地を守る会の契約団体、くらぶち草の会には、農家は自家用野菜と市場用の農産物を区別してはならないという規定がある。売る野菜と自分で食べる野菜が全く同じ土地から採れたもの、これは農家で何十年も栽培してきた習慣を破るものであったが、有機農業栽培の原則を遵守するには大変効果があった。
 くらぶち草の会の農家は自分に対して厳しい。佐藤邦明さんは65アールの土地でほうれん草を栽培している。正にほうれん草の収穫期、佐藤さんは手先もテキパキと緑色のほうれん草を刈り取り袋に詰めていく。少しでも傷がある葉は情け容赦なく捨てて、袋詰めにしていく。全部彼が細心の注意を払って選んだほうれん草だ。

 消費グループは小グループから始まって中規模に
 価格は普通の農産品の倍

 くらぶち草の会の会長であり社長であるもう一人の佐藤氏、佐藤茂さんというご年配の方の顔色は黒っぽい褐色で、一目で農作業から離れた事のない人だとわかる。30年あまり有機農業に従事してきた彼は小誌記者に話してくれた。くらぶち草の会には厳しい栽培規則があり、種子の選別から使用する肥料、害虫駆除全てに統一された基準がある。栽培の全工程に亘って記録しなければならず、顧客と繰り返し確認を行う。意思疎通を図り、厳しく栽培工程をコントロールして農産品の品質を確保する。
 今年は酷暑の為に日本の野菜価格は高騰したので、もし彼らが農産物を市場に出したらたくさん利益を得ることが出来たであろう。“だけど、私達はそんなことはしません”と佐藤茂氏は言う。“暴利は一時的なものに過ぎない。安定した信頼協力関係を築く事こそが最も重要なのです”
 大地を守る会と契約した農家の間では、独自の方式でその年の農産物価格を決める。吉原清美さんの説明によると価格はいくつかの要素で決められる:生産コスト60%、物流費15%、人件費、設備費等で23%、更に利益2%を上乗せする。同会は農産物に問題がない事を検査したうえで買い取り、1ヵ月半後農家に支払う、ということだ。
 農業はお天気頼み、天候により期日内に生産量が達成できない時は、予め同会に報告し、しかるべき方法を相談する。もし、一粒も収穫できなかった場合はお互いに協議し、応急措置を考慮しなければならない。大地を守る会は臨機応変に市場メカニズムを通じて農家の豊作、不作のアンバランス問題の解決を助ける。例えば今年は白菜が豊作で価格が見合わず、胡瓜は減産で価格が上昇すれば、同会の物流センタ-でこの二種類の野菜をだき合わせにして包装し、微妙な価格バランスをとる。
 くらぶち草の会の事務局責任者の大和原さんは言う。“ここ数年日本では農薬に対する法律法規がどんどん厳しくなっている。我々もうっかりしていると苦労した一年の成果が無駄になってしまうので、注意しながら一歩ずつ耕作していかなければなりません”
 極力農薬、化成肥料、除草剤を使用しない為、害虫駆除、除草は並大抵の事ではない。キャベツの間にクローバーを植えると窒素化合物を作るだけでなく、雑草をおさえる事もでき、野菜の天敵の巣となる。それから、農家が黒砂糖に漬けた筍とヨモギで作った散布薬を蜜柑の上に撒くと、病虫害を防ぐばかりでなく蜜柑の味も良くなる。これらの経験は大地を守る会が組織した各種の経験交流会から広がっていった。 

 有機農業は一般の農業に比べ非常に多くの労力と物資が必要となるが為に、価格は必然的に一般の農産物より高い。中国では“有機”のラベルの付いた農産物は一般の消費者から敬遠される価格で、少数の富裕なエリート層のみが健康食品を味わう事が出来る。日本でも大地を守る会の発展初期に同様の悩みがあった。有機農産物の高コストは高価格となり、多くの家庭にとっては敷居の高いもので、 消費可能な層の人々は健康や環境を省みる暇もなく便利で早いものを求めた。
 藤田会長はこの矛盾を解決するには労を厭わず消費者に対する広報活動をする事が重要だと考えた。消費者が増えれば価格もそれに見合ったレベルにまで抑えられる。今では大地を守る会の有機農産物はスーパーで一般農産物の1.3~1.5倍の価格で販売しているが、消費者は最初の有閑富裕階級から多数の中産階級の消費者にまで拡大した。
 時代の発展に従って、大地を守る会は度々考え直したり、変革を行ったりしている。物流センターでは、生産ライン上に、明らかに違う二種類の野菜を見ることが出来る。一方は泥つきで、ほぼ土から採って来たままを包装、配送する。もう一方はきれいに洗浄し光輝く状態で配送用の段ボールに入れられていく。“大地は創業から今日まで、掘りたての土の付いた香りのある健康野菜を消費者に運ぶという一つの理念がありました。然しながら、今日の消費者の生活スタイルと味の嗜好変化に合わせて我々も洗浄包装を始めたのです”同会の物流センタ―の責任者猪狩氏は説明する。― 両者を共存させる。それが大地を守る会が過去と現在の間でたどり着いた、ささやかなバランスと妥協であった。
 最初の10年間の住宅地での車両販売から、現在の先進的な物流宅配システムを作りあげるまで、大地を守る会は一歩一歩模索しながら歩んできた。1985年より、大地を守る会は宅配業務を始め、当時は手作業で注文書を書き、職員達は地面にしゃがみ込んで手作業で包装した。現在は、全ての農産物が電話、ファクシミリ、インターネットで注文でき、36時間以内に商品を届けてくれる。大地を守る会はグルメを愛する女性職員をメンバーとする“食卓デザイン”部門を設立し、宅配と同時に注文内容に基づいて選んだレシピも添付している。商品の内容も、生鮮野菜から半製品、乳製品、ジュース、酒類などにまで拡大した。

 東京の繁華街、新宿東口地区には高級店が軒を並べる。街の一辺にクールな麺の店があり、小規模な空間には最も人目を引く、3メーター超のポスターが掛けてある。中国のレストランではこんなに目立つ位置には普通オーナーとスターが一緒に写った記念写真を掛けるものだが、このポスターに書いてあるのは“素材主義”という文字である。文字の左側には、日本酒は木戸泉酒造から、醤油は何某商店から取り寄せていると店長が自慢げに書いているが、中央の位置に、野菜は大地を守る会の鈴木農園から取り寄せているとあった。
 今、鈴木さんは農園でほうれん草や大根の栽培に追われているだろうが、もし、賑やかな東京の新宿で世界各国から訪れる人々が麺を食べながら、鈴木さんや鈴木農園の事を考えている、と知ったら、きっと責任感や誇らしさで胸が一杯になることであろう。

文:陳艶涛
編集: 龔紫陌
小康雑誌ウェブサイトより翻訳して転載
http://xkzz.chinaxiaokang.com/xkzz3/1.asp?id=4949
翻訳:西口友紀子
校正:松江直子

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