2010/05/28 by GLI Japan

【堀井利修】サンフォーレの地域介護モデル―すべての人に尊厳のある晩年を

サンフォーレの理念

日本には、2009年1月時点で100歳以上のシニアが3.6万人いる。これが2050年には、70万から100万人に達すると予測されている。 「人生100年」はもはや「美しい夢」の段階にとどまらず、すべての人の眼前に存在する現実となった。このこと自体は「喜ばしいこと」であるが、一方では 社会に大きな課題-どうすればシニアに尊厳ある晩年を保証できるのか-を突きつけてもいる。

サンフォーレの創始者である堀井利修氏は、彼自身が26年に及ぶ祖母と養母の介護を経験し、家族の献身に頼ったシニア介護は、家族に苦痛をもた らすばかりか、シニア本人にとっても、年長者として人としての尊厳を失って不幸になりやすいことを痛感してきた。 1988年、50歳を過ぎた堀井氏は、 真に尊厳のある晩年を送れるホームをシニアに提供するため、「サンフォーレ」を設立した。

サンフォーレの理念は、そこに住み、サービスを受け、あるいは活動に集まるすべてのシニアに、自由と尊厳に満ちた、安心安全な暮らしと集いの場 及びサービスを提供することだ。サンフォーレは、シニアの身体をケアするだけでなく、心の平安や彼らの「生きる価値」を守ることを、より大切にしたいと考 えている。シニアが住み慣れた地域で、自由に、安心して、安全に、個性的に、充実した毎日を過ごせるよう、サンフォーレでは長年の実践と研究を通じて「い つくしみの思草」という一連の生活・介護・運営スキルを開発した。このスキルにより、シニア一人一人の個性・経歴・希望に基づいた介護計画が策定・実施さ れ、彼らは孤独や不安を感じることなく、くつろいで楽しく暮らすことができる。

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(サンフォーレ鵠沼館)

「地域介護」経営モデルの確立

すべてのシニアを尊重するというサンフォーレの介護の理念は、当時、雲を掴むような話だと思われていた。1980年代末の日本において、シニア介 護には主に三つのやり方があった。一つ目は、身体や精神に明らかな障害があり、自立した生活を送れないシニアが入居する、行政が行う「特別養護老人ホー ム」、二つ目は私費で利用するシニアのための「有料老人ホーム」、そして三つ目は在宅介護だ。介護が必要なシニアは、在宅介護以外には「特別養護老人ホー ム」という選択肢しかなかったが、ベッドと介護スタッフの不足、融通のきかない介護方式などの影響により、「特別養護老人ホーム」はまったく需要を満たす ことができなかった。すべてのシニアの個性に応じた介護を行うことは、コスト高と小規模化を意味するため、人々は、このやり方では利益も出ず、経営を続け られないと考えていた。

人々のこの観念に対し、堀井氏は「コミュニティ介護」モデルを提唱し、住み慣れた地域に、趣旨と特徴の異なる各種の小規模介護ホームを集中的に 建設するというアイディアを打ち出した。その特徴は、地域の人的物的資源を充分に活用し、関係各方面の協力システムを構築して、地域での介護を実現すると 同時に、介護事業が地域に経済効果をもたらし、ウィン-ウィンの関係になることを目指したことである。サンフォーレは現在、さまざまなタイプの介護ホーム を12ヶ所運営しているが、その全てが創業者の地元である神奈川県の湘南地域に集中している。初期のいくつかの施設は、現地にもともとあったアパートや社 宅などを改造したものだ。サンフォーレは地元の資源を重視しており、意欲的で活力あふれるサポーターやスタッフも、みな地元の人だ。

1988年、5500万円の資本金を元に会社を設立。当時、小規模老人ホームは行政の認可を得るのが難しかったが、4年近い準備期間を経てその 壁を打ち破ったのだ。1992年には5年間の公開実験としてシニアホーム「サンフォーレ鎌倉」を開設。ここは現地の小さなアパートを改造したもので、2年 目からは営業利益を計上し、5年間の実験は、小規模老人ホームが経営的に充分持続可能であることを証明した。1996年、サンフォーレは「第1回かながわ 新企業創出オーディション」の優秀賞を受賞し、1997年には「第8回ニュービジネス大賞」の優秀賞も受賞、シニア介護の新たなビジネスモデルとして広く 支持を集めた。その後、サンフォーレは次々と小規模な地域介護施設を開設したが、以下のリンクはそれぞれの所在地、特徴、料金体系をまとめたものである。http://www.sunforet.co.jp/price.html

サンフォーレのホームは、専門性の強いタイプ(認知症ケア)から、総合的なものまで、またアパート形式から小規模住宅形式まで様々なタイプがあ る。さらに介護サービスも、施設介護だけでなく訪問介護サービスもある。施設介護の場合も、最大でも30室を超えず、最小は7室である。「個性を尊重した 介護を提供するためには、50人を超えることはできない」というのが創業者である堀井氏の見解だ。小規模介護の信念を守り、会社は設立以来、初期の第一期 以外は赤字に陥ったことがない。

サンフォーレの経営の強み

いかにもコストが嵩みそうなサンフォーレだが、何故このような素晴らしい経営状態を維持できているのだろうか。分析すると、いくつかの強みを見いだすことができる。

まず、最も重要なのが、その理念を体現した「いつくしみの思草」の専門スキルである。サンフォーレはこれをPQ(Perceptive Quality)と呼んでいるが、つまり感知的な品質である。この指標は、シニアが(サービスに対して)高品質であると「感じて」いるかどうかを徹底的に 追求することを意図している。シニアの感じ方を重視することを通じて、絶えずケアとサービス方法を調整・改善し、「シニアこそが主人公」というプロの介護 技術を体現している。

次に、サンフォーレの専門性をより高める為、会社は2001年に介護住宅の設計と建築を専門に行う建築会社「リーラの家」を設立した。その後のいくつかの小規模住宅型施設は、すべてこの会社の技術を使って建設し、建築業界に介護住宅という新たな領域を切り開いた。

三番目に、サンフォーレの資金調達戦略として、「小規模私募債」という形式が注目される。これは企業債券の一種で、親戚や友人などから出資を募 り、全部で49人以下なら行政の許可が不要で、金融機関を通す必要もない。2003年から2006年、サンフォーレは「地域コミュニティが支える地域での 介護」という理念にもとづき、2回の「地域福祉私募債」を発行した。地域住民が購入し、一株100万円で、40株発行し、当日中に売り切れた。私募債の発 行は、中小企業に適した資金集めの方法であるだけでなく、会社が第三者(投資者)の監督、とりわけ地域住民の監督と認可を受けるために、大変良いシステム である。

四番目に、サンフォーレはサービスの提供時、「分散と集中」に注意している。集中とは、統一的な資源を積極的に利用していること。たとえば、国 の介護保険制度を充分に利用して、保険給付が可能な範囲内の各種サービスを提供したり、給食サービスでは、材料の統一購入でコストを下げたりする工夫であ る。分散とは、質を追求した個性尊重のサービス、たとえば保険では支払えないサービスや、それぞれの施設の厨房で行われている個人の嗜好に配慮した飲食 サービスなどである。集中では量を、分散では質を重視しているのである。

最後に、「地域コミュニティの参加による相互協力型介護」モデルは、サンフォーレが成功した最大の秘訣だと言えよう。彼らの介護施設は、シニア たち自身が住み慣れた地域やその近くに建てられており、多くはその地域の住民が投資して建設したものだ。さらには地域住民の雇用の受け皿にもなっている。 2008年、サンフォーレの従業員数は230人で、すべて地元の住民、とりわけ中年女性が大多数を占めている。そして、多くの住民ボランティアがサン フォーレの各施設で活動している。地域の各医療機関や保険施設と連携しているのも参加協力型介護の重要な一環だ。ひとつの地域内で、住民や関連団体と共同 で介護事業を推進し、地域内の介護経済を形成し、利益の循環を促進している。これこそがサンフォーレが創り出した、新たな介護モデルである。

summer festival

(写真はサンフォーレ鵠沼の夏祭り。地域の資源を利用することがシニアの生活を豊かなものにしている)

サンフォーレモデルの普及

2002年、サンフォーレの成功経験をより多くの地域で参照・活用してもらうために、サンフォーレは地域の介護事業を支援する「SunNET」 を設立した。対象は土地を持っていて、新しい事業を始めたい人、現在シニア介護事業を行っているが、新たな進展を目指す人、社会貢献をしたい企業人、資金 的余裕のある人、介護経験のある人、資金も介護経験もないが、意欲のある人、退職後は地域で何かしたい人などである。SunNETでは、事業パートナーと して、コンサルティングや経営のアドバイスを行い、その経営モデルの実現や転用を促進し、より多くの人が自分の地域で介護事業を展開できるよう尽力してい る。

小規模多機能型の「まちかどメンバーズ倶楽部」、住宅型有料老人ホーム(サンフォーレ○○という名前の各施設)、認知症のシニアのためのホーム (街角の家)、宗教や趣味、価値観などを絆とした家庭的な共同生活の場(リーラの家)が、サンフォーレの介護事業の主な内容である。これらの経験に基づ き、SunNETでは、それぞれの地域の特徴とニーズ、そして経営者の目標にもとづいて、最も適した福祉サービス事業計画をデザインし、地域を主体として 展開している。2003年、SunNETの支援の下、「リーラの家・四国」が設立され、2005年には、SunNETのシニア給食システムが外販を開始し た。

サンフォーレモデルは、今も進行中だ。

(株)サンフォーレ: http://www.sunforet.co.jp/

文責:李妍焱

写真はサンフォーレのホームページより転載

日本国際交流基金北京日本文化センターの助成に感謝いたします。

翻訳:松江直子

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