2007/06/22 by GLI Japan

チャイルド・ケモ・ハウス-夢の小児がん専門病院

息子が小児がん?

田村太郎さんがそう知らされたのは、4年前。その後の1年間、白いカーテンで仕切られた病室の狭い空間が、遊び盛りの息子と看護する夫妻の日常生活 空間となった。ケモセラピー(=化学療法。抗がん剤治療のこと。以下ケモという)が中心となる入院生活は、一般に半年から数年に及ぶ。突然、家や友達、い とことの関係から断絶された息子と付き添うため、病院の近くに引越し、半年間仕事を休んだ田村さんは、患児、親、医療者、看護師のそれぞれが、大きなスト レスを抱えながら過ごしている日本の小児科医療の現状に接した。

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がん患児を取り巻く状況の悲惨さを感じていたのは家族だけではなかった。主治医らから「病院を作りたい」と相談を受け、田村さんらはともに研究会を 作った。家族、医療者、院内学級の先生、チャイルド・ライフ・スペシャリストというコメディカルな人材など、様々な立場の人の幅広い参加を得た会は、昨年 11月、NPO法人「チャイルド・ケモ・ハウス」(略称:チャイケモ)に発展し、患児と家族の「QOL=生活の質」を重視した新しいタイプの専門病院設立 を目指すことになった。

「夢の病院」とは

目指す施設では、大阪大学医学部附属病院をはじめとする関西の医療機関と連携して、小児がん患児のケモを行う。「ハウス」という名称が示すように、 患児にとっての「夢の病院」は、「家」だ。30床程度の個室中心の入院施設と診察室を「家」に近づけるため、入院経験のある患児や家族からは色々な提案が 寄せられている。「感染予防のしきりはガラスにすれば、いつも家族が見守れる」、「家族や見舞い客は病院に入らずに病室にいけたらいいね」、「きょうだい 児のスペースやプレイルーム、レストランも欲しい…」。著名な建築家も参加して関係者がそれぞれの立場から、プランを出し合っている。

「夢の病院」のもう一つの柱が、専門人材の育成だ。子どもの発達とケモ中に特有な心身の状態をサポートする専門スタッフや医療者のため、「研修室」 や「ボランティア室」を設け、将来的には、ここでの経験をモデルとして、同様の施設が全国にいくつか設立されることで、小児がんになったすべての子ども が、笑顔で家族と共に治療をすすめることができるような環境作りを進める。既存の制度の枠以上の設備を充実させるため、建設にかかる費用の8億円は「寄 付」でまかなう計画だ。

人との関係性を創り、育む「ブログ」

「チャイケモ」はホームページを持たず、無料ブログを最大限に活用している。ひとつのブログに、家族、医療者、専門家、協力者、小児がんサバイバー など、様々な立場の関係者が頻繁に書き込み、時に不満も含むコミュニケーションを公開している。ライターの中心は、理事長の楠木医師。厳しい小児科医療の 現場から、悩みを丹念に綴る文章は、しかし「愚痴に終わらず、必ず建設的な意見を出すチャイケモの信念」を体現してあくまでも前向きだ。

記事は、家族、医療者、ナースといった立場別カテゴリーからも参照でき、事務局は、時に「生活時間」や「ストレス」といったアンケートを通じ、それ ぞれの立場からの発信を促す。誠実な回答は、お互いの立場への理解を深め、誤解やすれ違いの存在に気付くきっかけになる。関係者がブログを広場のように活 用することで、一般からは見えにくい活動の実態やメンバーの頑張りがブログ訪問者にもしっかり伝わり、共感を生み出して、コメントやトラックバック、寄 付、自分のブログでの紹介、といった関係性が出来ていく。これまで200人ほどの寄付者のうち、約3割がブログのみで寄付をしてくれた人だという。事務局 は、寄付者に了解を得た上で「○○さん、ありがとう!」という感謝記事を書く。そこにまたリンクやトラックバックがされることで、支援と共感の輪が広がっ ていく。

ITを活用した多様な参加と支援のしくみ

「うちはボランティアの数がすごいんです!」田村さんによれば、最近のPRイベントに集まったボランティアの数は80人。彼らが持ち寄った、紙コッ プにマスコットのカエルの顔を載せて作る募金箱も、展開図をPDF化してブログに載せ、協力者が自らダウンロードして組み立てたものだ。協力者自らがマイ ペースで募金を募り、イベントなどに持参してもらうことで、コストなしに多様な募金運動を生み出している。

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また、最近新たに登場したのは、ネットショップサイトを利用した寄付者への感謝グッズホームページだ。ボランティアが手作りしたアクセサリなどを写真入りで紹介し、寄付の口数に合わせてプレゼントするしくみになっている。材料を寄付してくれる企業や個人もあるという。

多様な立場の関わりを可能にするチャイケモブログだが、実は非公開のマネジメント用ブログが8つもあり、役割別の連絡やチャイケモブログの編集、活動内容の議論にも役立てている。まさにITを使いこなしたマネジメントではないだろうか。

「今は誰でも簡単にITを使える時代。多くのNPOと力をあわせて日本の寄付文化を構築したい。また他のメディアも活用して、小児がんへの理解を深める活 動をしていきたい。」と語る田村さん。 がんにはまだまだ偏見もあり、思わぬ苦戦をすることもあるそうだが、多くの支援者に支えられたチャイケモの挑戦を 応援していきたい。

文責:松江直子

チャイルド・ケモ・ハウス ブログ
http://blog.canpan.info/kemohouse/
感謝グッズホームページ
http://chaikemo.ocnk.net/
Child Chemo House in Osaka
http://chemohouse.blogspot.com/

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