2010/06/27 by GLI Japan

「社会工作師」国家資格の設立

 大東文化大学大学院生の劉薇さんが、中国の大卒の就職難と地域コミュニティ発展を同時に解決する人材育成モデルについてレポートを投稿してくださいました。ありがとうございます! ・・・・・・・

    中国経済が急成長する中、大卒者の就職難という問題が目立っている。「その最大の原因は大学の定員の急拡大を受け、労働力市場において大卒者が供給過剰になっていることや、大学教育の質が低下していることにある。それに加え、大学の授業内容と社会のニーズのミスマッチも問題をさらに深刻化させている。大学生が卒業しても就職できていないことは、せっかく形成された「人的資本」が活かされていないことを意味するだけでなく、彼らの不満が噴出すれば、社会が不安定になる恐れがある。この問題を解決するために、社会のニーズに合わせて、カリキュラムを再編しなければならない」と関志雄(経済産業研究所コンサルティングフェロー)は指摘する[1]

    一方、中国の地域コミュニティである社区では、欧米の地域コミュニティで見られるような、社会福祉活動に従事する専門職のソーシャルワーカーのイニシアティブが必要とされる。中国のソーシャルワーカーは「社会工作者」(略称社工)と称され、社工が所属する組織は、政府、社区、NGOなど様々であるが、有能な働き手はまだ多くない。これに対応し、2007年時点で、200以上の大学に「社会工作」の専門課程が開設され、毎年1万人が巣立っているが、しかるべきポストにつく者は平均一割に満たないといわれる[2]。

    2006年秋の共産党中央委員会で重要指針として決議された「和諧(調和のとれた)社会の構築」の具体的内容の一部として、「都市と農村におけるボランティア活動の展開」「社会活動人材の大量育成と一連の制度の保障」が提起された。その後、社工に「社会工作師」の資格を設けて社会的地位を高めるとともに、それに見合った待遇を工夫することになり、資格試験は初回の2008年6月より、毎年一回の国家職業資格試験として実施されるようになった。さらに大学と政府と企業が積極的に協働し、新たな人材育成モデルを探る動きも出現している。次はその人材育成モデルの成功例を紹介する。

事例:成都成華区VPEモデル[3]

   VPEモデルとは、大学生に対して「自発的なボランティア・サービス(Volunteer service)」、「ポスト研修(Practice)」、「就業と起業の促進(Employment)」を「三位一体」にして実施する人材育成モデルである。成都市和諧社区発展促進会[4](以下略称促進会)、成華区民政局、区委員会宣伝部、人事局等の政府部門と成都理工大学などがこのモデルの研究に参加し、3年近い時間をかけて大学生の「ボランティアの単位制」、「人材の実験室」等のプロジェクトを通じて経験を積み、新たな人材育成モデルは成功を収めた。

VPEモデルは3段階に分けられる:

第一段階:Volunteer service    大学生が社区に入って自発的にボランティア活動を展開することを提唱する。ボランティア活動によって、学生には「ボランティア単位」が付与される。

第二段階:Practice   40余りの党と政府機関、14の街道(行政の末端単位)、95の社区と100余りの企業にポストを設け、大学生が3~6ヶ月間、実際の職場で実習する。

第三段階:Employment      職場での実地の育成訓練と考察を通じ、実習を最終就業と起業に繋ぐ。

   さらにVPEモデルを発展させるため、成華区は「VPE公益ベンチャー投資」事業を立ち上げた。100社区の社区サービスに関連する行政サービス事業をプロジェクト化し、大学生を募集して経営管理を行う。また、同区では、中小企業局、工商業連合会、商務局、民政局、労働局などの行政機関やこれらの行政機関が呼び掛けた企業と、14の街道および促進会が連絡した200余りの社区が参加して、新たに「大学生起業就業VPE連盟」を結成した。VPEモデルを通じて実習した大学生は、人事局、民政局と促進会の「VPE認証」を申請することができる。認証を獲得した大学生は連盟のメンバー企業や行政機関に就職する場合、同等な条件の下で優先的に採用される。2009年9月~12月、2050人の大学生がVPEモデルの活動に参加し、その中の160人の大学生は活動終了後、就職難の中でも順調に就職できた。

   現在、VPEモデルは国家民政部、教育部の肯定を受け、全国の大学に特別テーマとして紹介されている。このような動きは大卒者の就職難問題を解決する一助として期待できるであろう。

文責:大東文化大学 大学院生 劉薇

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