2011/03/30 by Matsue

社会事業に従事する青年の成長をサポートする「銀杏計画」

パワフルな資金援助
 中国のNGOでは、月収5,000人民元以下のスタッフが88.5%を占めている。また、4割近くの団体が従業員に社会保険を提供していない。社会事業の分野から離れていく人の8割近くは、待遇が主な理由だとしている。

2010年12月17日、騰訊公益慈善基金会執行秘書長の竇瑞剛氏は、「中国における社会事業人材発展の現状及びニーズ調査研究報告書」と銀杏パートナーの発表会において、一連の驚くべきデータを公表した。報告書は、騰訊公益慈善基金会、南都公益基金会、および劉鴻儒金融教育基金会が零点研究コンサルティンググループと連合で行った調査研究をもとに作成された。

調査結果によれば、中国におけるNGOの低所得現象は非常に深刻であり、ソフト面およびハード面両方でのサポートが脆弱で、優秀な人材を集める上での妨げとなっている。社会事業における人材欠乏状態の改善は、社会事業発展の上での急務となっている。

現在、南都公益基金会では、これまでの助成事業とは異なる模式の「銀杏パートナー成長計画」を試行中だ。団体や個々の事業に対してだけではなく、人に直接資金投資することで、優秀な人材の育成を促すことがねらいだ。また業界内で人材問題が注目されるように唱道する作用も期待されている。

今回の活動の結果、社会事業家の若者名が初代銀杏パートナーに選ばれ、3年間、毎年10万人民元の助成と社会事業に関する研修を受けることになった。(訳注:以下に紹介)

ここまで「社会創業家」2011年新春特集、p.31-32より翻訳して転載
http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1849_103317.pdf

銀杏パートナー:社会事業家が品格ある生活を送れるように

1ヶ月半の間、南都基金会は、計67通の銀杏パートナー推薦書を受領した。実地調査の後、葉祖禹氏、何進氏及び高小賢氏の3名で構成される専門家審査委員会による面接とグループ討論が11月24日及び25日に行われた。その結果、南都基金会2010年銀杏パートナー成長計画の援助対象者が選出された。

王奕鴎

28歳、山東省出身。「チャイナドール思いやり協会」発起人。「中国福基会チャイナドール希少疾患思いやり基金」秘書長。縮れ髪に澄んだ目、小柄で落ち着いた人だ。「私達の力強い愛情によって、彼らがもっと強くなれるように。」という彼女の言葉は、多くの人を感動させた。

彼女自身も骨形成不全症の患者であり、「チャイナドール」の一人だ。王さんは、小学校の頃から絶え間なく骨折するという状況の中で生活してきた。ほとんどの場合、自宅で独学するしかなかった。大多数の骨形成不全症患者も、このような成長過程を経験している。2005年、王さんは忍耐と意志の力によって、独学で北京交通大学に合格した。在校期間中にウェブサイトを立ち上げ、中国に10万人余りいる同病者に対し、交流の場を提供した。2008年6月、王さんは、黄如方さんと共に「チャイナドール思いやり協会」を設立し、骨形成不全症等の希少病患者が平等に扱われ、尊重される社会環境造りに力を注いでいる。

陸非

29歳、広東省出身。「NGO発展交流ネット(NGOCN)」や「草の根公益サポートセンター」等の団体の発起人・創始者。現在は、NGOCN理事兼代理主任、及び「広州中山大学社会学・人類学学院公民社会発展研究センター(略称ICS)」のプロジェクト主任。陸さんは「行動は生存を変える」という言葉を信じている。これは、彼が社会事業分野で活動し続けるための原動力でもある。2004年、陸さんが最初に関わった事業は、農村での被災者援助で、服や食料を子供たちに送った。深く心を打たれた彼は、「香港互助行動協会」、「香港オックスファム」等の機構を経て、パートナーと共にNGOCNのウェブサイトを立ち上げた。インターネットを通じて、より多くの人に社会事業に関する情報を提供し、「下層部に力を与え、草の根とともに成長」することを目指している。陸さんは、「他の人達にやり方を教えるだけではありません。もっと大切なことは、その過程を共に経験し、一緒に成長し、喜怒哀楽を分かち合うことです。」と話す。

孫恒
35歳、河南省出身。以前は、農作業や運搬作業等の労働者として、そして出稼ぎ労働者の子供達(訳注:中国語は「打工子弟」)のための学校で教師として勤めていた。孫さんは、「工友の家」、「同心実験学校」、「同心互恵公益商店」、「打工文化芸術博物館」、「同心創業研修センター」等を次々に創設。彼の運命は、「打工子弟」のための学校に足を踏み入れた瞬間に変わったと言う。当時彼は、河南省にある開封第四中学校の音楽の先生という地位を放棄し、北京で漂っていた。「打工子弟」学校の教室に入った瞬間、彼は目の前の光景にあっけにとられた。この上なく粗末な教室、生徒達のみすぼらしい衣服、そして彼らの悲惨な境遇。彼は、子供たちの為に「打工子弟の歌」を歌った。「故郷を離れて都会に出た時、自分は何も持っていないことに気づいた。問題に遭っても訴える先もない。都会に私達の家はない。」孫さんは、この時「工友の家」のアイディアが芽生えたと言う。

今、北京郊外の古倉庫を改造した1,000平方メートル余りの敷地に、質素な映画館、中古品専門のスーパー、図書館や博物館ができている。これらの施設は、全て無料で出稼ぎ労働者やその家族に開放されている。今の孫さんは、かつて活路を求めて北京を彷徨っていた青年とは違う。「社会に存在する多くの不公平をなくすには、どうすればよいのか。」と彼は問いかける。歌声がなければ、「新労働者芸術団」をつくり自分達の歌を歌い、子供達が学校に行けないのなら自分達で学校をつくる。物価高騰中の今、新品が高すぎると思えば、コミュニティーに中古品専門の店をつくり、皆の生活コストを下げると同時に資源の浪費を削減する。主流の文化史の中に労働者の文化史がなければ、「打工文化芸術博物館」をつくり、労働の価値を尊重し、再認識することを提唱する。孫さんは、労働者のために休まず邁進している。

曾世逸

32歳、湖南省出身。6年間会社勤めをした後、2006年に昆明真善文化伝播公司を創設。数百回におよぶセミナーや数十回にわたる公益実践活動を計画・組織した。また、「北斗星ボランティア文化伝播センター」、「雲南省青少年発展基金会潤土互助工作組」(壱基金の「影響力賞」受賞)、「AA楽行工作組」、「平民教社」、「幫幫健康生活館」(「南都優秀社会企業賞」受賞)等の草の根公益団体の誕生を促進した。国際ボランティア・デーの2010年12月5日、曾さんは、これまで歩んできた道を振り返っている内に、眠れなくなった。1つの団体から6つへ、4人から1人へ、その後また1人から今の26人となった。関わった分野も幅広く、始めた当初は、有名な学者による巡回学術セミナー、後には大学生ボランティア精神の唱道と大学生による農村での実践活動、大学生による農村総合発展事業やエコ農産品開発の社会企業、そして最近では出稼ぎ労働者の子供の成長をサポートする「平民教社」や父親の愛情活動による資金調達チーム等がある。いったい何が自分を動かし続けているのか。「世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力」(訳注:デービッド・ボーンスタイン著)という本を思い起こした彼の頭の中には、4つの文字がうかんだ。「真愛」と「協力」だ。この4つの文字が、彼の心の琴線に触れた。彼の夢は、真の愛と協力の実践を通じて、市民社会が理想的な社会に近づくようにすることだ。そして全ては自分自身を変えることから始まる。

梅念蜀
31歳、湖北省出身。2006年6月、環境保全ウェブサイトの「緑色昆明」(後に「昆明環境保護科学普及協会」として団体登録)を創設。現在は、昆明環境保護科学普及協会の事務局長。梅さんの夢は、一艘の帆船から始まった。13歳だった梅さんは、船上の勇士の正義感にあふれ凛とした姿に心を打たれ、彼らのような英雄になろうと決心した。大学では環境エンジニアリングを学び、環境関連の研究所で安定した職に就き、その後は環境アセスメントを行うコンサルティング会社に勤め、高い収入も得ていた。だが最終的にはこれらを放棄し、民間の環境保全団体を創設した。団体の設立から4年半が経過した今も、以前と変わらず情熱的であり、自分の選んだ道を誇りに思っている。そして、他人から「環境ボランティア」と呼ばれることが気に入っている。

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長い間、助成を行う側は、目に見える成果が出る社会事業そのもののサポートには熱心だったが、管理事務のための支出には反感を持っており、あたかも社会事業団体のスタッフは神か仙人であるかのような扱いだった。

社会事業団体に勤める若者、特に北京や上海等の大都会に住むスタッフの多くは、高い家賃を払った後には給料はいくらも残らず、場合によっては一元も残らないこともある。理想の追求だけをたよりに頑張っているのだ。

しかし、これは持続可能な状態ではない。
幸いなことに、社会事業団体のスタッフがそれなりの生活を送れるようにするべきだ、という声が既にあがっている。同窓生が遊びに来たときに、食事をおごってあげるお金の心配をしなくてもよいように。なんとか様になる住まいが借りられるように。空き室になっている高層ビルや広い家々のひとつを草の根組織のささやかな事務所として使い、少し古くてもまだ使えるコンピューターが置けるように。そしてスタッフがごく普通の人として基本的な生活の質を確保できるように。

今、大きなところでは、南都基金会による銀杏計画のような強力なサポート、小規模なところでは緑石青新パートナー計画による環境保全団体に就職する若者へのサポート等、試みは静かに始まっている。

私達の夢は、社会事業団体のスタッフが、初期の段階に充分な収入と事務管理費面でのサポートを得られるようにすること。そして、強力かつ温かな顧問団による知的サポートを受けられるようにすること。後者は前者より難しく、更なる努力が必要であろう。
——呉昊亮(訳注:済渓環境交流ネットワーク創設者)

「社会創業家」2010年12月号P.14-17より編集・翻訳して転載
http://www.npi.org.cn/uploads/magazines/npo/2_1369_122625.pdf

翻訳:A.K
編集・校正:松江直子

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