2009/09/01 by GLI Japan

バングラデシュでゴミを黄金に変える

有機ゴミを堆肥にして売り、数百万ドル相当の炭素クレジットを獲得

マクスード・シンハさんとイフテカ・エナイェトゥラさんは、「汚い話」をするのが好きだ。なぜなら彼らはバングラデシュにおける有機ゴミ・リサイクリングの先駆者だから。二人は、1995年から活動しているNGO「Waste Concern」の創始者兼ディレクターだ。Waste Concernは、都市ゴミを減らし、貧困層の人々に、職とより健全な生活環境を提供するとともに、より持続可能な農業を可能にし、温室効果ガスの削減に貢献してきた。

バングラデシュは、世界でもっとも貧しい国の一つであり、人口も多い。バングラデシュ統計局によれば、米国アイオワ州に相当する面積に1.5億人が 住んでおり、一人当たりの平均年収は約600ドル(約56,000円)だ。ゴミの埋め立てが可能な土地が限られているため、ゴミ処理は大きな課題だ。

シンハ氏によれば、ダッカ市から出るゴミは毎日3500トンにおよぶ。背が高くいかめしい雰囲気の彼が座っているWaste Concern事務所内の会議室には、数々の表彰状が飾られている。「町のゴミの半分近くは収集されていない」とシンハ氏は語る。ダッカ市政府には、全て のゴミを収集・処理するキャパシティーがないため、多くのゴミは、市街の道路や管理されていないゴミ捨て場に放置されたままだ。しかし、ゴミの80パーセ ントは有機ゴミ、即ち野菜クズや果物の皮、肉・魚等の生ゴミだ。

建築・都市計画を専門とするシンハ氏と、都市工学・都市計画を専門とするエナイェトゥラ氏は、そこに目をつけた。海外留学を終えた二人は、有機ゴミを収益可能な資源である堆肥に変える事業を起こすために帰国した。

彼らはまず、未収集ゴミによる悪影響の最大の被害者であるダッカのスラム街に焦点を当てた。市の推計人口1,100万人の内、3分の1以上がスラム街に住み、ゴミ収集はもとより、水道や下水さえ無い生活を送っている。

Waste Concernは、スラム街の住民が自ら生ゴミをコンポスト容器に入れる仕組みの、コミュニティーに根ざしたゴミ堆肥化事業(Community- based Composting, CBC)を展開した。胸ほどの高さがあるコンポスト容器は金属製でコンクリートの台に置かれ、400ポンド(約180キロ)のゴミが収納可能だ。容器に は、有酸素状態下で分解を促進するために、穴があけられている。容器は3〜7家庭で1つを共有し、各家庭が容器の中身に責任を持つ。1キロ当り7タカ(約 9円)の収益も、容器を共有する家庭に配分される。

創始者らによれば、CBCは確実に成果を上げている。シンハ氏によれば、このプログラムはダッカ以外にバングラデシュの26市で、更に他の発展途上 国でも実施されている。国連アジア太平洋経済社会委員会のアデナン・ハミード・アリアニ氏は、「ベトナムのクイニョン、スリランカのマタレでも、 Waste Concern方式を採用し試行しました。どちらのプロジェクトもうまく行っています」と言う。

バングラデシュのNGO「社会福祉組織」(Dushtha Shasthya Kendra, DSK)は、約1年前、バングラデシュ最大のスラム街であるバサンテクにコンポスト容器の設置を行った。このスラム街は、1974年のパキスタンからの独 立戦争を逃れてきた難民によりつくられ、1.25平方マイル(約3.2平方キロメートル)の面積に約2万人が住んでいる。トタン板でつくられた小屋が、曲 がりくねった小道沿いに立ち並び、その合間には、1,700の家庭が共有する328個の青いコンポスト容器が点々としている。

コンポストの方式はいたって簡単だ。モムタズ・ベグムさんをはじめとする住民らが、自分達のゴミを容器に入れるだけだ。中身が自動的に堆肥化される ように容器が設計されているため、利用者は何もしなくてもよい。ベグムさんは、「この容器式コンポストにはとても満足しています。前よりも清潔になって、 ゴミによる伝染病も防ぐことができます。」と言う。3〜4ヶ月後、容器内のゴミは収集され、大型の貯蔵場所で10〜15日間成熟した後、地元の農民に販売 される。

スラム街でコンポスト収集に従事する3人の内の一人のマホメッド・バブル・フセインさんは、このプログラムが始まる前は無職だったが、今では毎月 4,000タカ(約58ドル、約5,400円)というスラム街では高水準の収入を得ている。有機肥料は、化学肥料に比べて低コストなだけでなく、土壌の栄 養分を損なわず、逆に土壌をより肥沃にするという利点がある。農業研究機関「農民の声」(Krisoker Saar)のザキール・フセイン氏によれば、「今だけでなく、これから何年の間も」農地の維持に貢献することができる。DSKは、このプログラムをスラム 街全体で展開したいと願っており、目標は500個の容器をコミュニティーに提供することだ。

Waste Concernは、コミュニティーに根ざした容器式コンポストの模式を完成した後、ダッカ市の商業 — 特に生鮮市場 — から出る大量の有機ゴミに目を向けた。 Waste Concernは、京都議定書のクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism, CDM)を利用し、コンポストによる炭素排出権取引プログラムを世界で初めて実現させた。

昨年11月に稼働開始したこのプロジェクトのブルタ工場は、ダッカ市から北東に車で数時間のところにあり、農地とレンガ工場に隣接している。副工場 長のサイード・ジュビレー・アーメド氏は、「開始当初は、カーワン市場からの有機ゴミを1日10トンしか収集できなかったが、今月末には100トンに達す ることができるはず」と言う。

トラックで運び込まれたゴミは、屋外におかれた容器に分けられ、厳重な観察のもと、1ヶ月ほどで販売可能な肥料となる。

シンハ氏によれば、さらに2つのCDMコンポスト工場が今年オープンする予定で、1日計700トンの有機ゴミを処理することが可能になる。

これは一日233トンの乾燥肥料に相当し、小売価格は14,000円にのぼる。コンポストは、バングラデシュのように熱帯に位置し、廃棄物中の有機ゴミの比率が高い国に適しているのだ。

米国環境保護庁によれば、埋立場に埋まっている有機ゴミは、温室効果ガス放出の原因となるが、屋外でのコンポストからは温室効果ガスが発生しない。この削減分が炭素クレジットとなり、海外の市場で1トンあたり20ドルで取引される。

シンハ氏は、「1トンの有機ゴミあたり約0.5トンの温室効果ガスを削減することができる」と語る。このCDMプロジェクトが最大処理能力を達成し た際には、二酸化炭素換算で年間127,750トンの温室効果ガスを削減することが可能になる。この炭素クレジットは約250万ドルに相当する。

バングラデシュ環境ジャーナリスト・フォーラム会長のクアムルル・イスラム・チョドリー氏は、「Waste Concernの業績は、評価に値する」と言う。「廃棄物を資源に変えることは大きな意義があり、バングラデシュにおける持続可能な開発の実現に貢献している。」

文:リサ・シュレーダー

(クリスチャン・サイエンス・モニターサイトより翻訳して転載)

翻訳:A.K



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