2011/02/28 by Matsue

姫十三:一人の実務派理想主義者の科学技術普及活動

本文は科学リスの会創始者・姫十三氏が、同会の組織改正を発表した11月14日の記者会見の席上で行った講演の記録である。

本日ご臨席の皆様のほぼ半数は、科学リスの会誕生の時から我々に注目し支援してくれている人たちと思います。皆さんは次の面白い偶然の一致を見出されるはずです。毎年11月に、リスの会は大きな出来事に見舞われるのです。2008年の11月、我々のウェブサイトはドイツの声グローバル最優秀ブログ大衆賞を獲得し、たくさんのメディアの注目を浴びました。2009年の11月には、北京を襲った大雪の中で2009年科学カーニバルを行いました。職員がたった4人しかいない団体でしたが、その1週間で大小24回の活動を行い、参加者はのべ3,000人を超えました。その上、メディアの注目の的になったため、心身ともに疲れ果ててしまいました。その年の12月には、一人の中心メンバーが大きなストレスで団体を離れてしまい、私自身も低迷し見通しがきかない状態になりました。 

リスの会の主な仕事は、都市の青年に対して科学知識の普及活動をし、産業界に貢献するサイエンスライターの育成を試みることですが、人材不足と資金不足を常とする草の根組織として、始めたときから独自の成長の道を探らなければなりませんでした。
社会奉仕の世界では、我々は新しい社会奉仕とみなされていて、新しいということは、ある意味ではアウトサイダーであります。2009年、民政登録のNGOになるのが非常に難しいと分り、北京一群松鼠文化普及有限会社を運営実体として工商局に登録することにしました。この1年余り、私と仲間達は全て社会奉仕でどんなビジネスモデルも使わず、1日の訪問読者数が10万人近い科学普及ブログを維持し、100回以上の大衆向け科学普及活動を行ってきました。その他に、独力で生きていく組織として、商業ブランド向けの科学技術PR企画を考え、科学技術メディアとして発展する道を探し求めています。
1年半の運営経験で、もしこの二つの面の両方で更に発展したいならば、必ずや新しい組織モデルを模索しなければならないと徐々に意識するようになりました。
私たちは、イノベーションは国家の発展にとって決定的要因となると認識しており、それゆえ、より良い、より中国の国情にあった科学普及プラットホームが必要なのです。、それによって社会と政府、大衆と科学を結び、商業と文化を融合し、現代科学文明を普及させ、新しい考えを創造する土壌を養い、同時に具体的な社会問題、たとえば、科学技術の社会的弱者層への普及、科学という実の硬い殻つまり各々の専門分野間の垣根を取り払うこと、社会にまだある迷信的要素を取り除いて科学を中華民族が追求する真の価値とすることなどの解決を促進していきます。その他に、インターネットで代表される新しいメディア時代の発展もまた、私たちの科学技術普及に更に大きな変化を求めています。

今日は光栄にも団体を代表して、私たちの今後の新しい枠組みを宣言します。
その一つは、私たちは北京朝陽区科学委員会を主管団体として、非営利団体である北京朝陽区哈賽科学技術普及センターを発起設立し、社会奉仕を旨とし科学普及活動を運営していきます。科学リスの会はこのセンター傘下のリーダー的プロジェクトで、青年科学普及者クラブという位置づけで産業界の将来を担う人材を養成し、青年の自発的な科学に関するオフライン活動を組織します。また、「ナットシェル(くるみの殻)時間」(訳注1)というウェブサイトは科学者の先端オンラインセミナー会場であり、科学リスの会と並行して重要な活動にします。その他に現在、科学教育支援や科学互助ネットのような、より伝統的な社会奉仕活動を計画準備中です。
更に、長期的なメディア従事者として、今までずっと私と仲間達は、中国国内の力を結集することができる科学技術メディアを設立したいと切望してきました。この1年余り私は優れたメディア組織をつくるには、商業の力を借りなければならないと真剣に思うようになりました。そこで、前に工商登記していた会社を保留し、名前を北京ナットシェル互動科学技術メディア有限公司と改め、運営していくことにしました。私たちのこの理想は投資者の同意を得ることができました。挚信資本(訳注2)が先月私たちと投資の取り決めにサインをし、北京ナットシェルに100万ドルクラスの投資をしてくれました。挚信資本が、私の公益人としての理想を理解し、科学リスの会を切り離して、公益ブランドとして独立した存在にすることを認めてくださったことにとても感謝しています。未熟な北京ナットシェルですが、今後は哈賽センターの発起組織として、1年以内に百万人民元を助成してこの新しい非営利団体の成長を助けることを約束します。

北京ナットシェルの目玉として、今日、私たちは全く新しい「ナットシェルネット」(http://guokr.com)を立ち上げました。これは社会的ネットワーク(訳注3)の性格を有する広範な科学技術専門サイトです。新しいサイトであるナットシェルネットは、内容と製品構成で新機軸を打ち出しています。これは元々大したものではないのですが、今の中国語インターネットの世界にあっては、もしかすると驚嘆に値することかもしれません。ナットシェルネットは15のテーマサイトで構成され、大量の生活に密着した責任ある内容を提供し、夫々が科学技術に関心のあるサークルのように、科学技術と関係のあるいろいろな話題でカバーされています。今回立ち上げたのは第1期の開発製品ですが、究極の理想としては、ナットシェルネットは、科学技術の面白さが、人々の文化的生活と娯楽の重要な要素になることを期待しています。
ナットシェルネットはまた、インターネットの内容を生み出す新しいモデルを見い出したいと願っています。Web2.0は内容の創作権を利用者に渡しましたが、専門的で優れた内容を如何に創造するかは新しい挑戦です。科学リスの会は、かつて草の根から大衆的影響力を持った知的リーダーを育てましたが、ナットシェルネットはこのモデルを更に発展させ、Web2.0時代の非中央化(decentralization)を、伝統メディアの内容構成、編集立場と結びつけ、科学技術を使って大衆生活のあらゆる面に配慮します。

ナットシェルネット以外に、北京ナットシェルメディアは図書ブランド“Nutshell Reading”を立ち上げ、科学知識の普及、SF図書の企画と出版に尽力しています。私たちは既に藍獅子財経閲読センター、新古典、磨鉄等の出版社と長期協力関係を結び、来月、私たちが企画したSF小説「地下鉄」を発行します。

最初から、私たちは百年続く老舗となれるような公益団体を作り上げたいと考えたため、私と数人の専門スタッフを除き、哈賽センターとナットシェルメディアは既に互いに独立した団体になっています。非営利団体である哈賽センターとしては、明朗会計を披露する計画で、一流の非営利団体の基準に厳格に従うことを自らに課しています。豊富なビジネス経験を持った田晨女史が哈賽センター専任の副執行長となり、専門的な経験を社会奉仕の領域に生かす予定です。私自身は引続き社会奉仕のパイオニアを担当しますが、同時にインターネット立ち上げ創業者としての新しい任務に就きます。
2年前、そして1年前にも、科学リスの会とナットシェルタイムはあまりにも理想化された産物だと見なされていました。今の世の中で理想を語ることは、バカか現実離れしているとみなされてしまいますが、実務派理想主義者を自負するものとして、私は大きく立派な非営利団体と科学技術メディアを作り上げることを夢見ています。これはとんでもない理想主義かもしれませんが、私は心の底から、皆さんからの暖かいご支援を得られることを願っています。
皆さん、どうもありがとうございます。

訳注1:「果壳」とは、英国のスティーブン・ホーキング博士の著書『The Universe in a Nutshell』―邦題『ホーキング、未来を語る』のNutshell のこと。ホーキング博士は、ハムレットの一節「俺はたとえクルミの殻に閉じ込められても、無限の空間を統べる王だと思っていられる」から啓発を受け、たとえ車椅子という「殻」に閉じ込められていても、誰も宇宙の神秘を探索する自分を止めることはできないと、自著の表題に用いた。現代人もさまざまな「殻」から逃れられないが、このサイト上では思い切り科学の宇宙で遊んで欲しいという願いが、このサイトの名前に込められている。

訳注2:中国のベンチャー投資会社

訳注3:SNS

公益ネットから翻訳して転載
http://www.51gongyi.org/space.php?uid=1&do=thread&id=8163

翻訳:岡田憲一
校正:松江直子、廖芳芳

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