2005/03/24 by GLI Japan

【謝麗華】農家女文化発展センター 

「農家女百事通」

――農村女性は何でも知っている

2004年11月18日。晴れ。中英社会的起業家交流プログラムの英国側参加者たちが、北京郊外の昌平区にある農村女性実用技術訓練センターを訪問した。

センターは北京の中心街から車で一時間半ほどの距離にある。車窓から見える広大な綿花畑、その手前を次々と後ろに流れていく街路樹の樺の木。白くた なびくのは農家の煙突から立ち上る煙だ。典型的な北部中国農村地帯の初冬の景色である。英国から来たばかりの派遣団のメンバーたちには、とても印象深い風 景だった。

しかし、訓練生の反応は随分違ったようだ。センター長の呉青さんは笑う。「訓練生の女の子たちがセンターに到着して、どんなにがっかりした顔をした か、皆さんには想像もつかないと思いますよ!大都会にある研修所に行くんだ、と思っていたのが、自分たちの村と寸分違わない場所に来てしまったんですから ね。」

しかし、ここでの研修・訓練は、その後彼女たちが大都市で生きていくために大きな意味をもったはずだ。センターでは農村部出身の女性たちに、都市で 自活するのに必要な実用的なスキルを教えている。設立以来6年間で、全国各地26の地域、特に経済発展の遅れた山岳地帯から、17の少数民族の出身者を含 め、4000人もの女性たちが研修に参加してきた。「センターの研修・訓練は全て無料です。過酷な貧困に苦しむ山村地域からできるだけ多くの訓練生を募っ ています。もちろん、当初は不信の目で見られましたよ。売り飛ばすために少女を探しにきた人身売買組織かと思われたりしました。そんないい話があるわけが ないというわけです。でも、次の瞬間には、どの家族も我々を家に招き入れて、夕飯を食べていけ、と言ってくれたんです。彼らのところにある一番のご馳走を ――ジャガイモを食べていけ、と。」

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農村女性実用技術訓練センターの母体となったのは1993年創刊の、「農家女百事通」(「農村女性は何でも知っている」の意)という雑誌である。北 京で開催された第四回世界女性会議(1995年、主催は国連)の後、同誌を創ったメンバーたちはこの会議に触発され、開発における女性の自立について、新 たなコンセプトを取り入れることにした。こうして、国外の財団や基金などの助力も得、この研修センターが1998年に設立された。こういった種類の非営利 訓練校としては、中国で初のものである。ちなみに、最初の寄付は、著名な作家の謝氷心女史から贈られたそうだ。

入口の壁には、このセンターのモットーが掲げられている。

「団結、自立、分享(分かち合う)、共建(ともに築き上げる)」。訓練を受ける女性の一人一人が、その精神を体現していくよう期待され、また求められているのだ。

訓練センターは、恵まれない家庭出身の女性たちが、生活の糧を得るための実用的な技術と、そして自分の足で立っていく自信を身に付けられるような訓 練を行っている。センターでの研修時間は比較的短期間だが、ここで得たスキルと経験は、彼女たちが誰におとることのない立派な社会人として社会参画するた めに、長年にわたって力となってくれるだろう。

現在、このセンターでは140人以上の訓練生が共同生活をしつつ実用技術を学んでいる。研修コースは調理や飲食店での接客術からコンピューター・ス キルや理容技術までバラエティに富んでいるが、どれも、さまざまな地方出身の女性たちのニーズに沿うよう考慮されたものだ。特に、飲食店接客術コースの卒 業生は労働市場での評判も上々で、既に400人以上の卒業生が、北京、上海、天津、青島などの大都市の飲食店で職を得ている。

また、就職のためや自営で仕事を始めるのに不可欠な実際的な技術だけでなく、英語や識字学習、さらには礼儀作法の授業も実施されている。

一行は事務主任兼訓練コース講師を務める陳虎さんに案内してもらい、研修生が日常生活を送る寮を訪問した。どの部屋も、10人の相部屋であるにもか かわらず、きれいに整理整頓されている。陳さんによれば、新入生は全員、訓練コースの授業の準備段階として軍関係者によるトレーニングを受けるのだそう だ。いわく、「当センターが教えるのは知識と技術だけではありません。我々の訓練プログラムにおいては、きちんとした生活習慣や人間性も同じように大事な ものと位置付けているのです」。

見学の後で、一行はセンターのスタッフと意見交換の場を持った。英国の社会起業家たちはこぞってセンターの活動を高く評価した。英国の類似プログラ ムと比較すると、この訓練センターはよりダイナミックで、精神的な健全さでも勝っているということだった。呉さんは応えてこう付け加えた――「教育は長い 目で見れば社会的変化をもたらすと信じています。我々はみな、社会的存在なのですから。社会的責任をもたなければなりませんね」。ちなみに、彼女はシュワ ブ財団(「世界経済フォーラム」[通称ダボス会議]の創始者、クラウス・シュワブ夫妻の設立した財団。社会的起業家というアプローチの普及を目指し、さま ざまな起業家たちをネットワーキングし支援している)によって、2003年の「世界の優れた社会的起業家」に選ばれた人材である。

農村女性実用技術訓練センターの成功は、この方式をモデルケースとして他の組織でも取り入れる――それによってより多くの女性に裨益することができ る――可能性を示唆する。自らも社会的起業家である英国派遣団のメンバーたちが、ここに大きな関心を寄せたのは当然ともいえよう。呉さんによれば、実際に 他の地域の団体からアプローチを受け、既にいくつかのケースではこの訓練センターのモデルを取り入れることで合意ができている。ただし、「農村女性実用技 術訓練センター」の名称は使わないで、という条件つきだ。呉さんは言う――「この点には非常に慎重に対処しています。ひとつには、ここ中国においては、強 力なネットワークがない限り必要な資金を集めるのが極端に難しい、という現状があります。それにもちろん、教師たちに我々の方式を飲み込んでもらうのは、 生易しいことではないんです」。

「女性の自殺防止プログラム」。これは、農村女性実用技術訓練センターが、河北省の農村6か所で、地域の婦人連合会と協力して設立した、あらたなプログラムである。また、訓練センターは、甘粛省と貴州省でも農村女性のための識字教室を開催している。

呉さんは文化的、教育的、そしてシステム上の”バリア”を取り除くことの重要性を非常に重くとらえ、これは女性たちを自分のコミュニティに関心をも つよう導くことで達成し得ると考えている。つまり、女性たちに、自分たちの地域の”代表”として行動すること、そしてコミュニティの人々のために資源を主 体的に活用することは、彼女たちの権利であり、同時に義務でもある、と教えることがカギとなる。民主主義を彼女たちの心に――そして社会に根付かせたい、 ということだ。

確かに、市民権という概念は教育を受け仕事を得る権利だけを意味するのではない。市民として社会参加し、責任ある行動をする、そして社会に対する自 分の意見を声に出して主張するためには、一定の社会的な”力”が必要だ。ならば、そうした”力”を獲得できるようサポートされる、それも市民の権利の重要 な一面である。であればこそ、これは全ての人々の基本的な権利として理解されなければならない。もちろん、農村女性を含めた全ての人々の、だ――現実に は、彼女たちは誰よりもこの「権利」から閉め出しを食わされているのだけれど。

農村女性実用技術訓練センターは、この「責任ある市民になるためにサポートされる権利」を実現しようとする、果敢なる試みなのだ。(翻訳:櫛橋史真)
農村女性実用技術訓練センターのWEBサイトhttp://www.nongjianv.org (中国語、英語)

関連記事:農村女性実用技術訓練センターhttp://www.glinet.org/inspiredetail.asp?id=7552

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