2011/02/01 by Matsue

【佐々木豊志】くりこま高原自然学校

  宮城・秋田・岩手の三県にまたがる栗駒山は、春の新緑、夏の高原植物、秋の紅葉、冬のスキーと四季折々の魅力で人気の山だ。2008年6月14日、岩手・宮城内陸地震が突如山を襲った。道路はズタズタに寸断され、ガードレールは白いリボンのようにねじれて垂れ下がり、江戸時代から続いた駒ノ湯温泉が土石流に飲み込まれた。

  くりこま高原自然学校は、最も大きな被害を受けた沼倉耕英地区にある。奇跡的に人的被害は免れたものの、10数年かけて少しずつ拡大してきた施設や畑は無残な姿となり、孤立した。2日後に避難した代表の佐々木豊志さんは、被災当日から携帯電話でブログに状況や課題を毎日発信した。自然学校や日本財団のネットワークがこれを全国に伝え、全国から励ましや支援物資そしてボランティアが続々と集まり、被災者を力づけた。佐々木さんはじめスタッフは、ボランティアセンターの設置や特産のイワナ・イチゴ搬出計画などを行政に掛け合い、地域と自然学校の復興に全力で取り組み、着実な復興を成し遂げてきた。

  くりこま高原自然学校では、被災地ならではの経験や景観を生かし、2011年1月現在までに8回の震災復興支援エコツアーを行っている。被災地の現状と生活、文化、歴史、そして復興に向けた取り組みを知るスタディツアーだ。発生から2年余を経た現在でも、「不安定な状態にある土砂を安定化する」工事が行われているが、佐々木さんや多くの地質学者はできるだけこのまま「ジオパーク」として保存するべきだという意見だ。筆者は2010年秋の震災ツアーに参加したが、土砂崩落地の迫力は衝撃的だった。近くの温泉施設にも、当時の写真や崩落状況の説明の展示館があり、大規模な地滑りの様子を伝えている。

  一方、震災をきっかけに里山にも拠点を作ったことで、くりこま高原自然学校の事業はより広がったと佐々木さんは考えている。現在の主の事業は以下の通り。

・野外教育&冒険教育
 2泊3日の短期から、2週間程度の長期まで、四季折々の自然の中で冒険体験をベースとした各種キャンプを実施している。また、年齢の低い子ども向けに、デンマーク発祥の自然体験活動である森のようちえん(森の小学校も)を実施し、自然の中の自由な活動を通して、子どもの感性や創造力、そして未知の世界へ自分の意志で一歩踏み出せる力を育んでいる。

 

・ツアー・ガイド
栗駒山の大自然を楽しむ各種ツアーのガイドのほか、震災エコツアーでは震災の爪痕や住民の思いに直接触れる機会、ご当地グルメなど、地域に根ざした自然学校ならではのガイドを提供している。

 

 

・体験プログラム
木の実アートや草笛教室、キャンドル・石けん・つる籠・リースづくり、草木染めなど各種のクラフト教室、自慢の石窯を使ったパン・ピザ作り、山菜・きのこ狩り、有機野菜の収穫体験、燻製づくりなどの野外料理、環境問題・野生動物・水資源・科学・人間関係づくりなど、学習のねらいや年齢に応じた多種多彩なプログラムを用意している。

 

・耕英寮
不登校だった一人の子どもがキャンプに参加し、自分らしく生きることを取り戻したことがきっかけで生まれた、不登校・ひきこもりの寄宿制度。これまでに80名以上の青少年を受け入れた。現在では農的な暮らしや自然の中での生活の関心のある方も受け入れて、共に暮らしを創造する場を提供している。

 

・エコビレッジ
「自然と共生する持続可能で平和で豊かな暮らしを創造する人づくりと社会づくりに寄与する」ことをミッションとしているくりこま高原自然学校は、「くりこま高原暮らし環境実験村」として、畑や家畜の世話、廃材の利用など循環型で自然と共生する暮らしを営み、地域住民との「結い」の関係づくりや各種ワークショップを実践している。

   くりこま高原自然学校には、常に新しい人が訪れている。農的暮らしを体験したい人、世界各国からのWWOOFER(食事/宿泊場所と労働を交換する国際的なしくみの登録者)、実習生、寄宿生、山村留学生など。そして、近年は東アジアとの交流活動も多くなってきた。韓国の安重根義士と栗駒出身の看守・千葉十七居士の友情と平和への願いがきっかけとなった日韓子ども交流キャンプは、今年で2年目だ。また、CSネットがコーディネートした上海での環境教育ワークショップ参加、中国からの自然学校研修生の受け入れなど中国との交流も増えている。

  くりこま高原自然学校を訪れて一番印象に残ったのは、美しい風景もさることながら、スタッフのみなさんの自然で温かい物腰だった。それぞれの持ち味を生かし、絶妙のチームワークで足元の暮らしと世の中への働きかけの両方を大事にし、楽しんでいるように感じた。彼らの「場」に共に身を置くことで、多くの子どもや大人の心に、前向きな何かが生まれるのではないだろうか。

文責:松江直子

写真提:くりこま高原自然学校

くりこま高原自然学校
http://kurikomans.com/index.html
NPO法人 くりこま高原/地球の暮らしと自然教育研究所
http://kurikoma.org/project/project.html

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