2010/05/24 by GLI Japan

コミュニティーが共同で自ら食品スーパーマーケットを設立  米国ニューヨークの食品コープを訪ねて

私は、米国在住の友人ジェニファーから、彼女のコミュニティーの食品コープについて何度か話を聞いていた。毎回彼女が話してくれる度に感じたことは、地元 コミュニティーに食品コープがあることを、彼女がこの上なく誇らしく思っているということだ。 米国に滞在する用事があった機会に、2009年12月4日、ジェニファーの紹介と米国の友人である衛平の協力を得て、ニューヨーク市ブルックリン地区の食 品コープ(Park Slope Food Co-Op)を訪問した。

同コープは、繁華街で住宅が密集している地区にある。午前11時、私たちが約束した時間にコープに到着したちょうどその時、ボランティアと思われる人達が 到着したばかりの食品を荷下ろししていた。外見からは、コープと市街の一般のスーパーとの区別がつかなかったが、2時間に満たない訪問を終えた後には、相 違点について理解することができ、私の考え方は変わった。

宋庆华和创始人

(筆者宋慶華とコープの創始者2名との写真)

コミュニティーの住人が自ら所有し管理する食品コープ

食品コープは、近隣の10のコミュニティーの住民によって1973年に共同で設立された。当時の創始者の一人であるジョー・ホルツさんが私たち を迎えてくれた。現在、ホルツさんは、コープのゼネラル・マネージャーであることを言っておくべきだろう。彼は、非常に快く私たちを案内してくれ、見学中 も絶えずコープの紹介を続け、自らつくりあげたコープを非常に誇らしく思っていることが見て取れた。

このコープで買い物をする全ての顧客は、コープの会員でなければならない。会員は、最初に25ドルの入会費を支払い、これは払い戻しできない。会員になっ たあと、100ドルの出資金を納め、これでコープの「経営者」の一人と成る。この100ドルは、引っ越しした場合など退会時には戻ってくる。(注:低所得 者の場合、入会費と出資金は、それぞれ5ドルと20ドルにまで値下げされる。)ホルツさんは、現在コープは15,000名余の会員を有している、と歩きな がら説明してくれた。これを聞いた私は、決して大きくはないこのコープの会員数に驚かずにはいられなかった。

このコープと米国の他のコープとは、明確な相違点が一つある。これは、全ての会員が、定期的にコープの作業員として無償で労働力を提供しなければ ならないということだ。他のコープではこの必要はなく、会費を納めていればよい。ホルツさんによれば、会員が作業員として労働に参加する目的は二つある。 一つは、コープの経営コストである人件費を削減し、食品の価格を低くおさえ、会員全体の利益をはかることだ。二番目の理由は、会員が一緒に作業をすること で、互いに連携し合い、共にコミュニティーづくりに参加し、コミュニティー内部の関係を強化するためだ。彼はつぎのように補足した。コープとは即ち一緒に 働くことで、これはコープ創立の理念として大切なことだ。労働に参加して共に働くことは、コープのコストを削減できる以外にも重要な目的がある。子供達に も仕事をすることを学ぶ機会を与えることだ。これは、ホルツさんのもう一つの理由であり、コープの理念でもある。会員を父母に持つ子供達は、小さい頃から コープで労働する(働く)父母を見ており、18歳になれば自らコープでの仕事に参加できる。多くの人が、子供が労働に参加して仕事経験を得るということ は、非常に良いコンセプトだと考えている。

食品包装

(食品の包装作業)

ホルツさんによれば、初めは誰もがこのように考えていたわけではなく、最初は労働というコンセプトを嫌がる人たちもいた。彼らが重視していたの は、食品が低価格であることだったが(私がコープの商品を隣のスーパーと比較してみたところ、全てコープの方が0.5から1ドル安く、商品によっては更に 差があった。)、彼らもある一定の期間労働に参加した後に考え方が変わり、労働し共に仕事するというコンセプトが気に入るようになった。力を合わせること の意義を発見し、労働には良い面がたくさんあると思うようになったのだ。ここで、「労働」とは何かを説明する必要があるだろう。これは実は全ての会員が コープの作業員であるというコンセプトで、即ちここで買い物をする一人一人が、顧客であると同時にここのスタッフでもあるということだ。

会員はどのように仕事に参加しているのだろうか?彼らの作業時間はどのように計算するのだろうか?どのように会員の労働参加時間を管理するのだろ うか?ホルツさんは次のように語った。コープの規定では、会員は、4週間毎に1回コープの労働(仕事)に参加し、1回あたりは2時間45分だ。会員の毎回 の労働(仕事)は、コンピューターに記録され、4週間を超過しても参加がなかった場合、次に仕事に来たときにコンピューターにその旨表示され、警告が出 る。二度以上予定どおりに労働(仕事)に参加しなかった場合、罰則として労働時間が追加され、更に多くの回数参加しなかった場合、会員資格が取り消され、 その場合コープで買い物をすることができなくなる。

会員の仕事は、通常5つの部分から成る。1、会員事務室:これは全ての会員の管理が行われる場所で、日常7名の会員がおり、3名は専属のスタッフ だ。専属スタッフは、主に会員の管理、新規会員の登録や、新しい会員が速やかに仕事をおぼえられるよう指導を行う。2、販売業務班:主に、レジ係と、顧客 が品物を車まで運ぶのを手伝い、ショッピングカートを元の位置に戻す役目だ。専属スタッフは、主として会員による作業を指導する一人だけで、他は全て会員 が担当している。3、搬入荷下ろし班:主に搬入された商品の荷下ろしを担当する。4、包装班:主に、購入した卸売用のパッケージを小分け包装し、秤にか け、値札シールを貼り、販売に備える。5、清掃班:食品コープの清掃を行う。ホルツさんがユーモアたっぷりに言うには、多くの人は清掃作業を嫌うため、清 掃作業に参加すれば、労働時間を2時間削減できることとし、こうすることで、労働時間を減らすためにこの作業を選ぶ人が出てくるようにしている。

コミュニティーの就業問題を解決

会員による労働参加の他、現在コープでは、60名の専属スタッフを雇っている。彼らは、会員の管理(新規会員の受付)、会計、購買と入荷、情報シ ステムの維持等の管理作業にあたっている。私たちが見学に行った際、2回の事務エリアでは、どのデスクも忙しく仕事にあたる従業員で占められていた。全て の専属スタッフは、コミュニティーの住民だ。

公平で環境に優しい生活の提唱

環境に優しい生活方式の選択と公平性の確保は、コープ会員が賛同する原則だ。食品コープのいたるところで、有機食品とグリーン食品のラベルを付し た商品が見られる。有機食品は、認証を取得している農場や卸商から仕入れており、グリーン食品は、地元の農家が自分で生産した製品だ。同時に、製品の出所 にも注意を払っており、たとえば農業労働者の権利を特に保護し公平性を確保している農場があれば、その製品を優先して仕入れている。これも、コープ会員の 意向だ。

货架

(有機食品で満たされた商品棚)

食品コープで販売されている有機食品はかならずしも高価ではなく、ものによっては普通の食品と同等の価格だ。これは主に、製品の仕入れを直接行っ ており、中間業者が少ないからだ。この他、全ての有機食品は、専門の認証機関から認証を取得しており、米国農務省の有機食品ラベルが貼られている。認証機 関は、販売側でも購入側でもない独立した第三者組織で、連邦政府農務省により認定を受けている。

コープでは、商品の生産者が、労働者に対して公平かつ公正という原則を遵守しているかどうかも注目している。この原則を遵守している生産者の商品には、「フェアトレード」のような認証機構が発行するフェアトレード・ラベルを付けている。

公平贸易

(フェアトレード・ラベルを付した商品)

牛肉の販売カウンターまで来た時、ホルツさんは一塊の牛肉を手に取り、ここの牛肉はコープが購入した牛を加工したものだと話してくれた。コープでは、大規 模な加工工場で加工された牛肉製品を販売したことはなく、特定の農家から購入した牛を使用している。コープでは、毎年この農家から40頭の牛を買い入れて おり、それはこの農家の牛が牧草だけを与えられ、化学合成食料はいっさい与えられていないからだ。コープでは加工工場は持っていないため、購入した牛は屠 殺業者に送って加工してもらう必要がある。特定の農家から牛を購入する主な理由は、安全性、そしてもう一つはコストと価格を低くおさえることができるため で、店内の豚肉も同じ方式で養豚農家と協力している。

Joe

(牛肉について説明するジョー・ホルツさん)

ホルツさんは更に次のように語った。数年前、コープの会員は、コカ・コーラ社の製品をボイコットすることを投票により決定し、店内におけるコカ・ コーラ社製品の販売を禁止した。理由は、同社がインドで現地の水資源を破壊し、コロンビアでは従業員虐待事件が発生したためだ。コープ会員は、このように 社会的責任感が欠如している会社の製品は、コープで販売することはできないとし、毎年一度、会員総会にて同社の製品に反対する投票を行っている。

みんなで政策を決定する会員総会制度

コープ会員は、労働に参加する他に、毎月1回の会員総会にも参加し、コープと関連する事項を話し合う。毎回異なる議題が挙げられ、議題は事前に公 布される。私は、どのような議題が話し合われ、会員はどのような議題に関心を持っているのか、非常に興味を持っていた。ホルツさんによれば、通常会議の議 題は主に、会員の作業時間、コープの建物の改修、店舗拡張の必要性、等だ。もちろんコカ・コーラ社製品の販売禁止も、会員が注目している議題だ。私は、毎 回の総会の参加人数について関心を持っていたが、ホルツさんによれば、人数は時によって変化し、多いときには200名余が参加するとのことだ。コープは、 会員が積極的に総会に参加することを奨励しており、毎年2回以上総会に出席した会員は、労働時間を削減することができる。このようにして、総会に2回以上 出席した会員は、4週間毎に2時間45分の決まりになっている労働時間を減らすことができる。

コープは、1973年にホルツさんら10名により、共同で創立された。私が知りたかったのは、当初彼らはどのような理由でこのようなコープをつくったかと いうことだ。ホルツさんの説明によれば、創業メンバーは皆同じ価値観を持っており、当時アメリカの個人成功主義に反対しており、共同で事業を行うコミュニ ティーの理念を追い求めており、もちろん低価格と製品の安全性も追求していた。最初に協力しはじめた時は、食品コープとは呼ばれておらず、純粋な草の根の コミュニティー組織で、コミュニティー・センターと呼ばれていた。はじめはコミュニティー・センターには3つの小さな部屋があるだけで、2部屋は20平方 フィート(約1.9平米)で、もう1部屋は40平方フィート(約3.7平米)だった。4年後には、現在のコープである会社を設立した。現在コープには、2 階建ての建物と地下室が1つあり、1階が店舗、2階が事務所で、地下室には、それぞれ乳製品、肉類、野菜・果物類を保存する3つの冷凍庫がある。最近コー プでは、会員総会で採択された路面店への拡張計画を推し進めており、既に市政府への申請も行い、承認を待っているところだ。

コープの理事会の構造について聞いたところ、戻ってきた回答は、法的に言えば理事会が最も力を持つ機関だが、彼らは、伝統に従って会員総会に政策 決定権を残したいと考えている、とのことだ。実際の運営上は、まず会員総会で議論の上決定を行い、その後、理事会が総会の「推奨」にもとづいて採択を行 う。長年にわたる実践から明らかなことは、会員総会が会員全体の集団利益を最も的確に代表することができ、理事会の法的責任と衝突することはないというこ とだ。

コープのリーダーシップは、9名の総コーディネーターから成り、その内の1人がゼネラル・マネージャーであるホルツさんだが、彼は、総コーディ ネーターという肩書きを好んで使っている。なぜマネージャーという通常の呼び方ではなく、コーディネーターという呼び方をしているのだろうか?ホルツさん が言うには、これは会員総会で決定されたことで、コーディネーターという名称のほうがコープの理念をより的確に表すことができ、コーディネーターの主な役 割は、会員が共に働くことを手助けすることだからだ。

ホルツさんによれば、実は米国では1970年代の初めには、このようなコープの数は1,000余にも上ったが、時とともに減少し、ここ数年では 150も残っていない。しかし、最近また新しい発展が見られている。ホルツさんの話では、現在彼らが手がけているのは、コープの模式を他のコミュニティー で展開することで、新しいコープの運営開始の手助けと技術指導が任務だ。この目標も、会員総会で討論された議題であり、それは、会員による話し合いを通じ て、他のコミュニティーのコープ設立の手助けにいくら出すかを決めなければならなかったからだ。もし皆がコープをつくったら、競争相手となり、自分のコー プの会員が少なくなってしまうのでは、とホルツさんに問いかけたところ、彼はすぐに次のように答えた。私たちは、自分のコミュニティーのコープは成功して おり、更に多くのコミュニティーがこのようなコープをつくってほしいと願っている。そう語る彼の目には自信が見て取れた。

最後に、コープの不動産について述べよう。コープの不動産は、全て会員によって購入されており、購入資金源は、会員が納める出資金、コープが一部 の会員から借りたローン、銀行からの商業不動産ローンの3つだ。この中には、政府からの資金は一切入っていない。現在、あと少しでローンの返却を完成でき るところまで来ており、その折には、コープは正式に完全にコミュニティー自らの所有となるのだ。

筆者:コミュニティー・アクション・サービスセンター 宋慶華

翻訳:A.K

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