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2010/11/20 by Matsue

岩手子ども環境研究所/森と風のがっこう


これが私たちの森と風のがっこう。冬はこんなに雪が積もる

岩手県葛巻町、北上高地の奥深く、標高700mの山襞にわずか11世帯の集落がある。その細長く広がる集落の中心部に、かっての上外川(かみそでがわ)分校跡がある。持続可能な地域づくりを実践するための実験場として、2001年春にこの廃校を再利用して「森と風のがっこう」を開校した。それ以来、私たちは様々な試行錯誤を繰り返してきた。私たちの考え方のベースになったのは、いかに「楽しみながら生活水準をダウンさせられるか」ということ。岩手の言葉で言えば、「そんだらことしてもったいねえ」という昔ながらの生活の中で使われてきた言葉と同義である。この山村に北欧の環境教育施設のようなフィールドを創りたいと考えたのである。

設立趣旨にはこう書いた。「全国に使われないまま放置されている、多くの小中学校の廃校跡には、過去に関わった人々の汗や、涙や、喜びが染み付いています。新たに施設を作る方が簡単なことかもしれませんが、これを再利用して新たな広場を作り出すことは、お金の問題だけではなくて、何かもっと大切な人々の記憶の流れの上にこれからの子どもの未来をひらくことにつながるような気がします‥‥」岩手県出身の作家、宮澤賢治の環境共生の精神にまなび、自然エネルギーと子どもの居場所づくりをテーマに据えて、新たなポラーノの広場(注)をこの岩手に創り出すことを夢見たのだ。

1年目は、自然エネルギーの活用をテーマにした連続講座を行い、集落の人々とともに校舎脇の車掌車の屋根に太陽光パネルを取り付け、小風力発電機も設置した。また、森と風のがっこうのグランドデザインを、町内外の若者からお年寄りまで様々な異年齢の人々とともに協働で何度も描いた。私たちの活動の特徴は、「参加する個人の思い、志向性」に基づいて、「ここに○○があったらいいなあ」という仮定法から、グループでやりたい願望を絵に描いていく方法にある。どうすれば、創造的な運動を形成できるのか、その原点にある個人の自発的な選択と楽しさが、年齢を越えそれぞれの内にある創造性を誘発するのだ。

2年目になると、自然エネルギー利用と地域固有の資源をどう活用するかという問いを深めるとともに、葛巻町教育委員会とともに「子どもオープンデー」を毎月1回土曜日に開催する事業を開始した。自然に触れる機会の少なくなった地元の小学生を対象に、五感による自然体験を遊びの中に取り入れてきた。これは2004年で3年目を迎えたが、いまだに参加者が抽選という人気プログラムである。子どもの居場所づくりを意図したこのような活動を通して、地域の人々との縁を深めていく交流が芽生え始めた。

森と風のがっこうは、自然体験、自然エネルギー利用と農的循環、生活総体のデザイン体系を実践的にまなぶエコスクールをめざしている。すなわち、「できる限りそこにあるものを再編集し、再利用すること」が基本である。土や光、間伐材、牛の糞尿に至るまで、活かせるものであればどこまででも利用の方法を考える。こうした中から、パーマカルチャーの考え方を取り入れながら、水を流さない「コンポストトイレ」やガラスの空き瓶を埋め込んだ美しい土壁、捨てられた空き缶を積み上げてモルタル加工した「リサイクル空き缶風呂」、廃材や間伐材を利用した「不耕起菜園」「鶏舎」、「温室」などが生まれた。かつて職員室だった部屋は来訪者がエネルギーを体感できる「自転車発電機」や「手回し発電機」などを置いて、展示ルーム兼スタッフルームに変えた。建築家集団の指導を得て、素人の私たちの手で成し遂げたことの意味は大きいと実感している。

2003年12月に葛巻町では上外川大規模風力発電所が完成し、送電を開始した。このがっこうはちょうどその山麓にあり、葛巻町を訪れる視察者にとってビジターセンターの役割を果たせるのではないかと考えている。幸いなことに、葛巻町は全世帯のエネルギーをまかなうことのできる自然エネルギーがあり、町民とともにさらなる政策を進めようとしている。こうした町の施策の方向性とタイミングが、いい具合に私たちが目指してきたこととかみ合い始め、これからさらに活動発展の兆しが見え始めている。

未来を描かなければ過去は輝いてこない。過去を見つめなければ未来は見えてこない。過去と未来をつなぎ合う場が、かつての地域の広場である廃校なのだと私たちは確信する。地元学フィールドワークで出会ったおばあちゃんたちの苦労話はまさに身体知、生活の中で育んできた知恵としかいいようのないものがあるからだ。

2004年春から、エコロジカルな「カフェ」の建設にも取り掛かっている。取り壊す予定だった旧教員住宅を、“もったいねえ”の精神で再生させていくプロジェクトである。草屋根には野菜が実り、土壁と火のある暖かなスペースが来年には誕生する。まだ見ぬ皆様との新たな出会いをお待ちしたい。


ガラスを壁に埋め込んだトイレ

注:ポラーノの広場
宮沢賢治の作品名で、野原のまん中にある祭りの場所のこと。ここでは、ポラーノの広場で歌ったり風を吸ったりすると元気になって、からだいっぱいにエネルギーが満ちてくるような広場を指す。

日付 2004-05-24
筆者 吉成信夫
団体名 岩手子ども環境研究所/森と風のがっこう
URL http://www5d.biglobe.ne.jp/~morikaze/
TEL (研究所)019-645-9660
FAX (研究所)019-645-9660
E-MAIL mori@kaze.mi.to

日中韓環境情報共有サイトENVIROASIAより転載

http://www.enviroasia.info/organization/organization_detail.php3/J04052401J

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