2010/08/05 by Matsue

グレイストーン・ベーカリーでの仕事の創出(後編)

J. ケネディ: 報奨制度の話に戻りますが、実施後変化はありましたか?

J. ウォールズ: 最も最近の変更は2009年に行なったばかりなので、まだ多くのデータはありません。

エネルギーの使い方が変わった気がします。皆、何が可能かを熱心に議論しています。我々は、ゆっくり時間をかけて改革を行なってきましたので、全体像は見 えています。私が最初にここへ来た時、従業員は、食べていけないとかどこに住めばいいかという生活に関わる深刻な問題についてよく話していました。これら は対処の必要のある大きな課題です。私は、マズローの欲求段階説と基本的な欲求に最初に対応するという発想が大好きなのです。従業員が、もうこの基本的欲 求に取り組む必要がないという訳ではありませんが、彼らは前向きになっています。

我々が行なった調査の1つで、従業員の68%が、教育や一連の技術を身につけるために何かをしたいと前向きに思っているという事が明らかになりました。そ れは非常に素晴らしい事です。素直に人生を引き返し、GED(一般教育修了検定)をとる人もいますし、新しいスキルを身につけるという人もいます。数人の 従業員は、現在フォークリフト研修に参加し、その研修をとても楽しみにしています。何人かの従業員は、会社側からするべき課題を任命されましたが、ある従 業員は「私はこれを学びたい。私はこのスキルを身につけたい。」と言って自発的に学習したりしました。

我々は食品安全教育を実施し、認定し、従業員が資格を取れるようにしました。従業員が、新しいスキルを身につけることに熱心になっていくのを目の当たりにしています。それは本当にすごいことです。会社に欠けがちな、一定の成長と刺激をもたらすのです。

こうして、こういった全ての事と一緒に、財政面の改善も見え始めました。マージンが増え、生産性が向上しました。私が最初にここへ来た時は、30名ほどの 従業員で大体約百万ポンド生産していましたが、現在は2倍の60名の従業員で、生産量は4倍にも膨れ上がっています。

J. ケネディ: 他社の労働者への取り組みをご覧になってどの様に思いますか?一般的に言って労働者や公平労働基準に関して、もっと重要視する必要があると思いますか?

J. ウォールズ: もちろんです。 もっと重要視する必要があると思っています。しかし、今起こりつつあるとも感じています。社会が職場の従業員の重要性に目を向け、認識し始めています。斬 新的なことをしているのは、グレイストーンが最初ではありません。我々は自分たちのやり方をしているだけです。もっと重視する必要があると確実に思いま す。ひとつの社会、ビジネスコミュニティとして、全ての利害関係者、株主だけでなくビジネスに関わる従業員のことも理解する必要があります。グレイストー ンでは、従業員を重要視しています。

また地域社会と、その地域社会に我が社が与える影響にも重点を置いています。地域社会における環境への影響を非常に意識していますし、地域社会における社会的影響も経済的影響同様、非常に重視しています。

経済的な面でいうと、我々は、地元の誰からどの様に購入しているかという観点から考えます。まだそれらサプライヤーの政治的、あるいは環境上ないしその他 の影響を検証できるところまで至っておりません。しかし、我々は出来るだけ地元で購入するように、非常に高い意識を持ってやっています。

地元に精糖所があります。地元にあることから、我々はそこから購入するようにと強調しています。損をしてまで地元から買うでしょうか?違います。単に契約 と見合うようにすることも含め、契約を勝ち取る全ての機会を与え、その地元の工場から購入することに重点を置くのという事なのです。

我々はそういうことに気を配っています。他の企業にも、特に雇用の分野で、地元に対する注意をもっと払ってくれればと思っています。そこには成長がみられるのです。

我が社はそういったことに興味を持っていますが、他社は費用を見ると言うでしょう。我々も原価について話しをしますが、我が社では、それは地域社会におけ る投資として見ます。実際にその投資は、我が社の実績となって報われるのです。我が社には、新入社員レベルでも他社より忠実な従業員がいると思っていま す。

新入社員レベル同士の従業員を比較すれば、我が社の新入社員の方がより忠実だと思います。なぜかというと、彼らは自分たちの機会を理解し、この会社がもつ影響力を理解しているからです。

J. ケネディ: 貴方の著作『Mission Inc. の一章に、Do-Gooders「いい事をしたい人」対 Good Doers「いい事をする人」というのがあります。その違いはなんでしょうか?

J. ウォールズ: Do Gooders いい事をしたい人というのは世の中でいいことをしようとしている人です。それはいい仕事ができる人とは違います。我々は善意のある人と生産的な人を区別するようにしてきました。

ビジネスの世界にはいい人がいますが、必ずしも生産的とは限りません。ただ働きに行くという人と生産的なビジネスマンの違いは誰もが理解していると思いま すが、その人が必ずしもいい人という訳ではありません。我々はいい人の事を話していますが、その人は必ずしもいいビジネスマンとは限らないのです。

非営利事業では、沢山のいい人と仕事をすることになりますが、彼らは必ずしも生産的ではありませんし、そういう人を抱える余裕もないのです。そして、我々 は、どちらかを選ぶ必要はないと思っています。いい事をしたいという意思があり、且つ上手に仕事が出来る人を見つけることができると思っているのです。

J. ケネディ: 成功している会社として、その大きな秘訣はマーケティングにあると想像しますが。雑誌Oprah、雑誌セブンティーン、Rachel Ray テレビ番組で取り上げられましたね。なぜマーケティングが、このビジネスで成功し続ける為にそんなに重要なのでしょうか?

J. ウォールズ: そ れは、我々のビジネスも他のビジネスと何も変わりがないからです。。実際、私の著書にビジネスがなぜ失敗するかということついて書いた項目があります。全 ての一般的なビジネスについて取り上げ、なぜ失敗するのかという理由を10個ほど記載しています。そして、非営利あるいは社会事業が失敗する理由も10個 挙げています。我々に言わせれば、全く同じ理由によるものなのです。目で見て同じものだと解るように、並べてみたかったのです。

グレイストーン・ベーカリーは1つのビジネスです。他のビジネスがしなければならないように、我が社のビジネスも市場に出す必要があります。ですので、面 白い逸話があれば、人々が我々のビジネスを理解できるように、そういった逸話を市場へ持ち込み利用しています。― 「Do-Goodieのブラウニーって何か知りたい」と思えば、商品を購入したいと思うでしょう。だから、こういった逸話を利用するのです。

どんなビジネスも市場での強みと優位性を模索します。たまたま我が社は、こういった逸話を持っているので、それを有効に使うことにしたのです。

J. ケネディ: 最新製品、Do-Goodie のブラウニーのことを仰いましたが、どのようにこのアイデア、名称に辿り着いたのか、そして現在の売れ行き等、もう少し詳しくお話をしていただけますか?

J. ウォールズ: 「60 Mimutes」という番組に出た結果としてこの製品を考えついたのです。2004年1月に「60 Minutes」に出演した時は、まだこのブラウニーは作っていませんでした。我々はケーキを作っていたのです。我が社は、レストラン用の高級ケーキ生産 者として非常に優秀でしたが、ケーキ製品のラインアップを拡大しようとしていたのです。

我々が「60 Minutes」を終えたちょうどその頃、ウェブサイトを立ち上げ、ウェブ上でケーキを販売していましたが、売れ行きはあまりよくありませんでした。 ニューヨーク市場の外ではあまり名前を知られていなかったのです。おそらく週に1個売れたかどうか。大げさに言っているのではなく、本当に週に1個か2個 しか売れなかったのです。ところが「60 Minutes」に出てから、突然、たくさん売れるようになったのです。

ただこれには裏がありました。我々は、ウェブサイトでケーキを1個売るごとに20ドルの損を出していたのです。週に1個か2個であれば、大したことではあ りません、なぜ損をしてまで売りたいのか?それは、ウェブサイトを訪れた人たちはグレイストーンのことを聞いて、その活動に関与したいと思っていた人たち だったからです。大したことではありません。彼らはケーキを買って、我々は20ドル損をする。我々はそれを人間関係への投資と呼んでいます。その人がグレ イストーン基金の篤志家になるかもしれません。ですので、人との関わり・繋がりの問題なのです。

さて、数百個、数千個を1個20ドルの損益で販売する事となると、話が違ってきます。「60 Minutes」に出演した事は、素晴らしい事でした。グレイストーンにとって素晴らしい機会でしたが、1つのケーキを売るごとに損をしている訳ですか ら、ケーキの販売で約6万ドルの損益を出してしまいました。

しかし、そこで見つけたものは、6万ドル損しただけではありませんでした。これは学習投資です。我々は調査し、「一体どうなっているんだ?」と問いかける と、消費者はこう言いました。「売り手の人達と関わりを持ちたい。あなたの会社がどんな影響を及ぼしているのか知りたいのです」

そこで我々は思ったのです。「消費者は我が社と関わりを持ちたいと思っている。ケーキではないんだ」インターネット販売は、出荷の費用がかかりすぎる為、 成功の見込みはありませんでした。出荷費用は大きな問題でした。我々のケーキは大変繊細で、翌日到着の便で出荷しなければならず、その費用が非常に高額 だったのです。

そこで、我々は思いました。「我が社に何ができるのか?我が社は何で有名だろう?我が社は、ベン&ジェリーアイスクリーム向けのブラウニーは全て 作っている。我が社は、ブラウニーで有名なんだ」我が社のことを聞いたことのある人たちは、我が社がベン& ジェリーのアイスクリームと関わりがあるために我が社のことを知っているのです。そこで、我々はベン&ジェリーとの関係がグレイストーンにとって 重要な財産だと思いました。それをどのように生かせばいいのだろうか?

そこで、ベン&ジェリーと話し合いを持ちました。彼らは喜んで協力すると言ってくれ、我々はブラウニーのシリーズを売り出したいと言ったのです。

そうして、今ブラウニーシリーズを売り出すことになったのです。我が社は、ブラウニーを作るための専門知識を持っています。この建物は、ブラウニーを作るために建てられたのです。次に名前が必要です。そして、「グレイストーンブラウニーと呼ぼう」と思ったのです。

グレイストーンの意味はなんだろう?その名称自体には何の意味もありません。その意味を人々に教えなければならない。非常に明確なことですが、我々にはそ ういう活動をするお金はありません。私は、コダックのように、消費者のところに行ってコダックが何かを納得させるようなことは出来ません。コダックにはカ メラ会社の名前というだけで、他には何の意味もありません。どこかで読んだ事のある他のどんな名称もそうです。我々は、そのようなマーケティングをするお 金は持ち合わせていません。

そこで我々は、人々がその名前を聞いた時、消費者に我が社は一体何者だかを聞いて欲しいと思ったのです。グレイストーンって誰なんだろう?私たちは何に貢献しているのだろう?あの会社は何をしているのだろう?

そこで「Do-Goodie」という名前を思いつきました。それはただのgoodie(いい人)ではなく、Do-Goodie(いい事をする人)という意 味なのです。その名称に何か他の意味があるということをとらえている人は、ほとんどいないでしょう。しかし中には、敏感で、その名前をみて、「あぁ、この 会社は何か他の事もしているんだ。何をしているのだろう」と思う人たちがいます。そうしてその人たちは我が社のウェブサイトを訪問し、調べるのです。そし て彼らは一消費者から擁護者または大使となり、我々のしている事を話し始めてくれるのです。

それから、我々のキャッチフレーズも「あなたの良心を糧にしましょう(Feed your conscience)」に変わります。そうです、まだ食べ物の事についてです。なぜならブラウニーこそが重要だからです。しかし、何か他の事が起こって いると伝えるために、ただ食べ物の話をする以上の事をする様に消費者を動かすのです。

それは素晴らしいブラウニーです。ベルギー産のチョコレートと植物油から作ったのではない本物のバターで作ってあります。全て自然の原料で作った素晴らしいブラウニーです。

これが素晴らしいブラウニーでなかったら、何の意味もありません。1ドルで何かを買って、質の低い慈善団体にまわされるより、皆さんは1ドルを現金で寄付するでしょう。

皆さんは、素晴らしいブラウニー、最高のブラウニーを買っているのです。私がそれを作っているからというだけではなく、購入できる中で最高のブラウニーだ と信じています。消費者は、そのブラウニーを買い、ここで行なわれている素晴らしい活動をしている会社に協力をしているのです。

J. ケネディ: そして、ウェブサイトのアクセス数が増えていることに気づいたという事ですか?

J. ウォールズ: ウェ ブサイトのアクセス数は確実に改善しました。疑いの余地もありません。30万個以上のブラウニーを販売しましたので、リピーターがいると勘案しても、もう 少し少ないかもしれませんが、約30万人がアクセスしているという事です。それが、今までグレイストーンのことを聞いた事のなかった人たちが、我が社がや ろうとしているまた別の事、ブラウニーのおかげで、グレイストーンのことを知った人たちの数なのです。

まわりを見渡すと、今は多くのビジネスが、単なる製品情報の以上のメッセージを持っているという事がお分かりでしょう。全ての小売製品には製品情報が盛り込まれているはずです。

それは間違いありません。 そういったメッセージがないものもありますが、そういった製品は決して成功しないでしょう。しかし、単なる製品情報の以上の メッセージを伝えているビジネスがたくさんあることはおわかりだと思います。そういった製品を我々も販売しなくてはならないのです。

ウェブサイトのアクセスが、驚異的に増加しているのを目の当たりにしています。我々は、グレイストーンが活動している他の事も広く知ってもらおうと思っています。

J. ケネディ: 実は、財政上の危機についてもう少しお話を伺いたいのですが。昨年はかなりの影響を受け、今年も余波が残るだろうという記事を読みました。そのことについて、どう対応されているのかを少しお話していただけませんか?

J. ウォールズ: 他 のビジネスと同じように、我々も苦心しているところです。一般消費者市場も葛藤している状態です。スーパーマーケットの販売状況が苦しいように、我々のビ ジネスも苦しくなるでしょう。そして、その打撃は最初に来るでしょう。なぜなら、我が社の最大の商品は、アイスクリームの中に入る材料であり、そのアイス クリームは最高級のプレミアムアイスクリームで、価格も高額な方に位置しているからです。まだ大きな影響がないですが、ビジネスが苦しいため、価格及び原 価に対する圧力があります。経済危機以前のような成長は、もうありません。

そこで我々はスーパープレニアムブラウニーを売り出し、同様に最高級ブラウニーも売り出しました。成長の度合いや、当初の計画を達成出来たり出来なかったりする課題が出てきています。

しかし、ゼロからのスタートですので、毎日成長し続けています。明らかに、その成長の多くは、新しい店を出したり、新しい地域に進出したりしている事実も 貢献しています。しかし、我々は、継続的な力強いリピーターがいることを確認しています。とても楽しみな事です。小売業界も我が社を支え続けてくれていま す。

J. ケネディ: それでは、今後の計画はどうでしょうか?今後5年から10年でグレイストーンをどのようにしていきたいですか?

J. ウォールズ: Do-Goodie 商品ラインの大型小売店を出す事ですね。Do-Goodie は、ブラウニーのラインアップではありません。ブラウニーがDo-Goodie の最初の商品なだけです。パッケージをご覧になれば、「Do-Goodie ブラウニーの商品」とは書いていません。Do-Goodie と書いてあるだけで、その下にブラウニーと書かれています。ですので、Do-Goodieとは、多くの商品を組み込んで拡大していく我々のブランド名なの です。

今年の秋、これから1, 2ヶ月以内に、グルテン無添加の商品を売り出します。クッキー2種類、バニラとチョコレートのカップケーキ2種類、バナナナッツマフィン、それにバナナ ローフというラインの6つの商品をこの秋に売り出します。それはDo-Goodie ブランドのグルテン無添加商品のラインとなるでしょう。それから、まだまだ沢山の商品がリストアップされています。

今後のグレイストーンに対する私の願いは、提供する商品を増やし続け、ビジネスを拡大していく事と、保育所や医療センターや非営利団体を運営してこのコ ミュニティーでの雇用をさらに拡大し、いい影響を与えるという2つの効果を生む事です。そして、更には、我が社は雇用をし、君たちは成功できるというメッ セージを出し続けるということです。妥協する必要はありません。選択の必要はないのです。いい事をする事と成功する事は、同時にできるのです。

J. ケネディ: 目標とする労働力と最終収益のバランスを取るのに板ばさみになった事はありませんか?その2つが衝突する事はありませんでしたか?

J. ウォールズ: あ りませんね。その話がでてくるかというと、正直、出てきます。しかし、私は選択の必要がないと思っているので、対立もおこらないのです。ただ、より上手に 経営しなければならないと思うだけです。ですので、私の課題は、ビジネスをうまく運営しているかどうかです。我々が対処する必要のある物事にきちんと対処 しながら、ビジネスを運営しているだろうか?そうでなければ、間違った人材を雇っていないだろうか?そういった事は、対立して持ち上がった事はありませ ん。

もう一度言いますが、話し合いはします。こういった事は、定期的に検証するべき責任事項だと思っています。そして、もちろん、他の人が絶えず面と向かって その質問を投げかけてきます。ですので、私はその問題と向き合わなければなりません。我々はそれを検証して、雇用の面から見て、今やっている方法よりいい 方法はないだろうかと考えます。そして、我々は生産性の向上に向けて自分たちをかりたて続けるための挑戦をしています。

さっき、生産量が5千ポンドから2万、2万5千ポンドへと増加したことについて話をしました。同じ雇用基準です。しかし、それは従業員をより良い方法でト レーニングすること、より良い設備を提供すること、より良い製造環境を提供すること、そしてより効率的な方法でビジネスを運営することからきているので す。適切な人を雇っているか、雇っていないかいうことではないのです。

J. ケネディ: ジュリアス・ウォールズJr.さん、ご一緒できて光栄です。世界倫理フォーラムにご出席いただきありがとうございました。

J. ウォールズ: こちらこそ、ありがとうございました。

By Julius Walls, Jr., Julia Kennedy

Thursday, September 10, 2009

POLICY INNOVATIONより翻訳して転載

http://www.policyinnovations.org/ideas/audio/data/000372

翻訳:小嶋祝夫

校正:丸山志野

GLIサイトより転載:http://www.glijapan.eu/inspire/?p=467

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