2010/08/05 by Matsue

グレイストーン・ベーカリーでの仕事の創出(前編)

J. ケネディ: カーネギー・カウンシルの世界倫理フォーラムへようこそ。ジュリア・ケネディです。

先日、ニューヨーク州ヨンカーズにあるグレイストーン・ベーカリーのCEOであり、『Mission Inc. という本の共同執筆者である、ジュリアス・ウォールズ・ジュニア.氏にインタビューをしてきました。

 グレイストーンの焼菓子は聞いたことがないかもしれませんが、ベン&ジェリーのアイスク リームが好きな方でしたら、彼らのブラウニーを食べたことがあるでしょう。グレイストーン・ベーカリーは失業者に仕事を与える施設として始まりました。実 際この会社の方針は、「ブラウニーを焼くために人を雇うのではない。人を雇うためにブラウニーを焼く。」というものなのです。

ジュリアス・.ウォールズ氏は2000年にグレイストーンのCEOに就任して以来、幅広い従業員教育の伝統を継続し、経理経験と企業家精神の背景を基にビジネスの収益により厳しい重点を置きました。

ウォールズ氏はまずグレイストーン・ベーカリーの設立から話し始めました。

J. ウォールズ: グレイストーンを設立した時に最初に考えたことは、グ レイストーンを開設した禅僧コミュニティへ収入源を提供することでした。しかし、創設者であり、禅僧の指導者でもあるバーニー・ グラスマン氏は自身の宗教上の献身を社会活動と密接に結びつけたいと思い、創設の地であるNY州のリバーデールから同じNY州のヨンカーズにベーカリーを 移し、古いパスタ工場を買い取り、様々なケーキや菓子等の製造を始め、その後、パン等他の製品へも事業を広げていきました。

わが社の26年ある歴史の中でも比較的初期である5年目頃のある日、彼らはベン・コーエン氏とジェリー・グリーンフィールド氏(ベン&ジェリー アイスクリームの創設者)に会いました。グラスマン氏はコーエン氏とお互いの活動について話をしました。グラスマン氏は、「私はベーカリーをやってい る。」と言うと、コーエン氏は「私はアイスクリーム屋だ。何か一緒にできないだろうか。」と言ったのです。

その様にして今の関係が始まったのです。それ以来、ベン&ジェリー向けのブラウニーを20年以上にわたり作り続けているのです。

J. ケネディ: すごいですね。それで、ウォールズさんはどの様にしてこの会社に関与していくことになったのですか?

J. ウォールズ: 17年ほど前、私はグレイストーンがクッキー等に使うチョコチップを販売するチョコレート会社で働いていたので、会社へ直接お願いに行ったのです。残念な がら、グレイストーンには「NO」と言われてしまい、私は非常にがっかりしました。しかし、私はそれでもめげずにグレイストーンに商品を売り込み続けたの です。

その後間もなく、私は業者をホワイトハウスに連れて行く機会を与えられました。それはヒラリー・クリントン夫人の初の公式行事である1993年のイースターエッグロール行事で、確かにこの年だったと思います。その行事の最中、グレイストーンに関する情報をさらに調べ、よりその会社について学び、その会社の使命が何か、どういった人がそこで働いているのかを理解し、非常に好奇心をそそられたのです。

そこで、私は彼らの事業に関与し続けたのです。数年後、コンサルタントとしてマーケティング部長に要請されました。私はフルタイムで働き始めて二週間も経たないうちに、その仕事にすっかりほれ込んでしまったのです。それから数年後、CEOへの就任を要請されました。

J. ケネディ: CEOとして会社を引き継いだ際の実行計画は何だったのですか?それはちょうどグレイストーンの歴史における転換期のようなものだったのでしょうか。

J. ウォールズ: ええ。グレイストーンの拠点はずっとここであり、私がここで働くずっと前に確立されていました。私の就任前に既に12年ほど営業していましたが、財政上の 問題があり、その使命と販売利益との不調和を調整するのに四苦八苦していました。そこで私は就任後、最終損益について皆と話し合い、使命にかかわらず実績 をあげることに取り組み始めました。責任を課すこと、成功する機会を与えること、又、その成功を期待することで従業員としての自負心をかりたてれば、それ が成功に繋がり、結果的に使命もより良く果たせるというのが私の考え方でした。

私は、ベーカリーとしてのビジネスの再興は難しいと考えていました。しかし、これが成功すれば、解雇されたり、雇用に適さないと判断された人々 を雇うアイデアを達成するにはうってつけだと思いました。そこで、その考えを推進し、従業員に責任を課することから始め、トレーニングの形でその考えを強 化していきました。

我々は見習い制度を設けました。経歴にとらわれず、面接も行わずに、最初に来た人に雇用の機会を与えるオープン・ハイアリング(自由雇用)という 制度です。面接でわかることは、面接上手な人が誰かということだけで、その人が実際どんな働きをするかではありません。この様な制度を導入していった結 果、さらに高レベルの成功を達成するようになったのです。

J. ケネディ: グレイストーン・ベーカリーは常に営利目的の会社だったのですか?

J. ウォールズ: その通りです。1997年に、グレイストーン・ベーカーリーは公式にグレイストーン基金の傘下になりました。基金は、確か1992年に創設されたと思いま す。しかし、我々は常に営利目的企業であると同時に、常に非営利団体に所有されているのです。最初は、ニューヨークの非営利禅コミュニティであって、そし てグレイストーン基金となりました。

J. ケネディ: なるほど。従業員の方は皆さんどのようにウォールズさんのことを知り、やって来るのですか?

J. ウォールズ: 従業員のほとんどが口コミで入社してきます。新入社員採用の宣伝活動は何もしていません。我々は、コミュニティの中では知られています。私が最初にここへ 来た時は、就職トレーニングプログラム施設として知られていました。その頃も、我々が就職トレーニングプログラム施設に戻ったことはありませんでしたが、 人々はそう思っていたようです。それは別に悪いことではありません。ただ、我々はトレーニングプログラム施設ではない、というだけのことです。しばらくの 間働いた後、どこか別の働き口に行くような就職トレーニングプログラムとは対照的に、通常の雇用を提供する企業なのです。

従業員が、「トレーニングのために60日か90日だけここで働くんだ」と思うのか、あるいは「もしこの会社できちんとやってチームの一員にな り、ビジネスがうまくいくように働けば、ここで将来成功する道があるかもしれない。」と思うのかは大違いです。正規に雇用することで従業員の違ったレベル の自己意識に働きかけるのです。

我々の社是に、雇用の機会について触れた一文がありますが、その文は「昇進の機会を与える」と続いています。ここで働く60名の従業員のうち、私 たち8名だけは新入社員レベルではありませんでしたが(ベテラン)、他は全て新入社員としてスタートしたのです。我々の製造管理責任者も新入社員としてス タートしたのです。

ある意味一連のチャレンジともいえますが、従業員によっては、どこか他の場所で働いていたら到達できないかもしれない機会を提示しているのです。 彼らには真剣に努力するチャンスが与えられるのです。-「自分がこの仕事をしたら、専念して仕事をしたら、学習していけば、恩恵を受けるチャンスがある」 ことを提示できないのが、貧困・低所得層コミュニティにおける最大の課題の1つです。そこでは「もし自分が全て正しいことをしていれば、そこから何かを得 る事ができる。」ということを提示できず、彼らには成功の機会が見えないのです。我々が従業員に実証しようとしていることは、成功の機会がここには本当に あるということです。

J. ケネディ: グレイストーンで新入社員に提供している見習い制度について、もう少し説明していただけますか?

J. ウォールズ: 私がここへ来た時、試用期間というものがありました。我々は、社員を雇った際は、まず試用期間中として働かせていたのです。私は“試用”という言葉が好き ではありません。それにはいくつかの理由があります。そのうちの1つは、従業員が試用期間中であることについて話したくないとか、又は試用期間があるがた めに、この雇用は試用期間であり、すなわちいつも誰かが成功や失敗を監視している、という概念を連想されたくなかったのです。

見習い制度とは、仕事を覚えるために設けられた期間です。それは、成功を期待していると言う意味です。見習い制度は、成功すること、仕事を覚えること、成長すること、指導してもらうこと、成長に向かって見守られ、支援してもらうためのものです。

見習い制度は当初90日間でしたが、現在は1年間になっています。仕事に対する姿勢、生産性、正確性、出勤率の面での実績を基にした正式勤務評 定を含め、2,3時間のトレーニングを2週間毎に設けています。勤務評定は、非常にシビアですが、分かりやすく直接的なモデルですので、従業員は自分の立 場を推測する必要なく理解することができ、成功する為の支援を受けることができます。また、従業員は自分がどういった責任を持たされるか、そして自分の能 力に対する会社の期待をも理解できるので、そういった面に関しても推測する必要がないのです。

私の人事管理哲学の1つに3Cと呼んでいるものがあります。それは、透明性(Clarity)、一貫性(Consistency)、思いやり (Compassion)です。目標を明確に、その目標に向かって一貫して行動し、全てのことに対し思いやりをもって行動するということです。

一貫性があるということは、実際に思いやりがあることだと思っています。

誰かを好きだとか嫌いという理由で時に態度を変えるということは、思いやりがあるということにはなりません。ですので、我々の行動はかなり首尾一貫しています。もう一度言いますが、我々には何をするかが非常に明確にわかっているのです。

現在、見習い制度は褒賞モデルを採用しています。それは、報酬(Reward)、責任(Responsibility)、認知(Recognition)です。

覚えやすいので、私はこの3語が大好きです。

我々は、個人の責任を果たした従業員に報酬を与え、その功績を評価すると常に言っています。従業員がするべき仕事をしていれば、我々はその実績 を評価し、報酬を与えます。この手法は、「これをしなければ、こうなるぞ」いうより懲罰的なモデルから離れたものです。ボーナスがあることについてもち らっと話をします。雇用から90日後、90日以上の勤務で実績を残すごとに$50のボーナスを支給します。そして、もし実績が非常によければ、$100の ボーナスが支給されます。1年後、四半期ごとのボーナスに加えて$100のボーナスを受け取れます。更に、実績が非常によければ$500のボーナスを獲得 することも出来るのです。

我々は四半期ごとに掲示板に従業員の名前を発表することで彼らの実績を称えています。毎月、誰かの名前が発表されますが、四半期ベースの実績を基に毎月発表しているのです。従業員を評価することに努め、その評価を褒賞とし、それから実際に経済報酬を与えるのです。

J. ケネディ: あなたの経営アイデアはどこで集めてくるのですか? 非常にユニークなビジネス労働のモデルだと思いますが。

J. ウォールズ: 非常に多くのアイデアがここでの会話から生まれます。私が今話したこと全てを考え付いたかの様に私が焦点になっていますが、全ての事を自分1人で考えつく 訳ではありません。我々は、非常に素晴らしい経営チームをもっているのです。我々は、こういった会話に従業員を参加させようとしています。

私は、以前見習い制度を直接運営していました。誰かが見習い制度を卒業した時の締めに、私がしていた事の1つは、彼らに2つの質問をすることで した。1つは同僚にアドバイスをすること。見習い制度中に集中すべきと思ったことを伝えることです。そのことで、見習い期間中の従業員は、見習い制度をや り遂げ、成功し、無事卒業できた人からその話を聞く事ができるのです。

2つ目は、グレイストーンが、どんな違った方法で見習い制度を実施するべきと思うかを私に言うことです。

そういった問答があり、見習い制度で実施する多くのことが徐々に進歩してきたのです。

ごく最近、我々は外部グループと提携し、我々がしていることを調査し、見学してもらい、フィードバックをしてもらいました。イエール大学から来た研究グ ループは、実際に我々の手法を評価し、フィードバックをしていきました。彼らは我々の見習い制度を見て、少々懲罰的過ぎるような印象を受けると言いまし た。この研究グループが、どうすればもっと褒章中心型の見習い制度にできるかのアイデアを提供してくれたのです。正直、我々は従業員に責任を課する方法を 撤廃することはしませんでしたが、褒賞重視を始め、様々な報酬を追加したのです。

我々は、社内、従業員、経営陣、社外グループなど、どこからの意見に対してもオープンで、その意見を見聞きしています。そして社会やコミュニティ全体と共 有し、何が起きているのかを把握し、何がうまく機能するのか、そしてその最良の方法をどのようにグレイストーンに適用する事ができるかを考えているので す。(後編につづく)

By Julius Walls, Jr., Julia Kennedy

Thursday, September 10, 2009

POLICY INNOVATIONより翻訳して転載

http://www.policyinnovations.org/ideas/audio/data/000372

翻訳:小嶋祝夫

校正:丸山志野

GLIサイトより転載:

http://www.glijapan.eu/inspire/?p=451

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