2010/11/04 by junhui

吉美堅賛福利学校

平均海抜が4100m以上という青海省南部の果洛州瑪沁県。高い雪山の狭間にあり、年間平均気温は-3.5度から3.5度、一年の大部分は寒い冬である。ひとりのチベット仏教僧が設立した吉美堅賛福利学校はこのような場所にある。そこで学ぶのは、学費が払えない子どもや貧困などのために学齢期に学校へ行けなかった若者および成人、そして一度も学校に通ったことのない僧侶だ。入学試験を経て入学した全ての学生の学費は無料で、障がいのある子どもや孤児そして特に貧しい子どもに対しては、補助金も支給している。

1994年12月の設立以来、チベットの伝統文化と現代文化を教えてきた吉美堅賛福利学校は、チベット族が多く住む地区で、すでに最も影響力のある学校となった。毎年学生を募集する季節になると、あちらこちらから遊牧民が子どもを連れてやってきて、学校の周りにテント張る。募集人数は100人だけだが、申込者は1000人を超える。国家体制の外にあるこの学校の卒業生の多くが、正規の大学や専門学校に合格するか、順調に仕事を見つけることができるため、この学校のレベルの高さは、政府・社会団体・チベット族大衆など各方面が一致して認める所となっている。現在、教師やスタッフを含めた専任職員数は30名、2008年の運営資金は400万人民元である。その影響力は、青海・チベット・四川・雲南・甘粛の内陸チベット五省や内モンゴルの一部に及び、熱心なボランティアは1000人を超えている。

 今年45歳になる吉美堅賛校長は瑪沁の出身だ。22歳で出家、何カ所かの有名寺院や仏教学院で学び、1990年、25歳で北京にある中国チベット語系高級仏教学院を卒業すると、故郷に戻った。厳しい自然環境の中で暮らすチベット族の多くは、遊牧を生業とし、収入は低く分散して住んでいる。国立の学校は少なく、遠い場所にあるため、多くの遊牧民の子どもは学校に通うことができない。吉美堅賛は、私立学校の創設を決心した。子どもから大人まで、僧侶や貧しい人々を含むすべての学校に通えなかった人を受け入れたかった。チベットの伝統文化と現代教育を結合し、チベット語で教育する。1994年12月、校長の誕生日に学校は開校式を行い、86名が入学した。現在では、男子が700名あまり、2005年に設立した女子部には400名程が在籍している。

校長や教師たちの誠実さ、そして学生たちの勤勉さに多くの人が感動し、学校は政府・国内外の非営利団体・篤志家からの寄付や各種の支援を集めたが、彼らは他人からの資金援助のみに頼って学校を発展させようとは思っていなかった。2001年8月、学校は自ら経営する企業「青海省果洛州雪域緑宝畜産品有限公司」を設立し、村にチベットヤクのチーズ加工工場を建てた。ヤクミルクの買い入れにより、現地の100戸あまりの遊牧民が飼っている2000頭あまりのヤクのミルクの販路が開け、遊牧民の収入は増加した。工場では、米国・ネパール・イタリア・スイスから相次いでチーズの専門家を招いて技術指導を受け、高品質のヤクチーズ(the Snowland Treasure Yak Cheese)を製造した。その製品はついには北京・上海・成都・香港といった大都市の市場や高級ホテルのレストランにも出荷され,米国やイタリアに輸出もしている。チーズ工場は利益の6割を学校の発展のために使っている。2003年11月、彼らの製品は米国食品医薬品局(FDA)の認証を獲得した。(認証番号:10026807674)

 学校の教育理念は鮮明だ。まず人格教育、そして知識を学ぶ。吉美堅賛校長は「広く学ぶことは比較的容易だが、智慧を身につけるのはとても難しい。しかし、チベットの伝統文化は人の心を潤す大きな智慧を深く蓄えている」と考えている。新入生が入る度、第一日目に受ける授業は校長の道徳訓話だ。教師たちは知識を教えるだけでなく、人としての生き方も教える。中国語教師の交巴才譲は子どもたちに通常の内容を教える以外に、論語を毎日一句教えている。

学校には独特の制度がある。小学校四年+中学校二年、年齢ではなく能力に応じてクラス分けをし、僧侶と一般学生は共に学ぶ。現在の開設コースは、チベット語専攻、工芸美術専攻、チベット医学専攻、英語旅行業専攻、コンピューター専攻、そしてチベット伝統建築専攻も開設予定だ。すべてのコースにおいて、チベット伝統文化は30%、現代文化は40%、その他の語学が15%、政治学が10%、歴史学が5%の割合だ。古代インドに発し、のちにチベット仏教寺院教育の伝統となった因明学を訓練基礎のひとつとし、ほとんどすべての学科で大いに因明弁論の学習方式を運用し、思弁を奨励する。また、これも寺院教育の伝統を継続し、暗唱を重んじている。卒業生のレベルが高いため、六年制の吉美堅賛学校の教育は、多くの国立の12年制チベット語学校と比べて、より有効であると認められている。

(訳注:因明【いんみょう】とは、インドでおこなわれていた広義の論理学を指すものの仏教での表現で、近年は仏教論理学などとも言われる。五明【声明・工巧明・医方明・因明・内明】の一つとされ、独立した学問分野として重視された。-Wikipediaより)

学校が広く受け入れられたため、省都である西寧に学校を移したらどうかという提案をする人もいたが、吉美堅賛校長は断った。より貧しく、交通や生活も不便な瑪沁地区の人の方が、より切実に学校を必要としていると思うからだ。現在、地方教育局といくつかの非営利組織の協力により、吉美堅賛学校の教材の系統的整理が開始された。チベット族地区のより多くの学校に、この成功した教育法が普及されようとしている。

連絡先:

ウェブサイト:www.fulixx.cn(チベット語・中国語・英語)

電話:0975-8389668   FAX:0975-8389668

E-Mail:fulixx@yahoo.com.cn

住所:中国青海省果洛州瑪沁県拉加镇 [郵便番号:814001]

本文は、主に吉美堅賛福利学校のウェブサイト(www.fulixx.cn)およびNPPCNプロジェクトウェブサイト(http://www.nppcn.com/topic/fulixx/jingcai.html)の内容と、参照可能なそのほかのウェブサイト上の資料を編集したものである。

文責:李君暉

翻訳者: 松江直子

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