2008/12/15 by GLI Japan

1 kg more 余志海

中国農村地域における教育の発展状況は、非常に立ち遅れた状態である。教育設備は粗末で、学生の活動スペースは狭く、教員スタッフは常に不足してい る。目下、農村の小中学生数は約6600万で、小中学校数は40万ヶ所以上だが、教育環境やレベルが不揃いで、交通が不便な僻地では、学校と教員が不足し ているために就学機会を失ったり、中途退学になったりする学生が数多くいる。行政は農村教育のために学費の減免や希望学校の創設、教育ボランティア支援活 動などといった幾つかの政策を打ち出したが、それらの行為が体現しているのはやはり責任感と同情心であり、持続可能性が見えないのだ。そんな中、ある旅行 好きな若者が状況を変えたいと願い、公益活動と旅行とを結びつけた。

xuzhihai

余志海というより、インターネットでのニックネームの安猪のほうがみなさんには親しんで感じられるだろう。2000年から安猪はバックパッカーとし て、各地の景色を楽しみながら、多くの農村の学校を見学し、その遅れた教育実態を知った。そんな時、ある旅行仲間がひとつのエピソードを語った。彼は雲南 に旅行中、そこで一年近く教育支援をしている上海の女性教師に出会い、別の場所で同じように働いているもう一人の教師への伝言を頼まれたそうだ。“あなた は孤独ではない、継続は力なり”と。厳しい環境の中、孤軍奮闘している支援教師たちが、互いの励ましあいだけを支えに頑張り続けていると言う状態に、教育 支援の辛さを知っている安猪のこころが動かされた。ボランティア活動はこんなふうに辛いだけの体験なのか。愉快な経験に変えることはできないのか。安猪は 彼女たちのために何かをやりたいという気持ちを持つようになった。

children

しかし、当時、都市から農村の学校への支援といえば、学校と連絡をとった後、募金や物品を寄付したり、教育支援したりするという古い形で、完全に 「同情、哀れみ、施し、救済」という古典的な慈善活動の観念に基づいたものだった。統計によると、中国全土の、農村学校のうち、各種の公益組織から、ある 決まった支援活動を受けたことがあるのは約5%にすぎないという。かつて、あるチャリティ機関で管理的な仕事をしたことがある安猪は、この仕組みには大き な欠陥があり、持続可能性に欠けると考えていた。そういう支援活動の多くはボランティアの熱意と責任感により行われ、一方ではボランティアにストレスと疲 労をもたらしていた。この仕組みを変えたい!楽しい公益活動の仕組みを作り出し、単純に善い行いをするという事から、効率的で効果のある楽しい事をする、 というように変え、ボランティアが公益活動に参加する熱意を保ちたいと考えた。
ボランティア活動にはもともと不安定さがつきもので、一部の公益プログラムではボランティアの流出率が高い。安猪は公益活動を分割することを思いついた。 そもそも数少ないボランティアが精一杯頑張って担当していた公益プログラムを、多くのボランティアが分担するように変えれば、一人当たりの責任とストレ ス、費やす精力も相対的に軽くなる筈だ。それは、ボランティアの熱意を保つことにもメリットがあり、たとえ途中で止める人がいるとしても、プログラムの継 続的な発展は影響されない。では、そういう継続的なボランティアの仕組みを支える人々の集団はどこにいるのだろう。
安猪は、自分の長年の趣味である旅行のことを思い出した。旅行愛好者は、巨大な集団だ。統計によると、2007年に国内旅行をした人は、のべ16.1億人 に達し、雲南省の麗江に旅行する人だけでも、毎年500万人にも上る。若者の間では、セルフメイドのプランやバックパッカーがもはやトレンドになり、四川 省西部、雲南、チベット一帯が最も人気の旅先になっていた。そして素晴らしい生態系を残す村の景色の中には、多くのうらぶれた農村学校がある。エコツアー と農村教育、旅行と公益、喜びと責任、それぞれのアイディアが安猪の胸でひとつに結びつき、彼は公益旅行と言うイノベーションを発想した。
安猪の思いついた公益旅行とは、あくまで旅行を中心とし、公益活動を加味したもので、旅行者がボランティアとして旅先での公益活動を行うという新型の旅行 スタイルだ。旅行者は自分の荷物の中に、本や文房具などの一キロぐらいの子供たちへのプレゼントを入れ、道中や目的地の農村学校で配る。それが「1KG  MORE!(1kg多く背負う)」の由来だ。
旅行業界に詳しい安猪は、旅行愛好者によく使われる「携程ネット」を思い出した。「携程ネット」とは旅行者にホテルや航空券などの情報を提供する仲介プ ラットホームだ。旅行者はそこで、自分にとって必要なサービスを選ぶことができる。安猪はこのビジネスプラットホームを手本として公益仲介プラットホーム を作り、そこに、各地の農村学校の情報、たとえば概況やアドレス、交通経路、必要としている物などを公開し、ボランティアに自由に選ばせ、参加させるつも りだった。
最初の公益旅行は物の支援が主体だったが、2004年8月に安猪が貴州省、広西省の旅で行った学校で、より必要としているのは物ではなく、外の世界との交 流だと言うことに気付いた。地元の教師からも、確かに物も必要だが、より大切なのは外との情報交流で、それが足りないために、子供に想像力が育たないと指 摘した。

volunteer

そこで安猪は、公益旅行の仕組みを改めて考え始めた。そして物を贈るとともに、ボランティアが地元の学生と交流もできるようにした。たとえば、アイ スブレーキングゲームをしたり、学生に写真撮影を教え、旅先で撮った写真を見せたり、授業を行ってノートパソコンで都市の風景を見せたりした。同時に、ボ ランティアは旅先で新たな学校の情報を集め、「1kg More!」事業の対象範囲を広めるようにした。旅行から帰った後、サイトに新しい情報を掲載して より多くのボランティアに伝え、支援活動に参加することを勧める。こうして、「1kg More!」のサイトは、ボランティア個人と学校とのマッチングプ ラットホームから、以下の「伝達-交流-分かち合い」の3ステップで、よい循環ができるプラットホームに発展した。
「伝達」- 出発の時、一キロ多く背負い、貧困地域の子供にプレゼントする。
「交流」- 旅先で、子供と対面し、交流することにより、互いに視野を広め、自信と想像力を刺激し合う。
「分かち合い」-旅を終えた後、サイトに学校の情報や写真、経験したことを報告。より多くの人に参考となる情報を提供する。
2007年に「1kg More!」は130回を超える公益旅行を行い、98ヶ所の援助が必要な学校を新たに発掘した。2004年から今までに、千人以上 の人が「1kg More!」の事業に参加し、百万以上の人に影響が及んだ。現在、「1kg More!」に加入した学校は400ヶ所を超え、有名な観光 地には湖南省鳳凰、広西省龍勝、貴州省黔東南、雲南省元陽、麗江、徳欽、四川省濾沽湖、丹巴、甘粛省郎木寺、甘南、チベットのラサ地域などがある。
旅先で、「1kg More!」のボランティアたちは農村の子供に本がかなり不足していることに気づいた。「1kg More!」が雲南、四川、広西、貴 州省の20ヶ所の農村小中学校を対象として行ったサンプリング調査によると、農村学生の一人当たりの課外図書はわずか3冊、そのニーズからはるかに離れて いる。公益機構の古典的なやり方は、中古本を集め、それを各地の学校に寄贈する。しかし、そういうやり方には、輸送費が高く、資金調達が容易ではないとい う欠陥がある。また、大量の図書の分類、目録作り、郵送などの仕事に人手がかなり必要だ。さらに、図書が地元の学校に到着した後、有効に利用・管理できる かどうか保障できない。一方では、都市の学生はずっと恵まれた環境で過ごしてきて、さまざまな知識や技能を獲得しやすいものの、よい心の教育が足りない。 中国の子供の精神衛生問題の発生率は約15%で、4000万の子供がさまざまな心理的悩みを抱え、近年、発生率が高まりつつある。

in the classroom
そこで、2007年の8月、「1kg More!」は「双子の本」と言うプログラムを開発した。本を媒介として、都市と農村の子供同士のコミュニケーションとつながりを深め、互いに理解を深めて共に成長する。
「双子の本」とは子供に適した本を選択し、二冊をセットとして出版された読み物だ。都市で一冊を売るたびに、自動的に貧困地域の農村学校にも一冊を寄付す ることになる。その二冊の本の持ち主はいわば「双子」だ。本についている「双子番号」を通し、都市の子供が「双子の本」のサイトで、もう一冊の持ち主であ る農村学生の連絡先を手にいれ、文通友達になり、長期間交流することができる。2007年、「双子の本」プログラムは、童話シリーズ話を出版したが、、今 までにもう2000セット以上を販売し、1000名以上の農村学生に新しい本を寄付した。
組織の運営の方面では、「1kg More!」は、現在5名のフルタイム職員と固定的なボランティア団体を持っており、2008年の4月には、会社として 登録し、社会企業の仕組みで運営を行い、低コストで公益事業を行う積極的な循環を実現している。目下、「1kg More!」の主な収益は企業の公益コン サルティングと公益ビジネス商品の開発からだ。たとえば、「Touch Media」と連携した公益事業と宣伝活動を行っており、「上海大衆」や「錦江タクシー」の車内スクリーンでは「1kg More!」の公益広告が見られ る。2006年、「Shanghai Holiday」と言う旅行社が「1kg More!」の特約パートナーになり、観光客と会員メンバーの間に「1kg More!」の事業の理念を広げ、 定期的に無料の航空券を提供して、観光客に貧困地域で慈善活動に参加することを勧めている。これにより、元々「公益活動をしたくても仕方がわからない」と 思っていた善意の人が公益旅行に参加できるようになった。、同時に、「1kg More!」は「百度」、「セーフガード」、「Gree」、「KEEN」な どの会社に公益旅行プランを設計し、社員に中国西部地域の美しい風景を楽しむと共に、雲南、貴州などの貧困地域の学校を訪れることを勧めている。
ボランティア組織からNGO、そしてさらに社会企業へ、ここ数年、「1kg More!」は絶えず変化してきた。プラットホームを始めたころには、 「1kg More!」により、公益旅行の情報の提供、活動の按配が行われていたが、安猪は今、新たな仕組みを提案している。それは、市民に直接に公益事 業の各段階に参加してもらい、皆の力を生かし、農村学校の教育を改善することだ。、安猪はそういう市民協力の公益参与方式により、今後一年間で、学校支援 グループの仕組みを発展させようと思っている。3~5名のボランティアが自発的にグループになり、相手となる学校を定める。「1kg More!」が管理 プラットホームを提供して、ボランティアにサイト上の学校情報の管理と更新、活動の実施、学校への資源の補給などに取り組んでもらう仕組みだ。このような グループによる管理の仕組みが、ばらばらであった支援活動をまとめ、継続的なボランティア支援活動に進化させる。2012年の年末までに、中国5000ヶ 所以上の農村学校に図書、パソコン、インターネット、教育と教員スタッフなどの体系的な支援を提供する予定だ。農村学校が必要としているのは、わずかな物 と短期的な交流だけではなく、図書、インターネット、パソコン、音楽・体育・美術教育、教員スタッフなどのニーズにも、体系的な支援を求めている。

1kg More! ウェブサイト:www.1kg.org

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