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2016/03/14 by Tanada

農村の高齢者福祉問題に関する簡単な分析と福祉モデルに関する初歩的構想

1.農村の高齢者福祉問題に関する簡単な分析

中国では都市化が加速するにつれて、多くの農村労働力が都市になだれ込むようになったのと同時に、出生率の低下が進んだこと等が原因で、農村に高齢者だけが取り残されるという現象が深刻化している。全国高齢者施策委員会が公表したデータによれば、2012年末時点で、中国の60歳以上の高齢者人口は1.94億人に達する。うち農村の高齢者人口は約1.2億人で、農村での高齢者のみの世帯の比率は40%近くとなっている。

高齢者だけが取り残される現象が深刻化することで、家庭での高齢者福祉という伝統的なモデルがかなり当てはまらなくなりつつある。都市・農村の二元的な経済構造により、都市・農村住民の所得格差が絶えず拡大し、農村住民が「豊かになる前に老いる」という事態も生じている。これらの要因によって、農村での公共的な高齢者福祉に対する要求レベルはより高くなっている。しかし、老齢年金の少なさや高齢者福祉団体の不足、時代に合わない福祉サービス施設、根強く残る伝統的な高齢者福祉の観念といった、現在の農村に存在する諸問題を背景に、農村における公共的な高齢者福祉は厳しい課題に直面している。このため、農村コミュニティにとっては、在宅での高齢者福祉サービスのほうが、施設やコミュニティでの高齢者福祉に比べて馴染みやすく、また将来性も高い。

2013年4月20日に四川大地震が発生したあと、「益多公益」(高齢者を対象とした成都市の公益団体)は仁加村や芦渓村、火炬村などの地域に相次いで入り、震災後の再建協力活動を展開した。実地での調査・研究を通じて明らかになったのは、現地の高齢者たちの収入が少なく、健康面でケアをする人が誰もいないという2つの問題が突出している、ということだった。ただ、各地では押しなべて高齢者協会が既に設立され、しかも80%の高齢者が地元の協会に加入しているなど、同協会は農村コミュニティにおいては比較的活発でかつ成熟した自治組織となっていた。しかし、高齢者協会自体は、マネジメントの不全や持続的な発展に必要な資金の不足、後継者の不在など、発展に関わる多くの困難に直面していた。

2.農村における高齢者福祉モデルの模索

「益多公益」は需要調査の結果も踏まえて、芦山地区の4つの村を試験地区として選定し、同地区における高齢者の状況や、自治組織の発展状況および外部リソースを詳細に分析した。こうして、農村コミュニティにおける持続可能な高齢者福祉のモデル図を作成した(下図参照)。

20160314-1

第3段階「モデルの創出」:村内高齢者福祉の相互協力モデルの整備・構築
第2段階「困惑の解消」:運営手段、ヒューマンリソース、資源の3本柱のサポートシステムの構築、持続可能な発展モデルの確立に向けた努力
第1段階「能力の付与」:村の高齢者自治コミュニティ組織の育成・設立、高齢者向けサービス一式の設立模索

農村における高齢者福祉の発展に関する策略は、高齢者による自治組織の育成を通じて持続可能な発展の道筋をつけ、農村の高齢者が自身の成長に役立つプラットフォームや空間を持てるようにし、高齢者福祉を実現しよう、というものだ。発展の段階は全部で3つあり、それぞれ「能力の付与」「困惑の解消」「モデルの創出」となっている。

発展の第1段階は「能力の付与」だ。村レベルの高齢者自治コミュニティ組織を育成・設立し、高齢者が主体性を発揮することを通じて、自治組織のコミュニティマネジメントへの参画を推進し、声を上げていくのだ。政府による政策普及の効果により、多くの農村地区では既に高齢者協会が設立されており、一定の役割を発揮している。プロジェクト対象の村の中で90%の高齢者が地元の高齢者協会に加入しており、会費も納めている。同時に、農村コミュニティには、(中国共産党の)支部書記や村長の経験者のような信望の厚い高齢者や、職人や工匠のような名人がおり、高齢者協会のなかで重要な役割を果たしている。高齢者協会は、農村コミュニティにおいて比較的容易に設立でき、かつ発展に適した高齢者自治に係るコミュニティ組織といえるだろう。

社会組織育成の主な方法は、組織の枠組みの整備や、マネジメント能力の向上、結束力の強化だ。組織の枠組みの整備については、高齢者協会が組織の管理に資する方法を確立するのをサポートすることだけにとどまらず、その過程でメンバーとともに高齢者協会の発展の方向性や目標を整理することも可能となる。このほか、共同での組織活動を通じて、社会見学を企画したり、親睦のための相互訪問の仕組みを構築したりし、高齢者協会のマネジメント能力を効果的に高めることができる。また、村の中で特殊な事情を抱える高齢者への慰問や、内部会議や会員大会の開催などの方法は、組織内部の結束力を強めるのに役立つ。

発展の第2段階は「困惑の解消」、すなわちサポート体系の構築だ。組織の発展には、資金や資本、ヒューマンリソース、社会資本などが支えとして必要となる。また、自治組織が少ない投資でリスクも少ない運営手段の道筋を模索する手助けをし、組織の潜在能力を掘り起こす機能を構築することも必要だ。こうして、持続可能な発展を実現できるのだ。同時に、自治組織は、村委員会や衛生拠点(地域の診療所)などのステークホルダーと緊密な協力関係を構築し、リソースを共有することで、組織の発展のために外部の保護体制を確保することも必要だ。

発展の第3段階は「モデルの創出」だ。村内高齢者福祉の相互協力モデルを構築し、モデルの発展に必要な条件を整備したうえで、その他の農村コミュニティでもモデルの移植を進めると同時に、発展に向けた参考事例を紹介する、というものだ。

3.第1段階での模索の成果

1年間模索した結果、高齢者協会を育てるのに尽力しただけでなく、特殊老人(訳注:農村部の留守番老人、都市部の独居老人、一人っ子を亡くした老人、障害のある老人、冬を温暖な地域で過ごすため移動する「渡り鳥老人」を指す)に居宅介護サービスを提供した。プロジェクトでは、パイロットケースの4つの村で現地の高齢者協会を立ち直らせ、高齢者協会と協力して9名の特殊老人に居宅介護サービスを提供し、高齢者協会が各種資源とつながる力とサービス監督能力を向上させるのを促した。

(1)  高齢者協会の育成と発展

レクリエーション活動から始めた。レクリエーション活動は対象者が多く、活動の展開も容易だ。益多はまず通常の活動を復活させ、人々の興味を引いた。プロジェクト実行部隊と高齢者協会が共同で物資を購入し、一緒に各種資源を探し、レクリエーション活動隊のために外部の人材を招聘した。活動隊の結成によって、村の文化的なレクリエーション活動の内容が豊かになっただけでなく、高齢者協会の能力も向上し、村における高齢者協会の影響力を高めることにもつながった。

発展の目標を明確にした。プロジェクト実行部隊は高齢者協会の会議に参加し、高齢者協会と一緒に発展計画を立案した。同時に小さな活動から手を付ける形で、高齢者協会と一緒に活動管理と資源連携を実行した。理事会を設立することで、高齢者協会の理事とプロジェクトの目標と内容について細かい点まで意思疎通し、プロジェクトの長期展望の道を一緒になって模索し、高齢者協会が自身の発展に対するフィードバックを深めることとなった。4つの村の高齢者協会はどれも、元からある組織の基盤を向上させたり再構築させたりし、自分たちの発展の方向を明確化した。

組織の能力を向上させた。益多と高齢者協会は活動案について一緒に討論し、活動物資を購入した。他にも、活動の流れを決めたりスタッフの作業を割り当てたりしながら、高齢者協会が活動全体を管理する方法を体得し、協会が独立した組織活動を行えるようにした。同時に、益多と高齢者協会は合同で居宅介護サービスに参画し、特殊老人とサポート資源を結びつけ、高齢者協会の信頼性を高めた。

(2)  農村における居宅介護サービスの試行と模索

社会保障サービスモデルを導入した。社区との間の信頼関係を迅速に構築するには社会福祉の手法が有効で、高齢者の情報や資料を把握するのに便利な上、どんなサービスが必要なのかも理解できる。同時に、活動を展開する中で高齢者協会と関係を構築することができ、安定した社区の基盤固めが居宅介護サービスの発展に寄与につながる。

特殊老人をサービス対象とし、それぞれの家庭事情の多様性も保障した。時間とマンパワーのコストを考え、益多はまずサービス対象の選別基準を定めた。その基準は、①要介護高齢者、②家庭や社会とのつながりが薄い高齢者、③一人暮らしの高齢者、④後期高齢者、⑤子どもに介護能力が無いケース、⑥震災の影響が甚大な高齢者、の6つだ。この基準をふまえ、それぞれの条件を代表的しかつ多様性を持つ9名の特殊老人が選ばれた。老人や老夫婦のみの家庭、社区に対する介護サービスがもたらす変革をモニタリングするのに役立つだろう。

高齢者の介護担当者に技術指導した。農村の高齢者の生活は肉体労働が主なため、年齢や病気、予想外の身体能力の低下などから、生活に対する適応性の問題が必然的に発生する。高齢者の生活に必要な家庭向けサービスを提供する上で、家族の生活の送り方(特に、生活に対する考え方や健康維持に必要なスキルに対する理解)に高齢者の晩年は大いに左右される。そのため、居宅介護サービスで重要なことは、高齢者介護にあたる人間に対して一定の講習を行い、理に適った介護が高齢者の生活改善に効果があり、家族の関係を良くすることにも繋がるという意識を介護にあたる人間に持たせることだ。

介護用品の選択も、専門的な見地から行わなければならない。専用の介護用品ほど使用期間をより見極めやすくなる。というのも、日常生活にも配慮された介護用品は、往々にして生活用品として使用されやすいからだ。入手した物品の使用期間は、それを大切に使おうと思う気持ちや使用方法に左右されやすい。例を挙げると、2種類のサービスにおいて、それぞれ特徴が異なる2種類の椅子型便座を購入した場合、どちらかは本来の目的で使用されるが、もうひとつは日用品として使われてしまう、といったケースだ。

高齢者協会はより深く活動に関わり、居宅介護サービスに対するサポートを行う必要がある。高齢者協会はサービスを提供している家族内の揉め事を仲裁したり、祝日に帰省して老親に会えるよう手配したりすることで、自身の信用度を高めるだけでなく、他の村人達が高齢者を気に掛けたり高齢者サービスを推進したりするようになる。高齢者協会は資源をつなげる力があるので、居宅サービスに一定の物資やマンパワーによるサポートをもたらすことができる。従って、高齢者協会は農村における居宅介護サービスの持続的な発展を支える重要なパワーなのである。

4.居宅介護サービスの効果について

(1)居宅介護サービスは高齢者のみならず、高齢者家族及び社区にも変化をもたらしている

高齢者の健康意識及び病気への予防能力を高めた。一部の高齢者は病気を患っていることを知っているにも関わらず、病気の治療に消極的だ。それでは自分が病気に悩まされるだけでなく、家族にも大きな負担を与えてしまう。居宅介護員は介護サービスの中で意図的に高齢者に正しい療養観念を伝えることを通じ、高齢者に生きる自信を取り戻させ、自身の健康への注意喚起を促す。

高齢者の家族関係を改善させた。病気や生活習慣の不一致、重い経済負担、高齢者状況への不理解、不適切な介護方法などはすべて高齢者とその家族との障害になっている。高齢者への心のケアや高齢者家族への介護技術支援、高齢者家族に一息ついてもらう機会の提供などは、高齢者と高齢者家族との関係改善に役立った。例えば、介護員は高齢者家族に健康維持のためのテクニックの伝授を通じて、高齢者の身体機能を改善させ、家族が高齢者に合理的な飲食・就寝習慣を身につけさせるよう促した。それによって、高齢者の生活状況が改善し、高齢者の幸福感も高まり、家族問題の改善・解決にも役立った。

高齢者の社会とのつながりを高め、近所付き合いを促進した。一人暮らし、寡黙な性格、震災の影響などにより、高齢者は社会とのつながりが薄くなっている。従って、居宅介護員は介護サービスの中で社会の考え方を取り入れ、高齢者が新たに社会とつながりを作れるよう支援することで、高齢者が再び集団に戻り、生きる自信とポジティブな生活態度をもう一度身につけさせなければならない。例えば、介護員は高齢者の外出回数を増やしたり、団体活動に同行したり、高齢者ケアチームを作ったりするなどして、高齢者の生活を充実させた。本プロジェクトでは身体機能を半分失ったある高齢者に歩行補助器具を購入したり、一緒にお喋りしたり、心のケアをしたりしたことで、この高齢者は再び社区に戻り、生きる自信を取り戻した。

(2)高齢者協会のサービス意識とサービス能力を高めた

第一に、村内の特殊高齢者の生活状況に対する高齢者協会理事の理解が深まり、特殊高齢者へのケアが高齢者協会の重要議事日程に取り入れられた。これによって、農村の社会介護、特に居宅介護サービスの発展のための基盤を築いた。

次に、高齢者協会は居宅介護サービスの介護技能と管理方法を学び、理解することができた。高齢者協会の理事は居宅介護サービスに参与し、自ら居宅介護の方法を学び、一部の高齢者にサービスを提供した。これによって、高齢者協会が将来的に居宅介護員の育成、居宅介護サービスの展開に対して一定のマンパワーを保証をすることにつながった。

5.未来の展望について

(1)農村居宅介護員チームを作る

第一に、農村居宅介護員は同じ村の出身者が望ましい。これはサービスの持続的な展開につながり、同時に介護員が現地の文化や習慣を熟知しているため、衝突を避けることができるからだ。

つづいて、居宅介護員の持続的発展に資金源を確保する必要がある。政府からの資金を探す一方、高齢者協会の自主増収能力を高め、収益金の一部を特殊高齢者発展基金としてプールし、介護員手当に当てる方法もある。

最後に、サービス支持システムを作る。村の病院と連携し、居宅介護員に定期的なトレーニングを行い、サービスの質を保つ。

(2)高齢者協会の持続可能な発展の道を作る

第一に、高齢者協会と共に持続可能な発展の道を共に探索し、高齢者協会に会費以外の収入源を確保する。「もし収益があれば、その一部を特殊高齢者ケア基金としてプールし、特殊高齢者へのサービス提供や居宅介護員の手当に当てる」と、益多公益服務センターはすでに高齢者協会と合意している。

次に、高齢者協会の主な役割は資源調達。居宅介護員に対するトレーニングの手配や政府資金源獲得、居宅介護員サービス状況の監督等、すべて高齢者協会の業務内容になる。

最後に、居宅介護サービスの理念を普及させ、村民により良く居宅介護サービスを受けることを促進するのも高齢者協会の責務の一つである。

執筆者  
執筆者所属

NGO新聞報道(中国発展簡報)

翻訳と校正 翻訳:三浦祐介、棚田由紀子、王麗 校正:棚田由紀子
メディア

http://www.chinadevelopmentbrief.org.cn/news-17761.html

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