2015/09/25 by Tanada

【映像あり】黄膺:子どもに期待するのは目先の成績?それとも長い人生?

※原文のサイトでは、黄さんの紹介ビデオが見られます。
http://mp.weixin.qq.com/s?__biz=MzA3MjExMDEzMw==&mid=207020951&idx=1&sn=842edcad2e2793e9baa44e4a6bf52076&scene=1&from=singlemessage&isappinstalled=0#rd

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黄膺、自然名(訳注:自然学校などで使用するニックネーム)「たんぽぽ(蒲公英)」。2010年に自然教育に関心を抱き、自然教育の実践者となるよう活動を開始する。2013年に当時の職場である「山水自然保護センター」を辞め、友人達と共に成都で「芸能四季自然芸術工作室」を設立、自然教育の模索を始める。現在は「芸能四季」での経験を足がかりに、「土地の子供」「森の子供」などの四季自然体験教室を企画、推進している。また青海、雲南、台湾での自然旅行ツアーを企画する。子供達と一緒に自然に親しむ過程で、黄膺は自分もまた多くの恩恵をうけている学習者であることに気付いた。
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写真1 黄膺(写真提供:本人)

【インタビュー】黄膺

Q1 お嬢さんの圓宝さんの事がきっかけで自然教育を始められたということですが、自然保護に携わった立場から、「自然保護」と「自然教育」はどのような関係があるとお考えですか。

以前、生態環境保護NGOで仕事に取り組んでいる時には、実は自分と自然の関係について深く考えたことはありませんでした。自然保護プロジェクトに携わっているということから、自然のことを保護すべき対象として見ており、常々私達は自然の保護者なのだという感覚でいました。自然保護教育に関心を向け始めてから、環境保護プロジェクト職員という身分を離れて後の自分と自然の関係や、なぜ自然教育を選択したのかということを繰り返し考え始めました。そして分ったのは、ただ子供達のためというだけでなく、もともと自分にはもっと自然に近づきたい、自然を理解したい、自然から学びたい、自然のなかでこころを解き放ちたいという要求があったということです。自然教育は人間と自然のつながりを重視しています。人の心の中に自然があってこそ、自然保護に本当の関心を持つことができます。自然教育によって自然保護のための人々のつながり、気持ちのつながりを作ることができるのです。

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写真2 「たんぽぽ」と娘の圓宝(写真提供:黄膺)

Q2 「自然教育」というものをどのようにとらえておられますか。「芸能四季自然芸術工作室」での活動において、子供達の心理面、行動面になにか変化はありましたか。

私の個人的経歴から「自然教育」というものを理解すれば、それは人と自然とのいわば化学反応だと思っています。遠く離れたところから近づいたり、自然と融和して感情を昇華させたり、美しさを感じることから危険に注意をむけたり、知識を学習することからやり方を変化させたりというふうに。自然教育の過程のなかでは、体験者だけでなくインストラクターも、子供だけでなく大人も、私たちは今この段階から自然との化学反応の過程にあるわけです。様々な角度から自然を認識し、そのことにより自分の内面を見つめ、自分と他人の関係を体感するのです。

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写真3 子どもと一緒に、探検する気持ちで自然をもう一度じっくりと観察する(写真提供:黄膺)

私たちは今のところ、長期間活動に携わった子供達に対して追跡調査をして、自然体験活動が彼らにどのような変化をもたらしたのかを実証したことはありません。ただ、少なくとも行動の上で、彼らにはすでに一定の変化が見られます。例えば、最初からゴミを減らすように工夫したり、自分の居心地よい環境から踏み出して自然に親しもうとしたり、ある種の身体能力に挑戦するような活動をやり遂げようとしたりしています。自分の子供をみていても、自然の美に対して鋭い感受能力をもっている事に気がつきました。彼女はいつも登下校の途中で、沢山のささやかで美しいものを見つけ、ながめては心から感心しています。他の子は大体が急ぎ足で私たちを追い抜いていいきますし、立ち止まって興味を示して見る子供は大変少ないですね。

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写真4 自然の中で子どもと一緒に過ごし、童心に返る大人達(写真提供:黄膺)

Q3 一番最初の「芸能チャイルド」から現在の「芸能四季自然芸術工作室」まで、あなたは仲間達とどのように商業的発展と教育的理想を融合し一体化させてこられたのですか。

商業的な角度からすれば、私たちは決して成功した企業とはいえません。それでも、我々は商業的運営モデルを学んで行きたいと思っていますし、公共ボランティア的思考で自然教育を行っていこうとは思っていません。なぜなら、自然教育は一般的な家庭の需要に応える必要があるからです。また、地元の人や環境、風土などと深いつながりを持ち、コミュニティに関する様々な情報をしっかりと把握すべきであり、それではじめて持続性が備わると思っているからです。とはいえ、教育的理想を持ち続ける事と、持続可能な運営を実現する事との間で、私たちはずっと妥協点を探してきました。特殊な試みでありますが、幸いに現在の仲間達はみなそれを事業として捉えてくれており、この先長い道のりであるとの認識のもと、結果を急いで初志を曲げて、やり方を変えようという気持ちはありません。

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写真5 子どもと一緒に探索と発見の世界へ(写真提供:黄膺)

Q4 日本の自然学校教育は中国国内で多くの影響をもたらしていますが、彼らのモデルや方法に学ぶべき点はどこにありますか。

私は、日本の同業の方たちが「小さくても美しい」という理念を実践しつづけていることを素晴らしいと見ています。中国人は、どちらかというと壮大なスケールで青写真を描くことが得意です。あらゆるものを利用し大きく強くすることに長けていますが、小さくても一つの事に心を定めやり遂げようとする人は、残念ながら少ないようです。日本の同業者は、往々にしてそんな大きな「野心」は持たず、朴訥な職人のようにささやかな事に注意を払い、一つ一つのその小さな美しさを積み重ねていきます。そうすることで、自然にプラスの影響力を作り上げ、そこからまた違う可能性を切り開いていくのです。この点は、私たちが日本に視察にいって常々感嘆する部分ですね。

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写真6 自然の材料を使っておもちゃ作り。経験を積んでいく子ども達。(写真提供:黄膺)

Q5 「自然芸術」と銘打っておられますが、日頃活動する中で、芸術が子供に対してとても重要だと思う理由は何でしょうか。芸術と自然は、どのように結びつくのでしょうか。

「芸能四季自然芸術作業室」は以前からずっと子供向けの芸術教育を行っていたので、自然と芸術の結びつきに注目し始めたのです。自然教育が国内で人気を博すにつれ、自然の価値と意義、自然が人々に及ぼす多角的な影響力がますます重視されるようになりました。その中でも、自然の中で得た美学体験と、その美学体験によってつき動かされた芸術の表現力や想像力は、非常に重要視するに値します。ここから発展した「自然芸術」は内容が豊富で、表現方法も多元的で、私たちの様々な感覚(視覚、聴覚、感触、臭覚、味覚など)と結びつけることができます。自然芸術は自然観察に根ざしており、また自然観察と個人の化学反応により生み出された、人々の主観や感情の欲求を満足させるものでもあり、精神面を反映する創造の産物でもあります。往々にして、参加者の精神面での喜びや親しみを引き起こすので、自然に対する共鳴も生まれます。

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写真7 青海湖湖畔で写生(撮影:黄膺)

Q6 現在の教育環境は、依然として学習が中心ですが、自然教育は子供の学習の助けになると思いますか?

私は、自然学習の過程そのものを自然教育と捉えています。狭義の学習、つまり知識面の学習という点では、子供たちは自然教育の中で生態知識だけでなく地理、文学、音楽、美術、ひいては数学や化学も学習することができます。さらに重要なのは、これらの知識を異なる教科書でバラバラに学ぶのではなく、自然学習の過程の中で一緒に「生きた学び」として習得できることです。広義の学習という点では、自然教育はさらに中身の濃いものと言えます。自然の奥深さは、私たちに学問の道には終点がないことを教えてくれます。知識以外にも、私たちの情操を養い、美に対する深い理解を得ることで、自我に対する再認識を引き出し、哲学、美学、心理学などの方面において私たちにより多角的な視点をもたらしてくれます。

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写真8 撮影:郭思宇

現在の中国社会に蔓延する弊害は、目前の功利を慌ただしく求めていることです。この弊害が教育面において蔓延したら、自然教育は子供の学習に有益か否かというような問題を生み出すでしょう。有益か否かについて、目前の子供の学習成績だけを指して言うのなら、とても残念ですが、短期間で学習成績をあげることに対して、何かはっきりとした効果があるとは考えていません。しかし子供の人生について言うならば、自然教育は子供の健全な人格や身体を育み、子供が好奇心や探求心、集中力や創造力を持ち続ける力を養うと考えています。それだけでなく、他人との協調性などの育成においてもとても重要だと考えています。ただ、問題は保護者の皆さんが何を重視するかということです。子供の目の前の成績の良さでしょうか、それとも長い人生でしょうか?

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写真9 自然教育を受ける中、自らも多くの学びを得ていることに気付く(写真提供:黄膺)

Q7 現在ますます多くの自然教育に関する組織や団体が成長し始めています。“先輩”として、活動、安全等の方面で彼らに何かアドバイスか、伝授できる経験はありますか?

自分達のことを“先輩”なんて、恐れ多くてとても言えません。この分野で10年、20年ひいては30年以上も活動している多くのベテランの方たちが、今でも謙虚で穏やかな姿勢でいらっしゃるのを見ています。私は 自分を“成長途中”の自然教育学習者だとずっと思ってきました。敢えてみなさんへアドバイスできるとしたら、活動あるいはカリキュラム設計の上で、活動目標という視点から活動の設計内容を詳しく考察し、できるだけ地元の特色を探し出してほしい、ということです。遊びのための遊びでも、活動のための活動でもありません。毎回、活動終了後に行う内部での総括評価も大変重要で、次回の改善に大いに役立ちます。安全方面は特に重要ですが、現在中国国内で活動に携わる人の安全教育は決して十分ではなく、私たちもまた実践しながら学んでいるところです。アドバイスとしては、毎回活動する前にチーム内部で緊急時の対応策について討論し、ある程度準備しておくべきだということです。同時に、地域の安全学習チームがどんどん設立されることを願っています。

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写真10 撮影:郭思宇

Q8 現在、「芸能四季自然芸術作業室」はどのように組織を拡大しようとしていますか?将来の計画は?

2014年から開始して以来、共同パートナーの変化や業務モデルの転換等、私たちは様々な変化を経験してきました。現在、私たちは一連の自然教室(土地の子供、森林の子、手工芸を見直そう~親子手作り教室)および夏休み・冬休み中の自然学習旅行を企画運営する以外にも、自分たちで教具の開発もしています。他にも、四川省内のいくつかの自然保護区の自然教育計画や自然展示館と遊歩道の設計、自然体験カリキュラムの研究開発にも参画しています。

近いうちに私たちは内部の戦略計画会議を開く予定ですが、その時に、さらにはっきりとした未来への計画が立てられると思います。

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写真11 小さな自然のひとつひとつの美しさを知る(撮影:汪宇輝)

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写真13 子どもが描いたガマトカゲのサンドペインティング(砂絵)。インスピレーションに溢れている。(撮影:黄膺)

執筆者 黄膺
執筆者所属 秘境守護者
翻訳と校正 翻訳:緒方典子、佐藤祐子 校正:棚田由紀子
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