2015/06/30 by Tanada

「老年痴呆」の社会的サービスにおける香港・台湾のケース

20150630-1家族が認知症(英語略称AD、俗に「老年痴呆」と呼ばれる)と診断されてしまったらどうすればいいだろうか。誰が専門的サービスを提供するのだろうか。

台湾では、患者家族は様々なケアの方法を選択することができ、各種すべて徹底的なサービスを受けることができる。

香港では、専門的なケア職員、栄養士、フィットネス・トレーナー、建築士、補助療法グループ等から成る数十人のチームがサービスを提供しており、このようなモデルは専門を越えた全体的介護と呼ばれている。

このサービスは専門職員を有する社会組織等の機関から提供されている。2014年11月初旬、愛徳基金会が主催した「第1回愛徳老年サービス国際研究討論会」における認知症の国際研究・討論会では、香港、台湾等地区での従事者や専門家が各自の経験を共有した。

認知症は予防とコントロールができる

認知症(英語略称AD)、俗に「老人ボケ」、「老年痴呆症」、「脳の退化症状」と呼ばれる。この症状の要因の多くは大脳神経細胞の病変により発生し、大脳機能が徐々に衰退していく老年病で、退行変性疾患の一種である。原因のほとんどはアルツハイマー病、血管性認知症等に分類される。また年齢を重ねるほど疾病率も高くなると言われている。

「この病気は予防とコントロールが可能であり、ケアも適切であれば症状の進行も遅らせることができる。従って、患者のケアには専門・科学的な指導がより重要となる。」研究・討論会において香港理工大学耆年(きねん)護理中心及び香港大学社会科学院教授の梁錦王(リャン・ジンワン)博士はこのように強調する。

香港中文大学の黄沛霖(ホァン・ペイリン)博士及び同団体の研究データが表すところでは、脳卒中に罹ったことのある人は罹ったことのない人よりもアルツハイマー病の発症率が72.1%も高いという。もし高齢者が65歳以降淡白な食事をメインとして減塩を心掛け、太極拳と健康体操と脳トレ体操を併せた運動を行って、心身共に喜びを保つようにすれば、脳卒中とアルツハイマー病の発症率を下げることが可能となる。

更にこれらの研究成果は香港、台湾のソーシャルワーカー機関に認定され、実践を着実なものとする中、一定の効果を得ている。

香港:患者中心のケア

香港は比較的早い段階で国際ソーシャルワーカー連盟の先進的な理念に触れているので、アルツハイマー病の専門ケアにおいても中国大陸に先駆けると同時に、実際に即して「専門を越えた全体的介護」と「人間的な」ケアの理念を提唱している。

「後期や重度の段階に入ったアルツハイマー病患者に対し、チームケアの理念はより顕著に表れます。この段階ではより患者を中心とし、安全保証を前提に高齢者の生活に合った環境を整え、個々の要求が満たされるようにするべきです。」香港聖公会福利協会の事務総長補佐の岑家雄(シン・ジャーション)氏はこう語る。

氏の話によると、ひとりひとりの患者個人の空間は、部屋の向きや大きさ、材質や色等を含めてすべて患者の習慣に合わせて設置する。それには、チーム内の建築士が設計を行い、患者の食習慣では栄養士と患者の家族が意思疎通を行うことが必要となってくる。また、患者の日常の活動開始時間、活動内容に関しては、専門のケア職員が設定し、ケアの過程で患者に突発的状況が生じた場合には補助療法グループが協力して行う必要がある。

「専門を越えた全体的介護と人間的であるという理念は互いに融合し、段階的に明らかな区分はありません。どの段階でもひとつのチームがケアを行うことが必要で、この2つの理念で最も重要なのはチームの専門化だと私は思います。」岑家雄氏はこう意見を述べる。

台湾:多様化するサービスモデル

台湾のモデルはより多様である。

台湾人口高齢化のスピードは、ケア専門団体の設立スピードをはるかに越えているが、同時に高齢者サービスの質も保証する必要があるため、台湾の社会的組織は香港に似た理念以外に、在宅介護のサービスネットワーク計画も生み出している。「台湾地区の高齢者人口の急速的な増加という現状に基づいて、私達は台湾に合うモデルを見つけなければいけません。」台湾家庭照顧者関懐総会(台湾在宅介護思いやり総会)事務局長の簡璽(ジェン・シー)氏はこのような考えを述べている。

社団法人台湾失智症協会(台湾アルツハイマー病協会)の李会珍(リー・ホイチェン)氏は、アルツハイマー病と最終診断を下してからは、患者の家族に多くのケア方法の選択肢を用意し、すべての方法において徹底したサービスを提供している。

アルツハイマー病と診断されたばかりの患者家族が茫然自失状態になることに対して、李会珍氏は以下のように述べている。「私達は2003年から24時間対応の電話相談サービスを開設し、主に専門職員による面談予約を含め、専用ホットライン相談、オンラインヘルプ等のサービスモデルがあります。」こうすることで大量のマンパワーを節約できるだけではなく、同時に各患者の情報が把握できるという。各サービスモデルは完備されたケアチームの支えがあってこそ、このような情報も十分にそろえることができる。

在宅ケアを選択したアルツハイマー病患者については、電話での専用ホットラインサービス以外に、台湾失智症協会は患者家族向けの必修カリキュラムセットを用意しており、患者家族が病気を理解してケア技術を習得し、活動計画ができるようにしている。「指導の各段階において、それぞれ専門分野の異なる職員が講師となる必要があります」(李氏談)。

また、施設でのケアを選択する患者家族にとって言えば、施設の環境は「家」のようなものなのかどうか、介護は専門的なのかどうかが注目するポイントである。「私達のやり方は患者自身が病気であるとは感じるのではなく、ただ見知った場所へ訪問しているように感じさせるものです。」台湾双連安養中心(台湾双連介護センター)の頼明秒(ライ・ミンミャオ)主任はこう述べるが、このように行うのは容易ではなく、介護費用もかなり高い。

筆者の取材によると、香港の「患者のニーズ中心」の理念に近いだけでなく、台湾の社会的組織では患者の心理動向により注目しているため、ケア団体の中でも心理療法者が増加している。

台湾の社会的組織では、患者の認知能力が混乱状態に陥っていても、完全に消失するわけではなく、一部の心理活動や心理的暗示が残るとされている。もし起こりうる心理的危機に対し、タイミングよく関与できなかったら、患者のホルモンバランスが乱れ、病状も悪化する可能性がある。このような場合に備え、心理療法者は事前に判断し、タイミング良く関与し、また職員とも提携して積極的に患者家族とコミュニケーションを図り、職業、趣味、刺激等の状況を理解することで高齢者の安全を保証しなければいけない。
その他、台湾家庭照顧者総会は2012年に介護者向けの双方向型ネットワークプラットフォームを設立し、家庭介護者にメンタル面のサポート、発言、学習交流や台湾各地の資源及び活動情報等を提供するサービスを行っている。

執筆者 張博
執筆者所属 公益時報
翻訳と校正 翻訳:白石美津子 校正:棚田由紀子
メディア

中国発展簡報

http://www.chinadevelopmentbrief.org.cn/news-17186.html

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