2015/03/24 by Tanada

C-Zoneを突破し、ゆっくりと成長する

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–雪中での冬キャンプから八達嶺での夏キャンプまで

親子団の開村式典で、決まって行われることがある。両親で組織する育成会のメンバー全員で、カリール・ジブランの詩『子どもについて』を朗読するのだ。

あなた方の子供たちは、あなた方のものではない。
大いなるいのちのあこがれの息子たちと娘たちなのだ。
かれらはあなた方のからだを通ってやってくるけれども、あなた方から生まれるわけではない。
かれらはあなた方とともにいるけれども、あなた方のものではない。
あなた方は愛をあたえてもよいが、自分の考えを押しっけてはならない。
なぜなら、かれらは自分自身の考えをもっているのだから。
かれらのからだに寄り添ってもよいが、魂に近づいてはならない。

なぜならかれらの魂は明日に住んでいるので、あなた方は夢のなかでさえもそこを訪れることはできないのだ。
あなた方は子供たちのようになろうと努めてもよいが、
かれらをあなた方のようにしようとしてはいけない。
なぜならいのちは過去に向かって進むことはないし昨日にとどまることはないのだから。
子供たちは生きた矢羽として、あなた方から打ち出されるのだ。
神なる射手は永遠の上に印を見つけつつ、
その矢がすばやく遠くに飛ぶように、弓であるあなたを力強く曲げる。
射手の手によって強く曲げられることを喜びなさい。
なぜなら射手は飛んでいく矢を愛するのとおなじように、しっかりとしたよくたわむ弓をも愛しているのだから。
(日本語訳:柳澤桂子著「よく生きる智慧」より引用)

その雰囲気は非常に感動的で、多くの両親は感情が高ぶり目に熱い涙が溢れる。しかしその後両親とガイド達は考えずにいられなくなる。「無為をして治める(人為によらずに、天下を治めること)」こそ最良の教育方法はではないだろか。愛すること以外に、我々は子供たちに何を与え、何をすることができるのだろうか。

日本のくずまき高原牧場で開催された雪中冬キャンプに参加して、私は多くのインスピレーションを得た。

雪中冬キャンプの創始者はくりこま高原自然学校の責任者である佐々木さんだ。栗駒高原を出発してくずまき高原牧場へ向かう前に、佐々木さんは私達に次のような問題を出した。–子供を教育する時、あなた方は子供に聞き分けの良い子になって欲しいですか、それとも聞き分けが悪い子になって欲しいですか。–「聞き分けの良い子」「聞き分けの悪い子」のどちらか迷い、それぞれの子供の長所と短所を想像していた丁度その時、佐々木さんは自身の答えを教えてくれた。–どちらでもないのです。我々は子供たちを他人の意見で行動する子供に育てるのではなく、大人に成長させる必要があるのです。–かくして知恵を得て悟りを開くように、問題の重点は「子供」ではなく、「成長」であるとわかった。「現在」ではなく、「未来」なのだと。

しかし、成長とはいかにして起こるのだろうか。佐々木さんが紹介する“冒険教育”の理論によれば、成長とはC-Zoneを拡大することだ。

CはComfortble(快適さ)を指し、いわゆるC-Zoneは、既に知っていて、安全で、安心できて、心地よくて、楽で、予測できる状態にあるという、安定した状態を指す。しかしこの快適な区域から出ると、未知で、危険で、不慣れで、予測できなくて、気持ちは落ち着かず、恐ろしくて、結果は保証できず、成功か失敗かを知ることもできない状態を伴う。だからC-Zoneを突破することは、「冒険」を意味するのだ。下図に示す。

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冒険は即ちC-Zoneを突破すること
C-Zone 快適区 :安全、安心、快適、愉快、わかる、週刊、楽な気持ち、実行できる、予想できる
Stretch Zone 拡張区
Panic Zone パニック区 :未知/リスク有/不慣れ/恐怖/結果の保証無/不安/予知できない/快適でない
冒険は自発的な行為である!
[引用出典参考資料]難波克己 2006年 玉川大学学術研究書要録第12号、107-114 佐々木豊志 2006年 加筆

冒険教育理論を証明する気持ちで、私達は雪中冬キャンプ開催地–くずまき高原牧場を訪れた。

私達が参加するのは第14回雪中冬キャンプだ。今年はあまり寒くないようで、私達が到着した時、積雪はわずか60cmだった。Master(佐々木先生の愛称。日本の自然学校では、活動に参加する人にはそれぞれ愛称があり、それは我々の自然名に似ている。しかし自然名には限らない)は、「かまくらを便宜良く作るには少なくとも80cmは必要です。幸い、かまくらを作り始めるのは一週間後なので、お天道様に雪をまた沢山降らせてくれるように願いましょう。」と言った。

14日間の雪中生活はとても長く且つ短かった。自分がすでにここで一生生活したかのように長く感じもしたし、瞬く間に別れの時が来たかのように短く感じもした。東京へ戻り、そして北京へ戻った時は、私達は皆、隔世の感があったが、当時の写真やメモを見返すとやっと、これがある完璧な教育設計の実例であったのだと実感するのだ。

実際に冬季の厳寒や大雪は、とにかくとても過酷な自然環境で、単に自然体験と言っても、ある程度単調で、快適ではなく、もちろん不慣れなことであった。しかしこれは正に都市とは違う、非日常の環境であり、「冒険」教育にふさわしい状況を提供していた。

冬キャンプの目的は子供達に「体験学習」を通じて彼らの生存能力を高める事で、この体験は社会体験、生活体験、自然体験を含んでおり、この3種の体験は全て彼らのC-Zoneを拡大させる。これらの子供に対して念入りに設計された活動について総括してみる。

雪中冬キャンプでの生活体験:規則的な仕事と休憩(起きて、食事をとって、片付けて、入浴して、日記を書いて、洗濯する)、毎日子牛に餌をやり、酪農家の家で2晩泊り、かまくらで2晩眠るというスケジュールの下、子供達は非日常生活から日常生活への変化を経験して、彼らのC-Zoneは拡大する。

雪中冬キャンプでの自然体験:雪の中での遊び、動物の痕跡追跡、凧揚げ、雪上運動会、かまくら作り、一連の難度が次第に高まる雪上活動、これらが冬キャンプの主な内容だ。この過程で冬季特有の自然環境を享受すること以外に、楽しくて、興奮して、がっかりして、悔しくて、泣いて、満足するという各種の感情を体験する。

雪中冬キャンプでの社会体験:見知らぬ他人と共に生活し、共に課題(雪地追跡、発表会、運動会、かまくら作り)、及び各種儀式(入村式、懇親会、退村式)を完了し、食事を共にする。自然体験の一連の活動はすべて、チームの方法を通して完成させる。その過程で口論し、妥協し、協力し、交流し、表現し、沈黙し……これら全てが彼らのC-Zoneの拡大につながる。

しかし、どうして他の活動ではなく、これらの活動なのだろうか。これらの活動の間には何か関連するものがあるのだろうか。裏には何か深い意味があるのだろうか。実は冒険教育の「冒険」とは、ただある一種の手段であって、「教育」こそが更に重要なのだ。

「教育」について言えば、最も重要なのはその目的であるべきだ。私達の目的は子供達が「成長」することで、雪中冬キャンプは具体的に言うと「生存能力を高める」ことだ。「冒険」理論によると、各々のC-Zoneは同じではなく、7~14歳の子供については、彼らの心身発達の特性に合致するよう活動を計画すべきだ。例えばこの段階で彼らにとって最も重要な感情に訴える体験や、規範意識の確立など。また、このような事は人と人との交流の中で完成させる必要があるので、雪中冬キャンプの活動のメインは実はチームを作ることなのである。かまくらを作るというような大きな課題はチームで協力して初めて達成できるのであり、それまでの活動ひとつひとつ全てが最後のこの大課題の為の準備で、もしそれまでの課題がうまく達成されなかったら、チームはできないし、かまくらを作ることもできない。

だから雪中冬キャンプは一連の体験活動を積み重ねるだけではない。ただの体験活動では「体験型の学習」にはならないのだ。「体験」を学習の過程としたいのなら、学習過程の基本ルールを守り、体験後に反省し、フィードバックし、この一回の経験を次回の体験にリンクさせ、絶えず繰り返す必要がある。雪中冬キャンプ中にだんだん難しくなるチーム活動では、必ず子供たちに絶え間なく体験と反省をさせている。一回の活動での得失を分析し、原因を探し、次回の活動での新たな方法を考えることを通して、だんだんとチームの中での己の位置を見出してゆく。また、ここでの経験を日常生活へと持ち帰り、社会での「生存」能力を真に高めるのだ。–この時、私達の目的は達成されるのだ。

自然の友は20年の環境教育経験を持ち、さらに、自然体験(天壇、左権、シーサンパンナ)とエコツーリズム(哀牢山、台湾)の夏期・冬期キャンプを開いたことがある。今年初めて「生活」をテーマにした八達嶺緑色生活(エコライフ)夏期キャンプを行うとともに、雪地冬期キャンプでの「冒険」教育の経験もたくさん吸収した。

八達嶺夏期キャンプに参加したのは6歳から13歳の子供で、場所は八達嶺森林公園である。

夏の八達嶺森林公園は環境がよく、野生動植物資源が豊富で、各種の自然体験活動に向いている。だが、整った宿泊環境がないにも関わらず、ここで「生活」キャンプをするとは!その通りだ。先ほど挙げた経験に基づくと、このような条件下では、少し「冒険」する気持ちを持った方が良い。

生活というと、八達嶺での生活条件は雪地冬期キャンプよりも更にひどい。なので、今回は生活体験について、ちゃんと計画を立てた。今までのように自然体験の為に生活するのではなくて、C-Zoneを広げる為に生活体験をしている。

もちろん、生活体験、自然体験及び社会体験を分けてはいけない。生活体験の中で、子供達は布団を敷くこと、キャンプをすること、食前に感謝すること、環境に優しく皿を洗うこと、節水シャワーをすることを、みんなで競争しながらやった。この7日間は、ベッドで眠ることも、ちゃんとしたテーブルの上で食事をすることもなかった。ご飯を盛ったり、皿を洗ったり、整理整頓をしたり、全部自分でやったのである。子供達の間で、だんだん秩序が生まれ、こういう生活に慣れていったのだが、そのスピードは私たちが想像したよりずっと早かった。

自然体験は自然の友環境教育経験の中でもっとも豊かな部分である。最初の3日間は、キャンプになれたり、安心感を育てたりする為に、活動を行った。4日目からは伝統に倣い、子供達を年齢によって分けて、9歳以上の子供を「地球守護者」というトレーニングに参加させる。8歳以下の子供の為に、豊かな自然ゲーム、自然ノート、自然手作りの活動を用意した。夜の観察や単独行動を経て子供達は恐怖を克服し、どこでも見かけるアリや蜘蛛を観察することで、どうやって虫と平和に共存するのかを学んだ。この神秘的な場所で、彼らは一人で自然や自分自身と語り合う。「命の間の関係」をテーマにした活動を通じて、子供達は地球にいるすべての命はつながっていることを認識した。また、五感を開く各種のゲームによって、地球と触れ合うことを美しく感じるようになった。

社会体験はチーム活動の中でこそ完成する。生活キャンプでは各年齢の子供を同じチームにしているので、各チームには6歳から13歳までの子供がいる。彼らは一緒にご飯を食べ、同じところで寝る。共通のルールを作り、一緒に植物を植えて、地球守護者ごっごをやったり、閉会式の演出を練習したりする……彼らは他人と付き合うことで、耐えること、相手を尊敬すること、大目に見ること、自己発散することを習得する。さらに、観察、分析及び反省も学ぶ。

私たちは成長というと、いつも未来や理想と混同してしまう。美しい結果しか考えない。成長には長い年月がかかるものであり、自分の限界を突破していくプロセスであること、経験がだんだん複雑になり、喜怒哀楽など人間の様々な感情を体験していくということを見落としてしまっている。

数十歳の大人と比べ、子供のC-Zoneはそれほど大きくない。様々な事柄はまだ当たり前のようになっていない。毎日の生活とゲームの中で、小さい冒険を繰り返して経験すると、彼らのC- Zoneはだんだん広がる。例えば、最初にキャンプに入った頃は、蜘蛛を見たら叫んだり避けたりしていたが、その後やがてだんだん近くで観察ができて、そのうち蜘蛛が身体を這っても怖くなくなった。子供にとって、これこそが冒険だ。こういう冒険が日に日に近づいてくるから緊張感が生まれ、恐怖感を克服できるかどうかも分からない。でも、一旦恐怖を克服したら、深い満足感が湧いてくる。それがC-Zoneを突破した成長だ。なので、子供達にとって、毎回の体験と経験は大事である。

こういう冒険行為にとって、最も大事なのは「自発性」である。自分で判断して、自分の意識で行動する。そして自らC-Zone快適区から出てくるのが大事である。要求されてやったのでは冒険にならない。冒険者は自分の意志で挑戦する。

だから、私たちは子供にどうやって自分を知るのかを教える。最も基本的な生活に必要なものを始め、自分の感情を観察し、自分の行為を反省させる。毎晩、スタッフが子供達と一緒に一日の活動を振り返る。子供達も日記にありのままの自分を記録する。ちゃんと寝たか、ちゃんと食べたか、ちゃんとトイレに行ったか?その日の気持ちや失敗や楽しかったことを記録する。夏期キャンプでは、すべての感情、たとえ涙でも認められるが、泣くことも笑うことも増幅されない。どんな結果でも認められる。たとえ失敗でも、失敗は勉強の良い機会である。生きているとよく失敗を経験するが、失敗したからこそ、経験を得て、成功の喜びを感じられる。

最後の日、子供に未来の自分宛てに手紙を書かせた。この「未来」は9月1日である。

9月1日になったら、すべての子供が学校に戻る。でもその時、彼らが八達嶺で過ごした7日間を思い返すと、いろんな気持ちがわいてくるかもしれない。もうすでに戻りたくなっているかもしれない。泣いたり、笑ったりした。適当に床に座って、アリや蜘蛛が身体に這い上がってくるのも平気だった。一人で暗いトンネルを静かに通った。ドキドキしていたのに、戻ったら笑っていて「もう怖くないもんね」と言った。たくさん友達ができて、何を学んだのだろうか。将来、どういう人になりたいのだろうか。

9月1日、この手紙が届くと同時に、子供達はスタッフや校長先生からの手紙がもらえる。これらの手紙を読む時、子供達はあの日の自分に戻る。八達嶺で過ごした7日間を思い出す。学んだことが全部できるようになるかもしれない。そして、未来の道に横たわる困難を克服する勇気と力を得る。これこそ夏期キャンプの目的、C-Zoneを突破して成長していくということだ。

これは完璧な体験式学習のプロセスである。私たちの募集情報を見つけ、面接や電話訪問及び事前説明会に参加して、7日間のキャンプを体験し、最後の手紙(地球守護者とその後二ヶ月間の任務)を読むまで、子供達はスタッフと親の助けを借りて、一つ一つ小さな「冒険」を経験し、何度も何度も体験式学習法を繰り返した。7日間のキャンプの効果は二ヶ月、いや、もっと長く伸びた。

子供達が2日目に植えた種は、最初の数日間は全然変化が無かったが、6日目になると、ほとんどの芽が出た。夏期キャンプもそうだ。すぐに成果が見えないかもしれないが、種が良く、条件が整えば、いつかきっと芽が出る。そして、相応しい条件――日当り、雨、土と根性は、私たちと親が一緒に作る必要がある。みんなで頑張りましょう!

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執筆者 长袜子皮西亚
執筆者所属 自然之友
翻訳と校正 翻訳:市橋美穂、ヒョウウン、校正:棚田由紀子
メディア http://pythiah.blogspot.jp/2014/11/c-zone.html

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