2014/12/26 by Tanada

馬榮真:劇中、そして現実で-声をあげることのできない自然のために

-一幕劇「小魚VS巨大ダム」の背景にあるストーリー

20141226-03

「遠い遠い昔、鵞城(訳者注:広東省恵州の別名)のほうから大きな河が流れていました。河の中には、たくさんの珍しい魚が泳いでいて、国家級の保護区になりました。しかし、ある日のこと、魚たちが栄えていた故郷が、建設中の巨大ダムによって真っ二つに切り離されてしまったのです。自然を保護しようとする人々が立ち上がるときが来ました!」

これは、一幕劇「小魚VS巨大ダム」の前口上だ。6月5日の夜、自然の友(訳者注:中国の環境NGO)20周年記念パーティーで、この劇の冗談を交えた表現方法や、弁護士たちの精彩に富む演技は、500名を超える観衆たち全員の喝采を博した。「小魚VS巨大ダム」は、環境訴訟における法廷尋問の現場を再現したものだ。原告は、長江に住む野生の魚、自然の友は彼らの「通訳」、そして夏軍弁護士が原告代理人を務めている。一方、被告は政府の環境行政部門と建設業者で、曾祥斌弁護士が被告代理人を務めている。演劇の制作スタッフは、このほか、裁判官役として、政法大学の王燦発先生を招いた。

一幕劇「小魚VS巨大ダム」

「小魚VS巨大ダム」は、重慶小南海水力発電所の建設プロジェクトで実際に起こったケースをもとに制作したものだ。2012年、自然の友は、「小南海水力発電所の建設停止、長江上流の希少魚類の保護」という議案を、両会(訳者注:全国人民代表大会(日本の国会に相当)と人民政治協商会議)に対して提出した。それまでに、自然の友は、長江の希少魚類の絶滅を招く可能性があるこの水力発電所の建設プロジェクトと、既に4年もの間、法廷で争い続けてきた。その内容は、プロジェクトの開始によって長江上流の自然保護区の範囲が縮小されてしまったという問題や、環境報告への市民参画に関する問題など、他の多くの問題にも及んでいる。

この出来事に基づき、自然の友の環境法律・市民参画グループは、新しい発想で「小魚VS巨大ダム」のシナリオを作った。

グループが、初めて劇の筋立てに関する「画策」をしたのは、5月末のある週末のことだった。伯駒弁護士、常成弁護士、葛楓弁護士、そして夏弁護士など私たち何人かが一緒になって、劇の初期構想についてブレインストーミングをした。長江に巨大ダムが建設され、小魚の故郷が侵され、環境部門が法廷で被告になり、裁判現場で弁論が行われるといった状況について大まかにプランをたてた。これは、私は自然の友にインターンにやってきて一日目のことだ。この人たちの活力と独創性を目の当たりにして、私は環境NGOがここまで本物で、生き生きとしていると感じさせられた。

劇制作グループのほとんど全てのスタッフが、雲南で起こったクロム廃棄物の環境公益訴訟案件-これは、中国で初の民間環境団体が起こした環境公益訴訟になる-に直接関わっており、2011年の立件以来、この事件が「民事訴訟法」の公益訴訟に関する条文の公布を直接促したほか、「環境保護法」の環境公益訴訟の条文に関する規定にも直接影響を及ぼした。ただ、現実的な問題は、この裁判がまだ結審しておらず、それどころか一度も開廷していない、というところにある。まさにこのために、劇について活発に楽しくディスカッションした後に、「雲南クロム廃棄裁判の今後の方向性」について議論する際には、劇の話に比べて厳粛で、少し重々しい雰囲気が感じられた。

ただ、舞台の上で、彼らは声をあげることのできない自然とともに、別の方法で叫んでいたい。

今年の北京の夏は、蒸し暑く、雨も多い。5月の最後の日、ちょうど端午節の休暇が始まった。制作グループの5人は、後海(訳者注:北京市内の池で観光名所にもなっている)で待ち合わせ、台本の打ち合わせと、初めて簡単なリハーサルをした。政法大学の汚染被害者支援センター訴訟部の公益弁護士をしている張兢兢が、この劇におけるもうひとつの重要な役-終幕後のモノローグを担当した。出演者の本当の身分や、自然の友とともに法律的手段で環境問題の解決を進めてきた歴史や現状についてのモノローグだ。その日の午後、蒸し暑い天気によって暴雨がもたらされた。後海の岸辺の籐椅子に座りながら、夏弁護士が台本を暗記しているのを聞いているとき、空は既に完全に暗くなっており、傍にある大きな柳の大木の上にあるネオンサインの明かりをたよりに、夏弁護士が台本に手書きした筆跡をなんとか読めるように頑張っていた。ディスカッションも終盤に近付いてきたころ、忽然と大風が吹き、雨がぽつぽつと降ってきた。私たちは大急ぎでかがみこんで軒下に走っていき、雨宿りをした。見る間に雨足はどんどん強くなっていき、[y1] 店主に中に入るよう呼ばれたので、中に入り座り込んだ。ちょうどそのとき、外の柳の大木が倒れた、と誰かが言うのが聞こえた。私たちのうち何人かがすぐに門のところに行き見てみると、荒れ狂う風と大雨の中、私たちがさっきまで囲うように座っていた柳の大木が、根本から引き抜かれてそのまま倒れていた。夜の闇は濃く、木の上の電線やネオンサインはよく見えなかった。葛楓は笑って言った。「これが、声をあげることのない自然があげる叫び声だ、心の底から愛している人は加護してくれるかもしれない・・」孔子曰く、天何をかいわんや!季羨林は、『声をあげることのない自然』という本の序章でこのように記している。「自然は喋ることができない、もしくは喋ることをしない。しかしながら、自然は報復することができ、懲罰を加えることができる。」その夜、私たちは小屋の中に座りながら、胸のどきどきはまだ治まらないでいた。

しかし、このような特別な経験をしたことで、自然保護者たちの前進の足取りは、より確かなものになったことには、疑いの余地がない。

自然の友20周年記念パーティー当日の午後、野生の魚を演じる簡格民は、ちょうど重慶の烏江から北京に帰ってきたばかりだった。被告代理人の弁護士を演じる曾弁護士は、ちょうど南寧からこのためにわざわざやって来たところだった。その夜の演技は大成功で、被告弁護士の「傲慢さ」や「蔑み」に対して、観客席の観客たちは靴や水筒を法廷に投げ込み、不満を示した。政法大学汚染被害者支援センターの何人かの公益弁護士は、率先して「嘘」と言いブーイングをした。裁判官の主文と判決は迫力満点で、王燦発先生は「これで裁判官を一度堪能したといえます」と笑って言った。魚の演技は、特に大きな見せ場となった。簡格民は、180cmもの大きな体で、「草さん」と「ハッカ先生」が彼のために特別に作った「魚の着ぐるみ」を着て、10数分もするとすぐに頭いっぱいに汗をかいてしまった。

中国の環境保護NGOのダーウィン環境研究所のオフィシャルツイッターでは、このようなツイートが載った。曾祥斌弁護士が昨晩の20周年記念パーティーで演じた「小魚VS巨大ダム」の模擬公益訴訟では、被告の弁護士役の弁舌がずば抜けて優れていて、声も大きくよく通っていて、(被告側として)心で思っているのと反対のことを言い、とても大きな見どころだった。

終幕後のモノローグの中で、曾祥斌はこのように述べた。2005年に参画した円明園(訳者注:清朝時代の離宮の遺跡)の湖底防水膜敷設事件(訳者注:園内の湖底に、漏水目的で防水ビニールシートを張った結果、湖内の生態系に悪影響が及んだ)の公聴会から、2012年に初の純民間組織として起こしたクロム廃棄物汚染の公益訴訟に至るまで、そして2005年に梁從誡氏が提出した「環境公益訴訟」の政治協商会議での提案から、2014年の「環境保護法」改正において、一般市民の参画と公益訴訟に関する章節がまるまるひとつ設けられたことに至るまで、さらに2005年に薛野事務局長や数名の弁護士会員が公益弁護団の組成計画から、今日各地方のグループが弁護士たちの協力のもとで疾風迅雷の法的アクションを起こしていることに至るまで-中国で最も影響力のある民間の環境保護団体として、自然の友は、中国の環境運動の起伏に富んだ10年間を経験してきた。中国の環境悪化の趨勢が根本的に変わっていないなか、私たちは気を緩めることができない。ただ、ほっとできるのは、自身が持つ環境の権利に対する一般市民の関心が高まるにつれて、環境保護団体の法的アクションもますます強くなっているということだ。果てしなく遠く続くこの道を、自然の友は、万策尽くして追求しよう(訳注:戦国時代の詩人屈原による詩の引用)。

確かに、これは、間違いなく中国の環境公益訴訟に参加したグループで、劇中で原告代理人の弁護士を務めた夏軍や曾祥斌は、みな雲南クロム廃棄物の環境公益訴訟の原告代理人で、訴訟の各段階に直接関わった。劇中で原告の通訳を務めた葛楓や、魚役を演じた簡格民も、みな自然の友の一員だ。さらに劇中で裁判官を務めた王燦発は、中国での環境分野の法治の進展に対して直接関わり、また推進してきた人であり、環境マネジメントの呼びかけに長年尽力してきた。張兢兢さんも、自然の友の忠実な会員で、政法大学汚染被害者支援センターの古参の公益弁護士だ。

パーティーが終わった翌日、環境公益訴訟研究討論会への参加を終えて、自然の友のオフィスを後にした。すると、大雨が止んだあとの空は格別に澄んでいた。夕方も近づいており、高層ビルに斜陽が当たり、金色の眩いきらめきが生まれていた。その晩、この団体の弁護士たちが、雲南クロム廃棄物事件の今後の方向性について深夜までまた議論をしていた。論争あり、笑いあり、一致もあれば不一致もあった。だが、まさに張兢兢が微信で書いていたように、「弁護士であれNGO人であれ、今晩のどの論争にも価値があり、どの分析も理性的で専門性に基づいており、どのコンセンサスも多くの考えや判断の積み重ねであり、どの真情の吐露も頑張り続ける理由だ。」そうだ、と私は知った。彼らは同じ目標に向かっているから、そうなのだと。

(自然の友より転載)

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翻訳と校正 翻訳:三浦祐介 校正:棚田由紀子
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