2014/09/12 by Tanada

【pal*system】断ち切られた縁を結び直す場へ ~ここは、お国ことばで話せる場 ~

さいがい・つながりカフェ(埼玉県さいたま市)

ひまわりサロン(同県川口市)

被災した故郷を離れてやむを得ず首都圏で暮らすことになって2年。地縁がない土地にやってきた方たちの不安は、はかり知れません。その方たちに寄り添って「まずは場をつくろう」と、動き出した人たちがいます。埼玉県内には、約20カ所以上。その中から「さいがい・つながりカフェ」と「ひまわりサロン」をご紹介します。

まるでもうひとつの家族

JRさいたま新都心駅から、歩くこと10分弱。「With Youさいたま」(埼玉県男女共同参画推進センター)4階の和室に一歩入ると、熱気に圧倒されました。ここは、毎月2回開催される「さいがい・つながりカフェ」の会場。開始からまだ10分ほどしかたっていないのに、手仕事、おしゃべり等々、部屋のあちこちにグループができ、皆さんすでに没頭しています。

参加者の多くは、東日本大震災と福島第一原発の事故によって埼玉県内に避難してきた方たちです。

数名の実行委員のほかに、さまざまなボランティアも参加。メイクアップ、ハンドトリートメント(アロマテラピーを使ったハンドマッサージ)、茶席…と、プログラムはうらやましいほどに充実しています。

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写真:お昼時の風景。この日は、浪江町から避難してきた方が、“鮟鱇(あんこう)のとも和え”を大きめの容器に入れて持ってきていました。前回話題になり、「ぜひつくってきて!」とリクエストがあったそう。自慢の郷土料理です。

お昼時には、座卓を囲み、皆さん持参のお弁当をテーブルに。ぐるぐる手渡しされていく沢庵、かぶの浅漬け、おむすび、お惣菜…。まるでもうひとつの家族のようです。いいなあ。取材チームもおすそ分けをいただいてしまいました。

夫婦でほぼ毎回参加している小指和子さんは、震災後、石巻から息子さんが暮らす埼玉に越してきました。この場を見つけたのは、アパートにこもりがちだった両親を心配した息子さんです。「ここで偶然会った人が石巻の方って聞いただけで、ほんとにほっとしました。どこに行っても知らない人ばっかりでしょ」。

復興の遅れや、原発事故の賠償問題、避難先での孤独死など、震災をめぐる困難が山積みのなかで、こんな拠点が着実に生まれていっていることは、本当に救いと言っていいでしょう。

やるせなさや怒りを受け止める場所を

ところで、この場はどうやって生まれたのでしょうか。「さいがい・つながりカフェ実行委員会」代表の薄井篤子さんにお話をうかがいました。

さいたまスーパーアリーナに避難されている方、特に乳幼児や子どもがいる家族優先で、この建物(With Youさいたま)のシャワー室(当時)が開放されました。皆さん、震災以来初めてお湯を浴びてすっきりすることができ、喜ばれました。それで、言葉が出たのでしょうか。「これから埼玉に長くいることになるかもしれない。子どもは、保育園や小学校で〝放射能がうつる〟とか言われないだろうか。すごく心配だ」と言われた方がいらっしゃいました。

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写真上:朝から女性の皆さんが熱心に取り組んでいたのは、お雛様づくり。先生役も被災者の方です。

20140912-05写真右:実行委員会代表の、薄井篤子さん。

それを聞いたものとしては、不安がある方の気持ちに寄り添うようなことをしていかなければいけないと思い、その信念ひとつで、この場所を開きました。

最初は埼玉の人と東北の人が出会う場所が必要だと思って開いた場所です。ところが、始めてみると、東北の人は東北の人と会いたいんだとわかりました。ですから、その場所をつくるのに全力をかければいいと思ったんです。私は何かの専門家でもないけれど、場をつくることはできると。

皆さん生活の基盤も根こそぎ奪われて、ものすごいダメージを受けていらっしゃいます。現在の参加者は、60~70代の方が多くて、最高齢は84歳。この年齢でまったく新しい所に来ることになり、怒りや悔しさもおもちだと思います。賠償などの法律問題もありますが、やるせなさや怒りは、どこかで受け止められないといけない。その経験があって、次に行けるのかなという気がいつもしています。

交流会とかイベントをやると、どのぐらい人が来たか気になりますよね。でも、参加者の数より、1対1でおしゃべりして、ひとりひとりをちゃんと受け止めるのが大事だと思っています。皆さんここでいろいろな形でほぐされて帰っていかれます。

こういう場所に足を運ぶのは、なかなか難しいはずです。誰がやっているかわからない会ですから。それでも「よし、行ってみようか」と来てくれた。なんとか新しい場所でやっていかなければいけないんだと思って、努力して来られているんです。皆さんのその気持ちに、すごく学ぶところがありますね。

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写真:膝突き合わせての話の輪に近づいてみると、「実は地元の農家です」という男性も。何かの形でこの場に関わろうとやってきた方たちが、さりげなく混ざり、楽しんでいらっしゃいました。

避難している方だけでなく、この場に来ている支援者側、関わっている者もどれだけここによって充実しているかが大事。自分にも何かやれるんだとわかってもらえるように心がけています。その充実感がないと、「やってあげる」っていう感じになってしまう。みんなが「私もここに来て楽しい」と感じるという意味で、平等の場所なんです。

20140912-07写真右:ボランティアグループ「たっち☆あろま」の皆さんのハンドトリートメントは、毎回好評。好きな香を選んでマッサージしてもらいます。気持ちもゆるみ、本音の言葉がもれるのは、こんな時。

何かやりたいけれど、どこから始めていいかわからないという方には、一度このカフェに来てみたら、とお誘いしています。そして、自分の住んでいる地域で始めてみるのはどうですか、と話します。避難している方たちみんながここに来る必要はないですから。

被災者自ら立ち上げた『「ひまわり」の会』

「『さいがい・つながりカフェ』に初めて来たときは、皆さんお昼をもってきていらっしゃるなんて知らなくて…。でも、『ここにすわってたらいいべ。早く、これ食べろ』って言われて。なんかすごく懐かしくなって、ほっとしちゃいました」

にこやかにその日を振り返る木幡恵美子さんは、福島の浪江町から、夫の会社の社宅がある鳩ヶ谷市(現在は川口市に吸収合併)に避難してきた方。現在は川口市で、被災者による被災者のための自立支援の会『「ひまわり」の会』の代表をつとめています。

会を仲間と立ち上げたのは、昨年1月。南鳩ヶ谷の「やすらぎ会館」を会場に、毎月1回「ひまわりサロン」を開催しています。午前中は、お互いの近況報告と情報交換をする「おしゃべりサロン」。午後は地域のボランティアの方たちの協力を得て、さまざまなイベントや講座を行ってきました。布ぞうりづくり、カウンセリング、バスボムづくり、ひざ掛けを編んだり…。

始めた当初に比べるとサロン参加者の数は減っています。仕事を見つけて新たな生活に踏み出した人や、福島に帰った人も。いっぽうで、交通手段がなくて来られないという声も聞こえてきて、まだまだサロンの役割は終わっていません。

「なくすことは簡単ですが、細々とでも続けて、忘れたころでもいいから来ていただけたらうれしいなと思っています」(木幡さん)

20140912-06写真右:『「ひまわり」の会』 代表の木幡恵美子さん。

今、ここでの日々を楽しもう

木幡さんが、当初からの想いをたどりながら、今の気持ちを語ってくれました。

自宅は福島第一原発から7キロの場所です。津波は家の100m前で止まりましたから家は残っていますが、住める状態ではありません。一時帰宅のたびに状況がひどくなっていきます。

ここに来て半年間は毎日家から出られなくて、泣いて暮らしていました。個人情報だからと、近所に住んでいた人の避難先も教えてもらえなくて、お友達もいない。すごく寂しかったです。それに、病院や学校、公共の施設のことがわからず、困りました。

そんななかで、旧鳩ヶ谷市の社会福祉協議会ボランティア連絡会の方々が、親身になってお世話してくださっていました。ところが、一昨年10月に鳩ヶ谷市が川口市に吸収合併されることになり、これまでのような細やかな支援ができなくなると言われたんです。それで、被災者自立支援の会を被災者自身でつくろうということになりました。鳩ヶ谷の社協(社会福祉協議会)職員だったSさんが立ち上げから運営まで全面的にバックアップしてくださり、いろいろなことを教えていただきました。

自分たちもボランティアセンターに登録し、障がい者施設にお手伝いに行ったりして、地域とのコミュニケーションをとってきました。

でも、孤独な思いをしている方を会に誘いたくても、個人情報の壁があり、居場所は教えてもらえません。どうしたらもっと発信できるのか、去年1年間、すごく悩みました。ただ、「もうかまわないでください」とか「家から出るのもいやだし、そんなところに行ってもしょうがない」とおっしゃる方もいて、難しいですね。

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写真:2月の「ひまわりサロン」。バスボムをつくり、キュートにラッピングも。「今晩はこれで温まってくださいねー」

あるときご夫婦でサロンにいらした方が、朝から午後の部までずーっと話し続けて、「あーよかった。すっきりした。たまっていたことを聞いてもらえてすごくうれしかった」って言ってくださいました。うれしかったです。何度も来てくださっていたのですが、「いわきで仮設が見つかったので、これが最後なの」と言われたときは、寂しかったけれど、よかったねと本当に思いました。

私も主人と〝帰ろう〟と話しています。放射線量はちょっとあっても、人生は半分過ぎちゃったからもういいわよ(笑)と。ただ、最低5年は戻れないです。どのぐらいで復興が進んでいくかもわからない。だったら、ここで地域の方とつながって生きていきたい。

地元にいたときは、サークルのようなものにもいかない人だったんです。農家に嫁いで、1年間通して田んぼと畑で忙しかったですから。それが、ここではいろいろな経験をさせていただいて、絆もできました。温かくしてもらって、すごくよくしてもらって。

振り返ってしまうと、涙があふれて前に進めません。「ひまわり」を始めたことで目標ができて、いつも次に何をしようか考える楽しみができました。ここで楽しい思い出を皆さんと共有していきたいですね。

さいがい・つながりカフェ

【開催日時】毎月2回11時~15時(3月14日、3月28日以降の開催日はホームページ参照、またはお問合せを)

【会場】With Youさいたま 4階和室

〒330-0081 埼玉県さいたま市中央区新都心2-2

【交通】JRさいたま新都心駅から徒歩9分、JR北与野駅から徒歩7分

【問合せ】TEL:048-601-3111 FAX:048-600-3802

【E-mail】m013111@pref.saitama.lg.jp(件名に「さいがい・つながりカフェ問合せ」と明記してください)

【URL】http://www.withyou-saitama.jp/view.rbz?cd=598

【参加方法】参加費・無料、申込み不要。関心をお持ちの方は、どなたでもご参加いただけます。

【主催】さいがい・つながりカフェ実行委員会

ひまわりサロン

【開催日時】毎月1回10時~15時(4月18日、5月16日、6月20日、7月18日)

【会場】やすらぎ会館

〒334-0013 埼玉県川口市南鳩ヶ谷6-8-16

【交通】埼玉高速鉄道 南鳩ヶ谷駅 2番出口から徒歩7分/JR西川口駅発バス 市立高校循環線 「中居」から徒歩7分または、JR川口駅発バス サンテピア行き 「中居」から徒歩7分

【問合せ】080-4920-4931(「ひまわり」の会)

【ブログ】http://hamaari.exblog.jp/

【参加方法】参加費200円。申込み不要。関心をお持ちの方は、どなたでもご参加いただけます。

【主催】「ひまわり」の会

執筆者
執筆者所属
翻訳と校正
メディア パルシステム・セカンドリーグ月刊「のんびる」No.78(2013年4月号)より転載(pp.6-9)

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