2014/02/20 by Fancy

半農半Xが中国へ:「地球市民村」参加者塩見直紀さんのご紹介

いよいよ、3月8~10日に、上海で開催する「自然共生型社会を目指す:東アジア地球市民村2014」まであと2週間しか残っていません。 今回日本から約13名の方が参加される予定ですが、分野こそそれぞれですが、「自然共生」と「東アジアの市民連携」に共感してくれた方ばかりです。

ここでまず「半農半X」という生き方を提唱している、京都綾部在住の塩見さんをご紹介したいと思います。塩見さんの著書は去年初めて中国大陸で出版されましたが、それまではすでにいろんなチャンネルを通して、環境に関心をもつ人たちの間よく知られていました。実際、「半農半X」を始めた人も全国いろんな地域に現れて、上海のような「土地と縁がなさそうな」大都市でも、1時間半車で走れば、実践している人に会えます。
したがって、今回塩見さんの上海訪問は、新しい生き方、暮らし方探している人たちにとって、実に貴重な機会になると思います。(朱)

「半農半Xという生き方~ほんとうの生き方、暮らし方を求めて」
塩見 直紀(半農半X研究所代表、京都府綾部市在住) 

1894年、思想家の内村鑑三は「後世への最大遺物」と題する講演を箱根で行いました。多くの聴衆に「我々は何をこの世に遺して逝こうか。金か。事業か。思想か」と問いかけました。いま私たちは地球環境問題の観点からも、大事なときを生きています。大地に根ざし謙虚に暮らし、みんな持っている天与の才を発揮し合い、よき時代を残していきたいと思います。 

自然破壊や大量消費・廃棄など環境問題と向き合う時代をどう生き、どう暮らしていったらいいのか。1989年、大学を卒業し、入社した会社が熱心で、20代後半の重要なテーマとなりました。もう1つ私には難問がありました。この世に生まれた意味や役割は何かという問題です。2つを同時に解決できる方法はないか。悩むなかで生まれたのが、「半農半X(エックス=天職)」です。定義すると、持続可能な農ある暮らしをベースに、天与の才を世に生かす生き方となります。Xとは、得意なことや大好きなこと、使命、生きがいなどを意味します。農といっても田舎限定の考え方ではなく、都会でベランダ菜園や家庭菜園、市民農園でもOKです。面積の大小や作業時間の長短ではありません。暮らしの中に少しでも土、植物などに触れる時間があり、謙虚さやレイチェル・カーソンがいう「センス・オブ・ワンダー」(自然の神秘さや不思議さに目を見張る感性)を取り戻すことが重要なのだと思います。 

半農半漁は日本の伝統的な暮らし方と言われます。島崎藤村は大正末に発表の小説『嵐』の中で、「半農半画家」という言葉を使っています。医、陶(芸)、(武)士、教員、工など、多様な表現が以前からありました。日本の屋久島在住で、尊敬する作家で翻訳家の星川淳さんは半農半著の暮らしをされていて、20代のとき、とても影響を受けました。日本でも半農半歌手、半農半まちづくり、半農半デザイナー、半農半環境系NPOなど、多様なXがあります。私はこれを「使命多様性」と呼んでいます。 

半農半Xコンセプトが誕生して約20年。先祖が残してくれた田畑で自給農(米や和食の素材となる野菜、味噌づくりなど)を15年ほど実践してきました。迷える私たち日本人の歩むべき道はどこにあるのかと問われれば、半農半Xという道があると自信をもって答えます。このコンセプトには普遍性があると考える理由は2つ。1つは、人は何かを食べないと生きられないこと。もう1つは、人には何か生きる意味がいるということ。人としての2大問題に答えを出していると思うのです。

私のXは半農半Xを伝えること。市町村から個人までのXをコンセプト立案の観点から応援することです。故郷にUターンした年、母校が閉校となりました。跡地を活かし、都市農村交流をおこなうNPO里山ねっと・あやべに参画し、綾部からの発信に注力してきました。「情報発信のないところは滅びる」という危機感があったからです。また綾部里山交流大学の企画も担当してきました。過疎化する綾部の応援も私のXの一つだと思います。また「半農半Xデザインスクール」という1泊2日のワークシップ(講座)も綾部でおこなています。日本各地で講演に呼ばれ、学生に、都会で農村で、各地で半農半Xという生き方を伝えています。 

日経新聞に大きく紹介されたことで、『半農半Xという生き方』(ソニー・マガジンズ)を2003年に上梓しました。2013年が出版まる10年の記念の年でした。おかげさまで現在も、「半農半Xを最近知りました」とメールが届き続けています。 

出版は私の人生を大きく変えていきました。台湾の若い女性が大阪の書店で拙著と出合い、台湾の出版社に持ち込んでくれ、2006年に中国語版(『半農半X的生活』)が出版されました。年2回の追刷があり、現在12刷です。本がきっかけで台湾に5度招聘され、台北から農村部まで各地で講演をさせていただきました。招聘くださったのは、中央政府、桃園県、国立大学などです。なぜ半農半Xが台湾で広がるのか。アジア・モンスーンの東アジアは小農圏で、晴耕雨読、天命、どう生きるかということを考える風土がベースにあるからでしょう。台湾版には台湾の編集者によって、「順従自然、実践天賦」という副題が添えられました。自然と寄り添い、天賦の才を私物化せず、世に生かすこと。人として生きる道を簡単な言葉で伝えています。半農半Xがそのまま伝わるって、やはり漢字文化圏ってすごいですね。 

半農半Xは中国大陸にも広がっています。2009年、四川省成都のタウン誌の編集者から「今、中国人も半農半Xを求めています」とメールが届き、驚きました。20ページの特集が雑誌でされました。そして、ついに上海の出版社から2013年夏、念願の中国大陸版(簡体字)が出版されました。昨秋には上海の大学の若手研究者が綾部を視察訪問され、意見交換をおこないました。世界にとっても中国はとても大事な国です。半農半Xが大陸でも伝わることを願っています。 

日本は中国が生んだすばらしい古代哲学に多くを学んできて、心ある人はみなそれをとても尊敬しています。私も同じです。尊敬する中国のみなさまと上海でお目にかかれたら幸いです。

作者:塩見直紀(寄稿)

次回は、同じ「地球市民村」のゲスト、台湾で「三生教育」(生命、生態、生活)を提唱する、荒野保護協会の林耀国さんをご紹介します。お楽しみに~

 

 

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