2014/01/07 by Tanada

「ターミナルケア三人組」による無料コミュニティーサービス【前編】

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11月6日、徳勝地区衛生サービスセンターのターミナルケア病棟にて、患者(76歳)がベッドでラジオに聞き入る。

78歳の梁さんは、入院して既に1年になる。毎日鎮痛剤の注射を打たなければならず、寝返りも看護師の介助を頼りにゆっくりと行わざるを得ない。診断書には「前立腺がん骨転移」と示されている。梁さんの近くの病室内には、肺がん末期の患者とすい臓がん末期の患者がおり、皆すでに治療を止めている。

3年前、徳勝地区衛生サービスセンターでは、末期がん患者のターミナルケアを試験的に開始した。専門のチームによる無料の訪問看護を通じて痛みを緩和する等のケアを提供し、危篤状態になった際には病棟への受け入れを行っている。これまで既に122名の患者がターミナルケア・サービスを受け、内85名がすでに逝去している。

徳勝は、在宅ケアと病院での看護を組み合わせた方式のターミナルケア・サービスを北京で初めて試験的に実施した地区だ。北京ではここ3年ほどリハビリテーションと看護の機能に特化した「中間的医療機関」の設置が推進されており、公立病院によるターミナルケア・サービスの提供もその中に含まれている。

「三人組」の訪問介護による「鎮痛」指導

路琦氏は、患者の痛みの具合に応じて薬の使用方法を指導する。張燕氏は、患者とその家族の不安や心配等の心理的な問題に対するケアを行い、金琳氏は看護の専門家だ。

路医師は、訪問した家の散らかりぶりにあっけにとられた。女性の患者が無表情でベッドに座り、彼女の周りには椅子やら寝具やらが積み重なっていた。患者はやつれた面立ちだが、脚は明らかに浮腫んでいて、路医師が血圧を測ろうとすると、甲高い叫び声が部屋に響いた。腕をそっと持ち上げただけで、耐え難い激痛が走ったのだ。

「彼女は、今まで出会ったがん患者の中で最も痛みが強烈です」と路医師は言う。47歳の瀋さんは、肺がん骨転移の患者だ。瀋さんは、痛みがひどいため横になって眠ることができず、毎日38錠の鎮痛剤を飲んでおり、その服用量は1,200ミリグラムを超えている。だが、この種の薬の服用量は通常1日500ミリグラムを超えてはならないとされているのだ。

瀋さんの夫は、徳勝地区衛生センターの生命ケア相談センターに何度も相談に来ていた。しかし、最初は医師が自宅を訪問することに同意せず、3回相談に来た後にやっと医師の訪問を承諾したのだった。

このコミュニティー・クリニックでは、3年前からターミナルケア・サービスの提供を始めており、3人から成る専門の医療チームの「三人組」による無料訪問看護を行っている。3人の内、路琦氏は、患者の痛みの具合に応じて薬の使用方法を指導している。張燕氏は、患者と家族の不安や心配等の心理的な問題のケアを行い、金琳氏は看護の専門家だ。

路医師は、瀋さんに見られる問題は在宅の末期がん患者として非常に典型的なもので、つまり鎮痛剤の誤った使用であることに気付いていた。瀋さんの家族は、患者の胃に負担をかけることを懸念して、鎮痛補助薬を飲ませていなかった。そのために、瀋さんは神経痛を引き起こしていた。また、家の生活環境が乱雑なことも患者や家族の心理的圧迫感を増長させていた。

路医師の指導のもと、瀋さんは大量に鎮痛剤を服用することを止め、代わりに補助薬を併用するようになった。路医師によれば、服用量は今後も随時調整する必要がある。一般的に訪問看護は1ヶ月に1回で良いが、患者の病状が変化した場合、状況に応じて患者の家族が再度「三人組」の訪問を依頼する。

路医師によれば、意識不明や意識がもうろうとする等の症状の現れは、すでに最期が近いことを意味しており、家族は患者をセンターのリハビリテーション病棟に入院させることができる。ここでは16名の医師や看護師が、患者が亡くなるまでのケアを提供している。

3年間に見送った患者は85名

「三人組」がケアを提供した患者はこの3年で122名になる。北京市衛生局の発表によれば、悪性腫瘍はすでに5年連続で北京市民の死因のトップだ。

時間とともに、「三人組」も工夫を重ねてきた。例えば、家に病人がいることを近所の人に知られたくない家族の場合、白衣を着ずに普段着で訪問するなどだ。

「このような仕事にはもめごとが付きものです」と金氏は言う。「三人組」は、患者を訪問する際には事前準備を行い、家族構成や考え方、さらに患者が自分の病状について知っているかを探る。末期がん患者は健康状態が非常に悪くなっていても、亡くなるまで自分の病状について知らない人が多いことを3人は知った。

3年前、路医師は北京西城区の老人ホームや家庭を訪問し、100余名の高齢者の調査に参加した。路医師によれば、末期がんの高齢者のほとんどは激痛を堪え忍んでおり、その苦しみは執行猶予付きの死刑に等しい。路医師によれば、ある北京教育大学を退職した元教授は、末期の鼻咽頭がんが頭蓋に転移し、両目を失明した。眼部ががん細胞の肉腫に圧迫されて眼球が眼窩(訳注:目の入っている窪み)の外に突出し、耳からはしばしば血膿が流れ出ていた。しかし、このような状況にあっても家族はターミナルケアという考え方を受け入れることができなかったのだ。

韓琤琤氏によれば、患者の家族の多くは、カニューレの挿入や、集中治療室(ICU)や冠疾患集中治療室(CCU)に患者を入れることは、親孝行心の表れと考えている。ある末期がん患者の高齢男性は、腿の上に指でターミナルケアという言葉を書いたにもかかわらず、家族は同意しなかった。「ある調査結果によれば、多くの家庭で、一生かけて蓄えた貯金の半分余りもが臨終前の半年間に使われるそうです。」

北京市衛生局の発表によれば、悪性腫瘍はすでに5年連続で北京市民の死因のトップだ。人口150万の西城区では、腫瘍が原因で死亡する人は年間平均3,000人だ。徳勝地区の常住人口は11.7万人で、年間平均234人が腫瘍が原因で死亡しており、常住人口の死因のトップを占めている。「三人組」がこの3年間で訪問サービスを提供した患者は122名で、内85名がすでに亡くなっている。「これは、更に多くの患者と家族がターミナルケアを必要としているにもかかわらず、私達の所には来ていないことを示しています」と路医師は話す。

当初病院では「ターミナルケア科」という看板の掛け方一つをとっても、懸念事になった。「ターミナルケアとはっきり書いてしまうと、患者が怖がって足踏みしてしまうと考えたのです」と韓氏は言う。病院の入口には金色の看板に「生命ケア相談サービスセンター」という文字が書かれている。病室にもターミナルケアという明確な標示は無く、科の部屋の入口に「ターミナルケア科」という標示があるだけだ。

(後編に続く)

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翻訳と校正 翻訳:川口晶子 校正:棚田由紀子
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