2013/09/13 by Tanada

【社区(コミュニティ)でのケア】「年輩者の食堂」 ~ ご近所の人情、お金では買えない思いやり

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お年寄りたちは、東園新村の年輩者向け食堂でご飯を食べた後、そこで勉強をしたりネットをしたりすることもできる。社区ではこのほか、映画や歌劇鑑賞などの活動も行っており、年輩者たちにとても好まれている。(南都記者 林宏賢 撮影)

近年、広州の社区が多くの年輩者向け食堂を開き、社区のお年寄りたちにお昼ご飯を提供している。昨年の統計データによれば、広州市における60歳以上の戸籍ベースの高齢者人口は126.4万人に達し、総戸籍人口の15.4%を占めている。毎年4%の増加率として計算すると、2015年には、広州の高齢者人口は150万人、2020年には180万人となる。高齢者の日常生活に対し、社区のサービスは、大きな社会的ニーズとなっている。

毎週月曜日から金曜日の午前11時半、越秀区六榕街の年輩者公益食堂は、時間通りに始まる。先週水曜日のメニューは、煮卵と豚の角煮の盛り合わせ、トマトと卵の炒め物、葉野菜の炒め物、煮込んだ土伏苓(ドブクリョウ)とスペアリブのスープで、お好みでご飯も付いている。食堂が開く1時間前、社区のおじいさん、おばあさんたちは、次々と食堂にやってくる。以前倉庫だった場所を改造した橙色の小屋には、古いスタイルの丸テーブルや籐椅子がびっしりと並べられており、テレビでは粤劇(広東語で演じられる劇)が流れている。お年寄りたちがわざわざ早めにやってくるのは、ただ古くからの友人に会うためで、部屋の中で車座になって、にぎやかにおしゃべりをしている。

社区での高齢者介護

六榕街は、高齢化が進む社区の典型例だ。社区全体で60歳以上の年輩者は2万381人おり、総人口の4分の1を占めている。しかも、一人暮らしの高齢者の比率が非常に高い。昨年、六榕街のスタッフが悉皆調査をした際、「食材を買いご飯を作るのが困難」という問題が、高齢者の生活のクオリティと幸福度の指数に影響する大問題であることが明らかになった。そのため、昨年の10月に、六榕街の年輩者公益食堂が開設され、社区の高齢者向けに、毎週月曜日から金曜日に10元のお昼ご飯が提供されるようになった。また、身寄りのないお年寄りや、障がいを持つお年寄り、高齢で子どもに先立たれたお年寄りは、無料でご飯を食べることができるが、こうしたお年寄りは、全体の約40%を占めている。

現在、食堂では毎日お昼に60数人のお年寄りを迎え入れ、食事を提供している。彼らはさらに、12名の熱心なご近所さんから成る「ご飯デリバリー」のボランティア配送隊を作り、毎日交代で約10名が、外出がままならないお年寄りや、少し遠方に住んでいるお年寄りのために、ご飯を届けている。今年60歳になる泉おじさんも「ご飯デリバリー員」のひとりだ。自発的に登録し、80数歳になる親しい近所のお年寄りのために、毎日、自転車で往復40分かけてご飯を届けている。他方で、食堂が開設されて以来、彼は少なくとも3人のお年寄りのためにご飯を届けているほか、社区のボランティアやアジア競技大会のボランティアなど多くの顔も持つ。「みな長年の付き合いをしている近所さんだよ!」街道のスタッフが彼をよく褒めるが、彼はそれが人情の常だと思っている。「私はもうすぐリタイアしますが、将来年をとって体が悪くなったときに、親切に私の面倒を見てくれる人がいるといいなと思っています。」

91歳の呉おじさんは身体が健康で、毎日90歳の連れ合いを連れてご飯を食べにやってくる。彼ら夫婦には6人の子どもがおり、みな広州に住んでいるが、彼らも5、60歳で退職をしており、家で孫の面倒をみているため、普段はこの夫婦を世話する時間がないのだ。そのため、月曜日から金曜日までのお昼ご飯をどうするかは、二人のお年寄りの生活にとって最も差し迫ったものとなっている。「ここのご飯はとっても美味しいんだよ!それに私たち年寄りの口にも合う。」

「お年寄りが食べるものには、油と塩を少なくし、少し柔らかめに煮るように特に注意を払っています。」食堂の名コックの何さんは、以前に老人ホームの食堂で働いていたことがあるため、年輩者食堂に対して特に心得がある。ただ、街道オフィスと僑頣の社会福祉団体が食堂を開設した背景には、一日一食の提供のほか、社区における老人介護の環境を醸成したいというねらいもある。毎日食堂でご飯を食べる以外の時間に、社会福祉団体はお年寄りを集めて歌を歌ったり、映画をみたり、ボードゲームの遊び方すら教えたりしている。現在、この食堂に登録しているお年寄りは90人余りだが、評判を頼りに続々とお年寄りがやって来て、その数が激増しているため、彼らは、社区の会議室を臨時に開放してお昼ご飯を食べる場所にしようか検討せざるを得ないほどだ。

お金では買えない思いやり

六榕街と異なるのは、越秀区の東園新村のお年寄りの家庭環境がなかなか良いという点だ。というのも、ここは鉄道業に携わる家族の集合住宅で、戸籍人口が約4,900人で、60歳以上のお年寄りが1,200人近くだが、このお年寄りの大部分が、鉄道業の仕事を退職した職員で、特別に貧困な家庭は全くない。ただ、それでも、「ご飯を食べるのが難しい」というのは、お年寄りたちにとって大きな難題なのだ。

「私たち年寄り2人がご飯を食べようと言っても、そんなに多くの材料は買えません。しかも、最近は市場まで歩いて20分以上かかるんです。なので、以前は、昼ごはんは適当に麺と卵で済ませ、夜は饅頭を蒸す程度でした。」李おばあさんと張おじいさんは、80歳の老夫婦で、毎日お昼ごはんの時間になると、手をつないで食堂にご飯を食べに来る。李おばあさんは、歯の悪い夫のために気を配ってはさみを準備して、おかずの菜っぱを切る。彼らの子どもはみな広州にいるものの、週末になってようやく訪ねにやってくるだけなので、年輩者向け食堂に行ってご飯を食べるのが、彼らにとっては最良の選択肢なのだ。

東園新村住民委員会は、2012年6月から、全戸訪問調査を実施し、年輩者食堂が社区に住むお年寄り一般のニーズであることを把握した。1年間の準備期間を経て、今年(2013年)6月3日、「幸福食堂」が正式にオープンした。食事は、中山大学北校区の食堂から調達され、原価そのままの1食10元で提供されている。食堂では普段、26人ほどのお年寄りを迎えているが、最大で70数人が入ることができると見込まれる。

お昼ごはんが終わった後、おじいさんおばあさんたちは、近くのデイサービスセンターでお昼休みをとることもでき、午後はそこでおしゃべりをしたり、運動をしたりすることもできる。聞いたところでは、東園新村がお年寄り向けの食堂をオープンしてから、近隣の街のお年寄りもみな登録しに来たいそうだ。ただ「現時点では、主なサービスの対象は、やはり自地区のお年寄りなので、選別の基準は比較的高いです。」住民委員会コミュニティステーションの湯暁萍主任は、現在は試験運用段階にあるため、ある程度の期間を経た後、実際の状況に基づいて基準の引き下げを検討するかもしれない、とも語った。

高齢化が進む広州

既に高齢化社会となった広州では、お年寄り向けの社区のサービスに対するニーズが日に日に増している。近年、広州市政府は、老人介護システムの構築をますます重視するようになっている。まず、在宅での老人介護サービスのプラットフォーム構築を推進し、デイサービスや星光お年寄りの家、在宅老人介護サービス部といったお年寄り向けのサービス組織を社区が設立するよう政策的に誘導した。そして、それぞれの社区にはお年寄りヘルパーを配置するとともに、80歳以上のお年寄りには無料で「平安通」の付加サービスも提供した。広州で21年の老人介護サービスの経験がある僑頣社会サービスセンターの責任者である艾倞は、年輩者向け食堂はお年寄りに、一種の家族への帰属意識のようなものを与えることができ、将来的には「在社区老人介護」サービスを重点的に推進すると考えている。

記者が取材をしたお年寄りはみな、こうした「便利な食堂」モデルがより多くの社区に広まってほしいと、ただ純粋にそう思っている。

 

執筆者  
執筆者所属  
翻訳と校正 翻訳:三浦祐介 校正:棚田由紀子、劉楠
メディア NGO発展交流ネットワーク

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