2013/08/21 by Tanada

日本に学ぼう!~日本の自然学校 視察レポート2(WWF 雍怡さん【後編】)

(前編 http://csnet.asia/archives/14662 より)

3.4月24日、NPO法人国際自然大学校を訪問してhttp://www.nots.gr.jp/

(1)国際自然大学校の施設と組織の紹介

●本部は東京、全国に60の分校があり、それぞれ地方の特色に応じて活動を展開している。スタッフは約50名で、うち沖縄校と日光校はそれぞれ1名、2名のスタッフのみ。日野春校は4名。日々の業務の多くはボランティアに頼っている。毎月一回、全体会議を開き、各分校の運営管理状況について情報共有している。日野春校は、唯一、自前の校舎を持つ分校(他校は全て賃貸)で、その運営管理もオリジナリティにあふれている。

●日野春校は、アドベンチャー教育、英語でNational Outfitter Training Schoolを特色としている。参加者本位で、主に小中学生の人格形成に役立てるものだ。森の探検、渓流探検、野外炊さん、冬季運動会などを行う。活動を通して、人と人、人と自然との関係を学んでいく。

●ボランティアのトレーニングは、主に地域の大学生グループやサークルに頼っており、共に内容を作っていく。学生は5回の授業を受け、3回の実習の後、まずはアシスタントとしてプロジェクトに参加することができる。

●もっとも歴史があるプログラムは、児童向けの1年間の活動で、全部で7回の固定イベント、1回の任意参加イベントで構成されている。1年間で、参加児童は新しい社会とのネットワーク作りをし、四季折々の自然活動や野外アドベンチャーを体験することができる。最後の1回は約2時間半をかけての11キロのウォーキング。毎回の活動費は3000円、年間約100名の児童が参加し、多くの子はリピーターである。

●活動では、まず日常生活の礼儀やルールから学ぶ。まずは人としてどうあるかを学んでから、活動を体験するというわけだ。活動の多くは、日常生活に関係した内容となっている。活動は地域の人を主要なサービス対象とし、自然大学校の収入も、地域に落ちるようになっている。地域の人々は、活動のために食べ物やモノを提供するだけでなく、ガイドとして、伝統文化に関連した活動に参画する。自然学校の運営を通して、地域産業の発展をうながし、地域の発展にフィードバックする仕組みだ。

(2)国際自然大学校のプロジェクト・アドベンチャー

●体験活動1 バランスボード乗り:グループメンバーは順番に、シーソーのような形状の一枚の平らな板に乗っていく。その時、板のどの辺も地面に触れないように乗っていかなければならない。板に乗ったら、左右両側にメンバーが対象に分かれていく。グループでの協力や、システム管理を学ぶための活動。

●体験活動2:メンバーは一つの木製のリングの上に、誕生日順に立っていく。その時、誰も地面に触れないようにやらなくてはならない。グループでの協力や、多人数の協調管理を学ぶための活動。

●体験活動3 冒険島からの脱出:メンバーは、木製の板(島)から、ぶら下がったロープを使って別の島に移っていく。一人でも失敗したら、初めからやり直し。最後のメンバーが島に移りきったらゴール。勇敢な挑戦と、グループ協力を学ぶための活動。

●メンバーは活動で体験したことをシェアする。

(3)大切な教えと体得したこと

●自然学校の生存の道は、特色のある活動を打ち出すことである。リスクマネジメント教育は、日本社会における青少年に欠けているもので、社会のニーズもあり、日野春校の独創的な点でもある。日野春校は、特色ある活動を継続的に行っている。

●日野春校の特色は、屋外での活動にある。国内では、伝統的なグループがプログラムを実施しているが、それを市場化し、普及するのは難しく、応用できる領域は極めて限られていた。日野春校のケースは、伝統的な自然教育のメソッドにこだわらず既にある社会のリソースを十分に活用すべきであること、自身の強みのあるリソースを使い、オリジナリティを打ち出し、社会の真のニーズに応えることが重要であることを教えてくれる。

●自然学校の発展には、十分に地域のコミュニティを活用すること。できる限り地域の産物を購入し、地元の人的資源を活用し、自然学校の発展を地域社会の経済発展のためにフィードバックすることで、ウィンウィンの関係を実現すること。

●メンバーのネットワーク構築や管理を通して、良い信頼関係の下で長期にわたる安定した協力関係を築くこと。同時に、自然学校もメンバーが自分のソーシャルネットワークを築いていくための重要なルートとなる。また、自然学校は本来旅行会社ではなく、旅行商品運営の資質も持っていない。しかし、メンバー制度を通して、メンバーの活動という形式を取ることによってツアー運営の許可を得ることもできる。

●スタッフには、教育、旅行、消防等、自然教育と関連のある各分野で、資格取得を奨励すること。それにより参加者はプロフェッショナル感、安心感や信頼感を得ることができる。

2 4月25日 キープ協会を訪問して(http://www.keep.or.jp/

(1)キープ協会について

●キープ基金は1948年に設立され、75周年になる。総面積240ヘクタール、南北に2キロメートル、東西1キロメートル。山梨県所有の土地を借りて運営しており、毎年約500万人の観光客を迎える。スタッフは約140名、うち環境教育ガイドは約35名。年間予算約15.7億円、うち環境教育プロジェクトに1.8億円。うち60-70%は人件費である。

●環境教育プロジェクトは30年の歴史があり、「清里教育実験計画」と呼ばれている。プロジェクトは6つの領域と方向を含む。それは「食糧」「保健」「信仰」「青年への希望」「国際交流」「環境教育」で、最後の二つは後から付け加えられたものだ。主な手法は、教育と体験(Education and real-life experience)としている。環境教育のスタッフは約35名で、トレーニング講師4名、ボランティア30名、4名の実習生を含む。

●キープ協会の環境教育プログラムは主に4つの場所で行っている。Aキープ自然学校(1984年設立)まる一日もしくは泊りがけの、比較的長時間にわたるプログラムを担当しており、体験式の環境教育活動に重きを置いている。B八ヶ岳自然ふれあいセンター(1994年設立) 八ヶ岳地域の自治体との協同設立で、自然学校の入り口と観光客センターの機能を持っており、観光客に必要な情報を提供している。Cやまねミュージアム(1998年設立)国内の危機に瀕している生物やその生息地について紹介している。D那須平成の森(国有林)(2011年)

●「やまね」「アイスクリーム」「牛乳」など、ブランドの確立に成功しており、日本人の間で有名で人気のある観光地となっている。八ヶ岳自然ふれあいセンター(環境教育プログラム)の年間訪問者数は約93000人、そのうち12000人は有料の環境教育活動に参加する人々だ。

●環境教育プログラムの設計は、EE in、about、for Nature and Human Beingsの3つのレベルに分けられる。つまり、「自然を感じ、理解する」「知識と技能を身に着ける」「環境保護のために何か行動を起こす」の3ステップに分けて力を入れている。その他、参加者層に合わせ、子供向け、大人向け、指導者向け、ファミリー向け等それぞれに応じて様々な種類の教育プログラムを用意している。

●環境教育部門としては、研究職も事務職も、すべてのスタッフがガイドを務められるようにと考えている。その他、ボランティアのメインの役割は日常的な観光客対応、プログラムの運営、プログラム実施場所のメンテナンスなどである。プログラムのデザインや開発および実施については、専門スタッフが担当している。

●キープ協会の環境教育プログラムは30年間の発展を経て、系統立った専門的な蓄積がある。環境教育プログラムの企画だけでも3000種類もある。これらの一部は、日本環境教育学会のインターネットサイトを通してダウンロード可能だ。

(2)大切な教えと体得したこと

●日本の自然学校の歴史の中で、清里は非常に重要な役割を持っている。30年間にわたり毎年、日本の自然学校や環境教育領域に関わる人々が自発的にここに集まり、1年に1度、3日間の自然学校ワークショップを絶えず開催してきた。全員が自費で集まり、清里は日本の自然学校発展のスピリットの聖地となった。

●キープ協会の「森林セラピー」などのプログラム体験は、多くの人々の日常生活と切実な需要に密接に関係しており、人々の興味を掻き立てている。また、環境保護に関連した無味乾燥な知識をただ紹介するだけになっていない。

●キープ協会の環境教育プログラムは、参加者側の様々なニーズに応えているだけでなく、環境教育が人に影響する理論的なステップも考慮しており、様々な段階の人に合わせた教育的内容にデザインされており、教育的効果を増している。

●キープ協会の環境教育プログラムの30年間にわたる大量の経験と資料は、日本環境学会等のプラットフォームを通して国内の同業者にシェアされ、関連の専門家による影響力のある著作も多数出版されており、業界のリーダーとしての模範を大いに示している。

●キープ協会の教育プログラムと地域の伝統的な観光、温泉旅行などとの有機的な組み合わせ、お互いの助け合い、全国的に有名な牛乳、アイスクリーム、やまねなどのブランドを協力して打ち出したことは、人々が受け入れやすい手法で環境教育を人々に知らしめた好例と言える。

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執筆者  雍 怡
執筆者所属 WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金) 中国
翻訳と校正 翻訳:三津間由佳 校正:棚田由紀子、劉楠
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