2009/11/29 by GLI Japan

【呂朝】NPI公益組織発展センター(後編)

NPIの最初の構想は、公益団体と社会的企業にサービスを提供するサポート団体を設立しようという位置づけだった。しかし最近、私はNPIのより明確な役割は、制度を革新することであり、そのために政府に働きをかけることではないかと切実に感じている」

「言うまでもなく、私たちがサポートできる団体の数には限度がある。政府が大幅に創業期の草の根団体の登録条件を緩和 せず、協力体制やサポートシステムがないかぎり、私たちはある種過渡的なサポート・システムでしかあり得ない。登録していない草の根団体でも、私たちの身 分を使って業務を展開し、資金を集めることができる所もある。いかなる社会的サポートも得られない情況の下、私たちは彼らに最も基本的なサポートを与え る。そのため、私たちは頻繁に政府とやりとりをし、政府が草の根団体の発展をサポートするよう働きかけている。このサポートシステムは政府で作られるべき だが、私たちNPIがその実験を行っているのだ。一連の成果も出てきているので、このサポート方式ならリスクもなく、実行可能だと政府を説得するつもり だ」

NPIの運営を維持する資金は、今の所、おもに政府の補助金と財団の助成金から来ている。入居団体にとって、入居している一年間はいかなる費用負担もない。呂は入居団体から費用を徴収する条件はいまだ整っていないと考えている。

「それは二つの原因がある。一つには目下の入居団体は非常に初期段階にあるからだ。基本的には創設者一人といいアイデ アを持っているだけで、サポートを必要としている。二つ目は、実際に私たちがインキュベートしているのはいわゆる社会的企業だけではなく、伝統的なNGO も対象としており、彼らの活動の性格上、どうしても助成金や寄付に頼っているからだ」「インキュベーターとしての最も重要な役割は、現行の起業サポートシ ステムの中で、いくつかの試みを行うことができる点だ。政府や助成団体といったステークホルダー・グループに、このやり方が有効で創業期の非営利団体をサ ポートしてもいいと感じさせたり、市民にこれらの団体を認識させることができる。もともと多くの市民はこのような団体の存在を知らなかったが、今では認識 されるようになった。NPIの役割もそこにある」

設立から三年が経ち、NPIはインキュベーター部分の機能をかなりはっきりと定義づけられるようになり、一通りの管理規約も整えて、インキュベートサービスの内容と範囲をより明確にした。

「NPOや社会的企業に対する系統的なサポートシステムがないため、インキュベーターから“卒業”した団体が、これか らの事業展開のための支援者や資金源が見つからずに、結局又私たちの所にやって来る。他にやる人がいないなら、私たちでやるしかない。しかし、そもそもイ ンキュベーターとして私たちはどの程度まで関わればいいのか」

「二つのやり方がある。一つはインキュベーターのサービスを最大限に広範化する。私たちは結局このやり方を否定した。 なぜなら、インキュベーターという一つのモデルで創業期におけるすべてのサポートサービスをカバーすることはできないからだ。そこで私たちはもう一つのや り方を選択した。サービスを細分化し、インキュベーターはそのうちの一つのサービスとしたのだ」

インキュベーターから派生したサービスとして、NPIはレノボ、康師傅、NOKIAなどの大企業を含む企業や財団と協力して、企業助成プログラムを開発した。企業は資金の管理をNPIに委託し、NPIは企業が選んだテーマに基づいて助成先を選択・評価・監督する。

「私たちが企業と協力できるのは、スタッフの多くがかつて企業でマーケティングやPR業務を経験した人材だからだ。企 業がなじんだ言葉で話すことができるし、私個人もこれらの企業のトップをよく知っている。ただ企業の予算を使ってしまえばいいのではなく、助成先選定や助 成先へのキャパビル・事後評価を行って企業を支援する。これらは企業にとって大変重要であり、彼らのニーズは満たされる。もちろん、私たちには経験があ り、一連のフローチャートも完備しているので、企業助成プログラムは、私たちの花形商品になっている。私たちはそれにより、最大の資金を獲得でき、同時に インキュベーターの不足を補うこともできる。私たちはすべてのインキュベーター団体が助成プログラムのコンペに参加することを奨励している。多くの団体は すでにそこから資金を得ている」

2008年、NPIはNPOネットワークセンターを吸収合併し、センターはNPIのキャパビルと研究機能を主に担う ことになった。現在、NPI傘下には七つの登録法人と五つの業務モジュールがある。インキュベーター、ネットワークセンター、屋里廂コミュニティサービス センター、企業にCSRサービスを提供するコンサルタント会社(行動する企業市民)、そして批准されたばかりのNPI財団である。現在、インキュベーター の業務量が最も大きく、現有の上海浦東、北京、成都以外に、深圳と上海浦西にも起業基地を準備中である。「資源のプラットフォーム+キャパビルが私たちの 中核的な競争力だ。ここまで規模を拡大したのは、インキュベーターの限度を考慮してのことだ」

2009年8月、NPIは北京にて、史上初の「公益プロジェクト交流展示会」を企画・実施した。「公益業界において、 資源に関する情報がしかるべき相手に届かないという問題は非常に深刻であり、多くの草の根団体は人々の目に触れるチャンスすらない。NPIだけの力で業界 全体の現状を変えることは不可能だが、私たちはひとつの生態系を作らなければならない。つまり、資金を出す人、事業を行う人、そして私たちサポート側だ。 公益事業のための資金が、すみやかに公益事業を行う人の手に届くこと。又、政策や税収環境も比較的平等であること。私たちの目的はパブリックに対して、公 益分野の情報アンバランス問題を解決することであり、内部的には、公益の独占状態を打ち破り、助成側の資金が実践型の公益団体に届くようにすることであ る」

NPIの“八つの遺伝子”

NPIの目下の資金源は、企業・財団・政府がそれぞれ三分の一ずつを占めている。上海、北京、成都の三都市の職員数は四十数人で、そのほとんどが企業勤務の経験がある。500万元(約6500万円)近い年度予算のうち、7割は人件費だ。

「NPIは現在、比較的良好な発展段階にあり、私たちは全国から優秀な人材を選抜できる。私が職員に要求するのは、今 後あなたがNPIで働こうが、よその公益分野で働こうが、ここで働いている間は、私たちの価値観に従う、ということだ。私たちの採用基準は、お互いの理念 が合致することであり、能力の面だけではない。能力は育成できるが、理念が合致することの方がより重要である。ある人がNPIに来たが、緊迫感がないため に去ってもらった。その人の元の職場は、資金調達圧力のない所だったのだ。私たちは効率を重視するが、もちろん企業とは違う所もある」

では、NPIの価値観とは何か。呂はそれを「NPI の八つの遺伝子」と総括した。つまり、草の根の立場、メインストリーム意識、行動による提唱、質も量も大事、プロ意識で働く、コミュニティのニーズが第一、絶対にあきらめない、退くために進む、である。

「このフレーズを書いた時、私は実は一つの問題に答えようとしていた。それは、なぜ私たちはこの事業を行っているの か、という問題だ。私たちは他の団体と比べ、一体どこが違うのか。NPIの発展は、その独特な理念と関係していると思う。私たちは中国のNPOによくみら れる、提唱することと使命だけを重視し、サービスの提供とニーズの把握を軽視する、 という傾向に反対だ。これらの団体のリーダーたちは、インテリのイメージとして出現したのであり、社会的ニーズを満たすためのサービスを提供する自覚はな い。実際、多くのNPOはある種の社会問題を解決し、ある種の社会的ニーズを満たすために存在している。理念が必要ないと言っているのではなく、行ってい ることが非常に実務的でないと駄目だという事だ」

私たちは事例で証明し、行動を以て提唱する。中国のNPOがなぜ効果を上げにくいかと言えば、それは主に彼らがあまり にもインテリ化してしまったからだ。私はそれに強く反対する。そこからは多くの過激な人が生まれるからだ。NPIにはそのような人はおらず、私たちはもっ と実務的だ。NPIでは、スローガンを叫ぶことが好きな人は、誰にも相手にされない。緻密な理論派と、豊富な想像力を持つ人では、仕事のスタイルも違うも のだが、NPIではこの二つがある種の融合を遂げていると感じる」

「私は、NPOは社会問題解決の主体ではないと思う。NPOは社会問題を解決するための実験に使われる存在であり、も しそのモデルが成功できたら、より多くの人を巻き込んだり、あるいはより多くの社会的資源を持つ人にも関わってもらったりするものだ。したがって、NPI がやっていることも実験だ。北京でも、成都でも上海でも、私たちの仕事にはスケール・アウトする価値があることを持たせるよう努力している。NPIが始め たことを皆で普及する。そして私たちは別の事に取りかかる。NPIの仕事は上海だけを視野に置いているのではなく、全国を見据えてやっている。当然各地域 でニーズは違うが、そこが私を引き付ける魅力でもある」

NPOを事業の終着点にする

企業家、メディア編集長、そしてNPI創設。呂はこの一連の偶然による過程には、必然的な要素も含まれていると考えている。呂の自己分析によれば、呂は人々の中にあって、「公益的な人格」を持つ人のグループに属している。

「袁岳先生(注:中国のマスメディア界では有名なコメンテーター。「零点コンサルタント」の創設者)の説によれば、世 の中の約1割の人たちが公益的人格を持つという。そのような人の特徴はまず、物質的な激励にはあまり興味を示さない。お金が嫌いな訳ではないが、それより ももっと抽象的なもの―たとえば使命感―に心を動かされる。つまり“自分の事は自分の事、人の事も自分の事、すべての事を大事に取り扱う”というタイプ。 おそらく無意識のうちにいつも何かに影響されて選択を重ねているのだろう。次に、自分に対する周囲や社会の評価を割と気にすること。三番目は、他人の境遇 を自分自身に引き付けて感じること。公益事業に取り組む人は、感動しやすいタイプだ。弱者の存在はどうしても気になって仕方がない。私も自分がそういうタ イプだと気がついた」

「私はNPOを自分の一生の事業のスタートではなく、終着点のつもりで取り組んでいる。NPIで制定したすべての事業 計画は、どの勢力にも傾倒したりおもねったりしていない。私は職員にもそうあるように求めている。もし、始めからこの団体を権利や金銭を求める手段として 考えていたら、その発展方向は変化していただろう。NPIは草の根の立場で、草の根団体をサポートするために存在している。そこから離れてしまえば、私た ちの業務モデルには混乱が生じるだろう」

「私は、今やってることが天職だ、と感じるタイプ。NPIは、私が生まれてから今までで一番自分の創造性を触発してく れる仕事だと思う。一つ一つの計画が自分の手によって実現していく満足感は、言葉では表せない。“公益分野に参加したい人が自分の価値を発揮できるプラッ トフォーム”、NPIがそうなれるよう望んでいる」

文責:李凡

翻訳:松江直子

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