2013/07/23 by Tanada

日本に学ぼう!~日本の自然学校 視察レポート2(WWF 雍怡さん【前編】)

1.4月23日、ホールアース自然学校を訪問してhttp://www.wens.gr.jp/

(1)ホールアース自然学校の組織の紹介

●日本で最も古い自然学校。1982年、広瀬敏通氏の立ち上げたアニマルファームが始まり。自然学校の概念が出始めたのは1984年のこと。

●組織の構造上、自然学校自体はどのような法人資格の制限も受けない「任意団体」。ただし、傘下のホールアース株式会社とNPOホールアース研究所が関連の業務活動を行う。

●フルタイムスタッフ36名、パートタイムスタッフ5名。年間収入2.5億円、訪問者数3万人。

●自然学校をひとつの社会運動とみなし、日本型の自然観を取り戻し、社会の価値観の再建に注力する。人と自然とのつながりの再建を通して、人の心のつながりを修復する。

●自然学校は地域に根差し、地方振興の中心となり、防災などの問題においてかけがえのない役割を発揮する。

(2)樹海洞窟での自然教育の体験

●ホールアース自然学校の最も古く、特色のある洞窟体験活動を紹介

●青木ヶ原樹海と洞窟は、富士山の火山爆発後に形成された自然の景観。その保全措置の紹介

●体験活動では、火山の爆発や地質・地形の変化、樹海における異なる類型の植生の特徴とそれが形成された原因、生態系と食物連鎖、世界文化遺産申請等の関連情報を紹介

●洞窟探検:洞窟が形成される原理、洞窟内の生態系、火山岩層に特有の水の浸透と水の循環の関係、洞窟内の自然体験、グループ協力の訓練

(3)ホールアース自然学校プロジェクトと教育業務の紹介

●ホールアース自然学校の地域に根差した基本戦略:自然学校の活動拠点と自然洞窟の体験地とのつながり、自然と人里とのつながり、特別な体験と日常生活とのつながりなどの、多元的なつながりを実現する。同時に、環境問題のローカル化とグローバル化、オーバーユーズ(過度利用)とアンダーユーズ(利用不足)の間の関係を詳しく解説する。

●主な業務は、3つの政府機関との連携:A. 農業事業部門に関連のある食育(食品や、日常の食べ物と関連させた教育)、有機食材、荒地の再利用、自然学校の農産品の地元への供給等 B. 森林部門:放置された経済林の間伐や、林の生態系の多様性の修復プロジェクト。多くは地域社会の参与とボランティア団体の力を借りて実施。 C. 野生の鳥獣事業:許容量を超えたニホンジカの生息コントロール

●ホールアース自然学校の戦略計画の紹介:10年のミッション、5年のターゲット(人、自然、地域の3領域)、1年の目標という、3つのレベル

●ホールアース自然学校の組織構造の紹介:管理者層に法人代表1名、コーディネーター3名、その下に総務(行政、財務等)、教務(トレーニング、実習生)、広報(営業販売を含む)と事業部門(具体的な教育プロジェクト全て)の4つを置く。

(4)大切な教えと体得したこと

●日本の歴史の最も古い自然学校として組織を発展させた経験 A. 組織が一定の段階まで発展したら、性質の異なる下部組織を設立し、NGO、研究、コンサルティング等の各角度から業務に当たる必要がある。 B. 組織の長期的使命をデザインするには、社会の具体的なニーズとの結合が必要である。中短期的な目標は、地域の客観的なニーズや、組織自身の発展に注力すべきである。 C. 組織の構造上、機構管理と業務の発展は分けて考えること。特に人材育成は十分重視し、福利厚生面が弱い中でも、環境保全や教育分野のNGOがずっと人材をつなぎ留め、組織を強くするのを維持する。

●自然体験活動へのアドバイス:A.現地の資源を十分活用する。見たりさわったりすることを組み合わせる。道具を巧みに使って、簡単に理解できる情報を伝える。(例えば、屋外用手袋の表面と裏面で異なる材質が使われていることから、火山洞窟形成の原理を紹介するなど) B. クイズ、ゲーム、道具を使って、体験の双方向性を高め、教育の成果を出す C. ガイドは活動の場を熟知し、季節や生物学的な変化に沿って紹介を行えるようでなければならない D. グループ作りなどの活動内容を適切に盛り込み、訪問グループの総合的な要求に合わせる

●具体的なプロジェクトデザインへのアドバイス:A. 人々の生活に関係のあるテーマを十分組み合わせてデザインする。例えば、飲食、地域の農業生産、食品安全など。B. 教育活動の参加者が得られる体験の幅を広げ、地域の自然保護に貢献することに重きを置く。 C.多くの行政部門、利益の異なる関係者間の協調や連携に特に注目する。

2. 4月24日 田貫湖ふれあい自然塾を訪問してhttp://www.tanuki-ko.gr.jp/

(1)田貫湖ふれあい自然塾プロジェクトの紹介と、現地訪問

●48000㎡の敷地。2004年設立。日本政府が建設した初めての自然学校で、その環境教育プロジェクトはホールアースが実際の責任を負う。

●田貫湖プロジェクト全体で5機関が関わり、規則、建設から経営管理まで、協同で参画している。その5機関は、次の通り:環境省、静岡県庁、富士宮市(県よりもさらに小さい行政単位)、休暇村協会(旅行運営組織)、ホールアース。

●ホールアースは自然塾の内部のデザイン、日常の運営管理、教育プロジェクトの実施を担当する。行政はハード建設に出資し、ハード面のメンテナンス管理を担当。ホールアースは、運営管理そのものと、運営資金と団体の発展のための費用の調達。

●年間の運営費用は3600万円で、そのうち1000万円は日常の管理費に、600万円は広報費に、2000万円は人件費となる。主な収入源は企業と団体の教育活動への参加費、参加者の宿泊費用である。

●年間の訪問者数は約12万人、多くは富士山めあての旅行客だ。効果的な宣伝により、そのうち約10%は体験活動に参加する。展示館の見学と30分間のガイドは無料、テーマ別の体験活動(2-3時間)は有料。

(2)大切な教えと体得したこと

●自然保護と環境教育プロジェクトは、多層的な関係者が協力して展開すべき。それぞれの組織が、自分の得意とする専門領域について具体的な担当をすることが重要。業務範囲がバラバラになってしまうと、元に戻すのは難しい。

●5つの関係機関は、アイデア段階から十分な参画をし、プロジェクトの建設とその後の運営が目標に沿って進められ、それぞれの関係者の求めるものが等しく実現するようにしている。

●プロジェクトのデザインと地域の資源の優位性を十分に生かして(富士山の持つ自然の吸引力も利用して)運営を展開し、影響力を拡大している。旅行業の発展により、環境教育活動への参加者も増え、質のいい宿泊・飲食施設を提供できるようになっている。教育プロジェクトの実施によって、従来の旅行業の幅とレベルが上がり、旅行客層の幅を広げている。これは非常に良いWin-Winの発展の形である。

●展示館は、手と体を動かして体験し、双方向性を重視してデザインされている。多くの展示品は、スタッフが自分でデザインし、制作したもので、創意工夫が凝らされている。さらに、季節の移り変わりや地域で体験できる活動の違いによって適宜入れ替えや見直しが行われ、地域の特色と季節性が表されている。展示館全体のアレンジは2004年に始まり、何度もリニューアルされ、常に参加者のニーズに応えながら、より新しく、より良い理念を取り入れている。

●季節、天気、地域資源等の条件によって、月ごとに体験活動の日程を立案している。テーマや内容、スケジュールは日々異なり、すべての参加者、特に泊りがけの参加者(宿泊施設には、当月と翌月のスケジュールが配られる)が予め選ぶことができる。1日前に予約すれば参加可能。

●スタッフ全員が、特徴的な性格を持っている。一度見たら忘れられないようなニックネームや似顔絵をデザインし、それを基にした田貫湖ふれあい自然塾オリジナルの記念品(ステッカー等)を作って参加者にプレゼントする。その他の記念品も、みな地域に関係のあるもの、たとえば火山の溶岩で作った天然染料で染めたTシャツなどで、参加者の活動参加の思い出にもなり、間接的な宣伝効果もある。

(後編につづく)

執筆者  雍 怡
執筆者所属 WWF(World Wide Fund for Nature:世界自然保護基金) 中国
翻訳と校正 翻訳:三津間由佳 校正:棚田由紀子、劉楠
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